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■夏の日の想い出・影武者(20)

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放送時間を35分ほど使ったところで、突然名古尾プロデューサーが横縞の囚人服のようなものを着せられ、後ろ手に手錠を掛けられた姿でデンチューの2人に連行されてくる場面となる。
 
目の前に巨大な衝立のようなものが置かれている。上の方に大きな穴、下の方に小さな穴、その中間に少し横にずれて中くらいの穴がある。
 
またまたフロックコートにシルクハット、付けひげをつけた金墨円香が登場する。
 
「それではただいまより、大先生なる架空の存在をでっちあげて視聴者を騙した罪で名古尾プロデューサーを処刑する」
と円香は言う。
 
「それあんたも共犯じゃん」
と名古尾は抗議するが
 
「私は台本通りに言っただけで犯行の意思は無かったから刑法第三十八条により無罪」
などと円香は言っている。
 
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「デンチュー君、処刑台の調子はどうかね?」
と円香が言うと、デンチューの2人が3つの穴に大根を1本ずつ差し込む。殿山がスイッチを入れると、大きな音がして、大根が切断されて下に落ちた。
 
名古尾さんが嫌そうな顔をしている。
 
「切れ味は良いようだね。もう一度やってみよう」
と言って再度やると、中間の穴に差した大根は切れずに、上の大きな穴と下の小さな穴に差した大根が切れた。
 
「これ切れなかったけど」
「時々切れないこともあるみたいです」
 
「では上の大きな穴に名古尾君の首、下の小さな穴に****、真ん中の穴には大根を入れなさい」
 
****のところはピーで消されている。
 
「ちょっと、ホントにやるの?これマジで死ぬじゃん」
と名古尾さん。
 
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「時々切れないこともあるから、運が良ければ助かる」
と円香は言っている。
 
「首が切れなかったら命は助かる。***が切れなかったら男は辞めなくても済む。大根が切れなかったから、今夜の焼き魚に大根おろしは無しだ」
 
「ちょっと待ってぇ」
と言っている名古尾さんの首をデンチューの2人が処刑台の上の穴に押し込む。更に
「ファスナー降ろして」
などという殿山の声の後
「ちょっとぉ、それ触るのやめてぇ。僕の大事なものなんだから」
という名古尾さんの声。ここはカメラは写さない。
 
そして真ん中の穴に大根が差し込まれる。
 
「名古尾君、何か言い残すことは?」
「え、えっと。女房に昨日の肉じゃがは美味しかったと」
 
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円香が
「では伝えよう」
と言い
「では処刑」
と言って、ボタンを押す。
 
大きな音がする。
 
大根が切れて下に落ちる。
 
しかし名古尾さんの首は無事である。
 
「助かったぁ!」
と名古尾さん。
 
「なんだ、男も辞めることにはならなかったのか。名古尾さんスカート似合うと思ったのに」
と昼村が言う。
 
「勘弁してよぉ」
と名古尾プロデューサー。
 
カメラが移動して処刑台の下の方の穴も写す。
 
そこには名古尾プロデューサーの革製の財布が差し込まれていた。
 

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ここまででもう8:40を過ぎている。
 
そのあと隠し撮りっぽい場面に移る。
 
制作室でまだ囚人服を着たままの名古尾さんと毛利さん、それに円香の3人がサイダーで乾杯している。視点が移動しないので、スタジオ機器に紛れて隠し置いたCCDカメラで撮っているようである。
 
「いや、何とかここまで来たね」
「でもこれからが大変ですよ。今回はさんざん盛り上げたから3万枚売れたけど、次は普通の発売方法で5万枚は売らなきゃ許されない。できたらランキングのトップ」
 
「****があれだけ番組で盛り上げているのに、全然ランキング1位を取れずにいるからなあ」
 
ピー音で消されているが、視聴者は容易にキャッツファイブを連想したであろう。
 
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「なんか運が悪いですよね」
 

「でも私、5月の時もネットでは去勢執行女とか書かれましたよ。今回の番組が流れたら、また書かれそう。これじゃお嫁に行けなくなっちゃう」
と円香が言うが顔は笑っている。
 
