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■春牛(20)

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世梨奈は初日に出勤してみたら会社が存在していなかったというのに困惑し、取り敢えず友人の何人かにメールしてみた。するとちょうど時間が取れたという明日香が電話してきてくれた。(明日香は社長を車で横浜まで送った後、待ち時間にこのメールに気付いて電話を掛けてきた)
 
「要するに就活が振り出しに戻ったようなものだと思う。大学は卒業しちゃったし、ハローワークとかに行って仕事探しなよ。それか取り敢えずどこかのバイトに応募してそれで食いつなぐとか」
「そうだね。ハローワーク行ってみようかな」
 
それでハローワークに行き、入社するはずだった会社が行ってみたら無くなっていたと説明したら
「最近そういう話あるんですよね。事前に研修費とかを払ったりはしてませんか?」
と尋ねられる。中には高額の研修費を徴収しておいて、ドロンという明白な詐欺のケースもあるらしい。
 
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「そういうのはなかったです」
 
それで係の人が探してくれたのだが、やはり長引く不況に加えて、昨年の消費税アップで経営が悪化しているところが多い上にコロナ騒動でそもそも営業困難になっている所、営業時間を短縮している所もあり、まともな仕事が全く無い。バイトなら、入力オペレータの仕事とか、食品工場の仕事とか、衣料品店の店舗スタッフとか、あるのだが、女性の事務職みたいな募集は皆無である。
 
「コンピュータのプログラムとかは組めます?」
「研修を受けたことありますけど、才能が無いと言われました」
 
「簿記2級、秘書検定、普通免許にMOSは持っておられるんですね。英語は?」
「あまり得意じゃないです」
 
結局あまり良い仕事が見つからないが、アパートを借りてしまったので、家賃程度は稼ぐ必要がある。結局ファミレスのバイトに応募してみることにして、世梨奈はハローワークから、市内のファミレスの店舗に行き、面接を受けた。結果は2〜3日中に郵便で報せるということだった。
 
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美映は不満だった。貴司の転職にともなって、2月に姫路市から埼玉県の川口市に引っ越してきた。美映は尼崎市に生まれその町で高校まで出た。大学に行くのに大阪に出て来て吹田市に住み、卒業後は、一時期航空会社のグランドホステスもしたのだが、その後は服飾店や飲食店にも勤めた。2度引越しているが、いづれも大阪周辺である。恋愛は何度もしているが、セックスする所までは到達していない。2017年末にセックスしないまま!?妊娠して、貴司と結婚。豊中市のマンションに一緒に住んでいたが、住宅手当が打ち切られたので姫路市の一戸建てに引っ越した。
 
そういう訳で、美映は関西から出たことがなかった。
 
それで川口市に来てから、物凄い不満であり、また不安でもあった。小学校の5年生でミニバスに入って以来、ずっとバスケをしているので、こちらでも部員募集をしていた川口市内の女子バスケットチームに加入。Wリーグの2軍選手並みの実力を持つ美映なので、すぐにスターティング・メンバーにしてもらったものの、チームメイトとどうも話が合わないのである。
 
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(もっともコロナ禍のせいでチームは3月以降活動を休止した)
 
関東と関西の価値観の違いで、美映は居心地の悪さを感じていた。
 
また関西から持って来た調味料が切れたので、地元のスーパーで買ったものの、味が違いすぎてうまく料理の味付けができない。青ネギが無い!おでんの材料が揃えられない。カップ麺の味付けが好きじゃない。玉子焼き(関東では明石焼きと呼ばれるらしい)が無い。フードコートでそばを食べたら汁が辛すぎ!だいたいタヌキと言ったら揚げじゃなくて天カスの入ったそばが出て来たけど、天カスごときに金取るのかよ!?信じられない。そんなの普通ダダでしょ?
 
