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■夏の日の想い出・天下の回り物(13)

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(C)Eriko Kawaguchi 2018-08-17
 
さてローズ+リリーのミニアルバムに入れる最後の曲は『マイ・ハッピー・デイ』である。クレジットはマリ&ケイになっているが、実際には青葉の作品で、歌詞を書いたのは千里の友人らしい。
 
なお印税・著作権使用料については、JASRACやレコード会社から入金されたらその日の内に青葉の会社に振り込むので(これは自動実行される)、そしたらそちらから本来の作者に翌日くらいに振り込むという方法を採ることになっている。
 
青葉は忙しいのにそのあたり大丈夫かな?と思って尋ねたら、青葉の会社の事務処理は結局、親友の日香理がしてくれることになったらしい。日香理は現在、相沢さんたちの旅館の東京事務所の会計も処理しているらしい。本来東京事務所の会計をすることになっていた奈々美と空帆はどちらも忙しすぎて、ほとんど事務所のサポートができず、見かねて日香理(東京事務所の通訳担当)が伝票書きなどをしているらしい。
 
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しかしこの曲は本当に私自身、自分が書いて忘れていたのでは?と思いたくなるほど、私っぽい曲であった。但し、中学高校生頃の私の書き方に沿っている。
 
当時は自分自身あまり複雑なコードを知らなかったこともあり、和音は例えば基音がCなら C, C6, C7(短調ならCm, Cm6, Cm7)に後はCsus4程度のみ使用している。sus4を使うのも終和音に行く直前限定である。私が後(Spell on You以降)に多用することになる dim, aug など、また 9, 11, 13 といった、いわゆるテンションコードは一切使われていない。しかし政子は昔の単純なコードの方が好きだと言うし、私はこの時期複雑なコードは使わない方がよいのだろうかと少し悩み始めていた。
 
また転調についても、日本では小室哲哉以降、自由転調が多くなり私も大学に入って以降はそういう転調をかなりやっていたのだが、高校時代までは基本的に平行調(C←→Am)・同名調(C←→Cm)・属調(C→G)/下属調(G→C)への転調や半音上げ(C→C#)などしかやっていない。
 
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青葉の曲には転調があるが平行調への転調(F-Dm-F)という、もっとも目立たない転調である(五線譜の調号が変化しない)。
 

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ミニアルバムの音源製作は「バラバラ」と「赤ちゃんが風邪引いた」はほぼ一発録り、3曲はリミックスだったので、実質3曲であった。
 
『ふたりの愛ランド2018』
『愛のデュエット』
『マイ・ハッピー・デイ』
 
これは8月中に録音してしまったので(最後になったのがアクアの帰国を待って制作した『愛のデュエット』)、ミニアルバムのマスター自体は9月2日までにできあがってしまった。するとまた例によって強引な製造スケジュールでこれをローズ+リリーの10周年ツアー初日の9月8日(土)に発売してしまった。(本当にプレス工場の人、ごめんなさい)
 
当日はツアー初日で札幌に入っていたので、この日の午前11時から、札幌の放送局のスタジオを借りて、発売記者会見をおこなった。この記者会見には、マリは妊娠中のため欠席させると私たちは発表しておいた。
 
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この日放送局に集まった記者は30人くらいである。地方での記者会見にしてはまあまあ集まったのではないかと私は思った。アクアの記者会見なら札幌ででも100人来るだろうが、仕方ない。
 
始まる前の記者会見場をモニターで見ると記者のテンションはあまり高くない。直前に何かで呼ばれたようで退出した記者もいた!
 
残っている記者たちも、マリが出ないと発表しているので、おそらくPVを流して質疑応答をする程度だろうと思っているだろう。
 
ところが「記者会見を始めます」と氷川さんが言ったら記者会見場の照明が落ちて、前面に張られていた幕が巻き上げられると、そこにスターキッズがスタンバイしている。近藤さんの合図で演奏が始まると、マリとケイが登場し『マイ・ハッピー・デイ』を歌い始めるので記者席にざわめきが起きる。写真を撮る記者、慌ててスマホで動画撮影する記者などもいる。
 
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ビデオカメラを持って来ていた記者が全く居なかったのである。
 
