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■夏の日の想い出・いろはに金平糖(15)
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成人式は、ホール後方の映写室から眺めて、成人式の雰囲気だけでも味わった。来てよかったかも知れないとアクアも思った。
余興で区の中学校の吹奏楽の演奏が行われた後、アクアがサプライズ登場すると、会場が物凄いどよめきとなった。それで1曲だけ、公開中の映画『白雪物語』の主題歌『白い恋の物語』を歌う。そしてメッセージを述べる。
「私も今日成人式を迎えることができました。おとなになると色々大変なこともありますけど、頑張っていきましょう」
そのあとステージを退出し、和城理紗の運転する車に飛び乗る(正確にはステージの近くから車内へ和城理紗が転送した)とすぐに脱出した。
もちろん、新成人の記念品(ワイヤレス充電器)はしっかりもらってきた。
この日の渋谷区での成人式が終わった後、和城理紗は龍虎(アクア)をそのまま八王子の家に連れていった。田代夫妻と海原夫妻と美奈代が待っていて
「お帰り」
と言ってくれる。田代夫妻と支香さんで色々料理を作ってくれていたようである(海原先生が料理などするわけがない)。
16時頃、千代田区での成人式を終えた、彩佳・桐絵・宏恵の3人を竜崎由結が彩佳たちに預けているヤリスに乗せて連れてくる。3人の両親も来たいと言っていたのだが、多人数集まっての飲食はよくないということで、遠慮してもらった。
「ここ来たの初めてたけど、広いね。家の前を流れている川は何川?」
「ああ。それは水を循環させてるだけ。ボクもそんなのできてるの見てびっくりした。風水的に東側に川があるのがいいんだって」
「へー!」
家の裏手に道路?ができるのも時間の問題だなと龍虎は思った。
それで16時半頃、龍虎と、田代夫妻・海原夫妻と美奈代、彩佳・桐絵・宏恵の9人で成人式のお祝いをした。海原先生が持ち込んだボルドーのシャトーワイン(美奈代はスプライト)で乾杯した上で、お料理を食べながら歓談した。
美奈代(小2)が女子たちのアイドルになっていた。
19時頃、田代夫妻・海原夫妻と美奈代が帰る。
すると実は邸内に居た!理史と、もうひとりの龍虎が出て来た!
そして龍虎2人、理史、彩佳・桐絵・宏恵の6人で成人式のお祝い第2弾をしたのである。
龍虎2人が振袖姿で並んでいる所の記念写真も撮った。更にうまく載せて、振袖姿のFと紋付き羽織袴の理史(事情後述)の写真、Mと彩佳の振袖同士で並んだ写真も撮った。
「龍は私との結婚式ではやはり振袖・ウェディングドレスを着るよね?」
「どうしよう?」
「龍はちんちん無くなっちゃったし、2人の関係はもうレスビアンなんだから、それでいいと思うよ」
「だいたい紋付き羽織袴とか、タキシードとかあまり着たくないでしょ?」
「悩むー」
「悩んでいるということ自体、もうウェディングドレス同士の結婚式は確定だな」
ちなみに、あけぼのテレビの成人式に出たのはF、FHテレビの番組に出たのは“振袖を着せたNちゃん人形”を着物の中に入れていたF、今日渋谷区の成人式に出て、そのまま第一弾のお祝いに参加したのはMである。
第1弾のお祝いの最中はFと理史はイチャイチャしながら待機していた。そろそろという頃に理史を生殺しにして!シャワーを浴びて振袖を着た(理史は龍虎がシャワーを浴びている間に自分で“完了”させたもよう)。Fは理史の前で裸でシャワールームから出て行くとそのまま肌襦袢・長襦袢・振袖と着た。
「理史も振袖着る?振袖はたくさんあるよ」
「さすがに僕はそんなの着ない」
「じゃ羽織袴を着てもらおう」
「え〜〜〜!?」
それで用意していた紋付き羽織袴を、竜崎由結に着付けさせたのであった。
お料理はたくさん用意していたので、みんな振袖ではきつくなり、全員脱いで楽な格好になった。振袖はしわにならないよう、ちゃんと和服用衣紋掛けに掛けておく(明日の朝、龍虎たちと由結で手分けして畳んで和服ケースに収納する予定)。
