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■夏の日の想い出・影武者(4)

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オーディション番組の方では、シレンたち3人に曲が渡されるとともに、ここまで「ドライ」という仮名で活動してきたのを、正式名称として『三つ葉』という名前が発表され、エンブレムなども公開された。
 
3人がそのエンブレムの入ったTシャツを着ている姿も披露される。Tシャツには胸の所にそのエンブレムとMITSUBAという文字が染め抜かれているが、Tシャツの色自体は各々のパーソナルカラーとして定められた色が使われている。これはシレンが青、コトリが黄色、ヤマトが白である。その背景に緑色の三つ葉の絵が描かれていて、結構おしゃれな感じである。
 

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7月11日(月)。千里がふらりと私のマンションにやってきた。
 
「この花束あげるね」
といって蘭の花束をくれる。
 
「わ、ありがとう。花瓶に活けよう」
と言って、私は押し入れから花瓶を出してくると水を入れ、花束のラップを解いて、花を活けた。
 
「これどうしたの?」
「都内在住の選手数人で、都庁を表敬訪問してきた。バレーの**さんとかも一緒」
「へー!」
と言ってから
 
「あれ?今知事は不在だよね。誰に会ったの?」
と訊く。
 
東京都は6月21日に桝添知事が辞職し、7月14日に都知事選が告示される予定である。
 
「知事代理の安藤立美(副知事)さんが対応してくれたよ」
「へー」
「安藤さんは知事代理をするのは3度目だって」
「え〜〜!?」
 
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「2012年11月に石原慎太郎が衆議院選挙に出馬するため辞職した後、2013年12月に猪瀬直樹が政治献金問題で辞職に追い込まれた後、そして今回舛添要一が様々な疑惑噴出で辞職に追い込まれた後」
 
「なんか酷い知事が2代続いたからね!」
 

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「合宿は終わったんだっけ?」
「昨日でいったん終わった。次は14日から。今日から13日まで3日間お休み」
「3日だけか!」
 
「今日は合宿所出た後、都庁訪問してきたけど、この後、山森水絵の件で毛利さんたちや鈴木社長(∞∞プロ)・矢作部長(%%レコード)と打ち合わせ。たぶん徹夜になる」
 
「ほんとにお疲れさん!」
「明日は川崎に行ってチームの壮行会に出席する。川崎市役所にも行ってこないといけない」
「休む暇無いじゃん!」
 
「結局自宅に戻れるのは明日の晩だけかな。13日の晩からまた合宿所に入るし」
「千里忙しすぎるよ」
「まあそれはお互いさまで」
 
ご飯でも食べて行きなよと言って、私がお昼を作り、ちょうど起きてきた政子と一緒に3人で冷麺を食べた。
 
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「そうだ。矢作部長が、ケイちゃんたちと一度話したいけどと言ってたけど」
と千里が言う。
 
「仕事の話なら勘弁して。今手一杯だから、これ以上は仕事入れられない」
「だろうねぇ」
 
「ローズクォーツからは事実上離れているしスターキッズはアルバムに1曲提供する程度だけど、それ以外で今抱えているアーティストが、ローズ+リリー、KARION, SPS, スリファーズ、花村唯香、鈴鹿美里、そしてアクア。鈴蘭杏梨名義で槇原愛、秋穂夢久名義で貝瀬日南。このくらいかな。ぱらこんずとkazu-manaは事実上休業状態にあるからそれをいいことに放置している」
 
「アーティストが高年齢化している」
「うっ」
 
「若い子はアクアとせいぜい鈴鹿美里くらいじゃん。鈴鹿美里も高3。そろそろ曲がり角になってくる」
「それは言えるけどねー」
 
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「SPSなんかはもう放置でいいんじゃないの?自分たちで全曲書かせればいいんだよ」
「いったん手を出した以上そういう訳にもいかないんだよねー」
「あるいは誰かに下請けに出すとか」
「そうだなあ・・・」
 
「担当アーティストが高年齢化していくと極端に採算性が落ちるよ」
「それはあるけどね」
 

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「これ、雨宮先生とも話してたんだけどさ」
「うん」
「★★レコード、そして町添部長の命運は冬たちに掛かっている」
「うん?」
 
「山森水絵のプロジェクトも%%レコードに逃げたんだけど、今多くのプロダクションが★★レコードを避けようとしている。5月に滝口さん主導で★★レコードからデビューした三原由希子が古い手法のプロモーションを使っていて実際初動500枚という悲惨な成績だったことで、プロダクションの離反は動かなくなったと思う。その中で多分ここ3−4年★★レコードを支えていくのは、ローズ+リリー、マリ&ケイしかない。他のビッグアーティストはもうピークを過ぎているよ」
 
「うーん・・・・」
 
「ローズ+リリーの成功が町添さんを支えるし、★★レコードが生き残っていけるかにも掛かっている」
 
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「ピークねぇ・・・・・」
 
「世間ではローズ+リリーでさえ、ピークは一昨年くらいだったと思っているだろうね」
と千里は言う。
 
「そういうのハッキリ言ってくれるのは千里と青葉くらいだよ」
と私は苦笑しながら言う。
 
「だから今年のアルバムは気合い入れなよ」
と千里は私をしっかり見て言う。
 
「やはり『The City』は失敗だったと思う?」
 
と私は千里に訊いたが、千里はそれには答えず
 
「取り敢えず、アルバム制作中は他の仕事、一切入れない方がいいと思うよ。SPS, スリファーズ、花村唯香、鈴鹿美里、牧原愛あたりはEliseさんや青葉あたりに押しつけちゃったら? KARIONも和泉ちゃんに押しつけて」
と千里は言った。
 
