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■夏の日の想い出・東へ西へ(16)

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私や龍虎たち、そして桜井さんは11日(火)に帰国したのだが、美原さんは13日(木)に帰国した。この週は毎日放課後に、そして週末は丸一日使ってアクアの写真集およびビデオクリップのための追加の撮影が都内で行われた。それと並行して、私とコスモス、富永さんの3人が加わって、桜井さんが撮影した写真の中から、どれを写真集に収録するか、そしてどういう配列にするかについて、打ち合わせを続けた。
 
またこの間、私は政子およびスターキッズと一緒に『雪月花』の制作を進めていた。こちらはもう最後の1曲、AYAと一緒に歌う予定の『Step by Step』を残すのみとなった。またKARIONのアルバム『四・十二・二十四』も制作は佳境に入りつつあった。
 
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アクアのプロデューサーが誰なのか不明確でどうも迷走気味であることを憂慮した上島先生、紅川社長、町添部長の三者はお互い忙しい中、上島先生のご自宅に深夜集まり、話し合った結果、ここまでアクアに関する作業に結構関わり、アクアのことを充分よく理解していると思われる、秋風コスモスを暫定的なプロジェクトリーダーにすることを決めた。
 
紅川社長から言われたコスモスは
「え〜〜〜!?」
 
と超絶驚いていたが、取り敢えず§§プロの“デスク”田所さんとふたりでアクアのスケジュール管理をすることにし、アクアを動かす場合は、必ず田所かコスモスにひとこと言うようにし、田所とコスモスは情報を常に共有するということにして、当面の混乱を防ぐことにした。
 
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「しかし、僕はてっきりアクアちゃんって女の子と思い込んでいた。御免御免」
と町添さんは謝っていた。
 
「女性ホルモンとか飲んでるんだっけ?」
「飲んでません!」
「去勢はしてるの?」
「してませんし、する予定もありません」
「でも将来女の子になりたいんだよね?」
「なりたくないです。僕は普通の男の子です」
 
こういう会話はもう10回くらい見たなと私は思っていた。
 

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XANFUSのドームツアーは11月14日の北海ドームを皮切りに、15日博多ドーム、16日愛知ドーム、21日埼玉ドーム、22日京阪ドーム、23,24日関東ドームと続いたが、かろうじて1万6千枚売れた最終日の関東ドーム以外は全て2000人程度しか入っておらず、それもほとんどがスタンド席なので、光帆は全く人の居ないアリーナ席を前にして、カラオケの伴奏で歌を歌うという、悲惨な歌唱を強いられた。
 
もう泣いて逃げ出したい気分だったが、スタンドで立ち上がって拍手を送ってくれている、わずかな観客のために何とか気持ちを振るい立たせて歌った。ホテルに帰ってから電話で織絵と話すひとときが、何とか心を支えていた。
 
そんな中、22日にはXANFUSに震来・離花という2人の女の子を追加してXANFUSは3人になるという発表があったものの、その2人のお披露目はドームでは行われなかった。
 
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社員が全員で社長に「それは物凄い反発が来る」と言って反対したので、強引な悠木社長も折れたのである。
 
実際、光帆は新メンバーのことについては、22-24日のライブで一言も言及しなかった。
 

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そして24日の関東ドームのライブが終わった翌日11月25日、XANFUSをプロデュースしていた、ガラクン・アルヒデドが違法薬物の所持で逮捕されたというニュースが大きく報じられた。
 
1ヶ月ほど前に違法ドラッグを扱っていた売人が逮捕され、その販売リストを調べている内、その中にあったフリーのメールアドレスが、ガラクンが使用しているものと判明し、そこから捜査線上に浮上した。警察が任意の家宅捜査を行った所、俗称セブンスヘブン(7th Heaven)と呼ばれる2C-T-7を主成分とするフェネチルアミン系の粉末(いわゆるラブ・ドラッグの一種)と、デイトリッパーと呼ばれるα-メチルトリプタミン(AMT)を主成分とするドリンク(幻覚作用がある)が発見された。
 
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本人は使用を否定し、発見された薬物も「自分は知らない。多分誰かが持ち込んだ物だ」と主張したものの、彼、および同居している内縁の妻の元歌手のふたりとも尿検査が陽性であったため、そろって逮捕された。裁判所は2人に10日間の勾留を認めた。
 
★★レコードはガラクン・アルヒデトが作詞作曲して発売中であったXANFUSの『DANCE HEAVEN』の回収、および発売予定であった『あの雲の向こう』の発売延期を決定した。『あの雲の向こう』は解雇された音羽が首を宣告されたその場で歌唱させられて収録した録音に光帆が重ねて歌唱したものをベースにしていて、発売されていれば、音羽と光帆のXANFUSの最後の作品になる予定であった。
 
