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■夏の日の想い出・やまと(3)

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私たちが東城先生と会ったのは、この結婚式の1ヶ月ちょっと前であった。
 
私と政子は制作中のアルバム『やまと』の中の曲、『行き交う船たち』と『やまとなでしこ恋する乙女』のPV撮影のため、苗場ロックフェスティバルが終わった翌日の7月25日(月)の夕方、北海道に飛んだ。
 
札幌で1泊した後、26日最初に政子が2年前に『行き交う船たち』の詩を書いた忍路(おしょろ)に行き、そこで撮影しようとしていたら、何だかご近所の人が寄ってくる。何してるんですか?と訊かれるのでプロモーションビデオの撮影をしてますと言うと、だったら船に大漁旗立てましょうなどと言われ、えらい騒ぎになってしまった。
 
それで大漁旗を立てた漁船が本当に『行き交う』状態で、お母さんたちが手を振ったりする中、私たちは歌うことになり、とっても賑やかなビデオになってしまった。半ば演歌の世界である。サイン色紙を書こうとしたら「ぜひこれに」と言われて、真っ白い大きな布に書くことになり、大漁旗と一緒に船に掲げられていた!
 
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この曲は氷川さんの提案で『東へ西へ』と改題することにしたが、後でよくよく地図を見たら、忍路漁港を行き交っていた船たちは南へ北へと移動している!
 

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午後いっぱい掛けて私たちは車(プリウスα−7人乗り)で美幌に移動したが、撮影班の内高倉・工藤の2人は忍路に残って夕日を撮影した。漁協の人たちに「ここの夕日がきれいだよ」と言われて、かなり「怖い感じ」の場所まで連れて行かれたものの。本当に美しい夕日が撮れたようである。彼らは夜中にもう一台の車(アクア)で走って美幌に来た。
 
先行して美幌のマウンテンフット牧場にお邪魔した私たちは「ようこそ。こんな所まで」と言われて、チェリーツインのメンバーから夕食に石狩鍋をごちそうになったが、政子が「美味しい美味しい」と言ってたくさん食べていた。
 
その後、中学生の桃川しずかにセーラー服(撮影用衣装)姿で出演してもらって『やまとなでしこ恋する乙女』の撮影を行った。この撮影はチェリーツインが練習用に使っている防音工事のされているサロンにブルーバックのスクリーンを取り付けて行った。
 
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また翌27日は小清水町の原生花園に彼女を連れて行き、ひとりで歩いている所、友人役に調達した網走のローカルアイドルグループに所属する古都紘子ちゃんと一緒に歩いたりおしゃべりしているシーンを撮影した。
 
ふたりの衣装はセーラー服を着せたものと、浴衣を着せたもの、振袖を着せたものの3パターン撮影しておいた。
 
また網走市内のスタジオで、ふたりがドレスを着て、しずかがヴァイオリン、紘子ちゃんがピアノで合奏しているシーン、ふたりが振袖を着て、しずかが篠笛、紘子ちゃんが三味線で合奏しているシーンも撮影した。ただしヴァイオリンとピアノの合奏は本物だし、しずかの篠笛も本当に吹いているのだが、紘子ちゃんの三味線だけはフェイクである。
 
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撮影は27日午後に終了したので、私たちは女満別→羽田の最終便(20:20-22:20)で帰ることにしたが、マウンテンフット牧場のオーナーが
 
「まあまあ」
と言って、私たちと撮影隊を焼肉で歓待してくれた(昨日歓待してくれたのはチェリーツインで、今日は牧場のオーナー)。
 
しかしこんなにしてもらっては向こう側の負担が、撮影場所の借り賃として払った金額を超えてしまいそうだ(逆にその金額を使い切りたいのかもという気はした)。ちなみに桃川しずかに払った出演料はこれとはまた別である。
 
