広告:ここはグリーン・ウッド (第5巻) (白泉社文庫)
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■夏の日の想い出・影武者(12)

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「先生は今日は誰かのスタッフですか?」
と私が尋ねる。
 
「Hステージのトリを務めるラナ・クリスタルのね」
「ラナ・クリスタルに関わっておられるんですか?」
「あの子は元々私がプロデュースして売り出したのよ」
「それは知らなかった」
 
「あの子は場末のスナックで歌っていたんだよ。それをたまたま私が見つけてね。You can be big.と言って、知り合いのレコード会社の制作者の所に連れて行った。それで開花したんだよ」
 
「へー」
 
「あっ。彼女の曲の多くを書いている Woody A. Castle というのが雨宮先生ですか!」
「そうそう。雨宮三森の宮と森から Woody Castle. Aは雨宮のA。実は最初は雨と森からRainy Woodと名乗ったんだけど、別の日本人と間違えられ、ひっくり返してWoody Rainにしたら今度はWoody Allenと間違えられるからCastleにした」
 
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「なるほど」
 
「ラナの曲って、歌詞は本人が書いていますよね?」
「アメリカでは歌詞は歌う本人が書くのが基本。だから作詞家という職業が存在しない」
 
「あ、それは聞いたことある」
 

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「でも今日のHステージはさ、代理戦争だね」
と雨宮先生は面白そうに言う。
 
「代理戦争?」
「このラインナップを見てごらんよ」
 
と言ってタイムテーブルのHステージの所を見せる。
 
1000-1030 山森水絵 
1100-1130 南藤由梨奈 
1200-1300 貝瀬日南 
1330-1430 ミラーミラー(ベルギー) 
1500-1600 ゴールデンシックス 
1630-1730 AYA 
1859-1959 ラナ・クリスタル(アメリカ) 
 
「山森水絵は鴨乃清見、まあこのメンツは知っていると思うけど醍醐春海と私と鮎川ゆまが中心。南藤由梨奈は鮎川ゆまだけど楽曲は上島とヨーコージ、つまり蔵田とケイ、貝瀬日南は上島と秋穂夢久。これもこのメンツは知ってそうだけど実はマリ&ケイ、ゴールデンシックスは醍醐春海、AYAは上島雷太、そしてラナ・クリスタルは私。新旧のトップ・プロデューサーの戦いだよ」
 
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と雨宮先生は言った。秋穂夢久の正体は貝瀬本人も知らないのだが、ここにいるメンツは全員元から知っていたようである。
 

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私もあらためてこのラインナップを見て凄いと思った。ミラーミラーを外してプロデューサーの名前で書けばこうなる。
 
鴨乃清見(千里・ゆま・雨宮) 
鮎川ゆま・上島・蔵田・ケイ 
マリ&ケイ・上島 
醍醐春海(千里) 
上島雷太 
雨宮三森 
 
「ゆまも千里も頑張ってるし。私も頑張らないといけないです。まだまだ上島先生にも蔵田さんにも雨宮先生にも全然かなわないですけど、少しでも追いつけるといいのですが」
 
と私は言ったのだが、雨宮先生は
 
「ケイはそういう発言を本気でしているのか、優等生的おべんちゃらで言っているのか分からん」
と言う。
 
「え?何か変でした?」
 
「醍醐春海なら、私や上島・蔵田は早々に引退するかスキャンダルで失脚するだろうから、自分が主役になりますよと言う」
と雨宮先生。
 
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「ああ、千里ならそう言いそうだ」
と花野子も言っている。
 
「雨宮グループって、そのあたりがお互い遠慮無い感じですね」
と小風。
 
「そうそう。蔵田グループは、ケイにしてもプリマヴェーラにしても松原珠妃にしても、良い子すぎるんだよ」
 
と雨宮先生は言った。
 
「あれ?上島グループって感じのミュージック・プロデューサーとか作曲家っていませんよね?」
と梨乃が言う。
 
「山折大二郎がいるけどね」
と雨宮先生。
 
「ああ・・・」
「演歌の人か」
「上島は弟子にしたつもりはないけど、本人は上島の弟子を自称している」
 
私はつい吹き出した。
 
「何か言いたそうだね、ケイ」
「いえ、雨宮先生の弟子は逆にみんな先生の弟子だというのを否定しますよね」
「まあ、教育がいいからね」
「でもそんなこと言ってるくせにすごく団結力がある」
 