実際には★★レコードは逮捕が報道される前日に全て回収してしまい、報道後に回収すると発表した。多くのCDショップは売れてないから回収するのだろうと思ったらしく、報道が出て驚いたと多くの関係者が語った。結果的にこの作品はオークションサイトなどにもほとんど出回らなかった。
 
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11月14日(金)。桃川の運転するカイエンで旭川に戻ったゆみは、その日は旭川市内に泊まり、翌日、醍醐春海の“義妹”という、細川理歌と落ち合った。
 
「こんにちは。お世話になります」
「北海道にようこそ」
 
彼女にはこの後、礼文島までの往復に同行してもらうことになっているのである。
 
「醍醐先生って、妹さんが何人もおられるんですね?」
とゆみはカイエンを運転しながら言う。
 
旭川から稚内までは4時間ほど掛かるので、比較的道の良い前半・音威子府村までをゆみ、後半を理歌が運転しようということになった。
 
「実の妹は玲羅ちゃんだけですね。青葉ちゃんは、震災で両親を亡くして途方に暮れていたのを千里姉さんが友だちの桃香さんと一緒に保護して、お姉さん代わりになってあげたんですよ」
 
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「ええ。なんか話だけは聞きました。大変だったみたいですね」
 
「そして私と妹の美姫は千里姉さんの夫の貴司の妹です」
「あれ?醍醐先生、結婚しておられたんですか」
 
「法的にはうちの貴司兄は別の女性と結婚しています。でも私も妹も母もその結婚を認めていません」
 
「うーん・・・・」
 
「貴司兄はそれ以前に千里姉と結婚式を挙げているんですよ。当時は年齢が足りなくて婚姻届を出せなかったんですが」
 
「式を挙げたんだ!」
 
「私たちはそちらの式の方が有効と思っています。ですから、私たちは千里姉さんの妹です」
 
「うーん・・・。そのお兄さん自身の態度は?」
 
「要するに二股ですね。兄は2012年の1月に千里さんに、7月に安倍子さんにダイヤのエンゲージリングを贈っています」
 
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「え〜〜!?そんなのありですか?」
 
「たぶん兄としては、法的な奥さん・阿倍子さんの方は大阪の妻、千里姉さんは東京の妻という感覚なのではという気がします」
 
「えっと、理歌さんのお兄さんなのにこういうこと言っては悪いけど」
と、ゆみは前提を置いた上で
 
「悪い奴っちゃ」
と言った。
 
「同感です。完全に詐欺ですよね」
 

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ゆみは考えていた。自分自身の育った家庭が複雑だと思っていた。しかし昨日桃川さんから聞いた、あの家庭事情はあまりにも複雑すぎる。昨日聞いたばかりなのに、それを他人に説明する自信が無い。考えているだけで混乱する。
 
そして醍醐先生の事情もまた複雑そうだ。
 
世の中には、本当に複雑な家庭ってあるもんなんだなあ。
 
そう、ゆみは思っていた。
 

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「今、阿倍子さんは妊娠しているんですけどね」
「あ、はい」
 
「阿倍子さんは実は不妊症なんですよ」
「え?」
「それで前の夫にも離婚されたらしくて」
「へー。でも妊娠って」
 
「2年間ひたすら不妊治療したあげく、結局卵子を借りたんです」
「あぁ・・・」
 
「その卵子を貸したのが、どうも千里姉さんのようで」
 
「え〜〜〜!?」
 
「貴司兄も、千里姉さんも言葉を濁すんですけど、どうも言葉の端々から想像すると、そういうことみたいで」
 
「それ、どうなるんですか?」
 
「あの子が生まれると、たぶんこの三角関係が完全に安定してしまいそうで。その子は安倍子さんが産む以上、日本の法律では安倍子さんの息子と戸籍には記載されます。でも遺伝子上は千里姉さんの息子なんですよ」
 
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「複雑!」
 
「それと千里姉さん、自分は元男の子だとか言っていたけど、卵子を提供できたということはそれは嘘で実は最初から女の子だったことになります」
「それか半陰陽だったのか」
「その可能性もあります。千里姉さんは自分が男の子だったのは間違い無いと言うものの、性転換手術したと称する時期もなんか怪しいし。兄は中学2年の千里姉さんのヌードを見ているらしいから、それ以前に手術したのは確実と思っていたのですけど。実は最初から性別をごまかしていた可能性が高い気がするんですよね。だからMTFと称していて実はFTXだったのかもという気もするんですよ」
 
「うーん・・・」
 
醍醐先生の性別問題を置いておいても、昨日桃川さんから聞いた話と少し似てるかも知れない気がした。しかし、しずかちゃんの場合は恋愛関係とは無関係に卵子と精子の貸し借りが行われている。こちらの場合は、いわば“ふたりの妻”共同の子供が生まれようとしているのだ。
 
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「あ、でも息子ってもう性別が分かっているんですね」
 
「お医者さんはもう少し週数が進まないと性別までは分からないと言っています。でも千里姉さんは男の子だよと言っています。貴司兄と話し合って、もう名前も決めているとかで」
 