「眠くなった人は勝手に寝てね〜」
「西の対(たい)に名前を書いた札を下げておいたから、そこで寝てね」
「お風呂もトイレも部屋に付属してるから」
「面倒くさいからここで寝てもいい?」
「風邪引いても知らないよー」
「質問があります」
「何でしょう?宏恵君」
「私と桐絵の名札は下がってたけど、彩佳の名札が無いのはなぜでしょう?」
「それは龍と一緒に寝るからでーす」
「妊娠しないように気をつけろよ」
「ちゃんと付けさせるから大丈夫だよ」
「女の子・龍ちゃんも妊娠に気をつけてね」
「ちゃんと付けさせるから大丈夫だよ」
しかし、ゆりこが今日1日のスケジュールを空けておいてくれたおかげで、龍虎たちは2人ともこの日は充分休むことができたのであった。
(Mも彩佳が「全部私がしてあげるから、龍は休んでて」というので、全部お任せして、半分寝ていた。ボク妊娠しないよね?と少し不安になったが!)
成人式のニュースを見ていた政子が言った。
「だけど日本は式典やるだけだけど、国や地域、また歴史的には結構えげつない成人式もあったみたいだよね」
「そういうのは多分持続可能な制度では無かったんだと思う」
「首狩り族とか、誰かの首を狩ってこないと、1人前の男とみなされなかったらしい」
「それは全く持続不能なシステムだ」
「成人になる段階で男の人口が半分になってしまう」
「いや、争って両方死ぬこともあるだろうから、半分未満、もしかしたら3割程度しか成人できなかったかもね」
「バンジージャンプとか有名になったけど、あれ多分昔は結構な死者が出てるよね」
「多分ね」
「割礼やってたところは多い」
「それは地域や宗教によっては、今でもやってる」
「男の割礼はまだ意味が分かるけど、女の割礼は全く意味不明」
「メリットが存在しないよね。むしろ出産時の死亡率を上げているという指摘もされる。だから女性割礼(別名女性器切除FGM)をやめさせようという運動も盛んにおこなわれているし、国によっては禁止する法律を作ったけど、あまり実効があがってない」
「男子の割礼って普通はちんちんの皮を切るけど、尿道を切開しちゃう所もあったらしいね」
「うん。ある地域で行われていた。これをすると、おしっこはペニスの付け根の所から出るようになるから、立っておしっこをすることができなくなる」
「精液は?」
「精液も根元から出るから膣内射精ができなくなる」
「子供作れないじゃん」
「成人前に子供は作らないといけなかったのかもね」
政子は何か妄想しているようだ。絶対変なこと考えているなと思った。
「ねね、こういうの思いついた」
「どんな?」
と訊いてあげる。
「あのね、あのね。成人式で男の子はちんちんを切除しないといけないの」
「何のために?」
「凄まじい痛みがあるから、その痛みの試練を乗り越えてこそ一人前の男とみなされる」
「ちんちん無くなっちゃったら、もう男ではなくなる気がするけど」
「たまたまが残ってたら男なんじゃない?」
「睾丸があって、ペニスが無いというのは、性欲はあるのに自慰できないしセックスもできないから、男は気が狂うと思う」
「我慢できないの?」
「我慢できないから、子作りするんだと思うな」
「じゃ、成人式では、ちんちんとたまたまの双方を切除した方がいいな」
「だから何のためにそんなことするのさ?」
「成人式を終えたら男女ともスカートを穿く。ズボンは少年時代だけ、というのはどうかな。4月からは18歳で成人になるから、高校の卒業式は男女とも全員スカートの制服を着ておこなうということで。そうだ。トイレも学校と子供用以外は、男女分ける必要がなくなるよ。銭湯も男女一緒でいい」
「そんなことはない。男女分けてないと、トイレや銭湯でレイプ事件が頻発する」
「たまたまが無くなったら性欲も消えないの?」
「消えない。弱くはなるけどね」
「性欲ってどこにあるの〜〜?」
「脳だと思うけど。睾丸に思考能力があるわけない。睾丸は性欲を増幅させる物質を出しているにすぎない。『赤かぶ検事』に睾丸を除去した人がレイプ事件を起こしたという案件の話が出ていたね」
「立つの?」
