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■夏の日の想い出・影武者(13)

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(C)Eriko Kawaguchi 2016-09-11
 
私が近藤さんとアイコンタクトし、近藤さんの合図で楽器が鳴り始める。物凄い音量のサウンドに会場は総立ちになり、手拍子が始まる。
 
『門出』を演奏する。
 
金管楽器の心地よいファンファーレに続いて、木管楽器と弦楽器のコラボが美しいハーモニーを奏でる。ドラムスとベースがリズムを刻み、ギターや琵琶も装飾音を付加する。
 
そして私とマリの歌が始まる。
 

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観客の内、ローズ+リリーのファンはおそらく2割程度であろうが、その人たちや、こういったライブに慣れている人たちが中核になって手拍子の輪が広がっていく。
 
鴨乃清見ブランドの千里の渾身の作である。曲は深い迷いの淵から浮上したかのように、ひたすら明るい和音で貫かれている。これだけ明るい和音のみを使って曲が成立するというのが、この曲を最初聞いた時の驚きであった。
 
ただ曲は度々転調する。
 
この転調の時の音が物凄く取りにくい。
 
千里自身が作ってくれた編曲ではマリは必ず何かの楽器音あるいは私の声を聞いてから声を出せばいいようになっているが、私はまだ楽器が鳴っていない間に声を出さなければならない箇所がいくつもある。音感が良くなければ歌えない曲である。更にこの曲は、私の声域、マリの声域、ともに限界まで使っている。歌手の能力を酷使する曲だ。
 
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友人たちの中でこの曲をまともに歌えたのは、和泉、アスカ、青葉、そして松原珠妃の4人だけだった。珠妃は歌うことは歌えたものの高い方は声がややかすれ、「久々に限界を感じた」などと言っていた。しかし彼女のことだからその内しっかり歌えるようになっているだろう。
 
しまうららさんなどは譜面を見て即「ギブアップ」と言ったものの、保坂早穂さんは、普通の人が聴いたら充分歌いこなしているように聞こえる程度の歌を歌った上で、「上の方も下の方も声が出ない!私、修行の旅に出なきゃ」と言っていたらしい。
 

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演奏が終わる。
 
物凄い拍手がある。
 
私は演奏者を紹介する。
 
「リードギター・近藤嶺児、セカンドギター・宮本越雄、ベース・鷹野繁樹、ドラムス・酒向芳知、マリンバ・月丘晃靖、オルガン・山森夏樹」
 
「トランペット・香月康宏、トロンボーン・杉江諒太、フレンチホルン・一橋輝良、ユーフォニウム・元山一、チューバ・広瀬和昭」
 
「ヴァイオリン。野村美代子・鈴木真知子・伊藤ソナタ・桂城由佳菜・前田恵里奈・佐藤典絵」
 
「龍笛・大宮万葉、篠笛・鮎川ゆま、笙・若山鶴海、琵琶・若山鶴風、胡弓・若山鶴宮」
 
「フルート・田中世梨奈・久本照香・松川杏菜、クラリネット・上野美津穂、バスクラリネット・野乃干鶴子、ソプラノサックス・日高久美子」
 
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「そしてアルトサックス・近藤七星」
 
演奏者の紹介の締めに名前を呼ばれた七星さんが軽くピンクゴールドのサックスで1フレーズ演奏して拍手をもらう。
 
「そして、歌は私、ケイと」
「私、マリ」
「ローズ+リリーです!」
 
ここでまた大きな拍手があった。
 

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「それでは次の曲、振袖」
 
ダンサーの凛子とビビが振袖を着てステージに登ってくると私たちの左右に立つ。暑いのにご苦労様である。一部奏者の楽器持ち替えがある。美耶(若山鶴宮)はさっきは胡弓を弾いたのだが、この曲では三味線を弾く。月丘さんはマリンバの前からキーボード群の所に移動した。実際にはこの曲ではクラビノーバを弾く。田中さんがフルートからピッコロに持ち替える。またゆまは先ほどの曲ではドレミ調律の篠笛を吹いたのだが、この曲では和音階の篠笛を吹く。
 
『門出』がひたすら長調の主和音・属和音・下属和音で構成した曲であるが、『振袖』はGO!GO!7188風の疑似和音階ロックである。実際にはドレミファソラシの7音全部使っているのだが(更にソ#も使う)、しばしばヨナ抜きっぽい音階進行がある。
 
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しかしサウンドは、きらびやかである。ここ数年のローズ+リリーの曲ではよく使われている重厚なオーケストラ風の音に仕上げてある。
 
しばしば国内外のネットで書かれている「ボーカルが無くても大丈夫」な感じの曲である。しかし私たちはそのボリューム感のある音を背景に、しっかりとこのキラキラした曲を歌っていった。
 
