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■夏の日の想い出・東へ西へ(8)

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4時すぎ、事故現場のひとつ手前のPAで再度休憩する。全員確実にトイレに行っておく。4:30に出発する。控えめの速度で走り4:48頃長い直線が続いたあと急カーブが連続する場所の非常駐車帯の先頭付近にポルシェは停車した。あとの2台もその後に停車する。
 
停車する1分ほど前、上島先生が「このちょっと先だよ」と言うのでポルシェはハザードを焚いた。それで後続の車もそろそろであることを認識した。
 
「長時間停められないからみんな急いで」
と言って全員降りる。龍虎が持って来た花束を置く。
 
「その先にある急カーブの所が現場なんだよ」
と上島先生は言った。龍虎が手を合わせている。
 
上島先生は時計を見ていた。
 
「4時51分」
という声に全員合掌して黙祷を捧げた。
 
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1分間の黙祷の後、花束も回収し、急いで車に戻り出発する。
 
3台の車は事故現場からほんの1分も走ると、次のPAに入った。
 
駐車場に車を駐め、PAの端まで歩いて行く。再度事故現場の方を向き、千里の《般若心経》に合わせて合掌した。
 
みんなが目を開けた時、やっと天文薄明が始まった薄暗い空気の中、私は何かが宙を舞っているのを見る。
 
「これ虫か何かですか?」
と龍虎が訊く。
 
「雪虫だよ」
と支香が教える。
 
「これが舞うと雪になるんだ」
と支香は補足説明する。
 
「これが雪虫だったのか」
と言って政子はぼーっとした感じでその虫たちの舞を見ている。
 
「事故のあった日は天気はどうだったんですか?」
と千里が上島先生に訊いた。
 
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「僕たちが駆けつけた時は、きれいな快晴だったよ」
「へー」
「でも明け方まで雪が降っていたらしい。だから、高岡はその雪道の中、制御に失敗したんだよ」
 
「タイヤはスタッドレスですか?」
と私は質問した。
 
「スタッドレスだった。だけど、あいつ雪道の運転って必ずしも多くしてないと思う。そもそもそんなに雪の降らない地域で生まれ育っているし、東京に出てきて大学に入った後で免許を取っている」
と上島先生は言う。
 
「スタッドレス履いてても、雪道の運転って独特の技量が必要だから」
と支香は言った。彼女は仙台生まれだ。
 
私は北海道に行ったゆみのことが少し心配になった。すると私の心を読んだかのように千里が言った。
 
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「私、バスケ関係で、知り合いが北海道中にいるから。ゆみちゃんが行っている地域の知人に随時サポートのお願いをしているから大丈夫だよ」
 
「だったら大丈夫かな」
 
「車の居ない広い駐車場でわざとスリップさせて体勢を立て直す練習とかもさせたと言っていた。スリップって実際に経験してないと実際起きた時に対処できないから」
 
「そこまでしてたら安心だね」
 
「あとマジで雪が降っている日に山越えの道とかを通る時は運転を代わってもらうことにしているし」
 
「そこまでしてくれたら、凄く安心だ!」
 

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「事故の直前、私の携帯に姉からメールが入っていたんです。眠くなってきたから次のPAでHして寝るねって。タイムスタンプが4:50でした」
と支香は言った。
 
「あと1分、たぶん彼の車の速度なら30秒もすればここにたどり着けたんだろうなあ」
と上島先生。
 
「いや、事故って自宅とか休憩場所まであとちょっとという時にいちばん発生しやすいんですよ」
と田代父が言う。
 

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ここには休憩できる施設が(夜間は)無いので、全員いったん車に戻り更に10分ほど走ってから、次のSAで停めて休憩する。
 
「1月に公式慰霊会する時は、もうこのSAでいいと思わない?」
と上島先生が支香に尋ねる。
 
「うん。1月はうちの母ちゃんも来るし、ワンティスのメンバーの中にも色々爆弾抱えている人もいるから、設備の整っているここでやった方がいいと思う」
と支香も答える。
 
「まあ龍虎さえ良ければ」
 
「僕はみなさんが慰霊してくださりやすい場所でしてもらえるだけで、十二分ありがたいです」
と黒いワンピース姿の龍虎は、しんみりとした表情で答えた。
 

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施設内に入り、スナックコーナーで多くの人が飲み物や軽食を取っている中、政子はラーメンの大盛りなど頼んでいる。すると、千里と同じ 40 minutes のメンバー若生暢子がそれに付き合い、暢子が千里たちに
 
