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■夏の日の想い出・東へ西へ(12)

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ボス用にはライオンのマスクが調達されていた。これは今回来てくれた生徒さんの中で、いちばん演技のうまいデビッド君という人が着けて最後のアクアとの戦いを演じてくれることになった。
 
それでスタジオでの撮影が始まるのだが、ここは基本的にシナリオ後半のモンスター襲撃の所から取り始める。
 
まるで白雪姫かシンデレラのような白いドレスを着けたアクアが歩いている所にモンスターが現れ、アクアが悲鳴をあげるシーン、そして拉致されるシーンを撮影する。
 
その後、今度はコスモスがその衣装を着け、アクアは水を表す青い王子様風の衣装に着替え、シークレットシューズを履いて続きのシーンを撮影する。拉致するのも(戦闘員衣装の)デビッド君がしてくれたが、身長190cm体重90kgでアメフトをしているというデビッド君は体重34kgのアクアを楽々と抱えて走ってくれた。
 
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王子様衣装のアクアが走って駆け寄るシーンから、拉致されているコスモスをアクアが救出する場面。そのあと、多数のモンスターとアクアの戦いを撮影する。
 
美原さんは感心するような顔をしながら撮影していた。
 
アクアが1度もNGを出さないのである。傍で見ていても、アクアの演技は物凄く上手かった。この子は自分で俳優志望というだけあって、物凄く動きがいいし、きれいに物語の中の人物になりきっているのである。
 
いつも女の子らしいと言われているアクアが、ここではとてもりりしかった。
 
最後は敵のボスとの戦いになる。これは双方が剣を持ち立ち回りを演じたが、デビッド君も上手いし、アクアも上手いので、初めての手合わせというのにひじょうにいいアクションとなった。どちらも半ば演技を忘れてマジで闘っている雰囲気になる。
 
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最後はデビッドが自分の役割を思い出したかのように隙を見せ、その隙にアクアがすかさず斬り込んでいき、ライオン顔のボスは倒された。
 
そこにお姫様の衣装を着けたコスモスが駆け寄って抱き合うというところでカットとなる。
 

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結局NGが1度も出ないまま、シナリオの最後まで行ってしまったのだが、念のため再度同じものを撮影しておいた。更にアクアとコスモスが衣装を交換して、拉致されているアクアをコスモスが救出するシーン、ボスを倒したコスモスにお姫様衣装のアクアが駆け寄って抱き合うシーンも撮った。
 
「抱き合った後キスするというのは?」
「それはファンの苦情が来るからやめましょう」
 
スタジオでの撮影を1時間ちょっとやった後で、街に出た。時間の進行が矛盾しないようにするため、まずは白いお姫様風の衣装のアクアが歩いているシーン、それから青い王子様の衣装のアクアが歩いているシーンを街中とビーチで撮影した。その後、お姫様の衣装のアクアがモンスターに襲われ、拉致されるシーンを街外れの少し人通りの少ない場所で一発勝負で撮影した。
 
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ここから先はスタジオで撮影した映像をつなぎ合わせる。
 

俳優学校の人たちに「Thank you so much」とお礼を言って、ナカムラさんがギャラをその場で渡す。中を見て、笑顔なので、思っていたよりも良かったということだろう。むろんライオン顔のボス役デビッド君にはひときわ多いギャラを払った。
 
ここまでやったところでもう17時である。
 
この後は、アクアに様々な衣装を着せて街を歩かせ、その様子を高感度撮影した。
 
昨日のスティル写真でも着せたアロハからビジネススーツ、野球のユニフォーム、サッカーのユニフォーム、バスケットのユニフォーム、パイロット風の制服、海兵隊風の衣装、水兵さん風の衣装、アメリカの男子中高生風の制服、更に侍風の着流しスタイル。その合間に美原さんの趣味で、ちゃっかりアメリカの女子中高生風の制服、チアリーダーの衣装、西洋のお姫様風の衣装、日本のお姫様風の衣装、と着せる。うまい具合にハワイというのは日本・アメリカ・ポリネシアの文化がミックスされているので、結構色々な衣装が手に入ったのである。
 
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また美原さんは、アクアに様々な楽器を持たせて、それを演奏しているシーンも撮影していた。
 
