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■夏の日の想い出・天下の回り物(1)

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(C)Eriko Kawaguchi 2018-08-03
 
「月・花はさらなり、風のみこそ人に心はつくめれ。岩に碎けて清く流るゝ水のけしきこそ、時をもわかずめでたけれ。「沅湘日夜東に
流れ去る。愁人の為にとどまること少時もせず」といへる詩を見侍りしこそ、哀れなりしか」
と先生は本文を読み上げてから
 
「誰か分かる人?」
と言って教室を眺める。寝ている生徒がいることに気付く。
 
「天羽さん」
と名前を呼ばれて、ハッとしたように天羽飛鳥(松梨詩恩)は目を覚ました。
 
「はい、ここを訳して」
と言われて、慌てて後ろの池田由美に「どこ?」と訊いている。それで教えてもらって読みながら訳す。
 
「月・花はさらなり。月や花は言うまでもなく。えっと・・・ここの花は桜のことでしょうか?」
「うーん。ここは一般的な花ということでいいよ。ひとつ前の段では様々な花を褒めているからね」
 
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「ありがとうございます。風のみこそ人に心はつくめれ。えっと『こそ−已然形』の係助詞構文ですね。風というものは実に人の心を突くもののようだ」
「その『めれ』の基本形は?」
「『めり』です。推量の助動詞。ラ行変格活用。未然形は無くて連用めり、終止めり、連体める、已然めれ、命令も無いです」
 
「完璧完璧」
と先生が褒めているのを見て、女子制服を着ている龍虎(アクア−実は龍虎F)は「詩恩ちゃん、すげー」と憧れるように見ていた。
 

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「岩に碎けて清く流るゝ水のけしきこそ。岩に砕けて清く流れる水の様子も。時をもわかずめでたけれ。どんな時であっても、実に素晴らしい。ここも『こそ−已然形』の係り結びです」
 
「そうそう。岩に碎けて清く流るゝといったら、天羽さんの好きなのがあったね」
 
「はい。崇徳上皇の歌。『瀬を早み岩にせかるる滝川の、われても末に逢はむとぞ思ふ』です」
 
「似たような歌で京極為子の歌とか知ってる?」
「えっとえっと。『瀬を早み、あまりて越ゆる滝河の岩に砕くる水の白玉』です。崇徳院は12世紀、為子は14世紀の人なので本歌取りではないでしょうか?」
 
「うんうん。そんな気もするね。さすが『瀬を早み』専門家だね」
と先生から言われると、飛鳥は得意そうにガッツポーズをする。
 
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「沅・湘、日夜東に流れ去る。これは川の名前ですかね?」
 
「そうそう。どちらも中国の湖南省を流れる川。沅江、湘江」
「沅江も湘江も昼夜、東に流れ去る。愁人の為にとどまること
少時もせず。愁いを持つ人のために留まってくれることは、少しの時もない。あれ?これは『方丈記』の冒頭を思い起こさせますね」
 
「うんうん。これは戴叔倫という8世紀の中国の詩人の絶句を引用しているのだけど」
と言って、先生はその元ネタを板書した。
 
盧橘花開楓葉衰
出門何處望京師
沅湘日夜東流去
不爲愁人住少時
 
先生はこれを読み下した上で言った。
 
「方丈記が13世紀初頭の作品だから意識しているだろうね。方丈記の冒頭は?」
 
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「行く川の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。よどみに浮かぶうたかたは、かつ消え、かつ結びて、久しく留まりたること無し」
 
「さすがさすが」
 
「そして徒然草の方は、といへる詩を見侍りしこそ哀れなりしか、という詩を見たけども、感慨深かった」
 
「完璧だね〜」
と先生から言われて、飛鳥は本当に得意そうだった。
 
(3人でやってる)私たちより忙しいんじゃないかと思っていた飛鳥がよくよく古文の勉強をしているようなのを見て、龍虎Fは「私たちも少し古文頑張ろうよ」と他の2人の龍虎に呼びかけた。
 
龍虎が憧れるように飛鳥を見ているのに気付いた先生が龍虎に行った。
 
「田代さんは熱い視線で天羽さんを見てるね」
「だって、本当にお仕事忙しいのに凄いなあと思って。私も頑張らなきゃと思いました」
「うん。君も頑張ってね」
「同性として憧れちゃいますよ」
などと龍虎Fが言うので、教室内で忍び笑いしている子たちがいる。龍虎の親友である入野桐絵は頭を抱えていた。
 
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「そうだね。今日は田代さんも女子制服なんだね」
「はい。今日はそういう気分だったので」
と龍虎Fは開き直って答えた。
 

