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■夏の日の想い出・やまと(1)

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(C)Eriko Kawaguchi 2017-02-17  
この物語は時系列的には「影武者」(2016.09公開)の後のストーリーである。
 
2016.7.20(水)に「鴨乃清見の歌を歌いたい歌手募集」という実質的なオーディションの優勝者・山森水枝がリオデジャネイロ五輪をテーマにしたアルバムでデビューした。山森自身はその2日前の18日に、リオ五輪を特集する番組に出演した。この番組では有望選手の紹介などをしながら、山森の曲を流す。
 
この番組のトーク部分で何かスポーツしてた?と訊かれた水絵が
「サッカーのゴールキーパーしてました」
と答えたことから、自らもゴールキーパーだった品川ありさが
「私もゴールキーパーだったよ。今度ゴールキーパー対決しない?」
と言ったら、水絵も
「ぜひさせてください」
と言った。
 
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このやりとりは台本になかったものであるが、テレビ局では急遽ふたりの対決を実施し、翌週のバラエティ番組の枠内で放送した。
 

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場所はJ1リーグに所属するエールズのホームスタジアムである。メンバーには今回の五輪の代表選手に選ばれている人もあるが、むろんこの時期は日本代表の選手はいない。しかし1軍の選手が6人出てきて見守っている。
 
試合方式は元女子サッカー選手でタレントの長野光子さん(50歳)がシュートするPK 10本の内、何本を停められるかというものである。レポーター役として先日の番組にも出ていた、ゴールデンシックスのリノンが自らもサッカーウェアを着て出てきている。ちなみに、水絵は水色、ありさは赤のサッカーウェアで、長野さんは黒、リノンは黄色を着ている。長野さんは最初4人並んでカメラに映ったところで
 
「あんたたち3人は信号機みたいだ」
などと言う。
 
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「じゃ私は青でどんどん通しちゃったりして」
と水絵が言ったので
 
「じゃウェアの色を選んだ時点で勝負が決まっていたりしてね」
とリノンは言っていた。
 
しかし勝負はなかなか見応えのあるものとなった。
 

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水絵とありさが1回交代でゴールを守るが、特別ルールでシュートが枠内に飛ばなかった場合はそのままやり直しをすることにする。
 
長野さんはいきなり枠外に蹴って
「今のは水絵ちゃんをびっくりさせたんですよね?」
などとリノンにフォロー!?されていた。
 
そして水絵もありさも最初の5本のシュートを全部止めた。
 
「やるじゃん、やるじゃん、すごいじゃん」
とリノンが2人の肩を叩いている。
 
水絵は8本目を入れられてしまい、マジで悔しがっていた。しかしありさも9本目を入れられてしまい、対決はゴールデンゴール方式の延長戦となる。
 
しかしこの後、どちらも阻止続ける。
 
とうとう20本まで行ったところで、ディレクターさんから、声が掛かる。(この間かなり早送りされている)
 
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「長野さん。もうボールに勢いが無くなってる」
「すみませーん。体力不足。もう限界」
 
それで見守っていたエールズの選手に声を掛ける。
 
「申し訳ないのですが、どなたか代わって頂けませんか?」
するとディフェンダーの森富選手が
 
「じゃ僕がやろう」
と言ってシュート役を買って出てくれた。
 

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すると現役引退して20年経っている女子選手と、現役バリバリの男子選手ではスピードが全く違う。
 
今度はふたりとも停めきれない。
 
2人とも2本連続で決められた後で、次のボールは森富さんも手加減して蹴ってくれた。すると水絵はこれを美事はじいてゴールを守る。その次のありさは一瞬逆を突かれたものの、ギリギリで片手を当ててボールを逸らした。
 
その次のボールも2人とも阻止する。
 
そしてとうとう25本目の対決。
 
水絵はシュートのボールを弾いたものの、弾いた方角が悪く、ボールはゴールの隅に飛び込んでしまった。
 
「ミスったぁ!」
と本当に悔しそうな表情の水絵。
 
ありさの番になる。もうありさはテレビ番組だということをほぼ忘れてマジ100%である。森富さんのシュート。そこに飛びつく。
 
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しかしボールはわずかにありさの腕の上を通過してゴールに突き刺さった。
 