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「まあ注力すべき鴨乃清見プロデュースのCD制作にほとんど関わってない私が言っても全く説得力無いけどね」
と千里は笑いながら付け加えた。
 

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千里が%%レコードに向かうと言って帰った後、私は千里の言葉を脳内で反芻してみた。
 
「つまり残すのはローズ+リリー、貝瀬日南、アクアの3つということか・・・」
 
と私は独り言のようにつぶやき、少し考えてみた。
 

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7月17日(日)の午前中、千里たち女子バスケ日本代表は成田からニューヨーク行きJAL006便で旅出って行った。JFK空港でブエノスアイレス行きに乗り継ぐ。
 
私は成田まで見送りに行き、千里や佐藤玲央美など顔見知りの選手たちと握手して送り出した。
 

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この日の午後、来週に迫っている苗場ロックフェスティバルに追加アーティストが発表された。
 
フェスの出場者は2月から順次発表されていたのだが、一応6月17日に第10弾の発表があってそれで確定。7月1日にはタイムテーブルも発表されていたのだが、ここに更に追加というのは異例のできごとであった。
 
それがステラジオとラララグーン・スペシャルだったのである。どちらもアーティスト本人たちのビデオメッセージ付きでの発表であった。
 
ステラジオはホシとナミがおそろいの浴衣を着て映っていた。
 
「ファンの皆さん、色々ご心配掛けて申し訳ありませんでした。色々あったのですが、少しずつ活動を再開させていただきます。年内にアルバム発売、そして年明けから全国ツアーの方向で考えています」
とホシが語るのを見て、全国のステラジオ・ファンが歓喜した。
 
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ラララグーン・スペシャルは、ラララグーンのメンバーが“5人”並んでいるのにファンが驚いた。ラララグーンはここ2年ほど公の場に姿を見せていなかったのだが、そこには見慣れたソウ∽(そうじ)、キセ∫(きせき)、ルイ≒(るいじ)、ハル√(はると)の4人の他に、60歳くらいに見える人物が車椅子に座って映っている。
 
ソウ∽が最初に発言して
「俺は事情によって名前を変えることにした」
と言う。
「今までソウ∽と名乗っていたんだけど、実はソウ∽というのは元々こちらの車椅子に座ってるおじさんの名前なんだよね。俺は一部のファンが俺の名前として呼んでくれていたショウジという名前をちょっと変えてショウを名乗る。名前の書き方はこれ」
 
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と彼が指し示す所にテロップが表示されて『ショ÷』という文字が表示される。
 
「まあそれで苗場に出してもらうことになったから、良かったら聞きに来てくれ」
と言って、ソウ∽改めショ÷はメッセージを終えた。
 

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なお、ステラジオとラララグーン・スペシャルの演奏時刻だが、ステラジオは2日目のHステージに、韓国の歌唱ユニットが出場キャンセルして偶然空いていた枠があったので、そこに入れられることになった。丸山アイとチェリーツインの間である。また、ラララグーンは適当な空きがないので最終日のGステージ先頭に無理矢理枠を作って入れることになった。それで朝9時からという早い時刻の演奏になった。
 

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ネットでは、ビデオメッセージの「背景」が話題になっていた。
 
「ステラジオの後ろに見えていた大きな橋、あれどこ?」
「あれは新湊大橋。富山県」
「じゃステラジオは富山県にいるの?」
「ステラジオは春先から何度か富山市や高岡市・南砺市などで目撃情報があった。おそらく富山県内の温泉にでもいるのでは?」
「宇奈月温泉で見たという話もあったぞ」
「じゃ、そこかも」
「元々ホシのお母さんが北陸出身だったはず」
「鯖江かどこかじゃなかったっけ?」
「金沢だった気もする」
 
「しかし怪我でもして温泉で療養してたのかね」
「いや、怪我なら怪我したと発表してもおかしくない」
「結局何してたの?」
「分からんなあ」
「もしや赤ちゃん産んでたのでは?」
「その説もあったけど、男関係の噂が全然無かったんだよなあ」
「実はホシは男でナミがホシの赤ちゃん産んだとか」
「んな馬鹿な!?」
「いやホシの男の娘説は昔からあった」
「赤ちゃんできたのなら、その子もお披露目したりして」
「ホシとナミの子供なら育つと歌うまいだろうなあ」
 
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「ラララグーンがいたのは、病院だよね」
「うん。あの雰囲気はどこかの病院だと思う」
「あの車椅子のじいさん誰?」
「あれが本物のソウ∽」
「本物って?」
「今回ショ÷と改名した方のソウ∽は影武者」
「嘘!?」
「本物のソウ∽は物凄いあがり症なんだよ。だからステージには通称ショウ∽と呼ばれていたショ÷が立っていた。でも口パク・当て振り。本物のソウ∽は影でベース弾いて歌っていた」
「知らなかった!」
 
「こういう場に顔を見せたのは初めてだと思う」
「デビュー前のライブ見ていた奴しか知らないよな」
「でも何か心境の変化でステージに立つつもりになったのでは?」
「でも車椅子に座ってたぞ」
「健康上の問題かもね」
「もしかして余命幾許(いくばく)も無いから最後のステージとか」
「マジ!?」
 
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ネットではどちらも勝手な噂や憶測が一人歩きし、今からでもチケットが欲しいという問い合わせが殺到する。主宰者は3日通しのチケット・ステラジオが出る2日目だけのチケット、ラララグーンスペシャルが出る最終日だけのチケット2000枚ずつの追加発売を発表したが、1時間でソールドアウトした。
 
 
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夏の日の想い出・影武者(4)

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