「サン、レン、リバ、お前たちもこのくらい食え」
などと言うので
 
「じゃ付き合おうか」
と言って、結局5人で大盛りラーメンを食べていた。政子以外の4人は現役バスケ選手なので、結構食べるようである。
 
「凄いね!君たち!」
と上島先生が感心していた。
 
「サンはしばしば小食を装っているが、実際にはかなり食べる」
 
などと暢子は言っている。千里も笑っている。
 
「まあ彼氏の前ではサラダだけ食べて、後で夜泣きそばを食べる程度は普通の女の子でもやること」
とアルトさんが解説(?)している。
 
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「うちのタレントさんはだいたいそういうパターンですよね」
とアルトの後輩になるコスモスも言っている。
 
「そうそう。社長の奥さんが『あんたたちしっかり食べてないとアイドルなんてできないからね』とよく言ってた。基本的にうちは食事を抜くの禁止だし」
とアルトさん。
 
アルトはコスモスやアクア(龍虎)の所属する事務所§§プロの大先輩でもある(現在は所属アーティスト一覧から名前が外れているものの、過去に出した曲の印税は引き続きそちら経由で受け取っている)。
 
「時々しっかり食べきれない子が短期間で辞めてる」
とコスモスは言っている。
 
「ああ。(川崎)ゆりこちゃんも、(桜野)みちるちゃんもかなり食べるでしょ?」
とアルト。
 
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「ゆりこはラーメン3杯完食したことあります。まあテレビの撮影で丸1日まともに食べられなかった後ですけどね」
 
「それはいい話を聞いた。今度焼肉にでも誘おう」
と政子は言っている。
 
「(明智)ヒバリは全然食べられない子だったんですよ」
と言ってコスモスの顔が曇る。
 
「ここだけの話、あの子、今どこにいるの?スイスとも聞いたけど」
とアルトが小声で言うが、コスモスは
 
「日本国内ですよ」
とだけ言って笑顔になった。それでアルトもそれ以上は追及しなかった。
 
私は今回の慰霊会でずっとコスモスを見ていて、この子って、ちゃらちゃらしているみたいで、実際にはかなりしっかりした子だぞと思った。
 

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千里は上島先生の勧めで食事の後仮眠していた。
 
結局ここで2時間ほど休憩した後、帰ることにする。
 
このSA内にある給油所で全車満タン給油する。ガソリン代は上島先生がまとめて払っていた。今回の(内輪の)慰霊会の費用は上島先生・私・千里・紅川社長の4人で出し合うことにしているので後日精算する。
 
次のICで中央道をいったん降りて、すぐに今度は上り線に乗り直し、東京方面に向かう。途中のPAでトイレと運転交代のため休憩し、お昼前には八王子ICを降りて、市内のレストランで軽食を取った。
 
実は高岡さんが使っていたのと同じポルシェを使って《安全に往復してくる》というのが、今回の慰霊の旅のポイントでもあったのである。霊能者などがいうところの「修正」という作業である。
 
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「おうちに帰るまでが遠足だよね?」
と政子が言ったが、実はまさにそれなのである。
 
このレストランで解散することにする。
 
鉄道で帰る人が多いので、八王子駅に行き、ここで大半の人が降りた。政子はコスモス・アルトと一緒に八王子近くに美味しいランチの出るお店があるとかでそれを食べに行くという話で、タクシーに乗って移動していた。田代夫妻と志水さんは電車で各々の家に帰還した。支香は午後から仕事があるらしく、やはり電車で都心に向かった。マジェスタの給油と返却は、川南・夏恋・暢子の3人にお願いした。
 

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私と上島先生、千里と龍虎の《ポルシェ組》が、そのままポルシェ996に乗って星原相談役のご自宅に向かった。ご自宅近くのGSで満タン給油してから星原邸に入る。
 
