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■夏の日の想い出・影武者(15)

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「まあ冬はこの時代から女の子タレントとして活動していた訳だから、実際いつ頃から女の子してたかは分からないよね」
 
と政子は言って、バッグの中から、私が「ピコ」の名前で松原珠妃の写真集に出た時の写真のコピーを取り出す。以前はスマホに入れていたのがしばしば壊れて写真ごと蒸発してしまうので、この手の写真は紙で持つようにしたようである。
 
結局花野子もこちらに寄ってくる。
 
「ケイさんは民謡やってたから、小さい頃からカメラの前にも立っているんでしょう?」
と花野子。
 
「カメラの前に立ったのは、記憶が明確な中では小学2年生の時に歌番組のコーラス隊で出た時だと思う」
と私。
 
「やはり古い」
 
「小風もそのくらいの頃からカメラの前に出てたんじゃなかった?」
と政子は少し離れた所で夢美と話していた小風に声を掛ける。
 
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「私は小学3年生の時にスカウトされて、あの時期は何度かアイドル歌手のバックとかでライブに出てるよ。テレビ局で演奏したこともあった」
 
と小風が言う。
 
「花野子も何度か一緒にくっついて来たね」
と小風が付け加える。
 
「うんうん。保坂早穂さんからもらったサイン、宝物にしてるよ」
と花野子は言うが
「私、あれ無くしちゃった」
と小風は言っている。
 

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「あれ?お友達だったんだっけ?」
と政子が言う。
 
「うん。学童保育のね」
と小風。
 
「へー!」
 
「私が小学2年生の2月だから、1999年の2月かな。うちが熊本から東京に引っ越して。父ちゃんの会社が倒産して知り合いを頼って東京に出てきたんですよ。それで家計が苦しかったから、共働きで、それで私は学童保育に行ったんですよね。でも私、当時熊本弁だったから、東京の子供たちと馴染めなくて。そしたら、4月に小風がやはり水戸から引っ越してきて、学童保育に入って。それで転校生同士で仲良くなったんですよ」
 
と花野子が説明する。
 
「うちは水戸で家を建てたら即、東京に転勤させられたんだよ」
と小風。
 
「酷い」
 
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「いや、概してサラリーマンは家を建てると転勤させられる。ローン抱えていて絶対仕事辞められないから」
と梨乃が言う。
 
「そしたら莫大な借金作って建てた家に自分では住めないのか」
「まあ、ありがち」
 
「それで少しでも早く借金を返そうというので、お母ちゃんも仕事に出たんだよね。それで私は学童保育に行くことになって、そこで花野子と出会ったんだよ」
 
と小風。
 

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「転校生同士で仲良くなって、一緒にお絵描きしたり、学童保育所の遊戯室に置いてあるピアノを弾いたりして遊んでたね」
 
「うん。私はそれにハマってピアノを覚えたんですよね」
と花野子。
 
「管理人の女先生がけっこう花野子に教えてくれていたね」
「うん。小風はあまり性(しょう)に合わなかったみたい」
「私は鍵盤楽器にはあまり関心が無かったんだよねー」
 
「けっこう私がピアノ弾いて小風が歌を歌ったりしてた」
 
「やってた、やってた。町でスカウトされた時も正確には2人まとめてスカウトされたんだけど、花野子のお父さんは子供をタレントにできるか、と言ってハンコ押さなかったから」
 
「あれ、やりたかったんだけどねー」
「でも結局よく私に付いてきてた」
 
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「うん。実は一緒にライブに出たこともある」
「ほほぉ!」
 

「なんか芸能歴の長い人が随分いるな」
 
と夢美が言っている。
 
「夢美も小学1年生の頃から大会荒しだったね」
と私は言う。
 
「うん。当時もらった賞状とかトロフィーとか大量に押し入れにある」
と夢美。
 
「押し入れなの?飾らないの?」
と政子が訊く。
 
「別に飾ってどうこうというものでもないしね。過去の栄光より自分を研鑽して未来を切り開くことが大事」
と夢美。
 
少し離れた所で氷川さんと話していた和泉がこちらを見て頷くようにしている。
 
「青葉ちゃん、千里はあちこちの大会でもらった賞状とかメダルとか記念品とか、飾ってる?」
と花野子が訊く。
 
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「段ボール箱に放り込んでますよ。一応シリカゲルとか入れて」
と青葉は答える。
 