どうも円香も隠し撮りされていることに気づいてない雰囲気だ。
 
「じゃ9月で降板する?」
「いえ、ぜひ10月からの新番組にも出させて下さい。三つ葉の3人は可愛いし。こうなったら開き直って、番組の中では名古尾さんの去勢に燃えることにしますから」
 
「僕は去勢されたくないけど」
と名古尾さんが苦笑している。
 
ネットでは円香が「10月からの新番組」と発言したことに注目が集まった。いわば「自己リーク」するために、この部分を編集で残したのだろう。
 
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「でも毛利君もほんとに色々やってるよね」
 
「4月の段階では仕事が全部途切れてしまって、1ヶ月近く何も仕事してなかったんですよ。まあ作曲はしてたけどね。それでこのオーディションの話が持ち込まれてきて、やりますやりますって返事したんだけど、その直後に山森水絵って新人さんのアルバム作るから、その制作してって雨宮先生から言われて、そのあとアクアの2枚のレコードの制作もやったし」
 
「アクアの制作は大変だったみたいね」
「時間は無いけど、絶対に品質は落とさないでとレコード会社の担当さんから厳命がありましたからね。だから僕の耳が納得するまで練習させて何度も録り直しましたよ」
と毛利さんは言う。
 
「アイドルのCDには、しばしばやっつけ仕事って感じの出来のがあるけど、それをやったら耳の良い人に見捨てられるからね」
と名古尾さん。
 
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「三つ葉も妥協しませんよ」
と毛利さん。
 

「でも鴨乃清見さんも雨宮グループなのね?」
 
「そうですよ。でも彼女は専業作曲家ではないので、今月まで本業の方で海外出張してまして。それで今回は私が中心になって進めることになったんです。そちらはトナカイちゃんとあと奥原さんって若い子と」
 
「トナカイって、AYAの『Maze City』の作曲者?」
「うん。ここだけの話だけど、実はAYAのインディーズ時代の曲を書いていたアキ北原のお姉さんなんですよ」
 
「ああ、じゃ姉妹で作曲家なんですか?」
「そうそう。妹のアキさんは亡くなっちゃったんですけどね」
「亡くなられたんですか?」
「遺族の意向で発表してないんですけどね。それでメジャーデビューして以降は雨宮先生の盟友の上島先生がプロデュースしてくださったんですよ」
と毛利は言っている。
 
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こういうのを編集カットしなかったというのは、戸奈甲斐こと北原春鹿さんやご両親の許諾を取ったんだろうなと私は思った。
 
「そうだったのか。初めて知った。でもこちらもレコード会社の担当さんが癌で亡くなったし」
と円香は言ったが
 
「死んでない、死んでない」
と名古尾さん。
 
「え?そうだったの?てっきり癌で急死したとばかり」
 
「あと1ヶ月発見が遅れていたら、もう手の施しようが無かったらしい。でも何とか病変部も切除して、今は療養中。業務復帰には1年くらいかかるかもという話だけどね」
 
「でも死ななかったのなら良かった」
と円香は言った。
 
「しかし毛利さん、そんなに掛け持ちでやっていたら、全然家にも帰られなかったのでは?」
と名古尾さんが言う。
 
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「マジで帰ってません。もう自宅は4月下旬から放置です。今日はこのあと4ヶ月ぶりの我が家を見に帰ります。ちょっと怖いですけどね」
 
「ネズミとかごきぶりが大量発生していたりして」
と円香。
「洗濯してなかった服とか洗ってなかった食器とかはきっとカビだらけですよ」
と名古尾。
 
「いや、だからマジで怖いです。そもそも家が無かったらどうしよう?という感じで。幸いにも、家賃は忙しくなるかもということで前もって10月分まで払っていたから、誰か別の人が住んでるなんてことはないと思うんですけどね」
と毛利。
 
