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■春牛(7)

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若葉はこまでの段階でだいたいテナントが固まったので、引き直したスタジオのレイアウトもあわせて、TKRの松前社長のところに行き、提示した。
 
「これだけ部屋があると壮観だね」
と松前はかなり気に入ったようである。しかし2階テラスのレイアウトを見ていて
 
「この§§グッズ・ショップって何?」
と尋ねる。
 
「§§ミュージックのタレントグッズを売るお店です。全国的にも1号店だそうですよ」
「それってアクア・グッズ?」
「アクアのもありますし、品川ありさ、高崎ひろか、白鳥リズム、姫路スピカ、まあ色々ですね。写真とかハンカチ、ボールペン、手鏡、クリアファイル、などなど。むろんCDとかも」
 
「うちの歌手のCDは?」
「§§ミュージック以外のものまでは扱いません」
 
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「うちのミュージシャンのCDも売ってよ」
 
「そういうお店を作るのでしたら」
「ぜひ作って欲しい」
「もう場所が無いんですけど」
 
松前は店舗レイアウトを見ていて言った。
 
「4階のCスタジオを潰してそこに出店できない?楽器店の隣のCDショップって凄く説得力がある」
 
「社長がそれでいいのでしたら」
「それでいい」
 
「テナント料はどうしましょう?」
「もう予算が無いから、2億3千万の中に含めてよ」
「まあいいですよ」
 
それで録音作業のできるスタジオは7つに減ることになり、代わってTKR直営のレコード店“TKR Sounds仙台青葉通り店”ができることになる。TKR直営のCDショップというのも全国初になった。おかげで、このビルは本来は “Clair青葉通りビル”のはずが(カーナビにはそれで登録された)、多くの人が“TKR青葉通りビル”とか“TKR北ビル”と呼ぶようになる(仙台支社は南町通りにあり、こちらは“TKR南ビル”と呼ばれる)。
 
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そしてここに“Cスタジオ”が無いのは、“死スタジオ”だから、とか、Cスタジオは冥界にあるのだとか、このビルが建て替えられる前には幽霊が出るという噂があったから、それを幻のCスタジオに封印したんだとか、色々変な噂が立つことになることを若葉や松前は知るよしも無い。
 

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そういう訳で、和実・若葉・千里の(わりとお互い勝手な)奔走により、2階より上に入る店舗のラインアップが定まった。新しいレイアウトはこうなった。
 


 
4〜5階の“スタジオ階”は↓のようなレイアウトになることになった。スポーツ用品店は最低このくらいの面積は無いと「何も無いお店」と思われるよ、と若葉が言い、こういう広い面積を取ることになった。結局録音設備のあるスタジオが7部屋、練習部屋は4階に5個と5階に20個の合計25個である。
 


 
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最初はスポーツショップの隣が仙台楽器だったのが、真ん中にCDショップを置いたほうが“収まりがいい”という冬子の意見でこのような並びになった。
 
4Fの《受付》というのはスタジオの受付である。またサロンというのは、部屋が空くのを待つ人や、予約時間より早く来て少し待つ人のために用意することになったものである。ここにはクレールから“出前”を取ることもできる。
 

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そういう訳で、このビルは2階と4階にテナントが入り、3階は事務所などが並ぶという、少し変わった配置のビルになった。
 
(町中の雑居ビルでは1階にテナントを入れたお店の事務所が2階にできて、3階にまた別のお店が入って、4階は1階のお店の倉庫などという“ストライプ”型のビルも割とよくある)
 
TKR Sounds青葉通り店は、TKRアーティストの全CD(試聴可)と親会社の★★レコードの売れ筋アーティスト(ローズ+リリーやゴールデンシックス、三葉、トライン・バブルなど)のCDを並べる。また、CDを発売していないダウンロード販売のみのTKRアーティストの"CD"をその場でオーダーしてもらえばCD-Rに焼いて販売するという画期的なサービスもすることになった。
 
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(これまでも実はネットショップでCD作成サービスはやっていたのだが、送料が掛かるので、必ずしも利用者は多くなかった)
 

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その日、朋子の家に大阪に住む姉(戸籍上は従姉妹だがお互い姉妹という意識がある)の喜子(72)が久しぶりに遊びに来ていた。年齢が高くなると、なかなか自分の住んでいる所から動きたがらない高齢者も多いのだが、喜子は若い頃から旅が好きで、海外にもよく出ているし、このお正月はボーイフレンドと一緒に沖縄の宮古島まで行ってきたらしい。
 
「凄く優しい島だった。また行きたいなあ」
などと言っていた。
 
その喜子が仏檀の所に“画鋲で留めている”お遍路の納経軸に目を留めた。
 
「あら、お遍路行ってきたの?」
「私じゃなくて、義理の娘の千里ちゃんがね」
「ああ。青葉ちゃんの義理のお姉ちゃんか」
「そうそう。桃香よりよほど親孝行だわ」
「桃香ちゃんの性格に親孝行は期待しないほうがいい」
 