「なるほどー」
 
「世界選手権とかアジア選手権でもらったボールペンとか時計とかを普段使いにしているし」
 
「ああ、あの子らしい」
 
「時計は時を刻むために生まれて来たんだから、時計として使ってあげなきゃかわいそうとかも言ってました」
と青葉が言うと
 
「その考え方に賛成」
という声が数ヶ所から出ていた。
 

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男性陣は飲んで夜を明かす雰囲気であったが、女性陣は大半が宴会が始まってから1時間ほどで三々五々に引き上げた。
 
女性陣で最後まで残ったのは氷川さんだったようである。
 
私と政子も2時頃宴会場を出て自室に戻り、シャワーを浴びて寝たのだが、ふと夜中起きてみると、またマリがいない。着替えて出て行ったようなので、やはりあの人の部屋に行ったのかな、と思って私は先日から書きかけの曲の楽譜を書き進めていたのだが、喉が渇いたので、ロビーに行ってコーヒーか紅茶でも買ってこようと思った。
 
それで鍵を持って部屋を出て、エレベータで1階に降りようとしたのだが、途中の8階でドアが開く。するとそこに
 
「あ、ケイちゃん、悪いけど乗せて」
 
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と言って加藤次長が走り込んで来た。
 
「どうしました?」
と言った時、廊下の角に下着姿の!?氷川さんが姿を現した。加藤次長は急いでエレベータの「閉」ボタンを押した。
 
ゴンドラが下に降り始める。
 
「何かあったんですか?」
「ごめんごめん。これ忘れて。氷川にもよくよく言っておくから」
「まあ、いいですけど」
 
よく見ると加藤次長は下半身が猿股姿である。
 
「部屋に戻れます?」
「いや。今夜は南の部屋に泊めてもらう」
「ああ、それがいいかも」
 
と私は微笑んで言った。
 
加藤さんの焦ったような顔を見ると、たぶん氷川さんが加藤さんを誘惑したんだろうなと私は思った。加藤さんは浮気などする人ではないが、氷川さんは昔から加藤さんを尊敬していると言っていた。むしろ憧れ以上のものを持っているようにも見えた。おそらく仕事の打ち合わせと称して加藤さんの部屋に行き、隙を見て襲いかかり、無理矢理ズボンを脱がせたのではと私は状況を想像した。
 
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私は自販機で紅茶を買って14階に戻り、作曲の続きをしていたのだが、4時半になった所で寝た。朝7時に起きると政子は戻っていた。
 

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ローズ+リリーのステージに乱入した女だが、柔道の吉本宏太選手のファンということであった。何でも吉本選手とマリが「デート」している所を見て頭に血が上り、殺してやろうと思ったということであった。
 
吉本選手とマリは、吉本選手が所属するA金属の広報部および★★レコードを通じて共同でメッセージを発表し、ふたりはただの「食べ仲間」で、巨大などんぶりで有名な都内の鹿鹿鹿ラーメン、巨大ハンバーガーで有名な千葉のロット、メガ盛りスパゲティで有名な横浜のパスタ・ド・ナポリなどでしばしば遭遇して、一緒におしゃべりしながら食事をしたことはあるものの、交際の事実は無いとした。
 

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アクア主演の映画『時のどこかで』は予定より2日遅れて、8月2日の夜遅く何とかクランクアップした。そしてその翌日!8月3日に、雑誌編集者やラジオ局のナビゲーターを主たる対象としたこの映画の内々の試写会が行われた。
 
クランクアップしてから編集していたのではとても間に合わないので、編集の作業は撮影クルーとは別班で進められていたのだが、それにしてもまだかなりこのあと編集が行われるかも知れないという状態である。また一部アフレコが終わっていないため、音声の無い場面や代役さん(主としてアクアのボディダブルの今井葉月)の声が残っている箇所もありますという、本来ならとても人に見せられる状態ではなかったのだが、それでも雑誌の記事に書いてもらったり、ラジオで話してもらったりしなければならないので、この時期に試写会を強行したのである。
 