演奏終了とともに拍手がある。私は
 
「ダンサー・松野凛子・竹下ビビ」
 
とふたりを紹介し、そのまま少しMCを入れた。この間に和楽器奏者さんたちとヴァイオリン奏者さんたちがステージから降りる。
 

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「それでは次の曲、コーンフレークの花」
 
拍手とともに、男性からの歓声が随分あがった。
 
演奏を始める。
 
和楽器を多用した『門出』『振袖』と違って、今度はサンバのリズムの曲である。
 
マリはもう襲われたことは忘れたかのように楽しそうにこの曲を歌っている。凛子とビビも、振袖を着たまま、笑顔で踊っている。
 
曲が進行していく中、ダンサーの2人はステージ上に置かれている薔薇の花と百合の花の衝立の裏側に回ると、そこで待機している美容師さんの手で急いで振袖を脱ぐ。その下には長襦袢代わりにスリップドレスを着ている。その格好で同時に衝立の外に出て行く。
 
ここで男性の観客から大いに歓声が上がった。
 
今回この衝立は実は「更衣用」に置いておいたのである。
 
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ダンサーのふたりは曲の終盤には再度衝立の後ろに行き、私とマリが最後の音符を歌い、曲がコーダになったところでビキニ姿で登場し、またまた男性の観客の歓声があがっていた。
 
曲が終わると、凛子たちは観客に手を振って再び衝立の裏側に行き、今度はチアリーダーのような格好をして出てきた。
 
「今の曲はサンバのリズムで作られているのですが、サンバと言えばブラジル。ブラジルといえば、もう目前に迫ったリオデジャネイロ・オリンピックですね。ということで、『スポーツゲーム』」
 
この曲にサックスの四重奏が入る。ソプラノソックスを持った日高さん、お揃いのピンクゴールドのサックスを持った青葉と七星さん、そしてテナーサックスを持った鮎川ゆまが前面に出てきて、私たちの横、マリの向こう側に並んだ。
 
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一方私の横にはトランペットを持った香月さんと七美花、トロンボーンの杉江さんが並ぶ。七美花は龍笛や笙も天才的だが、トランペットも物凄くうまい。
 
この曲はそのトランペットとトロンボーンによるファンファーレから始まるイントロにサックス四重奏が応え、以下、トランペットとサックスが掛け合いをしながら演奏が進む。金管木管のコラボが(自分で言うのも何だが)格好いい曲である。
 
それに月丘さん・山森さんのキーボードが彩りを添えている。
 
時々、月丘さんがキーボードの手を休めて笛でピー!という音を入れる。これは実際にスポーツの試合で審判が使っている笛である。
 
凛子とビビはこの曲では最初ボンボンを持って踊っており、まさにチアリーダーという感じであったが、途中で凛子がボンボンは床に置いて前転・後転などを始める。ビビが脇から持って来た踏み台を使って後方宙返り半回転ひねりの大技を見せると、観客がどよめいた。
 
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体操競技としては初級レベルの技だが、それでもチアリーダーの衣装でやると結構アピールする。更に2人はバドミントンを始めたが、そこにバスケットボールをドリブルする背の高い人物が入ってきて、凛子たちのそばで華麗なボール裁きをすると、これもまた歓声があがっていた。
 
演奏が終わってから私はパフォーマーを紹介する。
「トランペット・香月康宏・若山鶴海、トロンボーン・杉江諒太、ソプラノサックス・日高久美子、アルトサックス・近藤七星・大宮万葉、テナーサックス・鮎川ゆま」
 
「チアリーディングと体操っぽいことしてくれた人、松野凛子・竹下ビビ。バスケの素敵な技を見せてくれた人、女子プロバスケット選手の渡辺純子さん」
 
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私のこのアナウンスに一瞬観客がざわめく。
 
ここでざわめくのは織り込み済みだったので私は渡辺さんにマイクを向けた。
 
「あ、どもー。私の性別に疑念を抱いた方もあったかも知れませんが、取り敢えず戸籍上は女みたいです。高校時代に、一度女子校の寮に住んでいる友人を訪ねていったら『ここは女子校の寮なので男子は入れません』と言われました」
 
と彼女がソプラノボイスで言うと、客席がドッと沸いていた。
 
彼女はさすがバスケット選手だけあって身長も高いし、ベリーショートの髪型なので、大半の観客には男子選手に見えたのである。高校時代は女子選手なのに丸刈りにしていたらしく、女子トイレや女湯で悲鳴をあけられたことは数知れないらしい。
 
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この後、私たちは再び和楽器をフィーチャーして『灯海』を演奏し、続いて楽器を二重化した『ダブル』を演奏する。箸休めにシンプルなサウンドにアレンジした『たまご』を歌い、それから弦楽器の魅力をたっぷりと見せる『花園の君』を奏した。
 
その興奮がさめやらぬうちに私は告げる。
 
「そろそろ残りも少なくなってきました。この苗場だから歌う曲『苗場行進曲』」
 
拍手を受けたあと酒向さんのドラムスが単純なマーチのリズムを打つ。そして私たちはこの曲を歌う。
 
マリもかなり気分が高揚している感じだ。
 
曲が始まると、上手からユニフォームを着た20人ほどの女性の一団が登ってくる。これも毎度おなじみになった演出である。選手たちが曲のリズムに合わせて行進する。客席の手拍子もタンタンタンタンとシンプルなマーチのリズムを刻んでいる。
 
