広告:ここはグリーン・ウッド (第3巻) (白泉社文庫)
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■夏の日の想い出・東へ西へ(20)

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それで結局、アクアに翌日金曜日に学校を休んでもらって、★★レコードが指定する病院で性別検査を受けさせることになった。こういうことで学校を休ませるのは申し訳ないのだが、土日は全てもう仕事の予定が入っているのである。
 
付き添いはアクアのプロジェクトの“リーダー”であるコスモス、私、そして★★レコードから、ここまでアクアに関わっていなかった、北川さんがアクア本人と一緒に病院内を付いて回ることにした。
 
しかし付き添いが全員女性だ!
 
「僕何をすればいいんですか?」
とアクアは戸惑うように言っていたが
 
「お医者さんに龍ちゃんの身体を見せて、少し検査したりして、龍ちゃんが間違いなく男の子であることを確認したいということなんだよ」
 
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「万一僕、女の子だと言われたらどうしよう?」
「その時はいっそ性転換手術しちゃう?」
「え〜?それは嫌です」
 

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ともかくも、最初は尿と血液を採取する。紙コップをもらってトイレに入り、おしっこを取ってもらう。私たちは廊下で見ていたが、彼はちゃんと男子トイレに入っていた。それを提出したら処置室に行って、看護婦さんに採血してもらう。
 
その後、泌尿器科に行き、実際に龍虎の股間の状態を医師に診断してもらった。
 
龍虎はまた下着まで脱いでその付近をお医者さんに見せる。私たちは一応女でもあるし、カーテンのこちら側で待機している。
 
医師でもない私たちやレコード会社スタッフが、アクアの性器を目視したりするのは、セクハラ行為として問題になる可能性があるので、見るのはあくまで医師や検査技師のみというのがスタンスである。
 
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「まあ普通に男性器があるね。睾丸が小さいなあ。これサイズ測ってみよう」
という声が聞こえてくる。
 
「これは小学4年生くらい、これから第二次性徴が始まろうとするくらいの子のサイズだね」
 
「僕、小学校低学年の時に大病して、その時物凄く強い薬とかも使って髪の毛とかも全部抜けたりしたんです。それで性器の発達も遅れているみたいなんです」
と龍虎は自己申告する。
 
「どういう病気ですか?」
「****という診断名が付けられています」
 
「ごめん。聞いたことない病気だ。ちょっと待って」
と言って医師はその病気をデータベースで調べていた。
 
「これまで症例は世界でも100人以下ということみたいね」
 
「はい。物凄く珍しい病気だと言われました。でも根本的な原因は**付近にできた腫瘍で、それを小学2年生の時に手術して除去することで治癒したんですよ。でも手術だけでは済まずにかなり化学療法もしました」
 
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「なるほどねぇ。その影響で発達が遅いんだろうね。でもこれ小学2年生とかの睾丸のサイズではないから、ちゃんとその後少しずつ睾丸は発達しているんだろうね。だからこの睾丸はたぶん死んでないよ。ペニスのサイズも測っていい?」
 
「はい、どうぞ」
 
それで医師は龍虎のペニスのサイズを測っているようである。
 
「こちらは小学1年生くらいのサイズだ」
「小さいなとは思ったりします」
「男性ホルモンとか処方を勧められたことはない?」
「ホルモン的な治療はしたくないんです。自分の自然な発達に任せたいので」
「なるほど、君がそう思うのであればそれでもいいと思う。睾丸はちゃんと少しずつ大きくなってきているから、これは睾丸がある程度のサイズまで到達したら、そこから出る男性ホルモンによってペニスももっと大きくなるだろうね」
 
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と医師は言った。
 
こういう会話が全部カーテンのこちらに居る私たちに聞こえている。これを聞いて良いというのは、龍虎本人、里親の田代夫妻、親権者の長野支香の同意を得ている。
 

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「念のため、胸も見せてもらえますか?もうパンツとズボンは穿いていいですよ」
「はい」
 
それで龍虎はパンツとズボンを穿いた上で、今度は上半身裸になったようである。
 
「胸の形は普通の男の子ですね。特に膨らんだりもしていない。乳首も男の子のサイズだから、君は間違い無く男の子だよ」
と医師が言うと
 
「女の子みたいな胸だとか言われたらどうしようと思いました。少し脂肪付いてるかなあみたいな気もしたので」
などと言っている。
 
「このくらいの脂肪は男の子の胸でも付いてるよ。じゃ精子の量を調べたいので、ちょっとそちらの部屋で精液をこれに取ってきてください。」
と医師は言った。
 
「あ、えっと・・・」
 
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と龍虎がためらっているので医師が尋ねる。
 
「君、オナニーは前回いつした?」
「1週間くらい前かなあ」
 
「ああ、そのくらいの頻度なんだ?でも1週間経っていれば出せるよね。いや今朝やっちゃったので、まだ出ないと言い出す人はたまにあるんだけどね。時間かかってもいいから、焦らずにね」
 