「雨宮先生は立つみたいだけど」
「あの人は変態だからなあ」
ビーナは元日だけ休めて、女子寮内にある、天羽家で“天羽さん”(と彼は呼ぶ:ひろか・詩恩の母、天羽亜矢子のこと)および2人の姉と一緒にのんびりしたお正月を過ごすことができた。しかし2日以降は、朝から夜遅くまで休む間もなく、テレビ局・キャンペーン・イベント出演・雑誌などの取材と駆け回った。
1月6日は北海道の根室でアクアや舞音などと一緒に松芝電機さんのCM撮影をしたが、むろん日帰りである!夕方からテレビ局に入って別の仕事をしている(アクアも同様。舞音は根室で夜まで撮影し7日朝帰京した)。
1月7日(金)は夕方から、あけぼのテレビでネット成人式に出る詩恩の付き添いで出た後、詩恩から
「今日は私の成人式のお祝いするから来てよ」
と言われて、一緒に女子寮に行き、本宅4階の天羽家に行って、天羽亜矢子お手製のちらし寿司を食べた(すし太郎だけど)。そしてその日はそのまま天羽家にリザーブされている、自分の部屋に泊まった。
「あれ?これボクの布団だ」
「うん。ひまわりちゃんに頼んでここに持って来てもらった」
「ふーん」
でも寝慣れている布団はよく熟睡できた。翌1月8日は、やはり持ってきてある衣裳ケースに入っている下着に交換し、ついでにそこから替えの下着と服を旅行バッグ(これもこちらに来ていた)に詰める。いつものように学校の制服(もちろん女子制服)を着る。
§§ミュージックでは、中学生・高校生のタレントは、基本的にお仕事に行く時は自分の学校の制服を着るのがルールである。
青野マネージャーが女子寮まで迎えに来るので、彼女の運転する車で熊谷に移動する。
「今度からは女子寮に迎えに来ればいいのね?」
「いえ。今夜は詩恩姉の成人式のお祝いしてそのままこちらに泊まっただけですよ。11日からはまた男子寮にお願いします」
「あれ?そうだっけ?」
Honda-Jet
Silver(ビーナ優先機)に乗って大阪に行く。そして向こうで放送局の番組に出たり、CMの撮影に出たり、キャンペーンに出たりした。
向こうでは青野さんとツインに泊まる。仕事を始めて初期の頃は、女性である青野さんと同室でいいのかなあとか思ったが、ビーナは女性に対して不感症なので、その内、気にしなくなった。彼女が着替える時は後ろ向いているが「相変わらず純情ね」などと言われる。
1月10日は20時で解放してもらえた。上品な時間に終わったなあと思う。
でもマネージャーの青野さんは、もう少し打合せがあるらしく
「悪いけど1人で帰って」
と言われた。SCCと提携している★★情報サービス(ケイや雨宮先生などが設立したドライバー会社)の車(正確には★★情報サービスと更に提携している関西のハイヤー&運転代行会社の車)で伊丹空港に送ってもらった。
伊丹空港の離陸可能時刻ギリギリ、20:55頃にHonda-Jet
Silverは離陸。約40分の飛行で、21:40頃に熊谷の郷愁飛行場に着陸した。
SCCのドライバーさんに来ていてもらっていたので乗り込み、
「遅い時間に恐れ入りますが、用賀の男子寮まで」
と言った。
するとドライバーさんは驚いたような顔をして
「こんな夜遅く、男子寮に何か御用ですか?」
と尋ねる。
「そこに住んでいるので」
「ああ。あそこは4階は女子寮だったんでしたね」
と言って、運転手さんは運んでくれた。
性別誤解されるのは日常茶飯事なので気にしない。
「女子寮があふれてたから一時的に男子寮の一部も使ってたけど、女子寮の2号棟ができたから、そこに暫定的に住んでいた寮生たちは順次、移動させるとかも言ってましたね」
「あ、そうなんですか?」
「まだ移動の日程は聞いておられません?3月までには全員女子寮に移動になるという話でしたけど」
雅水ちゃん(直江アキラ)や徳世ちゃん(長浜夢夜)に春南ちゃん(鈴原さくら)とかは女子寮に入れるべきだよなあ、とビーナは思っていた。
ビーナは車中ではひたすら寝ていた。用賀に到着したのは23:20頃である。
「着きましたよ」
と言われ、運転手さんに御礼を言って降りる。
ところがエントランスのドアが開かない!?
