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■夏の日の想い出・やまと(15)

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急遽制作することになったシングルに関する作業を終えた後、24日(月)は1日休養日に当て、マリとスターキッズには休んでもらった上で、25日からアルバム残りの2曲『夜ノ始まり』『あけぼの』の音源制作に取りかかった。
 
どちらもストリングアレンジを入れた、アコスティック楽器の音で構成する。ストリングセクションに関しては『来訪』に参加してくれたヴァイオリニストさんたちに参加してもらえないかと再度アスカに「通常ギャラになるけど」と前置きして打診すると、やってもいいということだったので、そのまま続けて参加してもらった(日程的に都合のつかない子が2人いて代わりに別の2名を推薦してくれた)。25-28日の4日間毎日午後1〜5時の4時間ずつ入ってもらうことにした。実は4時間で先日の3時間分ギャラと同額である。
 
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『夜ノ始まり』については太陽が落ちていくところをヴァイオリンソロで入れるので、これを私自身が愛用の《Angela》で弾いたら、ヴァイオリニストさんたちの目の色が変わっていた。その後、こちらの指示をよく聞いて演奏してくれたので、あとから七星さんに「ケイちゃんはなかなか政治的だ」と言われた。
 
《Angela》に関しては、ひとりの女性ヴァイオリニストさんが
「これ、ガルネリですよね?」
と言って近づいて来て見ていたが
 
「グァルネリもどきなんですよ。過去にグァルネリとして取引されたこともあるのですが、何人かの鑑定家に見てもらったら、もしかしたらグァルネリの奥さんの作品かもということでした。材質とかはグァルネリと同じ工房のものが使用されているそうです。十字架のマークが無いので“デル・ジュス”ではないのですが、どうかした正規のグァルネリ・デル・ジュスより鳴りますよ」
 
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と私が言うと「すごーい」と言っていた。結局女性3人も来て見ている。触りたがっていたので全員に弾かせてあげたら感動していた。
 

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『あけぼの』で太陽が昇ってくる所の描写は、3人のトランペット奏者を並べ、最初は1人がミュートで音を出し始め、やがて3人に増え、弱音器を1人ずつ取り外していき、最後は3人で元気よくフォルティッシモの音を出すような流れで演奏してもらった。
 
これをやってもらったのは、スターキッズのトランペット奏者・香月さん、トラベリングベルズのトランペット奏者・児玉さん、渡部賢一グランドオーケストラのトランペット奏者・加治さんの3人である。3人の内誰がリーダーを務めるかは3人で話し合って決めてくださいと私が言ったら3人が各々音を出してみて、結局加治さんがリーダーを務めることになったようである。最初のミュートでのスタートの所からやってもらったが、ひじょうにしっかりした音を作り込むことができた。この3人の演奏もヴァイオリニストさんたちは頷いたり顔を見合わせたりしながら聴いていた。
 
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恐らくは流行歌手の音源制作というので、『来訪』は最初なのでまじめにやったものの、少し慣れてくると、まあ適当でもいいかなという空気が出かかっていたところを私のヴァイオリンソロと、加治さんたちのトランペットで引き締めることができた感じである。
 
プライドの高い演奏者のコントロールはなかなか難しい所がある。
 
26日にはピアニストとして徴用した美野里の演奏を聴いて、彼らはマジ100%になってくれたし、更に10月27日には千里がWリーグの日程の合間にスタジオに来てくれて、龍笛パートを入れてくれたが、この音には彼らはもう呆気にとられていたようで
 
「すみません。あの方は高名な演奏家でしょうか?」
と尋ねて来たので
「作曲家の鴨乃清見さんですよ」
と私が言うと
「きゃー」
とか
「ひゃー」
といった声が漏れていた。
 
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この2曲では美野里にピアノを弾いてもらったので、月丘さんは本来の専門であるマリンバや、ヴィブラフォンを演奏してもらった。
 
「今日はグロッケンシュピールじゃなくてヴァイブにしたのか」
と風花が言うので
「そういう音が欲しかったんだよ」
と私は答えた。
 
そういう訳でこの2曲の収録では弦楽器奏者さんたちが気合いを入れて頑張ってくれたので、非常に質の高い音を作ることができた。
 

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全ての作業は10月30日(日)までに終わり、ここに14曲の音源が揃った。
 
