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■夏の日の想い出・東へ西へ(6)

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10分後、凄く可愛い女性用の黒いフォーマルドレスを着たアクアが恥ずかしそうにして、出てきてみんなにその姿を披露する。
 
「可愛い!」
と思わずアルトが声をあげる。
 
「ローラ・アシュレイかな?」
「そーでーす。ピアノの発表会とかに着てもいいよ」
「恥ずかしいよお」
「何を今更」
 
「それ下着はどうしたの?」
と政子が訊く。
 
「男物の下着を着けてたから没収して女の子用のを着けさせました。ドレスの下は黒いスリップです。パンティとブラも黒」
と川南。
 
「川南さんが没収するから、また僕の男物の服が減る」
と龍虎。
 
没収したら返さないのか!?
 
「じゃ龍ちゃん、この後はこの衣装で」
とアルトまで悪のりして言っている。
 
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「それ、天国のお父さんに叱られます」
 
「いや、自分の子供が可愛くなるのは、高岡も笑って許してくれるよ」
と上島先生は笑いながら言っている。
 
「まあ、あんたのそういう格好は今更だね」
と田代母。
 
「龍、マジで女の子になるつもりないの?」
と志水。
 
「女の子にはなりたくないよぉ」
と龍虎は言うが、全く説得力が無い。
 
「龍ちゃん、こういう格好の方がリラックスしている気がする」
と白浜夏恋。
 
「まあ似合ってるしな」
と若生暢子。
 

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結局龍虎はドレス姿のままということになる。
 
東京駅近くのレンタカー屋さんで予約していたクラウン・マジェスタを2台借り、それに分乗(運転は田代父と川南)して八王子市内のホテルに移動した。
 
このマジェスタに私・千里・上島先生・龍虎の4人は乗らなかった。別途、電車で田園調布まで移動する。この時、目立たないように私、千里と龍虎、上島先生が各々別の車両に乗った。
 
田園調布の駅で50代の女性が待っている。立ち話すると目立つので、とりあえず彼女のセドリックに乗り込んだ。そのあとでお互い挨拶する。
 
「ご無沙汰しております、鈴木さん」
と助手席に乗った上島先生。
 
「上島さんとは何度もパーティーで会ってるわね」
と鈴木さんと呼ばれた運転席の女性。
 
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「鈴木さん、こちらは私以上に★★レコードの屋台骨を支えている作曲家、ケイと醍醐春海です。そしてこちらが高岡の遺児・長野龍虎です」
と上島先生が紹介する。
 
「お初にお目に掛かります」
と後部座席の3人は挨拶し、私と千里は名刺を出す。龍虎は
 
「まだ名刺とかは作ってもらっていないのですが、12月末のスペシャル番組に出してもらった後、春からのドラマに出演させてもらうことになっております長野龍虎です。よろしくお願いします」
と挨拶した。
 
「あんた可愛いね。高岡さんの子供というの抜きでも売れるよ。国民的美少女って感じだし」
と鈴木さんも笑顔で言う。
 
「えっと御免なさい。僕、一応男の子なんですが」
と龍虎。
 
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「え?うそ!?」
「まあだいたいこの子は女の子と間違われます」
「りゅうこって女の子名前だし」
「空を飛ぶ龍に吼える虎なんです」
「そっちの字か!でも女の子の服着てるし」
「こういう服が似合うと言われてしばしば着せられちゃうんですよ。今日も最初は学生服を着ていたのに、これ着せられちゃって」
「いや、あんたは学生服着てても男装美少女にしか見えないと思う。声も女の子みたいな声だし」
「声変わりがまだなもので」
 

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「あ、それでこちらは★★レコードの星原相談役のお嬢さん、鈴木片子さんね」
と上島先生は運転席の女性を紹介した。
 
「私は名刺持ってないけど、よろしくね」
と鈴木さんは笑顔で挨拶した。
 

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「でもあの車は素敵よね。私も年に1度しか乗らないのよ」
と鈴木さんはセドリックを出しながら言う。
 