あれ〜。idカードの磁気が弱くなったかな、などと思う。
(idカードはICチップを使用しており、磁気ストライプなどは無い!)
夜遅く申し訳ないと思ったが、ピンポンを鳴らす。寮母の門脇さんの
「はい」
という声が聞こえる。
「夜遅くすみません。寮生の柴田ですが、idカードが壊れたのか、エントランスが開かないのですが」
「あら、あなた女子寮に引っ越したでしょ?だからこちらには入れないわよ」
「ボクが・・・引っ越した・・・んですか?」
「だって、荷物は一昨日だったか、業者さんが来て移動してたし、もう向こうに住んでいるんだろうと思ってたのに」
「ボクは土曜から大阪で仕事してたんですが」
「じゃとにかく女子寮まで送ってあげるよ」
と言って、門脇さんは遅いのに自分の車を出してビーナを女子寮まで送ってくれた。
「聞いてびっくりしたけど、あなた、お正月の間に性転換手術を受けたんでしょ?傷は痛まない?」
「性転換手術とか受けてませんよ〜」
「あら、だったら、ちんちん切っただけ?あれって、うちのマユ(大崎忍)が言ってたけど、ヴァギナ作る手術は回復に時間かかるけど、ちんちん切るだけなら1ヶ月くらいで痛みは取れるらしいね」
なんか、自分の知らない所で、とんでもない話が進行してるようだぞとビーナは思う。
疲れてるだろうから寝てなさいと言われたので、ビーナは遠慮無く寝ていた。やがて五反野の女子寮に到着。(警備員さんの居る)門を門脇さんの顔パスで通過した後、女子寮入口の詰め所にいる警備員さんに声を掛けた。
「ああ、水森ビーナちゃんなら自分のidカードで通れるはずですよ」
と警備員さんが言うので、ビーナは半信半疑で、ゲートの傍に寄る。するとゲートは開いた。
(このゲートはタッチの必要もない。1m程度以内に近づけば開く仕様)。
「無事通れたね。じゃ、あまり無理しないでね」
と言って門脇さんは帰って行った。
ビーナは困惑しながらも、女子寮本宅のエレベータで自分のidカードをタッチし、4階のボタンを押す。4階は私邸なので、天羽亜矢子・高崎ひろか・松梨詩恩・水森ビーナの4人と、保守上の目的で副寮母の花ちゃんだけが、このボタンを押せる(物理的に女子寮内にあっても論理的には寮外なので、女子寮長のロンドは押せない)。ただ、今まで数紀はこのエレベータに乗る以前に女子寮のゲートを通れなかった(実際には警備員さんに声を掛けたら通してもらえた:セレンやクロムと同様の扱い)。しかし今日は、ゲートが開いた。
エレベータを降りて、恐る恐る玄関のピンポンを押そうとしたら、その前に玄関のドアは開いた。
「お帰り、数ちゃん。今日中に帰宅できたのね」
と天羽亜矢子は優しくビーナに言った。
そういう訳で、ビーナはこの日から、女子寮内の天羽家に住むことになったのである。
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