A『神秘の里』with WK Grand Orchestra
R『東へ西へ』
R『祇園祭の夜』
A『暮れゆく龍宮』
R『コスモスの園』
A『夜ノ始まり』with Strings
A『あけぼの』with Strings
R『やまとなでしこ恋する乙女』(醍醐)with Golden Six
R『かぐや姫と手鞠』(鮎川)with Red Blossom
R『Twin islands』(鹿島)with Redundancy-Redunjoccy
R『巫女巫女ファイト』(SV)with Sweet Vanillas
R『青い炎』(木ノ下)feat. Hibari & Daikichi
R『赤い玉・白い玉』(東城)with Cherry-Twin
A『寒椿』(鴨乃)
 
「シングルを14枚作るつもりで」と思って制作を始めたものの、正直最初はややシングルのレベルには足りないかなという気持ちもあった。しかし制作を進めていく内にハイレベルなものが残り、少し足りないものは脱落していった。最後は充分なレベルのある『ニルヤカナヤ』まで外さざるを得なくなった。
 
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また当初はリズミカルな曲が多すぎるかなという気もしていたのだが、制作が終わってみると、アコスティックな曲が5曲入っており、まあまあのバランスになった。
 
また当初、他の作曲者さんから頂くのは、上島先生・千里・ゆま・青葉の4人の予定が色々頂いて7人になってしまった。しかし半分以下なので問題は無い。
 

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私と風花、七星さんと氷川さんの4人はこの楽曲の曲順について話し合った。
 
「先頭とラストはマリ&ケイの曲がいいと思うんです」
と氷川さんは言う。
 
「だったら『夜ノ始まり』で始めて『あけぼの』で終わりますかね」
「あるいはその逆にするかですよね」
 
「『東へ西へ』『暮れゆく龍宮』『夜ノ始まり』『祇園祭の夜』が一続きのような気もしたのですが」
「言われてみれば」
 
「『やまとなでしこ恋する乙女』『かぐや姫と手鞠』『巫女巫女ファイト』は世界観が似ているから並べたいです」
「前衛的な『赤い玉・白い玉』の後はスタンダードな作りの『青い炎』が良い気がします」
「箸休めが必要ですよね」
「大先生の作品を並べることにもなるから落ち着くと思う」
「『神秘の里』は朝の歌っぽいから『あけぼの』の後で」
「その後が『コスモスの園』かなあ」
「『Twin Islands』は『あけぼの』と『神秘の里』の間に」
 
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「ちょ、ちょっと待って」
 
曲名を書いた紙を、みんなの意見に従って並べていくと
 
A『あけぼの』R『Twin Islands』A『神秘の里』R『コスモスの園』
R『やまとなでしこ恋する乙女』R『かぐや姫と手鞠』R『巫女巫女ファイト』 R『東へ西へ』A『暮れゆく龍宮』A『夜ノ始まり』R『祇園祭の夜』
R『赤い玉・白い玉』R『青い炎』A『寒椿』
 
という順序が浮かび上がってきた。
 
「この順序、けっこう良いのでは?」
 
「東城・木ノ下という大先生の作品って置き場所に悩むんだけど、その後に鴨乃清見なら、何となく落ち着く」
 
「世間的には40歳くらいの作曲家と思われているフシがあるからね」
 
「アコスティックとリズミックもほどよくバラけた」
 
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「じゃ、これでマスタリングするよ」
「よろしく!」
 

なお各楽曲の英語のタイトルはこうした。
 
Dawn, Twin Islands, Mystic Village, Cosmos Garden,
Yamato-nadeshiko - Girl in Love, Princess Kaguya and Temari,
Miko Miko Fight, Going East and West, Ryugu at Sundown,
Beginning OF the Night, Nighttime during Gion Matsuri,
Red ball - White ball, Blue Flame, Camellia Hiemalis.
 
