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■春牛(4)

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それで和実は、胡桃・トワイライトの出光オーナーと話し合ったが、オーナーは大いに興味を示した。そして話し合いの結果、“クレール青葉通りビル”2階の16.4坪(3間×10m)の区画を貸すことになり、《トワイライト仙台青葉通り店》が誕生することになった。トワイライト初の支店である。
 
家賃は和実と出光さんの話し合いで以下のように定めた。実は和実がテナントの賃貸料計算に無知だったので、出光さんの方から提案し、その後、他のテナントの賃貸料計算のモデルとなった。
 
毎月の売上に連動して賃貸料が変動する。
最低家賃 12万円
売上100-200万円→12万円+(売上-100万)×0.1 (200万円なら22万円)
売上200-300万円→22万円+(売上-200万円)×0.08 (300万円なら30万円)
売上300万円超→30万円+(売上-300万円)×0.06 (400万円なら35万円)
 
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恐らくは美容室の売り上げは200万前後ではないかということで、その場合、30万円前後の家賃を払うことになるが、美容室側としては無理の無い家賃だと出光さんは言っていた。
 
彼によると大型のショッピングモールなどだと最低金額帯の率が15%程度で月間500-600万円くらいが最低売上額(つまり最低家賃70-90万円)として設定されている所が多いらしいが、ショッピングセンターでもないし、あまり家賃で儲ける気も無いしということで、“姉妹割引価格”ということにしてこの金額に設定することにした。これ以外に共益費(エレベータやトイレなど共用区域の費用、警備員・清掃員などの費用など)が必要だと言われ、相場は坪あたり3000-4000円だと言われたので、坪単価2000円で33000円にすることにした。
 
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「ショッピングモールの中にはこの段階的家賃レートの境界が微妙で、例えば190万円の売上より200万円の売上の方が家賃が安くなるような設定の所もあるんですよ」
「それどうなるんですか?」
「微妙な売上のお店は月末にセールやって何とか上のステップに行こうとする。それを期待しているんですね」
「それテナント側は無理な値引きで利益率が悪化しそう」
「昔福岡市で行政主導の第三セクター方式で作られたスーパーブランドシティーというショッピングセンターは、最低家賃の制度が無くて、売上ゼロなら家賃ゼロで良かった。それでテナントが全然営業努力しなくて、いつ行っても客がほとんどおらず閑古鳥が鳴き続け3年で破綻した」
「さすが無責任の第三セクターですね」
 
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「仙台って地下鉄もあるし、公共交通機関が充実してるように見えるけど、そういう交通機関に網羅されていない地区も多くて、実は結構な車社会だからね。車で乗り入れられる店は絶対的に有利だと思う」
とも出光さんは言っていた。営業時間は会社が終わって買物などした後で来る人のために22時(受付終了21時)までにする(石巻店は18時受付終了)。
 
また出光さんは、クレカや交通系カード、またスマホ決済が使えるようにした方が絶対いいと指摘。これについては若葉に頼むことにした。年商数十億?の企業が交渉してくれれば多分何とかなるだろう。
 
トワイライト青葉通店のスタッフは胡桃(株式会社トワイライトの常務!)が店長(ディレクター)、胡桃の東京時代の友人で、胡桃より巧い!水嶋さんがデザイナー、市街地なら絶対男性美容師の需要があると言われて広瀬さんがスタイリスト、胡桃と仲が良く、美容学校を出て2年目の森田さんがジュニア・スタイリストとなって、取り敢えず美容師4人のシフト制(在店2〜3人)。これ以外にアシスタントを2名くらい募集するが、状況によっては美容師自体あと1人募集するかもということだった(常時3人いるようにするには最低6人必要−もっとも店長の労働時間はわりと無視されがち)。
 
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設備はセット面5面、シャンプー2台という中規模美容室の陣容である。美容師が3人在店している時間帯は、やはりセット面が5台欲しいので、このような規模になった。それにオーナーが「そんな町中で開業したらお客さんドンドン来るかも知れないから、セット面は5台くらい用意しておいた方がいいかも」ということになった。美容室の場合、理容院と違いセット面の増設はわりと容易である。なお、美容師の着替え場所はクレールの女子更衣室、広瀬さんは男子更衣室を使ってもらうことにした。
 
ちなみに広瀬さんには
「女装勤務するなら女子更衣室でもいいけど」
と言ってみたが(毎度のセクハラ)
 
