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■春牛(12)

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さて『霊界探訪』の撮影だが、2月27日、うまい具合に前夜雪が降ったので、“雪を掻き分けて進む決死隊”を撮影するのには、とてもいい具合になった。
 
「で、その決死隊って私たち?」
と明恵と真珠が言っている。
「若さで頑張ろう」
と幸花が言い、2人が頑張って雪掻きをして道を作っていく所を撮影する。
 
「これじゃ日の明るい内にはとても目的地まで辿り着きませんよ。文明の利器を使いましょうよ」
と明恵が言い
「仕方ないなあ。費用は君のギャラから引くのは可哀想だから、神谷内さんの給料をピンハネしよう」
などと幸花が言い、デファイユ津幡で待機してもらっていたムーラン建設の人に連絡する。除雪車を乗せたトラックがくるのをカメラは撮影する。
 
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「わーい!文明の利器だ」
と明恵と真珠が騒いでいる。こういうのは19歳の役所である。幸花や青葉では無理がある。
 
それでムーラン建設の人に神社までの道(300m)と旧神社に行く枝道(100m)を除雪してもらった。枝道は舗装されていないので大変だったようである。
 

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「ありがとうございました!」
 
とみんなで御礼して送り出してから除雪された道路を歩いて登っていく。途中の枝道の所で金沢ドイル(青葉)が
 
「あ、こちらに何かを感じる」(台本)
と言い、みんなでそちらに向かう。今ドイルが気づいたように言ったのに、ちゃんと除雪されているというのは、テレビ番組ならではの予定調和?である。
 
旧神社の近くで明恵が
「あ、あそこに何かある!」
と言う(むろん台本)。
 
倒木(実はたくさんある)の下敷きになって折れている御影石の慰霊碑っぽいものがある(昨日の内に千里が仕込んでおいたもの)。
 
林の中の雪を掻き分け、慰霊碑の所まできて
 
「あ、慰霊碑が折れてる!」
「去年秋の大雨でこの木が倒れたんじゃないの?」
「その頃からだもんね。幻のワゴン車が現れたのは」
などと会話するシーンを撮影する(全て台本)。
 
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「苔むしていて、もう字が全然読めませんね」
などと幸花は言っている。青葉は悩みながら
「《交通事故撲滅》と書かれているように思います」
と言った。
 
(本当は“○○ゴルフ場落成記念”と書かれている。潰れたゴルフ場から調達してきたらしいが、よくそんなのを知っていたものだ)
 
「交通事故撲滅だから、スピード違反の車を、おとり捜査で捕まえようとしたのかな」
「まあちょっとやりすぎだったかもね」
 
この“慰霊碑”の場所は旧神社の境内から10mほど離れた林の中で、そこへ行く道も存在しない場所である。つまりこんな所に慰霊碑があったとしても誰も気づかなかったであろうと思われる場所に仕込んだのである。
 
それで金沢ドイル(青葉)がその古い“慰霊碑”の所で祝詞をあげるところを撮影する。現在のこの神社の主(あるじ)である《ゆう姫》は大笑いしている。笑っているということは、こういうお芝居も許してくれているのだろう。
 
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それで、この壊れた“慰霊碑”を新神社まで運ぼうということになる。青葉たちには無理なので。再度ムーラン建設の人に来てもらった。彼らは2人がかりでこの“折れた慰霊碑”の半分ずつを一輪車に乗せて道路に駐めた軽トラまで運び出してくれた。
 
そしてみんなで新神社の所まで移動する。
 
千里姉が「ここ」と指定した場所(神社の結界の外)にその古い“慰霊碑”を埋めた。
 
「取り敢えず印をつけておきます」
と千里姉が言い、そこに100円のビニール傘を差した。
 
ここで明恵が
「あっ!」
と声をあげる。
 
「ドイルさん、神社の横の杉が倒れていますけど、いいんですかね」
「これはいけませんね。杉の植え替えをしましょう。ここを管理しているJR西日本の人に言っておきますよ」
とドイルは言った。
 
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倒れた杉がきちんと除けられていることは気にしない!
 

ここからは“翌日”という設定にして撮影を続ける。
 
「私たちは昨日古い慰霊碑を埋めた場所に再びやってきました」
と幸花がカメラに向かって言うが、実は5分も経っていない。ムーラン建設の人が麓に置いていた新しい慰霊碑を軽トラで持って来てくれる。
 
そして目印に挿していたビニール傘を抜くと、そこに新しい慰霊碑を置き、セメントで固定した。この慰霊碑は昨日の内に千里が作らせておいたものである。
 
「新しい慰霊碑は“慰霊”と刻まれていますね」
「ただ安らかに眠ってくださいということですね」
 
青葉が再び祝詞を唱える所を撮影する。小枝さんが不思議そうな顔をして出て来た。
 
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「これは何じゃ?」
 
「交通事故の死者を供養する慰霊碑です。先にお伝えするべきでしたが、ここに設置してもいいですか?」
「ああ、構わん構わん。この神社には交通事故の死者がたくさん祀られているから、その者たちの供養になるだろう」
と小枝さんは言っていた。これも森下さんは撮影していたが、この人カメラに写るのかなぁと青葉は疑問を感じた。
 