「あんたギター結構うまいじゃん」
「あんたピアノうまいね〜」
「あんたちゃんとサックスの音出せるんだ!?」
 
と美原さんは感心していた。このあたりはやはりギターの名手だった父親譲りの才能という面もあるのだろう。
 
「あんたひとりでバンドができる」
と美原さんが言うが
「バンドに憧れたこともあったんですけどね〜。でも僕はやはり俳優がしたいなと思って」
とアクアは言っていた。
 
「美原さん、これ実際の何かの曲を演奏させた方がいいかも」
とコスモスが言い、美原さんも同意して、即使っても問題ない曲ということでローズ+リリーの『恋人たちの海』をギターで演奏させた。アクアはこの曲を3回目でほぼノーミスで演奏することができた。
 
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「あんた、まじでギタリストになれる」
と美原さんが言うと、アクアは嬉しそうにしていた。やはり父親の担当楽器で褒められたのが嬉しかったのか。
 
富永さんが小道具用に用意していた水色のフルートを持って海兵隊風の衣装で演奏している所は凄く美しいと思ったが、ふだん余計な感情は見せないコスモスまで、大きく頷いていた。
 
「ブルードレス(海兵隊の制服のこと)ついでに白いドレスも着てみようか」
「分かりました」
「だいぶ素直に女の子の服を着るようになったな」
「開き直りました」
「よしよし」
 
しかしこの「横笛を吹く少女」の図も物凄く美しかった。
 
この日も撮影が終わったのは、22時くらいであった。みなお腹が空くので、ナカムラさんが買い出しに行ってくれて、ハンバーガーやサンドイッチなどをつまみながら撮影は続けられた。
 
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これで一応作業は完了となったので、ホテルに戻り、今回の遠征メンバー9人(桜井さんと美原さんの助手を含む)で一緒に遅い夕食(ほぼ夜食)を取った。
 
「ライオンボスとの戦いの所を撮影していて、私、ふとバレエの1シーンでも見ているような気がした」
と美原さんが言ったが
 
「実はあれ『くるみ割り人形』の『くるみ割り人形とねずみの王様の戦い』の部分を思い出しながらやったんですよ」
と龍虎は答えた。
 
「バレエやってたんだ?」
「小学2年生の時から6年生まで習ってました」
 
「じゃチュチュとか着けて踊ってたの?」
と政子が訊くが
 
「僕は男の子だから、チュチュは着けませんよぉ」
と龍虎は言う。
 
「それ、くるみ割り人形か、ねずみの王様かやったの?」
 
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「ねずみの王様をしました。くるみ割り人形は、中学生の先輩だったんです。あんたも中学生まで続けたら、くるみ割り人形の役をしてもらうよ、と言われてたけど、その前にオーディションで優勝したから、バレエ教室は辞めたんですよね」
 
「なるほどー」
 
「アクアなら、女の子役とかでも踊れそうなのに」
と政子は言っている。
 
「ケイもバレエやってたよね?」
と政子は私に振る。
 
「やってた訳じゃ無いけど、何度かピンチヒッターで舞台に立った」
と私は答える。
 
「ピンチヒッターで立てるということは習ってた時期もあるんだ?」
と美原さんから訊かれるが
「見学してただけです」
と私。
 
「ああ。見学してるだけでできる子って時々いるんだよ」
と桜井さんが言っている。
 
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「ケイちゃん、何の役やったの?」
「トロイメライ。これはそこのバレエ教室のオリジナルの振り付け。あとは『眠りの森の美女』のダイヤモンドの精とフロリーナ姫、それから『くるみ割り人形』のチョコレートの精」
 
「いろいろやってるな」
とコスモスが言う。
 
「ああ、やはりケイちゃんは女の子の役だったんだ?」
と美原さん。
 
「そのあたりの経緯も詳しく知りたいんですけどね〜、縛り上げて追及してもなかなか口を割らない」
と政子。
 
「ちょっとちょっと中学生の前で縛るとか言っちゃだめ」
 
龍虎は首をひねっている。
 

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「でもアクアちゃん、ほんとに女の子役はバレエでしたことないの?」
 