だいたい関西弁が通じず首都圏弁(?)で話さなければならないこと自体に美映はストレスを感じていた。
 
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「えーん。大阪に帰りたいよぉ」
と美映は緩菜に向かって泣き言を言ったりしていた。
 

でも緩菜は不思議な子だ。ストレスのあまり、つい叩いたり物を投げつけてしまうこともあるのだが、緩菜に物を投げても絶対にぶつからない。なぜか逸れてしまうのだ。バスケットのシュートは高確率で入る美映なのに。
 
「ママ、落ち着きなよ」
と緩菜が言うような気がする。1歳の子供がそんなこと言う訳がないから多分気のせい。
 
調味料については緩菜が「ママこちらにおいで」と言って誘導してくれた(気がする)お店に、関西系の調味料が置いてあり、おかげで何とかまともに料理をすることができるようになった。貴司の給料が安くて、やりくりが大変だなあと思っていたら、ナンバーズで緩菜が指で示してくれた通りの番号を買ったら20万円も当たって、おかげで楽になった。それで緩菜にはサンリオとかメゾピアノとかの可愛い服や下着を買ってあげた。その後も緩菜は2ヶ月に1度くらいナンバーズを当ててくれる。
 
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「ママお願いがある」
とある日緩菜は美映に言った(気がする)。
 
「ママは今年11月には大阪に帰れると思う」
「そうなの?貴司が転勤になる?」
「パパとは離婚になると思う」
「まあそれでもいいかな。あまり何年も関東に住みたくない気分だし」
 
「その時、私はパパの所に残りたい」
「いいよ。そうしてあげる」
と美映は緩菜に言った。緩菜すごくしっかりしてるみたいだし、これなら自分がついてなくても大丈夫かなという気がした。
 
「宝くじはママがひとりになっても時々当たるようにしてあげるね」
「ああ、それは助かる。30代女の就職口ってあまり無いから」
 
(美映は1986年生で現在33歳。ちなみに阿倍子は1978年生で貴司より12歳年上)
 
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ゴールデンウィークに予定されていたアクアのドームツアーはコロナの影響で中止が宣言され、全額払い戻しになった。実はこのツアーは3人のアクアで分担して歌うつもりで航空チケットなども3人が移動するように確保していたので2人になってどうしようと思ったのだが、中止になってホッとした。
 
中止のお詫びにチケットを買っていた人たちには、3月7日にアクアが震災イベントで都内のスタジオで歌った時の映像を記録したDVDが無償で配られた。
 
(3月7-8日のイベントについて“08年組”の人たちは宮城ハイパーアリーナまで、わざわざ行って現地で無観客演奏したものをチケットを買っていた人たちがスマホまたはパソコンでリアルタイムにストリーミング観覧できるようにしたのだが、アクアを含む§§ミュージックの歌手たちは東京のスタジオでの演奏に代えさせてもらった)
 
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2020年5月13日(水)“小林芳雄”の初ミニアルバムと北里ナナの6枚目のシングルが同時発売され、§§スタジオからのライブネット中継で発売記者会見が行われた。
 
記者たちも各々自社の適当な部屋でZoomを使って§§スタジオとつながり、質問などができるようにしている。司会役は元★★レコード技術部の技師で現在はサマーガールズ出版に所属している則竹である。システムに強い人ということでコスモス社長から指名されて司会をすることになった。彼は3月の復興イベントのネット中継でもシステムの管理者として参加している。
 
アクアはマイナスワン音源をバックに、最初小林少年の扮装でミニアルバムの中から2曲を歌い、会見席で質疑応答をした。これは『少年探偵団』のこれまでの3シーズンの間に劇中で披露された小林芳雄名義で発表された曲をまとめたものである。各々ダウンロード販売はされていたのだが、CDの形で発売されるのは初めてである。
 
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第1シーズン
小林芳雄『獅子が烏帽子をかぶる時』
小林芳雄『ゆんでゆんでと進むべし』
第2シーズン
小林芳雄『飛べ、ピッポちゃん』
小林芳雄『魔法の人形は良い人形』
第3シーズン
小林芳雄『ゴングゴングゴング』
小林芳雄『月世界旅行はお断り』
ボーナストラック
小林芳雄『女装したい訳じゃないんだよ。お仕事だよ』
 