「はい」
と言って、龍虎は医師に渡された容器を持って個室に入ったようである。
 

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龍虎は医師から渡された容器を持って個室に入ってから、どうしよう?と思った。
 
オナニーというもの自体はさすがに中学生なので知っている。しかし実際にはしたことがないのである。射精も経験無い。
 
龍虎はたぶん自分はまだ射精ができる状態まで性的に発達していないのだろうと思っていた。
 
でも射精できなかったら、なんかもっと色々検査されそう。
 
そう思って悩んでいた時、突然肩をトントンとされ、ギョッとする。
 
びっくりして振り向くと《こうちゃん》である。龍虎は首を傾げた。
 
《こうちゃん》はニヤリと笑うと、何かビニールに入った液体を龍虎が持っている容器に注いだ。
 
『それを代わりに出せばいいよ』
という《こうちゃん》の声が直接龍虎の頭の中に響いた。
 
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龍虎が頷く。
 
『じゃな』と(脳内に)言って《こうちゃん》の姿は消えた。
 
龍虎は唇に手をあてて少し考えていたものの、そのあと5分くらい心の中で数を数えてから個室を出た。液体の入った容器を医師に渡した。
 
「ご苦労さん。やはり時間掛かったね。弱いんだろうね。普段はだいたいどのくらいの時間で出る?」
 
「うーん。7-8分でしょうか」
「なるほどなるほど。まだ中学生くらいなら、そのくらい掛かっても不自然ではないよ。じゃこれ検査に回すね。次はMRI室に行って」
と医師が言った。
 

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カーテンのこちらでは、北川さんが小声でささやいた。
 
「出すまで結構時間が掛かったみたいね。私、自分の時計で見てたけど10分ちょっと掛かった」
 
「声変わりがまだ来てないことからも分かるように、たぶん性的な能力もまだ弱いから、出すのにも時間が掛かるんでしょう」
と私は言った。
 
しかしコスモスは何か考えている風であった。
 

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下着だけになってMRIの中に入れられる。
 
「ワイヤー入りのブラはしてませんか?」
と看護婦さんが尋ねていた。
「ぼくブラはしてません!」
「あら、中学生でしょ?そろそろブラした方がいいわよ」
などと言われている。
 
不必要な所ではあまり表情を変えないコスモスがさすがに苦笑している。
 

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私たちは控室の方で検査の様子を見ていた。
 
「MRIで何を調べるんだっけ?」
と北川さん。
「たぶん体内に子宮とか卵巣とかが存在しないか確認しているんですよ」
と私は答える。
 
「なるほどー」
「龍虎は毎年病気の再発に備えて徹底的な検査を受けているから、万一そんなものが存在していたら、とっくに指摘されていたはずです。もし実は女の子であったと判明したら、あの子なら、とっくに女の子になりなさいと周囲から説得されて、性器の修正手術を受けさせられて女の子として生活してますよ。そういうことになっていない以上、あの子が男の子なのは間違いないと思いますけどね」
 
と私は言った。もっとも支香などは「あの子が性転換手術受けたいと言い出した時のために手術の資金は貯めてる」などと言っていた。
 
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「まあスポーツ選手で男っぽい女子選手が性別を疑われるのと同じで、美形すぎる男性タレントは性別を疑われちゃう、というのが、今回の騒動の実態かも知れませんね」
とコスモスは言った。
 

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その後、龍虎は臨床心理技師さんから、心理的な性別のチェックをされていた。このチェックだけは、他の人が聞いていると、本人が自分の返事をバイアスさせる可能性があるのでと言われ、私たちは同席しなかった。心理技師さんとふたりだけのセッションとなった。
 
検査が終わったあと2時間ほど待った。その間にお昼御飯も食べる。龍虎は今日の検査のために昨夜9時以降絶食だったらしく
 
「お腹空いたぁ」
と言って、ハンバーグランチを食べていた。
 
やがて呼ばれて診察室に行く。私たち3人も一緒に先生の診断を聞く。(ここで聞いていいことも、田代夫妻と支香の了承を得ている)
 