「お肉たくさん頂きます!」
と言って政子は嬉しそうに美幌和牛のお肉をたくさん食べていた。
 
「北海道はお魚もお肉も、本当に美味しい」
と政子はご機嫌である。
 
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氷川さんは桃川さん・少女Y(桜木八雲)と3人でなにやら話し込んでいる。七星さんと政子は少女X(桜川陽子)・気良姉妹にオーナーの妹さんと女6人でどうもファッションや食べ物の話題で盛り上がっているようだ。気良姉妹は自分では声を出せないものの、人の話を聞くのは問題無いし、筆談で意志表示できるので結構ちゃんと会話が成立するようである。撮影係の★★レコードの3人はどうも仕事を半ば忘れてしまっているようで、紅姉妹とオーナーの男6人でなにやら危ない話で盛り上がり、お酒も進んでいるようであった。また紘子ちゃんは風花とオーナーの奥さんと3人で色々話をしていたが、紘子ちゃんはどうも中央に進出する足がかりを模索している感じであった。
 
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ということで、消去法で私は桃川しずかと一緒になった。私がこの子を最初に見た時は小学1年生くらいで、あの頃はやや中性的な雰囲気もあったのだが、今やとても可愛い女子中生となっている。
 

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「しずかちゃんって、結構昔からチェリーツインのビデオに出てるよね」
「私もそういうの好きだから、結構『出る出る』とか言って出ていたんですよ。でも小学生の内は、友だちとかから何か言われたらいけないと言われて顔は出してなかったんですよね。今回初めてお母ちゃんから顔出しOKが出ました」
と彼女は響きの豊かなメゾソプラノボイスで言う。
 
母親(父親?)の桃川春美が音楽系の大学を出て楽器メーカーで仕事をしていたほどの音楽の才能のある人だし、お祖母さんは高校の音楽の先生だったと聞いた。チェリーツインが練習用に使っているサロンに置かれているグランドピアノなどもそのお祖母ちゃんの遺品らしい。しずかはこのピアノを小さい頃から自由に弾いていた。やはりそういった遺伝と環境もあるのか、彼女も音楽的な才能は高いようである。今回の撮影で彼女のヴァイオリンと篠笛を聴いたが上手かったし、別途歌も聴かせてもらったが、今すぐ歌手デビューしてもいいくらい上手いと私は思った。
 
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「将来、タレント活動とかするつもりはあるの?」
「してもいいけど、大学出てからにしなさいと母からは言われているんです。でも高校生くらいになったら、バンドか何かでもしたいんですけどねー」
 
「うん。そういうのもいいと思うよ。頑張ってお母ちゃん説得しなきゃ」
 

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「ところでケイさんって、小学生の内に性転換なさったんでしょ?どこで手術なさったんですか?やはりロシアとか?」
 
「なんかそういう話が勝手に一人歩きしてるけどね〜。まあ小学生の頃から女性ホルモンをしていたことまでは否定しないけど性転換手術を受けたのは大学生になってからだよ」
 
「ああ、そういうものですか」
 
「小学生の内に性転換って人はごく稀にいるけど、半陰陽だということにして手術しちゃったケースが多いみたい。色々ごまかしているがゆえに、あまり表舞台にはそういう情報は出てこないけどね。正規の医療として性転換手術を受けた人はどんなに若くても15歳が下限だと思う。普通は特例で16歳。15歳というのは、何かよほどの特殊事情があった場合だろうね」
 
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「ああ、やはりそのくらいの年齢が下限かあ」
 
「性転換に興味あるの?しずかちゃん男の子になりたい?」
 
「男の子もいいし、おちんちんってあると便利っぽいけど、女は捨てられないなあという気もするんですけどね」
 
「私の周囲には割とそんな感じの女の子も多いよ」
 
「でも自分の性別の生き方に迷っている人って、みんな迷っている内にどんどん否応なく、男か女に身体が作り替えられていくんですよね〜。思春期に」
 
「うん。本当にあれは残酷だし、それで絶望して死んじゃう人もいるね。不可逆な変化が起きてしまうから」
 
「私もおっぱいだいぶ膨らんじゃったから、もう男の子にはなれないなあなんて思ったりしますよ」
 
「まあ女の子としての人生も悪くないと思うよ」
と私は彼女に優しく言った。
 
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20:20の飛行機に乗るので19:20くらいまでには空港に着きたいということで、18:50に牧場を出ることにした。
 