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2018年8月3日、青島リンナ(32)が夫・百道大輔(37)との子供、夏絵を出産した。出産のすぐ後に大輔がツイッターに赤ちゃんの写真付きのツイートをし、翌日には各マスコミにも報道されたが、この時、私はこの子を数年後に自分が育てることになるとは、思いも寄らなかった。
 

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アクアがこれまで出演した連続ドラマ・映画は(極めて多数あって本人も覚えていないスポット出演を除けば)下記である。
 
■連続ドラマ
2015春−秋『ときめき病院物語』
2015秋−16春『狙われた学園』(主演)
2016春−秋『ときめき病院物語II』
2016秋−17春『時のどこかで』(主演)
2017春−秋『ときめき病院物語III』
2017冬−18春『少年探偵団』(主演)
2018春−秋『ほのぼの奉行所物語』
 
■映画
2016夏『時のどこかで』
2017末『キャッツアイ−華麗なる賭け』
2018末『八十日間世界一周』(制作中)
 

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『少年探偵団』では、いくつか挿入歌が制作されており、それは適宜オンライン・ストアから発売されていた。
 
少年探偵団(アクア・西原・山崎・鈴本・松田・内野・今井)『団員の歌』
怪人二十面相(大林亮平)『透明怪人』
怪人二十面相(大林亮平)『UFO-宇宙怪人』
女盗賊(丸山アイ)『真夜中のお化粧』
小林芳雄(アクア)『獅子が烏帽子をかぶる時』
小林芳雄(アクア)『ゆんでゆんでと進むべし』
花崎マユミ(元原マミ)『天空飛行』
明智文代(山村星歌)『眠りにつく町』
北里ナナ(アクア)『ナナの海』
 
山村星歌の音源が出たのは「結婚による休業」に入った2015年秋以来なので、彼女のファンだった人たちが飛びつき、物凄いセールスになり、CD発売の要望も多かったのだが、星歌の事務所は「本人は休業中なので」と言ってリリースせず、オンラインのみの販売となった。
 
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元原マミはこれまでCDをリリースしたことが無かったので「音痴なのでは?」という噂もあったのだが、実はかなり歌がうまいことが分かった。
 
少年探偵団の『団員の歌』は今井葉月にとって初めて自分の歌が販売音源に入るものとなった。
 

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ここで北里ナナ名義でリリースされた『ナナの海』がアクアが小林芳雄名義で出した曲より好評で、CDでも発売して欲しいという声がかなり来た。それで§§ミュージックでは、『少年探偵団』の放送が終わった後になったが、4月下旬にリリースした。
 
北里ナナ名義で、ドラマの中で出てきたような、可愛い女の子アイドルの衣裳を着けたアクアの写真がジャケットには使用されていて、ちょっと見ると、まるでアイドル少女歌手のCDである。
 
予想通り、これがミリオンになってしまった。
 
『やはりアクア様は女の子の格好が似合う。可愛い!このまま女の子になって欲しい』
『マジで俺、アクアと結婚したい』
といういつものファンの暴走気味の反応だけで無く
 
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『ナナちゃん可愛い。アクアは好きじゃないけど、俺ナナちゃんのファンになる』
などといった感じで、これまでのファン層以外からの反応も良かった。
 
テレビ局が“北里ナナ”の歌番組への出演を打診したものの§§ミュージックは丁寧に断った。
 
この曲はそれまでダウンロードストアでも80万ダウンロードされていたので、CDの販売と合わせると200万件ほどの販売数となり、それまでのアクアの最大のヒット曲である昨年の『サンダーボルト』(220万枚)に迫る数字となった。
 
なお、CDはカップリング曲として、このCDのためにマリ&ケイが書いた『花の伝説』という、まさにアイドル歌謡という感じの曲とセットになっている。但し今年はケイがあまりにも忙しすぎたので、この曲を本当に書いたのは実はKARIONの和泉である!
 