更にその後『ふたりの愛ランド2018』も演奏されると、記者席からは歓声まであがる。スターキッズも楽しそうにこの曲を演奏した。七星さんはサックスを置いてウクレレを演奏している。七星さんのウクレレ演奏は公の場ではほぼ初公開になった(実際の音源ではウクレレ音を組み込んだエレクトーンで演奏されている)。
 
物凄い歓声が上がる。
 
「マリちゃーん!」
という歓声が凄いが、マリはひとりで退場してしまい。私だけが氷川さんが座っている記者会見用の椅子の所に行って座り、また幕は降りてしまう。その幕をめくって、サックスとウクレレを演奏した七星さんが少し昂揚した表情で出てきて、私の隣に座った。
 
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記者会見は私と氷川さん・七星さんの3人で行う。
 

「そういう訳でこの2曲を含むミニアルバム『ブライダル・ウィンド』を本日発売しました」
 
と私は言ったが
 
「マリさんは妊娠中なのでお休みということじゃなかったんですか?」
という質問がある。
 
「今のは立体映像です」
 
「え〜〜〜!?」
 
「Perfumeのコンサートなどで、Perfumeが空中に登場したりしますよね。あれと同じ原理です。薄い半透明のスクリーンを置いてそこにマリの映像を投影しました。ですからマリは映像です。私は本物ですが」
 
「ではマリさんの声は音源ですか?」
「いえ。マリはリアルタイムで歌いました。実はその辺にいるのですが、今日はライブに集中するため記者会見はお休みということにしたので、姿は見せておりません」
 
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「その辺りにおられるのであれば、呼べばお返事頂けますか?」
「呼んでみて下さい」
 
数人の記者が「せーの」と音頭を取って
「マリさーん!」
と呼びかけると
「はーい!」
というマリの声が返ってきた。
 
思わず拍手が起きた。
 

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そういう訳でこの後の記者会見は、記者会見席に座る氷川・私・七星と、別室に控えているマリが記者の質問に答えていく形で進行したのである。
 
「昨日の夕方売られていたDVDとのセットを買ってPVを見たのですが、アクアさんが出演していたんですね」
 
「はい。以前この曲を出した時には、レインボウ・フルート・バンズのフェイちゃんとハイライト・セブンスターズのヒロシさんにお願いしたのですが、今回誰に頼もうかと思っていた時、マリが『アクアも色々楽器できるよ』と言ったので、ダメ元で照会してみたら『他ならぬマリさんの頼みなら』と言って出てくれたんです」
 
と私は笑顔で説明する。
 
「でしたらあの楽器演奏はマジですか?」
「マジです。本当に演奏しています」
 
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記者席がざわめいている。まさかあれが全部リアルの演奏とは思っていなかったのである。
 
「実際にCDに入っているのもアクアちゃんが演奏した音です」
「それは凄い!」
 
みんなあれは実際に演奏したのは各々の楽器の専門家と思い込んでいたであろう。
 
「アクア以外の演奏者はバックのストリングスサウンドを入れた私と鷹野さんだけですね」
 
「アクアちゃんは非常に多忙だと思うのですが、収録は何日掛けましたか?」
 
「予め私と鷹野さんが弾いたストリングの音を録っておきまして。その後は練習1日の後、収録は1発でOKになりました」
 
「ひょっとしてあれはリアルタイムで録音したんですか?」
「そうです。アクアは男の子役でも女の子役でもリアルタイムで楽器間を移動して、1発でOKになりました。ですからアクア自身はお着替えして2回演奏していますね。男の子役の時の演奏と女の子役の時の演奏の微妙なタイミングのズレだけ編集で調整しています」
 
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「それは仕方ないですね」
 
(本当は何も調整していない)
 

「アクアさんは元々あんなに色々楽器ができるんですか?」
 
「ヴァイオリンとピアノは小さい頃から習っています。鈴木のメソードは全部卒業しています。フルートは小学4年生の時から趣味でやっていたらしいです。ギターも趣味の範囲でやっていたそうですが、彼はデビューした時にハワイで録ってきたビデオでもギター演奏を披露していますね」
 
記者たちはざわめいている。
 
「サックスもやはり趣味の範囲でやっていたので、EWI(イーウィー)はそれの応用ですぐに覚えたようです。EWIは事前に楽器を渡しておいて移動時間などを利用して練習しておいてもらいました。今回初挑戦だったのがドラムスとチェロですが、これを初日1日かけての練習でものにしてしまいました」
 