「陰茎、睾丸、陰嚢、前立腺といった男性器は全て存在します。卵巣、子宮、膣、陰唇、陰核などは存在しません。完全に男性の性器形態です」
 
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と最初に医師は言った。
 
「良かったぁ」
と龍虎は本当に安心したふうである。
 
「あんたは女だからきちんと女の形にする手術受けなさいとか言われたら、どうしようかと思いました」
などと龍虎は言っている。
 
「心理的にも完全に男の子ですね。心理的な女性度は30%で、これは男の子としては普通の範囲です」
と医師。
 
「それは3割女で7割男という意味ではないのですか?」
と北川さんが質問する。
 
「女っぽい性格の男性なら女性度は80%以上あります。ほとんどの男性は60%未満で、その程度は男性の正常な範囲とみなされます」
 
「それ天然女性で検査しても、やはり同じ基準ですか?」
とコスモスが尋ねた。
 
「女性の場合は50%以上なら女性の正常範囲ですね」
「じゃ、どっちみち30%なら男性の正常値なんですね」
 
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「女性ホルモンは中学生男子の正常値を少し超えていますが、問題無い範囲。男性ホルモンは中学生男子の正常値からはかなり低いですが、小学4年生くらいの標準値ですね。実際そのくらいの年齢並みの性的発達の度合いなのだと思われます」
 
「やはり女性ホルモンが高くて男性ホルモンは低いんですね。それ女子中学生の標準値と比べたらどうなんでしょう?」
と北川さんは質問する。
 
「女性の女性ホルモン量というのは生理周期によって著しく変動します。卵胞期の女性のエストラジオールの量は、実は男性のエストラジオールの量と大差無いのですよ」
 
「そうなんですか!」
「そういう意味では、女子中学生並みの女性ホルモン量かも知れませんが、男子中学生の正常値範囲を少し超えた程度ですから、異常ではありません」
 
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「分かりました。男性ホルモンの方は?」
 
「テストステロンは結構男女で差があります。男性は女性の5〜100倍くらいのテストステロンがあります」
「そんなに差があるんですか!」
「彼のテストステロンの量は男子中学生の正常値下限の半分程度ですが、それでも女性の正常値上限の倍以上あります」
 
「それってホルモン的に中性状態ということですか?」
「実際そうだと思います。彼は第二次性徴が現れ始める少し前くらいの身体的状態なんですよ。ですからこれから少しずつ睾丸も発達して男性ホルモンも増えて、男らしい身体になっていくと思いますよ」
 
「分かりました!」
 
「精液も検査しましたが、精子がわずかに混じっていました。これも睾丸が発達してくれば、増えて行くと思います」
 
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「ああ、精子はあったんですね」
と私は確認した。
 
「小学4年生くらいならこれが普通です」
 
「要するにこの子の性的な発達は小学4年生程度ということなんですね」
 
「そうです。これは小さい頃にした病気のせいでしょうね」
 

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「性染色体はXYで間違い無いです。ですから遺伝子的にも間違い無く男性ですね」
 
「それも僕、あんたはXXだとか言われたらどうしようと思った」
と龍虎は言っている。
 
「まあ遺伝子的にXXの男性は普通に居ますし、本人が男性として精神的に発達していれば、そのまま男性として生きて行くことを私たちはお勧めしています。でも患者さんの場合は、XYですから、男性であることは疑いの余地もないですね」
 
と医師は言った。
 
今日の診断内容を医師は診断書としてまとめてくれた。それを北川さんは持ち帰る。
 

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医師との面談が終わった後、帰ろうということになるが、龍虎は
 
「すみません。トイレに行って来ます」
と言って私たちから離れた。
 
見ていると採尿の時同様、ちゃんと男子トイレに入る。その後ろ姿を見ながら私はコスモスに尋ねた。
 
「実際問題として、あの子、男子トイレと女子トイレのどちらを多く使ってます?ここだけの話」
 
するとコスモスは微笑んで言った。
 
「悪いこと唆す子がいなければだいたい男子トイレに入るみたいですよ。マリさんとか、うちの川崎ゆりことか、桜野みちるとか、悪い道に誘う子がいると女子トイレに入るみたいです」
 
「なるほどねー」
と北川さんが言っていた。
 
「でも今日1日、あの子を見ていて私は確信した」
と北川さんが言う。
 
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「あの子は男の子の心と体のまま、女の子のアドバンテージだけむさぼろうとしている」
 
私もコスモスも苦笑した。
 
 
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