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「また本気なのか、おべんちゃらなのか分からん発言をするし」
「いえ本気ですよ」
「はいはい」
 

ゴールデンシックスのメンバーは11時からリハーサルをするということで練習用スタジオに行った。私と政子、青葉や小風もそちらに見学に行った。
 
今回のゴールデンシックスのメンバーは
 
Gt.梨乃、KB.花野子、B.美空、Dr.長丸香奈絵、Vn.長丸穂津美、Fl:布施恵香
 
となっている。布施(旧姓大沢)さんはゴールデンシックスの元になったDRKのメンバーで北海道在住。千里とは幼稚園の頃からの友人という。千里がオリンピックのため南米に行っていて出られないので代わりに頼むと言われて北海道から出てきてくれたらしい。
 
彼女は久々の道外と言っていた。
 
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「結婚すると、なかなか動けなくて。今回も旦那はぶつぶつ言ってたけど、ギャラの金額聞いて、突然機嫌が良くなった」
 
「ご飯とか大丈夫ですか?」
と窓香が訊くと
「カップ麺を20個に、サトウのごはん、レトルトカレーまで置いて来たから大丈夫」
などと恵香は言っていた。
 

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ゴールデンシックスのリハが終わった後、同じスタジオでローズ+リリーのリハーサルを行った。
 
「私たちは6人しか居ないけど、そちらはデュオのはずが凄い人数だ」
などと花野子が言っている。
 
「何人いるんだっけ?」
とマリが尋ねる。
 
「うーん。30人くらいかなあ」
と私が言ったが
 
「マリさん・ケイさんまで入れて33人です」
と氷川さんが即答する。
 
さすが氷川さんだ。
 
このリハーサルでは、風花がマリの代りに歌唱する。風花はKARIONの演奏要員で、KARIONのステージには立つもののローズ+リリーのステージには参加しないのでローズ+リリーのリハでマリの代理が務められるのである(音源制作ではフルートやクラリネットを吹いたりキーボードを弾いたりもしてくれている)。
 
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政子自身はポテチなど摘まみながら、楽しそうに眺めていて氷川さんなどと言葉を交わしていた。
 

リハーサルの後は、和泉たちはゴールデンシックスとその後のAYAのステージを見に行くと言っていたが、私と政子は控え室に戻って仮眠を取った。
 
16:30に目を覚まして軽く食事を取る。政子は例によって「量が少ない」と文句を言い、氷川さんから「本番前はあまり食べたらダメです」と言われていた。
 
控え室を出て、政子と2人で、氷川さんの運転するカートに乗り会場に向かう。17:20にGステージに到着した。
 
もう既に前の演奏者は撤収しており、ステージではこちらの楽器の設置・接続確認作業が行われていた。ステージ上には赤い薔薇の写真を貼った衝立と、白い百合の写真を貼った衝立が立っている。マリが立つ上手側に薔薇、ケイが立つ下手側に百合という「逆配置」になっている。
 
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私たちが行った時点で伴奏者も7〜8割集まっていた。一応集合時刻は17:30である。
 
「昨日のKARIONより早い時刻のスタートだね」
と政子が言う。
 
「うん。昨日のKARIONは日没スタート。今日のローズ+リリーは日没エンド」
「なるほどー」
 

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17:55。伴奏者が全員ステージに上る。所定の位置に付き、各自自分の音がちゃんと出るか確認、また最終的な調弦などもする。伴奏者の今日の衣装は白い地に赤で Rose + Lily Naeba 2016 と染め抜かれたポロシャツに、下は女性は白いスカート、男性は白いズボンである。念のため
 
「女性でもズボン穿きたい人はズボンでいいですし、男性でもスカート穿きたい人はスカートでもいいですよ」
 
と言ったら、鮎川ゆまが
「僕はスカートにしとこうかな」
などと言ってスカートを取っていた。ノリで鷹野さんが
「じゃ俺もスカートにしようかな」
と言ったものの、鷹野さんが入るようなスカートは無く「残念」と言っていた。彼はウェストが82cmである。
 
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「おたかさん、自分に合うスカートが無いことは分かってて言ってるでしょ」
と七星さんから言われていた。
 