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「1日で覚えるって凄いですね!」
 
「彼は俳優志望ですけど、俳優なんかやめてミュージシャンになりなよと言いたくなるくらい、音楽的な才能が高いです」
 

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結局アクア関係の質疑応答だけで10分近く使った。
 
「アクアさんのギャラを教えて下さい」
「彼の人気にふさわしい程度の額だと思いますが」
「300万円くらいですか?」
 
「額は公開しないことにしていますが、そんなに少額ではありません」
 
と私が言ったので、翌日の各新聞は1000万円か?とか2000万円か?と書いていたが、実際にはそれらの予想より上であった。
 
「ちなみに以前PVを撮った時のフェイさんとヒロシさんのギャラは?」
「非公開で」
と私は言ったのだが、後でヒロシが
「50万円だったよ〜」
とバラしていた。これでも(当時)無名に近かったタレントとしては破格のギャラだったと思う。
 
一方フェイも「楽器一つにつき5万円で10個の楽器を弾いたから5×10=50万円だったと思う」とツイッターに書き込んでいた。ところが
 
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「数えてみたら楽器は9種類のようですが」
というツッコミが入っていた。
 
ピアノ(連弾)、リコーダー、フルート、クラリネット、トロンボーン、ヴァイオリン、チェロ、ギター、ドラムス(連打)で9種類である。アクアはこのクラリネット・トロンボーンをEWIとサックスに振り替えた。
 
「あれ〜!?」
 
「もう1種類演奏したけどボツになったとか」
「あと1つ演奏したとしたら何だろう」
「トランペットとか?」
「ハーモニカは?」
「パンフルート」
「三味線」
「チター」
「バンドゥーラ」
「アクアも吹いてたサクソフォーン」
「ユーフォニウム」
「ヴィブラフォンの連弾」
 
ネットは予想大会になっていたが、その論争に気付いたヒロシが
 
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「楽器は9種類だったはず。ボツになった楽器は無いよ。あと5万は基本料ってケイさん言ってた気がする」
 
とコメントして論争は収まった。
 

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記者会見の最後に私は言った。
 
「そういう訳で今年もローズ+リリーのカウントダウンライブをやります」
 
記者席が騒然とする。メールを打っている記者が何人も居る。速報を流すのだろう。
 
「出演は?」
「私はリアルで。マリは映像+リアル声で」
 
「おぉ!!」
 
「妊娠がかなり進んでいる時期と思いますが、深夜までマリさん大丈夫ですか?」
という声があるが
 
「マリの生活時間は毎日昼1時くらいに起床して夜中3時頃に寝るというパターンですので」
と私が説明すると大きな笑い声があがる。
 
「ですから毎日10時間くらい寝る健康的な生活です」
と言うと苦笑が漏れている。
 
「日本の午後1時はフランスの朝6時、日本の夜中3時はフランスの夜8時ですから、マリはパリ時間で生活しているのかも知れません」
と私が言うと、爆笑が起きた。これは翌日の新聞の見出しにも
《マリはパリで生活中》
などといった形で使われていた!
 
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「ちなみに週数としては9ヶ月目に入った所になりますので、念のためお医者さんに付いていてもらうことにしています」
と私が言うと記者たちは頷いていた。
 
「場所は決まっていますか?」
 
「諸事情で福井県小浜市の特設会場に決まりました」
 
「例年のように温泉とのセットチケットを販売しますか?」
 
「はい。福井県といっても芦原(あわら)温泉や九頭竜(くずりゅう)温泉などにはアクセスがあまり良くないので、地元の小浜市・若狭町・美浜町・敦賀市などで収容できない分は、京都府の舞鶴市・宮津市・京丹後市などに広がる温泉群、更には兵庫県の城崎(きのさき)温泉、有馬温泉などにも宿を確保しています。それでも不足する分は琵琶湖・京都市周辺にも予備押さえをしています。近日中にチケットを発売しますが、チケットの売れ行き次第ではそちらは一部または全部をキャンセル料を支払ってキャンセルする可能性もあります」
 
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と氷川さんが説明した。
 
2万人分くらいキャンセルするかも知れないと予め言った上で押さえているのだが、もしキャンセルすると2万人分のキャンセル料+迷惑料は4000万円くらいに及ぶものと思われる。
 

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夏の日の想い出・天下の回り物(13)

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