「年に1度しか動かさないんですか?」
と私が尋ねる。
 
「それ以上は父が自分たち用には動かさせないもので」
「ああ」
 
やがて星原相談役のご自宅に到着する。私もここに来るのは初めてであるが、上島先生も初めてのようだ。大会社の創業者の自宅にしては、比較的質素な作りである。ただ敷地面積はかなり広いようだ。
 
応接室に通され、お茶を出してもらったが、手をつけずに待つ。やがて足取りのやや怪しい老人が出てくる。足取りは怪しいものの、眼光が鋭いのがさすが、小さなレコード店をメジャーレーベルまで育て上げた人だと私は思った。
 
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「おお、上島君、久しぶり」
と言って、星原さんはいきなり千里に握手を求める。
 
千里もびっくりしたようだが、にこやかに
 
「申し訳ありません。私は上島先生の友人・雨宮先生の弟子で醍醐春海と申します。上島先生はそちらに」
と言って、手で指し示す。
 
「ああ、そちらが上島君か。いや、以前会った時は確か男だったような気がしたのに、いつの間に性転換したんだっけ?と思った」
などと相談役は言っている。
 
これは(医学的に)ぼけているのか、(お笑い的に)ボケているのか、私は判断に迷った。
 
しかし性転換ということばに龍虎が何だかドキドキしている風だ。
 

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「それで、こちらが高岡の遺児の長野龍虎です。ふたりは正式に結婚していなかったので母親の姓の長野を名乗っています」
と上島先生が龍虎を紹介する。
 
「ああ、君が高岡君たちの・・・娘さん?」
「すみません。息子です。一応私、男なので」
「いや、確か息子と聞いていた気がしたけど、娘の聞き間違いだったっけ?と思って」
 
「この子はよく女の子と間違えられるんですよ。今日もうまく乗せられてこういう服を着せられちゃって」
 
「女装しているようには見えん。ふつうに女の子にしか見えない。じゃいっそ、女の子にしちゃったら? この顔で男ですと言っても混乱するだけだし。今は男の子を女の子にするのも、簡単にできるんでしょ?」
 
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「まあ女の子にする手術は2〜3時間で終わりますが」
「だったらデビュー前に手術しちゃおうよ」
「え〜〜!?」
 
「デビュー前に美容整形する子なんてざらじゃん」
「まあよくいますね」
「それと同じようなものだよ」
「すみません。性転換手術とかは勘弁してください」
 
「以前、アイドル歌手の山江麻寛子とか、男の子だったけど、女の子にした方が売れるってんで、モロッコに行かせて性転換手術受けさせて、女の子アイドルとして売り出して大成功したよね?」
 
「星原さん、山江麻寛子は間違い無く生まれながらの女性ですが。結婚して子供も産んでますし」
「そうだっけ?誰かと勘違いしてたかなあ」
 

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お茶を飲みながら、最近の音楽界のことを中心に少しお話をしたが、星原さんは娘を結婚させたことを後悔しているなどと言い出した。私は、お嬢さんの前でそんな話をされても・・・と反応に困ったのだが、すぐにそれはこの場に居ない、片子さんの妹さんの話であることに気付いた。
 
「娘はハッキリ言いませんが、旦那がかなりの浮気性の上に、どうも暴力も振るわれているみたいで」
と星原さん。
 
私はそっと上島先生の様子を伺ったのだが、頷いているので、どうもその話はけっこう知られているっぽい。
 
「準子さん、一度里帰りでもさせてはどうです?」
と上島先生は言ったが
 
「それも言ったが、自分が居ないと、何始めるか分からないからと言って」
と星原さん。
 
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そのあたりまで話している内に、星原さんが最初に上島先生と「間違えて」千里と握手したのは、どうも惚けたふりのおふざけだったようだと私は判断した。
 

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「で、車だけど、話を聞いてすぐ整備させたから」
と星原相談役は言った。
 
「私も久しぶりで楽しみにしておりました」
と上島先生。
 
「じゃ見てみようか」
と言ってガレージに行く。ガレージには車が5台並んでいる。さきほど鈴木さんに乗せてもらったセドリック、スカイラインGTR、おそらく普段使いだと思われるウィングロードと並んでいるので日産が好きなのだろうなと思った。その横にあるプリウスは「これは私の」と鈴木さんが言った。そしてもう1台他の車とは別の仕切りの所に入れられている『例の車』Porsche 996 40th anniversary editionである。
 