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最初のサビが終わって2番に入った所からは、1人ずつボールを端から端までドリブルで走って行っては次の人にパスするというパフォーマンスをし、これにも大きな拍手が送られていた。
 
そしてやがて終曲。
 
私は彼女たちを紹介する。
 
「プロバスケットボールWリーグのレッドインパルスの選手の皆さんでした。『スポーツゲーム』の所で華麗なボール裁きを見せてくれた渡辺さんもこのチームの選手です」
 
と私が言うと、渡辺純子が手をあげる。それにまた拍手が起きていた。
 

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その渡辺さんが寄ってきてユニフォームのポケットに入れていたお玉を私とマリに渡す。
 
「そういう訳でとうとう最後の曲になってしまいました」
と言って私がお玉を振ると、客席から
 
「ピンザンティン!」
という声が多数返ってくる。
 
そしてこういうやりとりをしている間に、ステージにはヴァイオリン奏者たちが入って来ていた。
 
「ありがとう!そういう訳で最後の曲『ピンザンティン』です!」
 
私が第1ヴァイオリンの野村さんとアイコンタクトを取り、ヴァイオリンがソドレ・ミーファラソファミ・レーシミー・ラララシドドシラ・ソーというこの曲のサビを演奏する。
 
2度繰り返した所からドラムスが入り、短い前奏を経て私たちは歌い出す。
 
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客席でもお玉を振ってくれている人がたくさんいる。さきほど行進してくれたレッドインパルスの人たちも一緒にお玉を振っている。更に今日伴奏に参加していた人で、この曲の演奏には参加していない人たちも下手からお玉を持ってあがってきて一緒に振る。更にスタッフさんの一部もお玉を振っている。
 
マリも本当に楽しそうに歌っている。私もそれを見ていて本当に楽しい気分になる。
 
大きな盛り上がりの中、曲は終曲を迎えた。
 

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4万人の観客が一体となった、割れるような拍手、そして多数の歓声の中、私たちはステージを降りた。
 
すると拍手がアンコールを求める拍手に変わる。私とマリは進行係さんが右手でOKサインを作るのを見てステージに上がっていく。
 
拍手が普通の拍手に変わる。
 
「アンコールありがとうございます。本当にアンコールされるのって気持ちいいですね。マリひとこと」
と言って私はマリに振る。
「苗場はとっても好きです。去年は食べ損ねた***さんの焼きそばに今年はありつけて凄く美味しかったので満足です」
 
とマリが言うと、客席は大きな笑い声である。マリはなぜみんなが笑っているのか分からない様子。
 
私たちが話している間にスターキッズがスタンバイする。
 
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「それでは『影たちの夜』」
 

大きな拍手の中、伴奏がスタートする。
 
そこに松野凛子と竹下ビビ、鮎川ゆま、更に青葉とその友人たちが階段を駆け上ってきて私たちの後方に並び、この曲の振り付けで踊り始めた。凛子とビビは今日ずっと着ていたチアリーダー風の衣装、ゆま・青葉たちも伴奏者の白いポロシャツの衣装のままである。ここでダンスが入る予定は無かったので、ノリで出てきたようだ。
 
この曲は2012年春に発表したもので、結果的にはこれがローズ+リリーの復活につながった曲である。
 
あれから4年。2012年はまだ限定的な活動だった。2013年は08年組を立ち上げ、前半は『Flower Garden』の制作に没頭、そのあと5年ぶりのツアー、初の海外公演(台湾)を実施。2014年は「KARIONは4人だった」という衝撃の発表をして、春にはローズ+リリーとKARIONのダブルツアーを実施。その後『雪月花』の制作を急いでいたが、これを千里の助言でやり直し。昨年のアルバムに負けないハイクォリティの作品に仕上げることができた。
 
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2015年は『The City』のロケハンに海外の都市を回ってきたいと言ったら、いつの間にかそれがローズ+リリー初のワールドツアーの企画になってしまい、私自身が驚いた。そもそも『The City』はアルバムの制作方針が認められるまで度重なる会議に出席する羽目になり、甚だ精神的に疲れた。
 
世間の評価は十分高かったし、販売成績も前作・前々作ほどではないにせよ充分大きい。
 
しかし私は心のどこかに微妙な違和感を持っていた。
 
営業側の思惑に振り回されるのはたまらんと思った私は、今年はレコード会社の内紛が起きている間に、次のアルバムは日本の美を歌う『やまと』というのをマスコミやネットをうまく利用して既成事実を積み上げて、精神的ゆとりの無かった町添さんたちに認めさせてしまった。
 
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しかしこちら主導で進めた以上、ある程度の結果を出さないと来年からまた厳しいことになる。
 

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■夏の日の想い出・影武者(13)

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