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「その千里ちゃんが一昨年結婚したものの旦那が半年もしない内に死んじゃってさ」
「それは知らなかった」
「その菩提を弔うのにお遍路をしたのよ。歩いて四国一周」
「歩いて!?それは凄い」
「それで高野山まで入れて89の納経印をもらって、納経軸の本物はお姑さんとこに納めたんだけど、私もカラーコピーをもらったのよ」
 
「へー。カラーコピーか」
と言って喜子は見ていたものの
 
「いや、これはカラーコピーじゃない。本物だよ」
と言う。
 
「え?だったら、まさか間違ってこちらに本物持って来て、コピーをお姑さんの所に置いてきたのかしら」
 
「あるいはそもそも納経軸を2つ持って回ったのか」
「2枚掛軸出して2つ御朱印くださいとか言えるんだっけ?」
「そんなのはお寺は拒否する。やるとしたら、一度お寺の外に出てから、再度お参りしてから納経印くださいと言うか」
 
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「それ、あんたさっきも押したじゃんと言われそう」
「かもね」
 

青葉が帰宅してから朋子はその件を聞いてみた。
 
「ああ、これも本物だと思っていたよ」
「だったら、お姑さんの所にカラーコピーを置いて来たのかしら」
 
「向こうがオリジナルでこちらはクローンだと思う」
「クローン?」
「説明困難だからカラーコピーという言い方をしただけで、これはオリジナルと全く同じ物なんだよ」
 
「そんなのどうやって作るの?」
「まあ人間には不可能だね」
「人間に不可能なら、誰ができる訳?」
「ちー姉は神様の知り合いが多いから」
「へ?」
 
「だから、これ画鋲で留めとくんじゃなくて、表装に出してちゃんと掛軸に加工したほうがいいと思ってた」
 
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「そうする!」
 

金沢・富山近辺で出没している“幻のワゴン車”であるが、幸花が頑張ってニュース記事を検索したものの、ワゴン車が絡む交通事故があまりにもたくさんありすぎて、全く的を絞れないという結果になった。
 
またひとつ分かったことがあった。それはワゴン車は複数台いるのではということである。幸花と明恵、それに真珠やミステリーハンティング同好会のメンバーまで動員して、ツイッターへの書き込みを元にデータ集計していくと、同じ日の同じ時間帯に遠く離れた場所に出現しているケースが時々あることが判明した。
 
ただ車種については、どれもアルファード系のもののようである。若干、ハイエースかもという人や、エルグランドだったかも、などと言う人もあったが、アルファードとの見間違いが充分あり得る系統の車であった。
 
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青葉はちょうど用事で東京に出たおり、千里(千里2)と会って相談してみた。
 
「どうにもしっぽがつかめなくてさ」
「それ実験してみたら?国道8号を10km/hオーバーくらいで走って」
「放送局でそんなことできないよ」
 
「だから、こっそりやるんだよ。神谷内さんとかも巻き込まずに、青葉ひとりで」
「白バイやパトカーに見つかったら?」
「その時は私がレースで鍛えたテクで無事逃走してみせるよ」
「やめて〜!手配されちゃう」
 
「まあ反則金くらいは私が出してあげるし」
「もう!」
 
「でも、ちー姉も付き合ってくれるの?」
「青葉ひとりではパトカーから逃げ切れないだろうからね」
 

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そういう訳で、青葉と千里は2月23日(日)に津幡火牛アリーナでローズ+リリーのライブのため千里が高岡に来たものの、コロナ騒ぎでキャンセルになったので、この夜、一緒に夜の国道に出てみることにしたのである。
 
車は青葉のMarch NISMO Sを使用する。いつもの赤いアクアでは、目立ち過ぎるから警察に見つかった時、すぐ手配されて捕まるよ!?という千里の意見でそちらを使うことにした。まあ警察から逃走するようなことには、ならないことを祈るが!
 
夜10時すぎに高岡の自宅を出る。まずは県道32号を通り富大高岡キャンパスの北を通り、西海老坂交差点を右折。国道160号に入って能登半島東岸を北上する。
 
「幻のワゴン車、というか実際にはミニバンっぽいけど、それが同時に複数の場所に出没しているっぽいのは、どう思う?」
「ただの分身でしょ。本体を捕まえれば分身も消えるよ」
「クローンみたいな?」
「そうそう。例えば私が普段使っている携帯はこれ」
と言って、千里姉は赤いガラケーを見せる。
 
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「Toshiba T-008. これのクローンを3番も所持しているから、私がこの端末で通話した内容は全部3番に筒抜けになる」
「へー!」
 
「だから内緒の通話は、こちらの別のスマホでやる」
と言って、千里姉(千里2)は別のスマホを見せてくれた。
 
「これはベークーのアクアリスX2. この端末は多分3番は知らない」
 
いやきっと知ってると青葉は思ったが、口には出さない。
 
「これは3番がメインに使っているスマホ、シャープ・アクオス・セリエのクローン。3番があの端末を使って通話した内容は全部私に筒抜け」
 
「だったら3番さんも2番さんが知らないスマホも使っているんじゃないの?」
 
「かも知れないと思って探ってるんだけど、なかなかしっぽ掴ませないんだよ」
「ああ」
 
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「もっとも3番はしっぽ切っちゃってるからなあ」
「何の話をしてんのさ!?」
 

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