「ミシェランのスタッドレスも履かせてるから」
と星原さんが言う。
 
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上島先生が、あらためてこの車がここに来た経緯を説明した。
 
「当時高岡は、ワンティスが売れに売れて大金を手にして、発売されたばかりのこの40th anniversay editionを買った。競争率が高かったけど、日本で一番の売れっ子グループのリーダーということで、販売店が宣伝効果を考えて配慮してくれたのではとも(★★レコードの)加藤君などは言っていた」
 
「ところが高岡は買ってまだ1ヶ月もしない内にあの事故を起こして自分は夕香とともに死んでしまうし、当然車も廃車。それで販売店が青くなった。宣伝効果どころか逆効果。連日ニュースはポルシェ996の写真を出すし、最高速度290km/hだと説明する。訳の分からない自称評論家さんとか出てきてそんな速度が出る車を日本国内で発売してはいけない、法的に規制すべきだと言ったりするし。誰がそんな速度を道路で出そうとする?みんなサーキットで楽しむためにああいう車を買うに決まっている。ところが、その時、自動車コレクターでこのポルシェを自分でも所有していた音速通信の重富社長が接触してきたんだよ」
 
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「自分の買った40th anniversay editionを譲るから、その車で安全運転して、ポルシェの良さをアピールしてくれないかと。重富さんは特にポルシェが好きで、ポルシェだけで5台も持っていた。それが連日テレビでポルシェが批判されているみたいで、耐えられんと言っていたんだよ」
 
「ただ、当時高岡は実際にはあの車の購入代金のほとんどを銀行から借りていた。その借金の返済、そして重富社長から譲り受けるための資金が当時、ワンティスの他のメンバーには無かった」
 
「それを星原相談役が個人的に出してくださったんだよ」
と上島先生は説明する。
 
「まあそれでこの車は僕が買ったんだけど、基本的には高岡君たちのものだと思っているから、ワンティスのメンバーにはいつでも来て乗ってくれと言っている」
と星原さん。
 
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「その後、僕はお金が出来たから、星原さんが出してくれた分を僕が払っても良かったんだけど、僕が払ってしまうと、ワンティスの他のメンバーが乗りに来るのに抵抗を感じるかも知れないと星原さんや加藤さんが言ってさ、それで高岡が買った車のローン肩代わり分だけ僕が出させてもらって、重富さんから譲り受けた時のお金はそのままにしている。だから車の所有権は今でも星原さんにあるんだよ」
と上島先生は補足説明した。
 
「実際、ワンティスの各メンバーさんが追悼を兼ねてしばしば乗りに来られるんですよ。車好きの雨宮さんとか、海原さんなどは毎年3〜4回は来ますね」
と鈴木さん。
 
「雨宮君は、奥さんとのデートに貸してと言って借りて半月くらい乗り回したこともあったね」
と星原さん。
 
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雨宮先生の奥さん!??それ誰?と私は思ったのだが、上島先生も千里も何だか頷いているし、龍虎は「問題」に気付いていない雰囲気だ。それで私もその件については質問しなかった。
 
「当時、テレビの色々な番組に、上島先生がこのポルシェに乗って出演しておられましたね。私はそれが高岡先生が事故死した車と同型のものとは全然知らなかったんですが」
と私は言う。
 
「うん。テレビ局に協力してもらって、たくさんこの車を映してもらった。結果的にはポルシェ911のイメージをあげられたんじゃないかと思う」
と上島先生は言う。
 
(ポルシェの大きなシリーズ名として911というのがあり、996というのはその911の5代目のモデル名である。この911/996の中に更に様々な車種がある。911のモデルは順に901,930,964,993,996,997,991となっている)
 
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「まあそのポルシェのイメージ回復プロジェクトは3年くらいで終了したからその後は僕も年に1度くらいしか乗ってないけどね」
 
「今でもいつでも乗りに来ていいんだよ。事前に連絡もらったら整備させておくから」
と星原さん。
 

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夏の日の想い出・東へ西へ(6)

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