青葉が小枝に明日折れている杉の植え替えをしますのでと言うと「よろしく頼む」と小枝は言った。
 

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この日は8号線沿線にある他の慰霊碑・お地蔵さんの類いに霊界探訪のクルーが巡っていくシーンも撮影した(結構たくさんあった)のだが、途中でお地蔵さんがあったのが、首がもげているのを発見してしまった。
 
地元の人に尋ねると、元々は10年以上前に、夜間交通事故の処理をしていた警官2名が事故に気づかなかった後続車にはねられて死亡した後、誰かがお地蔵さんを置いたものらしい。首が取れたのは2-3年前(夜間車が衝突してそのまま逃げたものと思われる)だが、へたに触ると怖いので放置していたという。どこかのお寺の管理という訳でもなく、そもそも誰が置いたかも不明ということだったので、青葉の判断(千里も追認)で新しいお地蔵さんを置くことにし、古いお地蔵さんは近くのお寺に納めることにした。この部分は3月の中旬になって追加撮影した(実は放送前ギリギリ)。
 
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しかし元々警官が死亡したのの供養で置かれた地蔵というのが出て来たのは今回の番組には好都合だった。警官ならおとり捜査に絡んでも不思議ではない。
 
この日は夜になってから、幻のワゴン車を金沢ドイル・コイル姉妹が発見して死者の集合体と判断するシーンの“再現ドラマ”も撮影した。
 

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そして翌日2月28日には杉の植え替えを撮影する。
 
この日、神社の前に集まってきたのはこういうメンツである。
 
JR西日本金沢支店の松崎さん、わざわざ神戸から駆けつけて来てくれた魚重さん、金沢ドイル(青葉)・金沢コイル(千里2)、神谷内さん、幸花、明恵、真珠、森下カメラマン、新しい杉(立山森の輝き)の苗木を積んだ軽トラを運転してきた造園業者さん。
 
「では始めますか」
 
青葉が神社の神殿前で祝詞を唱える。そして青葉は、杉の1本が倒れた所に杉の枝を置いていたのを取り除いた。
 
「ここにお願いします」
「この折れた後の株は掘り起こしてもいい?」
「はい。大丈夫なようにしましたから」
 
などと言っていたら、小枝も出て来て、
「妾(わらわ)が抑えておくから大丈夫じゃ。安心して作業をなされよ」
と言った。
 
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それで青葉と千里、更には小枝まで見守る中、造園業者さんは倒れた杉の根を掘り起こし、そこに新しい杉の苗を植えた。
 
青葉が祝詞を唱えると、そこで“うごめいていた”ものが鎮まる。小枝が
「あんたホントに凄いね」
と感心するように言っている。
 
「もうこれで大丈夫ですよ」
と青葉は笑顔で言った。
 
すると小枝は唐突に歌い出した。
 
Key:F-Major
C>DE|G>EE>D |C>DE>G |Dz|
E>DC>D|C>A,C|G,>A,C>D|Ez|
G>GE>G|A>AG |E>DC>A |Gz|
A>AG>E|G>AG |E>DG>C |Dz|
E>FG>G|A>GE |C>DE>E |A,z|
G,>G,A,|C>CD|E>CD>E |Cz|
 
木々の若葉に風かおる
寿永二年の夏のころ
燧ヶ城をおとしいれ
幸先よしと勇み立つ
維盛の軍七万騎
砺波山にぞ陣をとる
 
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埴生の宮に祈願こめ
必勝期せる木曽が勢
七手のいくさ所々に伏せ
義仲万騎の将として
八幡林あとに見つ
黒坂口にぞ陣を取る
 
陣と陣とは程近し
矢合わせの時到りぬと
源氏方より三十騎
楯の面にあらわれて
上矢の鏑一どきに
平家の陣へ射入れたり
 
鏑のひびき空に消え
矢叫びの声静まれば
平家方より三十騎
楯の面にあらわれて
上矢の鏑、一どきに
源氏の陣へ射入れたり
 
源氏方より五十騎出せば
平家方にも五十騎出し
源氏方より百騎出せば
平家方にも百騎出し
互いに鏑射交わしつ
かくて此の日は暮れにけり
 
時こそ来つれと木曽が勢
四百の火牛先立てて
七手に伏せし五万余騎
箙の方立打ちたたき
一度にあぐる鬨の声
山もどよみておびただし
 
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すわこそ夜討と平家勢
弓取る者は矢を知らず
矢を取る者は弓知らず
人の馬には我乗りつ
我が馬、人にのらせつつ
右往左往に乱れ立つ
 
