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■春牛(13)

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(C) Eriki Kawaguchi 2020-03-03/改2020-04-18
 
3月6日、千里と青葉は、無観客公演をすることになった仙台での復興イベントのため、一緒に仙台に行った。行く時は千里の車を使って2人で交替で運転している。復興イベントに参加予定だった美津穂と世梨奈は出演しないことになった。出演者をできるだけ減らすことになったのである(ギャラは払う。それで世梨奈は結果的に10月に冬子から借りたお金も完済したことになつた)。
 
この時、現地でマリさんが元気無い気がしたので、ケイさんに聞いてみたら、誰にも言わないでねと断った上で、マリさんが先週、彼氏と別れてしまったことを青葉には教えてくれた。
 
「それは大変でしたね。慰めることはできませんけど、これでもあげて下さい」
と言って、青葉は千里姉からもらっていた六本木・瀬里奈の御食事券を2枚渡した。
 
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「ああ。マリにはこういうのが一番効くよ。ありがとう」
とケイさんは言っていた。
 

復興支援イベントの後は、クレール若林店の徹底した感染対策を施された店舗で打ち上げしたあと、竣工したばかりでまだ誰も入居してない女子寮で仮眠した。
 
「男性の方には“今夜だけ女”パスを配りますね。永遠に女になりたい人はご相談します」
などと和実は言っていたが、“永遠に女になりたい”という希望者はいなかった!
 

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9日にはみんなでクレール青葉通り店の建設現場に行った。
 
ここに来たのは青葉と千里、和実、冬子、コスモス、★★レコードの八雲係長、加藤部長、TKR仙台支店の山崎さんなどである。
 
「もうかなりできてるね」
とコスモスが言った。
 
「フレームは完成しています。地下はもう防音板の貼り付けまで終わっています。1〜3階は壁までできているので、これに3年間眠っていた、アール・ヌーボーの壁板を張りつけます。4−5階は外壁だけの状態だから、このあと内側の壁板を貼って、防音板を貼り付けていきます。その上でパーティションを切っていきます」
と和実は説明する。
 
「来月にはできるよね?」
「4月上旬引き渡し予定でしたが、コロナ対策の改造をするので少し遅くなる予定です」
「大変だね」
「絶対にクラスターだけは発生させないよう万全の対策を取りますから」
「そういうののモデルケースになるといいね」
 
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「中間層に演奏させようかな」
とコスモスは言っていた。
 
「中間層というと?」
と青葉が尋ねる。
 
「花咲ロンド、石川ポルカ、原町カペラ、桜木ワルツ、山下ルンバ、桜野レイア」
 
「ああ。あとひとつ伸び悩んでいる層と、少し年齢が高くてアイドルとしては売れない層だな」
と加藤部長が言うと
 
「そうハッキリ言ったら可哀想ですよ」
と千里が言った。
 
「山下ルンバとかは、もっと早くデビューさせてあげれば良かったんですけどね。売り出すのにも結構なパワーが必要だから」
とコスモスは言う。
 
「あの子はあの子なりの生き方を見つけたと思うよ。たぶんあの子は20年後もこの業界で生きて行ってる」
と加藤部長。
 

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「まあルンバは今更アイドルもできないし、タレント性を磨いていくか、実力派シンガーとして売っていくしかないと思う」
などと冬子は言っている。
 
「あの子はたくさんの想定シナリオを予め考えているから、あたかも機転が利くようにみえるけど、実は想定外のことでツッコまれたりした時に、巧い受け応えができないんですよ」
 
「だったら、やはり実力派シンガーの道しかないな」
 
「そういうツッコミとかへの対応がうまいのはアクアだよね」
「あの子は本当に機転が利きます。本人は俳優志向だけど、タレントとしてもやっていけると思うんですけどね」
 
「あの子、性転換しても、お笑いタレントとして生きていけるよ」
「まあ性転換した場合は、その一択でしょうね」
 
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「あの子、高校卒業前に性転換手術受けたりしないの?ここだけの話」
と加藤部長が尋ねる。
 
「川崎ゆりこが、休暇あげるからタイで手術受けておいでよ、と声を掛けたらしいですが、ボクは女の子になるつもりはありませんと言ったらしいですよ」
 
「でも、あの子、女の子みたいな香りまですることもあるから、間違いなく女性ホルモン飲んでいると思うし、どこまで信じていいのか分からないなあ」
と加藤さんは言っている。
 
「まああの年齢で声変わりしないのは女性ホルモン飲んでいるか去勢しているかしかあり得ないから、ファンもアクアは実際には多分去勢しているのだろうと思っているよね」
などと千里まで言っている。
 
「TKRはアクアが性転換した場合の対応シナリオを作っているみたいですけどね」
と冬子。
「万が一の場合は一部の社員を★★レコードで引き受けてくれと松前さんから言われているよ」
と加藤部長。
 
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ともかくもそういう訳で、クレールの青葉通り店では、高校生以上の研修生や、リセエンヌ・ドオ、花咲ロンド、石川ポルカ、原町カペラ、桜木ワルツ、山下ルンバ、桜野レイアといった面々の演奏が行われることになったのである。
 

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現場を見た後は、全員で更に若林店の方に行って、結局和実の家の居間で、数時間にわたり色々意見交換をした(窓を全開放し、扇風機まで掛けている。むろん全員マスクをしている)。
 