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ドラマも好評だったし、主題歌やこういった多数の挿入歌も好評だったので『少年探偵団II』の制作も決まった。アクア・元原マミ・大林亮平といった主要キャストもそのまま出演する予定と発表された。
 

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2018年の春は、上島事件の影響で、発売中止や回収になるCDが相次ぎ、またライブが中止になったアーティストも多く、地方のイベンターで倒産寸前になった所も出た(今年はレコード会社が協力して積み上げた基金から融資をしたので多くが救済された)。
 
上島先生の曲が使えなくなった影響は、◇◇テレビの響原取締役や★★レコードの佐田副社長などを中心とするUDP(Ueshima Diversion Project)が4月中旬に活動開始して、5月くらいから何とか不足する楽曲が少しずつ供給され始めたものの、新曲の絶対数が不足する上に過去に上島先生の楽曲をたくさん出していた歌手が、歌う歌が無くて困るという事態に陥っていた。
 
それでこの年の4-5月のCD出荷統計は例年の半分ほどになってしまった。
 
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また楽曲が提供できないことから、営業成績が微妙な歌手が多数レコード会社や事務所との契約を切られた。政子が何かで関わっていたらしい原野妃登美などもその口である。
 
政子は詳しいことを言わなかったが、政子はデビュー前に原野妃登美のバックダンサーをしていたこともあるので、その関係で交流があったのだろうか??原野妃登美は1987年生れで今年31歳になる。どうも30歳以上でCD年間売上が200万円未満かつ年間観客動員2000人未満程度でレギュラー番組などを持たない歌手には“肩たたき”が行われたようだ。原野妃登美も退職金に相当する慰労金を100万円くらいもらって事実上解雇されたらしい。
 

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上島先生の楽曲が使えなくなった分の穴埋めとして使われたのはUDPが仲介して出す楽曲だけでは無かった。
 
UDPからの楽曲が提供され始めたのと同じ頃、ЮЮレコードから、島田春都という“女の子”歌手がデビューしたが、その作詞作曲者名としてクレジットされている《夢紗蒼依》は見慣れない名前だった。しかし、とても可愛い曲なので、特に10-20代のネットワーカーの間で評判になり、1ヶ月で8万枚を売る結果となる。これで彼女は今年の新人賞レースにも名乗りを上げた。
 
発売されてから1ヶ月も経って6月も中旬を過ぎてから、ぜひというマスコミ各社の要望に応じて島田春都は記者会見をした。
 
「春都さんは男の娘ではないのか?という噂が立っているのですが」
「はい、私は男の子ですけど、男の子に見えません?」
と彼女(彼?)は明るいソプラノボイスで答える。
 
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「女の子に見えます!」
 
「私、2年前の《スター発掘し隊》、三つ葉さんたちが選ばれたオーディションでステージオーディションまで行ったんですが、その時一応、私の性別については説明していたんですよね」
 
「やはりそのオーディションに出ていた方ですね?」
 
当時高校生で男子制服で通学を強いられていた春都も高校卒業するとともに完全女装生活に切り替え、睾丸は除去したらしい(ただ父親の強い要望で精子の冷凍保存はしたという)。しかしお金もないし性転換手術の予定は未定ということであった。
 
「でも性転換手術に今年から保険が適用されることになりましたよね?それなら手術を受けられるのでは?」
 
「皆さんご存知無いですか?あれってホルモン治療を受けている人は対象外なんですよ。だから事実上全員適用外です。ホルモンをやっていない人は絶対に性転換手術はしてもらえませんから」
 
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「え!?そうなっているんですか?」
 
このことは知らない人が多かったようで「それは酷い」「お役所仕事未満だ」という声もあがっていた。
 
なお、彼女の性別が明確になると、かえってCDセールスは伸びて(女性ファンが増えた)、最終的に10万枚を超えてデビュー即ゴールドディスクを達成した。
 

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彼女の性別問題で10分ほど話した後で、作曲者についての質問がある。
 
「この曲が商業的に販売する楽曲としては第一作らしいんです。その記念すべき第1号を頂きました」
と春都は答えた。
 
「まだお若い方ですか?」
「それが会ってないんですよね〜」
と春都が言うので、ЮЮレコードの担当者に質問されるが、担当者も知らないと答えた。
 
「あるミュージシャンからの紹介で契約したらしいのですが、諸事情で表立った所には出て来られないのだそうです」
 
「それは何か本職との兼ね合いとかでしょうか?」
「分かりません。事情についても聞いておりません」
 
記者たちは結構食い下がったものの、夢紗蒼依の正体については不明ということのようであった。
 
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「読み方は《むさ・あおい》でいいのでしょうか?」
「はい、それでいいです。苗字が“むさ”、名前が“あおい”です」
 
実は読み方もよく分からないのでFM局のナビゲーターたちが“むさ・あおい”、“ゆめ・さおい”、“ゆめさ・そうい”など様々な読み方をしていて混乱していたのである。しかしこの日の記者会見で“むさ・あおい”でよいことが確定した。
 
「性別は?」
「それも知りません」
 
「もしかしてその方も男の娘とか?」
「聞いていないので答えられません」
 

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