ありさがハアハア大きく息をしながら、いったんひざの所に両手を突いて身体を休めるようにしたあと、歩いて水絵と交代する。
 
ところがここで「ピーッ」という笛が吹かれる。
 
笛を吹いたのは長野さんである。
 
「どうしました?」
とリノンが訊く。
 
「試合終了〜」
「そうなんですか?」
「勝負が付かなかったので両者優勝!」
と言って水絵とありさの手を左右の手で握って高く挙げた。
 
「確かにここまで競り合ったらもういいかもね」
と森富さんも笑って言う。
 
「そういうことで、この勝負は引き分けとなりました!」
とリノンがカメラの傍まで顔を近づけて言う。
 
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それでさすがに疲れた表情の水絵とありさが握手し、そのままハグしあった所で、この対決の放送は終了した。
 

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ネットの意見。
 
「これ、やらせじゃないよな?」
「これはガチだと思う。どちらも凄い気合い入ってた」
 
「でも引き分けにしたのはうまかった。どちらかが勝てば負けた方のファンが相手を嫌いになったりしかねない」
 
「そういう意味では危険な勝負だったけど、結果的には水絵ちゃんとありさちゃんは、凄く仲良くなったんじゃなかろうか」
 
「ファンもお互い相手を称賛するムードになったよな」
 

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2016年8月11日、オーディション番組で選ばれた3人のユニット《三つ葉》の最初のCDが公開され、3人はこれを手売りして3万枚売ることができたらメジャーデビュー、売れなかったら性転換!という課題を与えられた。
 
実際の発売は1回目は8月13日に金沢、2回目は14日に福岡、3回目は20日に札幌と発表されていたのだが、実際には金沢で既に2万枚売れ、残りの1万枚も福岡で売れて、札幌に2000枚買いに行くなどと張り切っていた波歌(しれん)のお父さんは、計画が空振りになってしまった。
 
3人のメジャーデビューは決定し、デビューCDはステラジオの作品と東郷誠一先生の作品(本当に書いたのは青葉)をカップリングすることになった。
 
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2016年9月4日(日)大安、チェリーツインのドラマー(キーボードを弾くこともある)桃川春美が長年の彼氏・真枝亜記宏と結婚式を挙げた。
 
彼氏と言っても実は春美のお兄さんである。ふたりは兄妹ではあるものの血はつながっていないので結婚可能である。春美は高校生の時に両親を亡くして亜記宏のお母さんの養女になったものの、入籍はしていなかったので苗字は桃川のままであった。当時彼女は本名の「春道」の下の「みち」を取って「桃川美智」あるいは「真枝美智」と名乗っていたのだが、2007年に自殺未遂を起こした後、秋月義高・大宅夏音に助けられた時、名前を聞かれたのに「桃川春道」と名乗ったのが「桃川春美」と誤って聞き取られたまま、桃川春美の名前で美幌町のマウンテンフット牧場に居座ってしまった。
 
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それで彼女のことを知る人の中には彼女を「春美ちゃん」と呼ぶ人と「美智ちゃん」と呼ぶ人があったのだが、本人も迷った末、姓名判断では「春美」の方が良いことから、戸籍上の性別変更をする際に名前を「桃川春道」から「桃川春美」に変更することにしたらしい。
 
彼女はMTFで高校時代までは男子制服で通学していたものの大学に入って以降はずっと女性の格好で過ごしていた。高校1年の時に去勢し、自殺未遂をする直前の2007年には陰茎も切断しているが、性転換手術を受けたのは結局2014年の正月になったらしい。ただ彼女は性転換手術を受けたこと、そして戸籍を女性に変更していたことをごく最近まで誰にも言っていなかったので、正直私も彼女から「今度結婚式を挙げるんですけど、もし良かったら招待状を出したいのですが・・・」と聞いた時、驚いた。
 
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「もしかして戸籍を直されたんですか?」
「実は2年前の2014年2月27日に直したんです」
「そうでしたか!」
「これ元々の誕生日なんですけどね」
「それは凄い」
「性別変更の申請をした時、これもしかしたら誕生日前後に認可されるかもという気がしたんですけど、ジャストになりました。ですから36歳の誕生日から私は法的にも女になったんです」
「うまく行きましたね〜」
 

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結婚式・祝賀会(会費制)は札幌市内のホテルで行われた。
 
札幌が選ばれたのは彼女一家の住所事情がある。
 
春美は美幌町のマウンテンフット牧場に次女のしずかちゃんと一緒に住んでいる。一方、亜記宏はひとりで稚内市内に住んでいてラーメン屋さんを経営している。ふたりは毎月1回、ラーメン屋さんの定休日(第3水曜日)にデートしているものの、春美さんがチェリーツインの仕事などにぶつかり会えない月もあるらしい。
 