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私と政子も関係者ということでこの試写会に行ってきた。
 
場面は北海道のラベンダー畑で始まる。ここは芳山和夫(アクア)・神谷真理子(元原マミ)・浅倉吾朗(広原剛志)の3人が
 
「きれいだねぇ」
「香りが強烈」
 
などと言っている所に、深町一彦(黒山明)が登場するシーンである。
 
ここは実際に7月上旬にこのメインキャスト4人だけ連れて北海道富良野市まで日帰り!で行って撮影してきたものである。
 
なお深町の名前は原作では一夫なのだが、主人公の芳山和子を和夫に改変してしまった副作用で、深町一夫の方も一彦に改変したのである。
 
帰ろうかという時に、深町が帰りのロープーウェイのチケットが無いと言い出す。アクアの和夫が「先生、済みません。深町君がチケット無くしたそうです」と言い、福島先生が声だけで「深町君、何やってんの。でも大丈夫だよ。団体で来ているから、話せば乗れると思う」と返事するが、ここに福島先生役の沢田峰子は顔を出していない。スケジュールの都合がつかずに北海道まで行けなかったので、アフレコで声だけ入れたらしい。
 
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なお、この場面は原田知世版「時をかける少女」へのオマージュである。
 

その後、場面は金曜日の放課後の理科室になる。原作はまだ土曜日半ドンだった時代なので土曜日の昼過ぎの理科室であるが、現代に合わせて金曜日ということになっている。
 
ここで芳山・浅倉・深町の「男3人」で理科室を掃除している。
 
「こんな広い部屋をたった3人で掃除するなんて無いよなあ」
と吾朗が文句を言っている。
 
「せめて女が1人くらいいればいいのに」
「芳山、いっそ女にならない?」
「僕がセーラー服着て通学してきたら、みんな気持ち悪がるよ」
という和夫の発言に
 
「いや、芳山はセーラー服が似合う気がする」
と浅倉・深町が一致した意見。
 
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その瞬間、ワイシャツ・黒ズボン姿のアクアと、夏用セーラー服を着たアクアの映像が短時間で数回切り替え表示される。
 
浅倉と深町が想像した和夫の女装姿ということのようだが、アクアの女装を最初から提示するのは、ファン向けのサービスだ。
 

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「後はゴミ捨てだけだね」
と深町。
 
「じゃゴミは僕が捨てて来るから、浅倉と深町はもう手を洗ってくるといいよ」
と和夫が言う。
 
「そうかい?じゃ後は頼む」
と言ってふたりは教室から出て行く。
 
それでアクアの和夫がゴミを集めていたら、隣の理科実験室で何か音がする。
 
「あれ?誰かいました?」
と言って、和夫は実験室とのドアの方に行く。
 
「福島先生ですか? こちら掃除は終わってゴミ捨てるだけですけど」
と和夫は言ってドアを開けた。
 
その瞬間、ガチャーンという薄いガラスの割れる音がする。
 
「誰?」
と言って不安そうな顔をした和夫が実験室を見るが誰もいない。テーブルの上に試験管がいくつか並んでいて、床にも割れた試験管がある。その割れた試験管から何か白い気体のようなものが立ち上がっており、和夫はそれを見つめたまま崩れるように倒れた。
 
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実験室で倒れている所を発見された和夫は、吾朗が抱きかかえて保健室に連れていく。
 
「お姫様だっこされてる」
 
と政子が嬉しそうに小さな声をあげたが、35kgのアクアはある程度の体格の男性になら、充分抱えられる。実は浅倉吾朗役のオーディション条件は35kgのアクアを抱えられることということだったらしく、受けに来た俳優さんたちはアクアに見立てた35kgのおもりを抱えて10m歩くというのを実演したらしい。吾朗役を射止めた広原剛志君は高校のラグビー部に入っていたらしくたくましい腕である。彼は実際この撮影ではアクアを抱えて30mくらい歩いて保健室のセットのベッドの上にアクアを置いた。
 
福島先生もやってくるが、吾朗はあらためて、あんな広い理科室を3人で掃除させるなんてひどいですと文句を言い、先生も「ごめんねー」と言っていた。
 
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体調が悪いと言って土日を和夫は寝て過ごした。
 
「あら、生理が重いの?」
と母親が心配するが
 
「僕、生理は無いけど」
と和夫。
「生理が無いって、あんた妊娠したんじゃないよね?」
と母親。
 
「僕男の子だから、生理もないし妊娠もしないよー」
と和夫。
 
「そうだったっけ?」
 
このあたりのセリフのやりとりも、アクアのファンの女の子たちへのサービスという感じである。政子も隣で
 
「アクアは絶対生理あるよね」
などと言って楽しそうにしている。
 

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