「あ、えっと・・・コール・ド(群舞)でなら、何度か女の子衣装で出たことありますけど・・・」
 
「ああ。やはり」
「頭数をそろえないといけない場面では僕以外にも男の子でチュチュつけてコール・ドに入っていた子いましたよ」
 
「やはりチュチュつけたんだ?」
「でも小学3年生の時ですよ〜」
 
「アクアのチュチュ姿も撮影しておきたかったな」
などと政子は言っている。
 
「何なら今から撮影しようか?チュチュくらい、すぐ調達できると思うけど」
と桜井さん。
 
「勘弁してください」
と龍虎。
 

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すると、その時、唐突に政子が言い出した。
 
「チュチュもいいけど、振袖もいいよ」
 
「おぉ!」
 
「それはいいかも」
と美原さんまで言い出す。
 
「ちょっと待って下さい」
 
「ね、ね、こういうのどう?」
と美原さんが言う。
 
「ビデオの冒頭、振袖を着たアクアちゃんが歩いている。でも女の子の悲鳴を聞いたら、振袖を脱いで、その下には王子様の衣装を着けてて、馬に乗って女の子の所に駆けつける」
 
「それいいかも。女の子かと思ったけど、実は男の子だったという演出になる」
とコスモスも言う。
 
「ぼく乗馬の経験は無いです!」
 
「おとなしい馬を使えば、乗るだけなら誰でも乗れると思う」
と桜井さんが言う。
 
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「よし。そのシーン撮影しよう」
「いつですか?」
「今から」
 
「え〜〜〜!?」
 
「アクアちゃん女の子サイズだから、アクアちゃんに合う振袖はハワイでも即入手できると思うけど、誰か着付師を手配しないといけないかな?」
と富永さん。
 
「ああ。着付けなら、ケイができますよ。ケイは民謡の家元の孫娘なんですよ」
と政子。
 
「それは凄い!」
 
「家元じゃないよ。派の代表だよ」
「似たようなもんじゃん」
「それ部長と社長くらいに違うから」
 
「でも着付けできる人いるなら問題無いね」
 
それで富永さんはまたナカムラさんに連絡して、振袖と馬の手配をしていた。しかしナカムラさんも24時間呼び出されている感じで、ご苦労様である。
 
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馬については、牧場側が朝にならないと無理と言ってきた。
 
富永さんと私とで協議して、結局滞在を1日延ばすことにした。
 
それで翌日早朝、タクシーに乗って牧場に行った。
 
青い王子様の衣装を着たアクアが馬に乗っているシーンを撮る。またその牧場の小学生の娘さんがうまい具合にまだ身長160cmくらいだったので彼女に王子の衣装をつけてもらって、馬に乗って駆けるシーンを撮影させてもらった。
 
また、馬に王子様の衣装を着けたコスモスとお姫様の衣装を着けたアクアがふたり乗りしているシーンも撮影した。
 
牧場での撮影を1時間ほどで終了し、またスタジオに行く。
 
ここでアクアに王子の衣装を着けさせた上で、その上に(長襦袢などは使用せず)直接振袖を私が着付けてあげた。
 
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「可愛い〜」
「アクアちゃん、振袖も凄く似合ってる」
 
この振袖は青い地に古典的な花鳥風月が染められたものである。テレビ局の撮影用衣装を借りてきたということだったが、本格的な型押しで作られた東京友禅である。
 
アクアのイメージカラーということで青系統の物を探してもらったのだが、その青い振袖を着た時に龍虎は何か懐かしいものでも見るような顔をしていた。
 

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その振袖で歩いているシーンから撮り始める。
 
この振袖で歩くシーンは念のため、スタジオと実際の街でと、両方撮影しておいた。そしてスタジオで「変身!」のシーンを撮る。
 
アクアが歩いている所で、コスモスが「きゃー!」と高い声をあげる。するとアクアはさっと、そちらを見て、走り出す。走りながら帯を解く。そして着物も脱いでしまうと、下には王子様の衣装である。ここから先はさきほど牧場で撮った乗馬シーンにつなげる。
 
しかし演技の上手いアクアも、このシーンはさすがに1発ではうまく行かなかった。
 
「ちょっともたもたしてしまったね」
 
「あの帯はもっと簡単にははずれないんだっけ?」
「いっそ『あ〜れ〜』をする?」
「あ、それ採用」
 
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それで再度振袖を着付けした後、政子が「やってみたかった」と言って帯の端を持ち、アクアが身体を回転させながら、帯を解く演技をした。その後、走りながら着物を脱ぐ、
 
「今回割とうまく行った。もう一度撮ろう」
 
ということで、結局全部で5回もこのシーンを撮影して、今回のビデオクリップ撮影の作業は一通り終了した。
 
 
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■夏の日の想い出・東へ西へ(12)

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