如法深夜の五月闇
くりから谷の谷底へ
親が落つれば子も落つる
馬が落つれば人も落ち
さばかり深き谷一つ
平家の軍もてうめにけり
 
平家は亡ぶ壇ノ浦
源氏は絶えぬ鶴が岡
七百年の夢のあと
倶利伽羅峠弔えば
古りし石ふみ義仲の
ねざめの山か月悲し
 
作詞:八波則吉(1876-1943)
作曲:大西安世(1887頃?-1947)
 
(倶利伽羅峠の戦いが行われたのは寿永2年5月11日夜で、月没は5/12 1:23(JST)である。恐らく義仲は月が沈んだ後、奇襲を掛けたものと思われる)
 

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小枝が歌っている間、青葉たちは何も言葉を発せないまま、じっとその歌を聞いていた。
 
そして、歌を歌い終わると、小枝は忽然と姿を消した。
 
「あれ?巫女さん、どこに行きました?」
 
と造園業者さんが言った。
 
「帰られましたよ」
と千里が笑顔で言った。
 
「私はどうも疲れているようだ。今日はこのあと休むことにしよう」
などと言って、50代っぽい造園業者さんは軽トラを運転して帰っていった。事故起こさなきゃいいけどな、と青葉は心配になり、笹竹を付けてやって、帰り着くまで守護するよう言った。
 
JR西日本の松崎さんも
「どうも私も疲れているようです」
などと言っている。
 
「休んだ方がいいかもね」
と魚重さんは笑顔で言い、魚重さんが車を運転して帰っていった。
 
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青葉たち霊界探訪の撮影クルーだけが残った。
 

「突然消えたよね?」
と幸花が言うと、神谷内さんは
「君も今日は休んだ方がいいかもよ」
と言った。
 
明恵と真珠はもとより小枝が“この世”の存在ではないことに気づいているので、何も言わない。
 
「今、巫女さんが歌った歌、青葉は譜面書けるよね?」
と千里が訊く。
「うん」
「私も書くから、それで突き合わせてチェックしようよ」
「何かに使うの?」
「リセエンヌ・ドオに歌わせる」
「へー!」
 
「木曽義仲、巴御前、四天王を演じた、白鳥リズム・石川ポルカ、それに桜井真理子・悠木恵美・左蔵真未・今川容子の6人に歌わせるのもありだけどね」
 
「ああ、リズムちゃんの木曽義仲は格好良かったね」
「あの子男装似合うよね」
「あの子が実は男の娘だという噂は?」
 
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「小学生時代は男の子みたいな格好して通学していたし、男子のサッカーチーム入っていたんだよ。それで中学に入る時にセーラー服で学校に行ったら『性転換したの?』と驚かれたらしい。実際にはサッカーでは男子のチームに女子が入るのはルール上問題無い。中学とかでも男子チームに入っている女子選手は全国的に数十人存在する」
とその件を聞いていた千里が解説する。
 
「じゃ天然女子?」
「間違い無く天然女子」
 

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「さっきのは倶利伽羅峠の戦いを歌った歌だよね?」
「そうだと思う。800年も経ったら著作権は切れてるんじゃないかな」
 
と千里は言ったが、この歌の本当の作詞者・作曲者は上にも記したように1943,1947年に亡くなっていて70年以上経っているので、やはり著作権切れである。
 
小枝さんはこの地で小学生たちが愛唱しているのを聞いて覚えたのだろう。「源氏は絶えぬ鶴ヶ岡」というくだりが栄枯盛衰を表していて悲しい。木曽義仲は平家を京から追い出し、その義仲は義経に倒され、その義経が平家を滅亡させたが、兄・頼朝に倒され、その頼朝の家系は子供の代で鶴ヶ岡八幡で消滅した。驕れる者久しからず、猛き者もついには滅びぬ。ひとえに風の前の塵に同じ。
 
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この歌の額は青葉たちが先日、半日ほど滞在した倶利伽羅峠の道の駅にも掲示されているのだが、そのことは青葉も千里も気づかなかったようである。
 

(ちゃんと正面から撮影していなかったのを強引に補正したものの、きれいに長方形にできませんでした。陳謝。偏光フィルタとかも持っていなかったので、ライトが一部額縁のガラスに反射しています。それも陳謝)
 

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昨日撮影した内容とあわせて、これで“神谷内シナリオ”による番組の構成ができるはずである。
 
神谷内さんは言った。
「シナリオが多少嘘くさくても構わないと思う。要は事件は金沢ドイルが解決して、もう幻のワゴン車は出没しないということが、視聴者に伝わればいいんだよ」
 
「まあこの番組は報道番組ではなく、基本的にはバラエティだからね」
と幸花は言っている。
 
「バラエティだったのか!」
「明恵ちゃんと真珠ちゃんの漫才を放送してもいいけど」
「幸花さんと明恵ちゃんじゃなかったんですか?」
「若い子に譲っておく」
 

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撮影クルーはこの撮影か終わった後、アルプラザ津幡でケンタッキーを神谷内さんのおごりで食べてから解散した。青葉と千里はしばらく高岡に滞在することにした。
 
 
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