「今度はおたかさんのウェストでも入るスカート用意しとこうかな」
と七星さん。
 
「スカート穿くなら、すね毛は剃っておけよ」
と近藤さん。
 
「スカート穿くなら***も切っておけよ」
と酒向さん。
 
「それはちょっと考えさせて」
 
しかし花野子にも言われたが物凄い人数である。演奏者以外にも主宰者側のスタッフ、★★レコードや○○プロのスタッフもいる。主宰者のスタッフは青いシャツに女性は同色のショートパンツ、男性は長ズボン、★★レコードのスタッフは黄色いシャツにやはり同色のショートパンツあるいはスカート、男性は長ズボン。女性でスカートの人とショートパンツの人がいるのは好みの問題か。○○プロの人たちは白いワイシャツやブラウス姿で腕にスタッフの腕章を付けている。
 
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しかし、これだけ居ると無関係の人が1人くらい混じっていても分からないよなあと私は思った。
 
17:59、私と政子はステージへの階段を登る。
 
こういう時、もともと政子が私の左側に立つので、政子が先に立ち、私がその後に続く形になる。
 
物凄い歓声と拍手である。
 
私たちがもうすぐステージ中央にたどり着くという時、NAEBA 2016 と染め抜かれた青いシャツを着た24-25歳くらいの女性がひとりステージ後方から歩いて私たちの方に向かって歩いて出てきた。私はマイクの調整か何かするのかなと思った。
 

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その時、突然私の脳内に青葉の
 
『マリさん、ケイさん、逃げて!!』
という声が響いた。
 
へ?
 
そして次の瞬間、私たちに向かって歩いて来ていたスタッフのシャツを着た女性が果物ナイフのようなものを取り出すのを見た。その女性がナイフを構えたまま、マリに向かって突進する。
 
ところが、マリは突然何か見えない壁にでもぶつかったかのように止まった。というより跳ね返された。
 
マリが私の方に倒れてきたので、私がマリを支える形になる。
 
そしてマリに向かってきた女性は目標が不規則な動きをしたことで目測を誤り、マリの目の前を走り抜けて、そのままステージ下に落下した!
 

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異変に気づいたのは前の方に居た観客だけだと思う。
 
ステージ下に居た警備員さんが駆け寄り、ナイフを取り上げ、女性を拘束して会場外へ連行して行った。代わりに数人の別の警備員さんがステージ下に走り寄ってきて、警戒に当たってくれた。
 
青葉、七星さん、風帆叔母が駆け寄る。他の人は動かないようにと、ゆまが制止してくれた。
 
「マリ、大丈夫?」
と私は声を掛ける。
 
「大丈夫。でもホントに目の前を走り抜けて行った!びっくり」
 
「怪我してない?」
と言って私はマリを後ろを向かせ、服をめくって目視する。風帆叔母と七星さんが壁になってくれた。
 
見たところ大丈夫のようである。青葉も
「怪我は無いようですね。波動の乱れがありません」
と言う。
 
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ステージ脇から進行係さん、風花、氷川さん、窓香が駆け上がってきた。
 
「大丈夫ですか?」
「大丈夫です。演奏を始めます」
 
「お願いします!」
 
氷川さんもマリの身体をチェックして怪我は無いようだというのを確認。それで演奏を始めることになった。
 

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「お騒がせしました。演奏を始めます」
と氷川さんがスタンドマイクに向かってアナウンスした。青葉たちも自分のポジションに戻る。更に氷川さんは付け加える。
 
「お客様に念のため再度お願いします。携帯・スマホ・タブレット・デジカメ・ボイスレコーダーなどの電子機器をお持ちの方は確実に電源を落としてください。この曲を福島で演奏した時は、スマホが壊れた方も多数ありました。ちなみにこの曲の音源制作をした時もスタジオの機器が大量に壊れました」
 
客席でポケットやバッグからスマホを出して電源を確認する客が結構いた。氷川さんのこのアナウンスで、一部の客は、さっきのは違法撮影か何かしようとしていた客が警備員に連れ出されたのかなとも思ったようで、かえってきちんと電源を落としてくれたようであった。
 
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それで氷川さんたちはステージを降りる。制服を着た警備員さんが2人入れ替わりに登ってきて、下手脇と上手脇に立ってくれた。
 
 
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