「男子更衣室を使わせてください」
 
と言っていた。彼もさんざん誘惑?されて婦人服売場やアクセサリーショップ、ランジェリーショップ!?に付き合う程度は平気になっているし、気分次第ではスカートを穿いて勤務している日もある。男性美容師のスカート派は時々居るが、さすが着こなしている人が多く、彼の場合も“女装”には見えない。ごく普通の格好のように感じる。むろんブラジャーとかは着けない(多分)。広瀬さんはお化粧もうまいが、お客様にメイクをするために日々練習しているものである。
 
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和実は東京の冬子のマンションを“朝9時”(つまり政子が確実に寝ている時間帯に)訪れ、クレール開業時に政子さんから借りた6000万円の未返済分4000万円を一括返却したいと言い、額面4000万円の###銀行振り出し小切手を持参した。冬子は驚く
 
「お金は大丈夫なの?」
「うん。内部留保が結構貯まっていたし。それに今度青葉通りにも支店を出すことにしたんだよ。イオン対策で支店を作るという構想は夏頃からあったんだけど、結構いけそうなので実行することにして、その資金を陸前銀行から借りることにした。結果的に運転資金に一時的に余裕が生まれるから、その機会にこちらは精算しておこうと思って」
 
「仙台の中心部に出店するんだ!でも土地代高いでしょ?」
 
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「土地と建物は、クレールの株主になっている、私と千里と若葉の3人で共同出資した会社で保有することにした。それで若葉がムーランを出店して、あわせて仙台本部、お菓子ショップ、セントラルキッチンを置いて、千里は地下に体育館を作るほか、スポーツ用品店とアクセサリーショップも出すということで」
 
「若葉と千里と共同か!」
 
それで冬子は若葉の予想通り、資金は実質その2人から出ているのだろうと考えたようである。
 
「何なら冬もテナント出す? ローズ+リリーのグッズショップとか?」
「マリが喜びそうだけどね。アクアのグッズショップなら成り立つかも知れないけど、ローズ+リリーでは無理だよ」
「あ、アクアというか§§ミュージックのグッズショップを出さないかと、千里がコスモスちゃんに持ちかけると言っていた。多分今日明日にはその話がコスモスちゃんから冬の方にくるかも」
「それは面白いと思うよ。アクアなら成り立つ。ローズ+リリーも10年前なら成り立ったかも知れないけど、この年齢になったら無理」
 
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「あと4階にTKRアーティストのための貸しスタジオを作るんだよ。音源制作もできる設備も揃えて。TKRのアーティストは東北とか北関東に多いんだよね」
 
「そうそう。それこないだ三田原さんとも話した。確かTKRアーティストの10%が宮城県、8%が福島県、6%が岩手県に住んでいて、東北・北関東9県で全体の43%くらいを占めているんだよ」
「TKRは東北・関東レコードの略という噂もあったね」
「うん。あったあった」
 
和実が現時点での図面・店舗配置の図を見せると
「4階は全面スタジオかぁ」
と言って感心していた。
 
「TKRから賃料を毎年2億円もらえるんだよ。それで土地建物の固定資産税も銀行ローンも払っていける」
「それは凄い。でも随分高くない?」
「スタジオの機器はこちらで準備するし、技術者もこちらで雇うからね」
「ああ、そういう仕組みか」
「コンパクトな経営をするのに社員をあまり増やしたくないみたい。アクアが20歳になって性転換手術を受けたら大規模なリストラは避けられないと覚悟しているとか言ってたよ。だから賃料の半分は機械とスタッフの費用で消える」
 
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冬子は少し考えてから尋ねた。
「スタッフのアテはある?」
「それ、何とかしなきゃと思っていた」
 
「麻布先生のコネで聞いてみようか?」
「それ助かる」
「麻布先生や元同僚、その教え子とかはたくさんいるから、東北に関わりのある人も結構いると思うよ」
 
「何なら冬もこのスタジオ運営に参画する?」
と和実が言うと、冬子は少し考えていた。
 
「中古の録音機器・音響機器とかは結構あちこちのスタジオから出るから、そういうのを安く買い取れるように声を掛けておくよ」
「助かる」
 
「あと、スタジオ運営してたら、ギターの弦が切れたとか、五線紙が足りなくなったとか、エフェクターに使う9V電池が切れたとか、管楽器のクリーニング用品が切れたとか、その手のことが頻繁に起きると思うんだよ。データ入れるハードディスクとかもだけど。その手の音楽関係の雑貨・消耗品を扱うお店とかがあったらいいなと思うんだけど。そういうの考えない?」
と冬子は言う。
 