ボーナストラックに新曲『女装したい訳じゃないんだよ。お仕事だよ』(醍醐春海作詞作曲)が入っていたが、この歌詞については多くのファンから「嘘つけ!好きなくせに」という非難の声があがることになる。
 
PVでは、小林少年が『大暗室』で北里ナナに変装しているシーンをはじめ、『魔法人形』、『魔人ゴング』、など多くの作品での女装シーン、更には『塔上の奇術師』での吉村菊雄(演:上田信貴)の女装など他の男子団員の女装まで入っていて、ファンからは「このPVだけでこのアルバムのDVD付きを買う価値がある」とまで言われた。
 
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小林芳雄のアルバムの会見が1時間ほどで終わった後、10分間の休憩を置いて今度は北里ナナのシングルの発売記者会見をおこなう。さっきは男装だったアクアが今度は女装で登場するとZoomの会議に参加している記者からも、またネット中継で見ている全国のファンからも歓声があがっていた。明らかにさっきの男装での登場の時より歓声が大きい!
 
(10分間の休憩は“お着替えタイム”だろうと記者もファンも想像しているが、実際には小林少年の衣装で出たのはアクアMで、ナナの衣装で出て来たのはアクアFである)
 
今回ナナが歌った曲は
『少女の祈り』(加藤珈琲・琴沢幸穂)
『渚の鬼ごっこ』(マリ&ケイ)
 
の2曲である。
 
『少女の祈り』はテクラ・バダジェフスカ の『乙女の祈り』を彷彿させるような物悲しいヴァイオリンの響きの中、ナナ(実際に歌ったのはアクアF)が美しいハイソプラノ・ヴォイスで情緒あふれる歌声を聞かせてくれる。この曲のサビでは“ハイF”も出しており、そのことに気づいた記者やファンが「すげー」と思わず声を出した(ハイFはアクアFもアクアMも出せる。アクアFはその上のA音まで出せるが、アクアMはG音までしか出ない。しかしふたりともF音は安定して出せる)。
 
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この曲のヴァイオリンを音源制作の時に弾いたのは今井葉月である。彼はピアノもヴァイオリンもうまい。アクアがライバル心を感じるほどである(*2)。
 
『渚の鬼ごっこ』はマリのコミカルな歌詞にケイがポップなメロディーを付けたまさにアイドル歌謡という感じの曲である。ナナ(アクア)は前曲とは打って変わって楽しくリズムに乗ってこの歌を歌った。
 

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(*2)千里3は葉月の練習のために、ヤマハ・クラビノーバCLP-685 (38万円)をプレゼントし、ドイツで購入した300万円のヴァイオリンも“貸与”している(こちらもあげていいいのだが、それだと贈与税を取られるので)。
 
ちなみにアクアにも千里2がイタリア製の似たような値段のヴァイオリンをやはり貸与している。ピアノはアクアは代々木のマンションのLDKに“防音室”(*3)に入れた Yamaha S3X (460万円)を置いている。これはアクア自身が(田代の)母の勧めで購入したピアノである。
 
(*3)ヤマハのユニット型防音ボックスでマンションなどの室内に“置く”仕様である。外に音が漏れないだけでなく、内部ではホールなどで演奏しているのに近い反響を得られる。ピアニストやエレクトーン奏者の利用が多いが、楽器練習以外にオーディオルームとして使用する人もある。
 
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葉月もS3X/S6Xを自分で買える程度の収入はあるが、1Kのアパートにグランドピアノを置くのは、さすがに不可能である。葉月は高校在学中はこのアパートに住み続けるつもりである。
 
彼(彼女?)の卒業後については、どうするか千里3も少し悩んでいる。あの場所には誰か男の娘に住んで居てほしいのである。西湖(聖子)自身も多数のおキツネさんたちと仲良くなったので、別れがたく感じている。

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