「名前は、貴司さんと千里さんで決めちゃったんですか?」
「そうみたいです」
 
「やはりこの三角関係は私の理解を超えているかも知れない」
 
「いや、私たちもよく分からないことが多いんですよ。ふたりはその息子に既に会っていると言うし」
 
「え〜〜〜!?」
「何か複雑な事情があるみたいだけど、自分たちでも全ては説明できないと言ってました」
 
「う・・・・ん」
 

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ゆみと理歌は15日(土)に旭川から稚内に移動し、取り敢えずその日は稚内市内に泊まる。翌日は稚内北端の野寒布(のしゃっぷ)岬、その東側にある北海道最北端の宗谷岬などを見た。そして17日(月)は朝からフェリーに乗り利尻島に行き、午後には礼文島に行って、礼文島に住む、理歌の伯父の家に泊めてもらった。
 
稚内6:50-8:40利尻16:10-16:50礼文
 
フェリーの中で話していて
 
「以前はうちの祖母があの家に住んでいたんですけどね」
と理歌が言うので、お祖母ちゃんは亡くなったのかな、とゆみは思ったのだが、
 
「ここではブロードバンドが無くてゲームができないというので、今は留萌の私の父の家に移っているんですよ」
 
と理歌が言うのでびっくりした。
 
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「ゲームするために引っ越したんですか!?」
「完璧にはまってますね。朝から晩まで、ひたすらニンテンドーDSの画面見ていろいろやってます」
 
「わあ、そういうのやったことがない人がはまると凄いのかも」
「だっこちゃんやフラフープで遊んでいた世代らしいから、ああいうのが新鮮だったんだろうと思います」
 
「へー」
 
「もっともここだけの話、血のつながらない息子の所より、血のつながりのある息子の所に来たかったのかもという気もするんですけどね」
 
「へ?」
「お祖母ちゃんは後妻さんなんですよ」
「あぁ!」
 
「お祖父さんは、前妻さんとの間に5人、お祖母ちゃんとの間に3人子供を作ったんです」
 
「たくさん作りましたね!」
「ええ。あの時代でも8人兄弟というのは珍しかったと思います。もっとも病気とか事故とかで死んで、今残っているのは、5人だけなんですけどね」
 
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「ああ」
「但しお祖母ちゃんが産んだ子の中で最初の子は、戸籍上は前妻さんの子供ということになっているんですよ」
 
「う・・・・」
 
「結構昔の田舎では、そのあたりかなり適当だったみたいで」
「あぁ・・・」
 
「そもそもその子を産んだときはお祖母ちゃんはまだ女子高校生だったから、出産したなんてのが知れたら退学になるというので、当時本妻さんが自分が産んだことにしてあげたというのもあったみたいです」
 
「うーん。。。でも高校生に子供産ませるなんて・・・」
「悪い奴ですよねぇ」
と理歌は言う。
 
「お祖母ちゃんは前妻さんの従妹なんですよ。それがレイプされて妊娠しちゃって」
「酷い」
「それで前妻さんが亡くなった後、自分が産んだ子供の世話をしてくれと言われて最初はお手伝いさんという名目で住み込んで、なしくずしに愛人にされて喪が明けてから後妻になったんですよ」
 
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「酷いなあ」
「なんかうちの兄の女癖の悪さって、お祖父ちゃんの遺伝ではという気もしますよ」
 
「でも、世の中、女癖の悪い男の遺伝子がはびこるんですよ」
「そうなんですよね。潔癖な男の遺伝子って残らないから」
 
ゆみは自分も理歌のお祖母ちゃんと同じ立場になっていたかも知れない気がした。たまたま自分は妊娠せずに済んだだけだ。自分が子供の頃に“父”にされたことが否応なく頭に浮かんでくる。“父”は随分と自分を裸にして、あちこち身体を触っていた。当時はその意味が分かってなかったものの「母ちゃんに告げ口したらただじゃおかないからな」という“父”の恫喝で母には何も言わなかった。むしろ・・・母に対して嫉妬めいた感情まで持っていた。
 
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しかし今思い起こしても、絶対に“父”を許せない気分だ。
 
もっとも“父”も自分の実の娘である世都子にはそういうことはしていなかったから、最低限「獣よりはマシ」だったんだろう。
 
しかし・・・・醍醐先生の《夫》の祖父の家庭もなんか複雑っぽい。ただ昔は女の人が若くして出産で死んだりしているから、後妻さんをもらう男性も多かったろうというのは考えた。この程度の複雑さの家庭って、昔は実は多かったのかも知れない。
 
ゆみは、少しずつ、自分がこの半年苦悩してきたことは、実は大したことではなかったのかもと思い始めていた。
 
 
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■夏の日の想い出・東へ西へ(16)

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