「英訳になってない」
「日本的なものばかり取り上げたからやむを得ない」
「寒椿ってcamellia hiemalisなの?」
「微妙。英語ではサザンカ Camellia sasanquaの一種とみなされて細かい分類名は無いみたい」
「外国には花そのものが存在しないのでは?」
「だから camellia hiemalis は直訳」
「なるほど」
 
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「祗園祭って Gion festivalではダメなの?」
「あの祭りは決してfestivalではないと思う。むしろceremonyに近い。だからそのままMatsuriにした」
「確かにfestivalと言われたら“違う”感がハンパ無い」
 
「龍宮も英訳しづらい」
「Dragon palaceなんて訳すとまるで別の物を連想しそうだ」
「それも“コレジャナイ”感が強いな」
 
「手鞠も訳せないかな」
「直訳すると hand ball」
「いや、それは絶対別のものだ」
 
「Princess Kaguyaか・・・」
「小公女だって Little Princess だから皇族や王族でない人にprincessを使ってもいいと思う」
「“かぐや”ってそもそもどういう意味だろう?」
「火があかあかと燃えて輝いている様。だから桃太郎をPeach boyと訳す方式なら、かぐや姫はPrincess Fire」
「格好いいかも」
「でも“かぐや”は訳さない方がいいよ」
 
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「巫女は英語では何だろう?」
「それは過去に青葉や千里と議論したことある。Priestess, shaman, などの訳語も出たけど、それは巫女の一部しか反映していない。実はShrine maiden ではないかという説も出たけど、やはりshaman的な部分もある。結局そのままMikoと言う以外無いと思う」
 
「青葉や千里は実際ほとんどshamanかmediumisticだと思う」
「青葉がshaman(巫術師), 千里がmediumistic(霊媒)」
「ああ、それは確かにその傾向がある」
 
「実際には単純にshrine girlとでも言った方がよさそうな巫女さんも多い」
「巫女さんって男はいないんだっけ?」
「あまり聞かないなあ」
「いや、元は男を巫(かんなぎ)、女を巫女(かんなめ)と言っていたんだけど、近年男性の巫は居なくなった」
「へー」
 
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「そうだ。Kagura dancer的な人もいる」
「あぁ」
「当然Kagura musicianもいるね」
「舞が得意な人と、笛や太鼓が得意な人っていそうだね」
 
「実際神社の中でも様々な役割に分類されている気がするね」
「総称するとshrine sisters」
「それはもう巫女さんで作ったアイドルユニットという感じだ」
 

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アルバムのマスタリング作業は11月3日までには終わり、その間に制作を進めた封入するパンフレットの編集、DVDセットに入れるビデオの編集も11月6日までには終わって、11月7日(月)から、アルバム『やまと』はプレス作業に入った。実際にはDVDの編集が遅れたので、DVD付きではない版のプレス作業を先行して11月4日(金)から始めている。
 

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アルバム『やまと』日本語版に関する作業が一段落した所で、私たちは、秋風コスモスとアクアの次のシングルに関する打合せをした。アクアのシングルの曲は、ここまでマリ&ケイと、岡崎天音/大宮万葉とが、ほぼ交互に書いている。岡崎天音というのはつまりマリなので、要するに歌詞は毎回マリが書き、曲を私と青葉が交替で書いていることになっている。
 
2015.03『白い情熱/Nurses run』霧島鮎子・上島雷太/ゆきみすず・東郷誠一
2015.08『ぼくのコーヒーカップ/貝殻売り』マリ&ケイ/加糖珈琲・東郷誠一
2015.11『冬模様/スキーに行こうよ』岡崎天音・大宮万葉/加糖・東郷
2016.02『桃色の予感/想い出海岸』マリ&ケイ/加糖・東郷
2016.04『眠る少年/ナイスなナースになるっす』岡崎・大宮/加糖・東郷
2016.08『エメラルドの太陽/もっとオブリガード』岡崎・大宮/加糖・東郷
 
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なお東郷誠一名義ではあるが実際に書いているのはほとんど醍醐春海(千里)で、想い出海岸だけが青葉である。加糖珈琲は葵照子(蓮菜)の変名。
 
また『ぼくのコーヒーカップ』はマリ&ケイ名義だが実際に書いたのは千里で彼女がお遊びで「マリ&ケイ風」に書いた作品。
 
そういう訳で実は青葉は3〜6作目の4つに連続して書いている。アクアの曲が大きなセールスを上げているのは、本人の人気も当然あるが、できるだけ年の近い作曲家が楽曲を提供しているのもあると私は思っている。そして実は私はアクアに楽曲を書いたのは4作目の『桃色の予感』のみである。
 
しかし今回は『やまと』の中の『コスモスの園』のPVを撮るだけのために多忙な秋風コスモスを宮崎まで呼び出したことに、温厚なコスモスがさすがに怒ったので、「ごめんねー」と言って、アクアの次期CDの曲は私が書くことにしたのである。
 
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夏の日の想い出・やまと(15)

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