鈴木片子さんは不在であったが、鈴木さんの娘・康恵さんがいてくれて対応してくれた。現在都内の大学に通っているということである。
 
「ごきょうだいは?」
「私が先頭で女3人なんですよ」
「へー」
「実は名前がですね。こうなっているんです」
とメモ用紙に書いてみせてくれる。
 
《康恵・秀美・光奈》
 
私は一瞬考えたのだが、私より先に龍虎が発言した。
 
「もしかして徳川三代将軍ですか?」
 
「そうなの。家康・秀忠・家光。もうひとり生まれたら次は家綱から取って綱代か何かになる予定だったらしい」
 
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「《つなよ》は《ツナマヨ》とからかわれそうだ」
と上島先生。
「私たちもそう言っている!」
 
「そもそも男の子だったらどうしたんですか?」
「その時は取り敢えず性転換させるということで」
「強制的に女の子にしちゃうんですか!?」
「女の子には不要なものをちょっと手術して取っちゃえばいいんですよ」
「なるほどねー」
 
上島先生は笑っているが、龍虎は微妙に嫌そうな顔をしていた。
 
お茶まで頂いて、一息ついたところでタクシーでも呼んで帰ろうとしていた所に星原取締役が起きて来られた。
 
「おはようございます」
「おはよう。お疲れさんでした」
「いい慰霊の旅が出来ました。ありがとうございました」
 
「そうそう。昨夜君たちが出た後でふと思ったんだけどね」
「はい」
「この車を預かってから10年経ったし、僕自身がそろそろお迎えが来そうな気もしてね」
と星原さんがいうので
「星原さん、まだ40年行けますよ」
と上島先生が言う。
 
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「まあ自分の寿命はだいたい分かってるよ。それで、自分が死んでしまうとこの車も相続税だの何だので大変になりそうでさ」
「確かに税金高いですね」
 
「だから相続税を払うよりは、僕が生きている内にこの車を買わない?」
と星原さんは言った。
 
「私はそれで構いませんが」
と上島先生は一瞬考えてから言ったのだが
 
「いや、龍虎君に買ってもらえないかと思ってね」
と星原さん。
 
「なるほどー!その方がいいです」
と上島先生は笑顔になって言った。
 
「済みません。おいくらなのでしょう?」
と龍虎が驚いて訊く。
 
「君の言い値で売るよ」
 
それで龍虎は上島先生に訊く。
「上島先生、これどのくらい値段するものなんですか?」
 
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「確かあの車は定価は1260万円くらいだったと思う。中古品ならそこから価値が下がって、10年経った今ではたぶん600万円くらいで手に入る個体もあるとは思うんだけど、星原さんがきちんとメンテしているし、使用頻度も最初の3年程度を除けば年に30-40日程度でほとんど傷んでない。走行距離もまだ30000km程度。更にはワンティス絡みの物件だから、むしろ価値があがっている。もしオークションに出せば5000万円出す人もいると思う」
 
「5000万って、僕、そんなお金無いですよぉ!」
 
すると星原さんが言う。
「一般の人に売るなら5000万円もあり得るけど、元々のオーナーの娘に売るのだから、1000万円という線でどうよ?」
 
やはり“娘”と言われるんだ!?
 
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「むしろそれ未満では申し訳ないですね」
と上島先生。
 
「1000万円でも・・・」
と龍虎は困っているようだが
 
「僕が龍虎にお金を貸して、それで龍虎が買うというのでは?」
と上島先生は提案する。
 
「それならいいです。でも1000万円でも返せるかなあ」
 
すると千里が言った。
「たぶん最初に出すCDの印税で、そのくらい楽に払える」
 
「ほんとに?」
 
「1500円のCDが100万枚出荷されたら、歌手は1350万円の印税を手にする」
「100万枚って無茶ですー!」
「まあそこから税金引かれるけどね」
 
「いや、一度に返せなくても龍虎なら間違い無く、そのくらい1〜2年で返せると私も思うよ」
と私は龍虎に言った。
 
「じゃ、その件は上島君と話を進めればいいかな?」
「では、進めましょう」
 
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ということで、このポルシェは龍虎が買うことが決まった。
 
「でも買っても、私運転免許が無い」
「それは免許持っているドライバーを雇えばいいんだよ」
 
「実際、龍虎が18歳になって免許をとっても、事務所は絶対に龍虎に運転などはさせないだろうね」
 
「まあ事務所は心配するよね」
 
「恋愛禁止・運転禁止はアイドルなら普通の契約条項」
 
 
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■夏の日の想い出・東へ西へ(8)

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