「だったら大丈夫かな。ちゃんと家があるといいですね」
と名古尾は言った。
 

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誰も居ないスタジオでの会話が5分ほど続いた後、隠しカメラが毛利を追う。毛利が数ヶ月間、制作の都合でスタジオや事務所、放送局などで寝泊まりを続けた結果、着替えの服などがたくさんできていたので、局の若いADさんが荷物持ちを買って出てくれたのだが、そのADさんがどうもアクセサリーか何かに偽装した小型カメラで隠し撮りしているようである。
 
鉄道を乗り継いで横浜市内のやや不便な地域に到達。駅から10分ほど歩いて毛利さんの自宅まで行く。
 
「新番組、結構いけると思うんですけどね」
と毛利さん。
 
「あの人選はいけると思いますよ。でも私も出演者聞いてびっくりしました」
とADさん。
 
「そもそも名古尾さんはバラエティ畑の人だもん。バラエティ仕立てにしちゃった方が、彼もやりやすいでしょうし」
と毛利さん。
 
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そんな会話をしながら、毛利さんはやがて
 
「ああ、そこを曲がった所です。すみませんね。個人的なことにまで手助けしてもらって」
と毛利さんはADさんにお礼を言う。
 
「いえ。僕も同じ横浜市内ですし。帰宅のついでですよ」
とADさん。
 
それでふたりは角を曲がったのだが、その前にあったものを見て、毛利さんが呆然とした顔で立ち止まる。
 
「何これ?」
 
そこには真新しい8階建てのマンションが建っていた。
 
「俺のアパートが無い!?」
と言ったまま毛利さんは絶句している。
 

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そこにどうも仕込んでいたようで、70歳くらいの老人が出てくる。それを見て毛利は
 
「大家さん!? これどうしたんです?」
と訊いた。
 
「あれ?毛利さん、あんた生きてたの?」
「生きてますけど」
 
「もう長いこと帰宅してないんで、おそらく亡くなったのだろうと思って、あのアパートは崩して、新しくマンションを建てたんだよ」
と大家さんは言う。
 
「うっそー!?」
 
ここでテレビの画面には「建て直し前/建て直し後:劇的Before/After」というテロップが流れ、古いアパートの写真と現在のマンションの映像が左右に並べて表示された。
 
ネットには「このアパートは酷ぇ」「これ無理に崩さなくても自然崩壊したのでは」などという意見が書き込まれた。
 
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「俺どうすればいいんですか?」
「まだ空いてる部屋はあるけど、そこに入る?」
「入れてください!あ、でも家賃いくらかな?」
 
「月20万だけど。このマンションの最上階で4LDK」
 
「ひぇー!?月20万ですか?今までの20倍?」
「敷金は余分にもらっていた家賃と前のアパートの敷金を振り替えるから1ヶ月分追加で入れてもらえたらいいよ。礼金も要らないし」
 
毛利さんが絶句していたら、ADさんがカバンの中から札束を取り出す。
 
「それではこれ敷金と12月までの家賃で100万円です」
と言って大家さんに銀行の封がしてある札束を渡す。
 
「ありがとう。じゃ契約成立ね」
と大家さんはニコニコ顔である。
 
「ちょっと待って。これどうなってるの?」
と毛利さんが言うと、ADさんはカバンから
 
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《どっきり・びっくり・ショー》
と書かれた幕を取り出して大家さんに持たせ、毛利さんと並ばせ、あらためてカバンから取り出した小型のビデオカメラでふたりを撮影していた。
 
ここで今週の番組は終わったが、画面の隅に吹き出しが出て毛利と円香が映る。
 
「これどっきりはいいけど、マンションに建て替えられちゃったのはマジ?」
と毛利が言うのに対して
「マジです」
と大きなハサミを手にした円香が断言し、
 
「新しいマンションに移るついでに、毛利君もチョキンと切って新しい身体にしてあげようか?」
と付け加えて今週の放送は終了した。
 
 
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