ふたりの間には3人の子供がおり、長女の理香子は函館市で亜記宏の従姉にあたる餅屋美鈴さんの所で暮らしている。そして三女の織羽は旭川市内の神社で暮らしている。つまり家族5人が稚内・美幌・函館・旭川と4ヶ所に別れて暮らしている。
 
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彼女たちは結婚後もこの別居生活ならぬ分散生活を続けるらしい。
 
「私はチェリーツインの活動があるから、美幌を離れる訳にはいかないんです。でも彼も創業40年のラーメン屋さんを経営して地元のお客さんたちに愛されているから、稚内を動けないんです。娘たちも各々の育ての親と仲良くしてるし友だちもたくさんいるから、そこから動きたくない、ということで分散生活。まあ私は月に1度は函館と旭川に行きますけど」
と春美さんは言っていた。
 
「彼氏の所は?」
「それは当然向こうが私の所に来ます。通い婚です」
「なるほどー」
 
また亜記宏は札幌生まれで大学生の時まで札幌で暮らしていたし、春美も高校から大学までを札幌で過ごしている。それで友人も札幌近辺に多く、本人たちの集まりやすさと、関係者の多さで札幌が結婚式の場所に選ばれた。
 
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私は旭川の神社から、織羽を連れてきた人物を見て、びっくりした。
 
「天津子ちゃん!」
「おはようございます、ケイさん」
と彼女は笑顔で挨拶した。
 
「なんか複雑な家庭っぽいけど、天津子ちゃんも関わっていたんだ」
「うん。この子は私の娘〜。物凄く優秀な巫女」
と天津子は言うし、織羽も
「私のお母ちゃんは、格好いいんだよ。悪霊やっつける呪文たくさん習った〜」
などと言っている。
 
おそろいの黒いビロードのドレスを着て並び仲良くしている理香子・しずか・織羽の3人の娘(中2・中1・小6)は戸籍上は亜記宏と前妻・実音子の子供ということになっているものの、遺伝子上は桃川春美の子供らしい。今回の結婚に伴い、春美は3人を自分の養女にもしたので、法的にも親子になった。
 
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理香子は育ての親である美鈴さんを「お母ちゃん」と言い、春美を「ママ」と呼ぶ。織羽も天津子のことを「お母さん」と呼び、春美を「ママ」と呼ぶ。
 

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なお、桃川さんは結婚して法的な苗字は真枝になるものの、チェリーツインでの名前は桃川春美のままにするということだった。
 
「実際には、ご友人たちにはけっこう真枝美智で通っていたみたいですね」
チェリーツインの大宅さんが言っていた。
 
「事実上夫婦をしていたからですか?」
と政子が訊くが
 
「いや、事実上の兄妹だったから」
「あ、そうか」
 
「大学にも戸籍名は桃川春道、でも通称は真枝美智と登録していたから、大学の友人はみんな真枝さんと思っていたらしい」
と大宅さんは説明する。
 
「へー。でもいつ頃から恋愛関係にあったんだろう」
と私が疑問を呈すると
 
「春美ちゃんが両親を亡くして真枝家に住むようになった頃から相思相愛だったらしい。それもあって亜記宏さんのお母さんは春美ちゃんを正式には入籍しなかったんだよ。兄妹になってしまっても結婚は可能だけど、世間的には兄妹の結婚に抵抗感を感じる人がいるから。でも亜記宏さんは2001年に他の女性と結婚する道を選んで、春美ちゃんは失恋してしまう。でも2011年に、10年ぶりに仲が復活したんだよ」
と大宅さんは言った。
 
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その話を千里はじっと何か考えるかのように聞いていたが、思い直したように言った。
 
「もっとも彼氏との関係が復活する前に、彼氏の子供たちが自分の娘になっちゃったんだけどね」
 
「そうそう。あの3人にすごく懐かれてしまって」
と大宅さんは言っていた。
 
「当時は自分の遺伝子上の娘だなんて、つゆ知らなかったんだけどね」
と千里。
「自分の知らない内に子供ができているって凄いよね」
と大宅さん。
「でも最近は、あの3人は自分が産んだと彼女、主張してるね」
と私。
 
「というより本人はそれを信じ込んでいる気もする}
と秋月さんが言う。
 
「あの子、思い込みが激しいから」
と大宅。
「うん。あの子は想像や妄想と現実がしばしば混線している」
と秋月。
 
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「でも、いいんじゃない?実際けっこう母親してるし」
と大宅は言う。
 
「うん。母親をするのは快感なんだよ」
と千里が言うので、私は、千里は京平君にかなり頻繁に会っているのではという気がした。
 

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