今回の北海道遠征に参加しているのは、私・政子・風花・七星・氷川の5名と★★レコードの本社所属の佐久間さんで、これに北海道支店の高倉さん・工藤さんも入れると合計8名である。
 
使用している車は、北海道支店のプリウスαとアクアで、当初は高倉さんと工藤さんが、これで東京から来た6人を送った後、網走市内で1泊してから明日札幌に戻る予定だった。
 
ところが佐久間さんも工藤さん・高倉さんもうっかり?お酒を飲んでしまったので(氷川さんから注意されていたが、色々お世話になった牧場のオーナーから勧められて断れなかったのもあるようである)、結局、工藤・高倉の2人はこのまま牧場に泊めてもらい、空港へは桜川陽子と桃川春美が6人を送ってくれることになった。
 
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撮影用の機材や撮影済みデータの入ったディスク、私たちの服などを乗せたプリウスαは陽子が運転し、これに佐久間さんと氷川さんに風花が乗った。
 
残りの3人(私・政子・七星)は、桃川さんが自分の車(Nissan Juke 1618cc Turbo CVT 4WD)で送ってくれることになった。
 
それで出発したのだが・・・・
 
少し走った所で桃川さんが言い出す。
 
「ちょっと寄り道しませんか?」
「え?どこに?」
 
「飛行機をキャンセルしてもらうだけの価値のある場所です」
と桃川さんは言った。
 
「いいですよ」
と私は答え、氷川さんに「急に思い立ったことがあるので、寄り道していきます。申し訳ありませんが私たち3人分の航空券はキャンセルしてください」
とメールした。
 
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桃川さんの車は、いったん美幌町中心部まで出たものの、左折して西へ進路を取った(女満別空港に行く場合は直進して北へ行く)。
 
「七星さん、巻き添えにして済みません」
と私は言ったものの
「いや、多分物凄いものが見られると踏んだ」
と七星さんは言っている。
 
「ええ。近藤さんにも会う価値のあるお方だと思います」
と桃川さんは言う。
 
「人に会うんですね?」
「はい。この場所を知っていてたどり着けるのは木ノ下大吉先生、雨宮三森先生、そして私くらいだと思います」
 
私は助手席の七星さんと顔を見合わせた(私と政子が後部座席に座っている)
 
車は最初はまあまあの道を走っていたものの、その内町道か農道かという感じの細い道になり、やがて明らかに林道という感じの凄い道に入る。
 
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「この道は冬期は車では通れなくなるんです」
と桃川は言っていた。
 
「ああ、無理でしょうね」
「冬にあそこに行くには冬山登山の装備が必要です」
「ひゃー」
 

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それで到達したのが、小さな小屋であった。
 
車のヘッドライトで見ると、小屋の回りには白菜とか大根、大量の小枝などが積まれている。
 
桃川は車を小屋のそばに駐めると、私たちと一緒に降りてから、小屋のドアをノックした。
 
「春美ちゃん?どうぞ」
という中年男性の声がする。
 
「おはようございます」
と言って桃川は中に入る。
 
私たちは中を見るも暗くてよく分からない。しかし「おはようございます」?中にいるのは芸能関係者??などと思いながら私たちが顔を見合わせている間に、桃川は車に積んでいたポータブル発電機!(ガソリンで発電して50/60Hzの交流波を出すタイプらしい)を作動させ、灯りを付けた。
 
中には性別のよく分からない50代くらいの人物が居る。その人物は桃川が点けた灯りの中で私たちを見ると、
 
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「おお。ローズ+リリーか。もうひとりの女性は悪いけど分からない」
と言った。
 
私たちは
「おはようございます。ローズ+リリーのケイです」
「おはようございます。ローズ+リリーのマリです」
「おはようございます。ローズ+リリーのサウンド・プロデューサーの近藤七星です」
ときちんと挨拶した。
 
「こちらは作曲家の東城一星先生」
と桃川が紹介するので、私たちは驚愕した。
 

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