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「それも、冬、どこか適当な楽器店を知らない?優遇家賃にするから、テナントとして入居してもらえたら助かると思う」
 

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「それは割と心あたりがある」
と冬子は言い、翌日冬子自身が和実と一緒に仙台に行き、小さな楽器店を訪れた。“仙台楽器”という、名前は大きいが、サイズは15坪ほどの小さな楽器店である。実は郊外に倉庫も持っているらしいが、店舗は容易には広げられないらしい。
 
「実は再開発に引っかかって、ここを2〜3年以内に立ち退かないといけないことになっているんだよ」
「ああ、この付近は結構道が折れ曲がっていると思ってた」
「城下町の宿命だけどね」
 
それで冬子・和実が仙台楽器の社長で70代の伊達さん(別に仙台藩主とは無関係らしい)と話し合った結果、クレール青葉店に移転してもいいということになった。和実と冬子はこの機会に30坪程度(面積は調整により多少変わるかも)の広さにしませんかと勧める。家賃を心配していたが、売上の12%(以下)で、30坪なら売上300万までは36万円という線を提示すると、そのくらいなら払っていけると思うし、今払っている固定資産税が不要になるし、この広さなら借りている倉庫も不要になるからその借り賃の分も回せると言っていた。
 
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ということで、この楽器店の移転・入店が決まった。スタジオ隣接の楽器店ということでギターやヴァイオリンなどの弦をできるだけ多種多数、ヘッドホン・ピック、五線紙、筆記具などの消耗品も多種多数、また最近の音源制作に合わせて、ハードディスク/SSD, CD-R/DVD-R, USBメモリー, SDカードなどの電子機器・消耗品の類いも置いて欲しいと言うと、そのあたりは息子に相談すると言っていた。(実際にはこの機会に40代の息子さんが経営の中心になることになり、品揃えもかなり刷新され、ノートパソコンやタブレットなども置いて半ばパソコンショップのようなったが、売上はかなり凄いことになり、家賃もかなりの額になって、和実も助かることになる)
 
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なお、本題だった、スタジオの運営体制のほうだが、麻布先生の人脈で、スタジオ技術者で宮城県内に住んでいる人、およびこの機会に仙台に移住してもいいという人が取り敢えず5人見つかり全員採用することにした。その中でも麻布先生の信頼が高い国近さんという人に店長をお願いすることになった。
 
結局この運営会社は冬子も設立資金を出してくれることになり、和実と冬子が取り敢えず1000万円ずつ出資して"CSスタジオ"という会社を設立。そこがスタッフにお給料を払っていくことになった。スタジオ運営費はCMP側から提供する。つまりCMPはTKRから年間使用料をもらい、そこからCSスタジオに運営委託費を払うという構造である。スタジオ設備の2割程度はCMP側で自由に使えるが(4階練習室優先使用)、そこからあがる売上は半分をCSスタジオに還元することを若葉と冬子の話し合いで決めた。
 
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実際には、エレクトーンやグランドピアノを常設した練習室の一般客利用率が高かった。ピアニストやオルガニストは練習場所に飢えているようである。それでこのスタジオは潤っていくことになり、冬子もここから毎年結構な利益を受け取ることになる(和実も同額を受け取る)。
 

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ところで和実が冬子に返済”した4000万円であるが、一緒に仙台に行った翌日冬子から和実に電話があった。
 
「一昨日は他にも色々話があって、私もきちんと確認してなかったんだけど、和実、2018年末に500万返してくれているから残金は3500万円だよ」
「あれ?そうだったっけ?冬から、しばらく返済は保留しようよと言われたから全然払っていなかったと思ってた」
「たぶんあの話をしたのが2019年になってからだったかも」
「あれぇ、私認知症かな。500万を忘れるなんて」
「和実少し運動とかしたほうがいいかもよ。取り敢えず500万はそちらに振り込み戻すね」
「ごめーん。振込手数料は引いといて」
「了解」
 
(実はクレールの取締役でもある若葉が「和実大変そうだし」と思って勝手に500万、クレールの名前で振り込んでいたのだが、このことは冬子も和実も気づかないままになる。若葉的に500万円は普通の人の500円くらいの感覚)
 
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