青葉はこの後、大船渡で慰霊祭に出て彪志の実家にも寄るつもりだったのだが、中止。結局千里と一緒にまた車を交替で運転して高岡に戻った。
 

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斎藤種雄(60)は、羽咋市の小さな神社の次男に生まれ、皇學館大学を出て神職の資格を取得した。最初の数年間は石川県の神社庁に勤務し、あちこちの神社の祭事の手伝いをした。その後、県内のあちこちの神社に数年ずつ奉職したが、白山市のH神社に奉職した6年間が最も充実していて、人脈もできた。50歳を過ぎてから、津幡町の菊姫神社の宮司に任命され、恐らくはここが自分の最後の奉職先と思って赴任してきた。最初は色々苦労したものの、何とかなってきて町の人たちにも親しまれるようになってきた。
 
昨年10月になじみの建設会社から、起工式の執行を頼まれる。かなり大きな土地ということで、緊張したものの、H神社時代には自分が斎主ではなかったものの、巨大な再開発地の地鎮祭に関わったこともあるので、気合いを入れて当日は出向いた。
 
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ところが式を執行しようとしたら、祭壇から神様に睨まれているような気がした。こんな体験は初めてだったが、このままでは神様を怒らせると判断した。それで式を中断し、以前可愛がってもらったH神社の宮司(当時はまだ禰宜だったが)の宮本に連絡してきてもらい、何とか起工式を無事済ませることができた。
 
宮本からは「君らしくもない」と叱られたものの「ここは自分でもビビったかも知れない。物凄く尊い神様がおられる」と言っていた。斎藤はやはり自分の判断は正しかったようだと思ったものの、起工式をひとりで執行できなかったこと自体で少し落ち込んだ。自分も60になったし、そろそろ引退を考えるべきだろうかなどと悩む。
 
斎藤は珠洲の神社に奉職している次男と話してみようかなとも考えていた。
 
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3月3日・ひな祭りの夜、斎藤は夢を見た。
 
赤い振袖を着た6−7歳くらいの女の子が鞠を撞いていた。斎藤は一瞬昔見た映画『世にも怪奇な物語(Histoires extraordinaires)』のラストで、妖しげな化粧をした幼い女の子が鞠を撞いているシーンを連想した。しかしこちらを向いた女の子はそのような妖しげなものではなく、とても可愛い顔をしていて、むしろ神聖さを感じた。斎藤は瞬間的にこれは神様だと思った。
 
女の子は斎藤に言った。
「妾(わらわ)はそちが気に入ったぞ。そなたが妾(わらわ)を祀れ」
 
目を覚ました斎藤はこれは“お告げ”ではないかと思った。そこで白山市のH神社まで出かけて行き、旧知の宮司・宮本に相談した。
 
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旧友の宮本は斎藤に言った。
 
「それはお告げかも知れないし。ただの夢かも知れない。しかし起工式の中断の件もあったし、施主さんが許してくれれば汚名挽回で、君がそこの宮司になってもいいかも知れないね」
 
「汚名を挽回するのは困ります」
「あ、間違った。名誉挽回だね」
 

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それで、宮本と斎藤は、3月11日の午前中、高岡に青葉の自宅を訪れた。青葉は仙台で復興支援イベントに出た後、高岡に戻ってきた所であった。千里も一緒にこちらに来ていたので、この話はふたりで聞いた。
 
「どこかの神社さんに管理の委託をしなければと思っていました。ぜひお願いします」
 
「ありがとうございます。起工式では大変みっともないことをしてしまって」
 
「いえ、あれが1人では無理なことにお気づきになったことが、斎藤さんの力量があることを示していると思いますよ」
と千里が言った。
 
「御祭神については何か考えておられますか?」
と宮本さんが尋ねる。
 
「それなんですけど、神様同士の話し合いで、どうも決まってしまったようで」
と言い、青葉はこのように説明した。
 
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・神社は三殿構成の建物とする。
・主祭神は、玉依姫命(たまよりひめのみこと)と言い、千葉市花丘の玉依姫神社に祀られているほか、火牛神社の旧社にも仮住まいしている神を勧請する(実際はわざわざ勧請しなくても来ているのだが)
・左殿には地主神の津幡姫命(つばたひめのみこと)をお祀りする。
・右殿には倶利伽羅峠にある火牛神社の主神を勧請する。
 
また青葉は自分が玉依姫様をお祀りするようになった経緯、火牛神社との関わりについて語ったが
 
「ああ、あなたは金沢ドイルさんか!」
と2人が気づくと、青葉の説明を結構信じてくれたようであった。それで宮本さんたちは青葉の方針を追認してくれて、この神社には↑の三神が祀られることが確定したのである。
 
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「神社の名称はどうしますかね?」
「それについては易卦を立ててみたのですが」
と青葉は言って、立卦の記録を見せる。
 
火牛神社 山風蠱
玉依姫神社 水澤節
津幡姫神社 水澤節
辺来神社 坤爲地
辺来の里神社 風火家人
 
「そういう訳で、辺来の里(へらいのさと)神社というのが良いようです」
「あそこの土地の名前ですか!」
 
「それがいちばん無難な感じですね」
 
「うん。地名を神社の名前に使うするのはよいことだと思いますよ。単に辺来神社にすると、そこの代表みたいだから“の里”を付けたほうが反発されませんね」
と宮本さんも言い、この神社の名前は辺来の里神社ということで確定した。
 

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宮司は斎藤さんが、菊姫神社と兼任で務めることになった。巫女さんは募集して20代の経験者1名を正採用したほか、女子大生のバイト巫女を2人入れた。
 
斎藤さんは数年後には、菊姫神社の宮司を次男の真雄に譲って、こちらの専任になってしまう。
 
「いや、津幡姫様とお絵描きとかして遊ぶのにすっかりハマってしまって」
 
と言う種雄の言葉を真雄は、認知症の発現なのか、妄想癖かと悩んだものの、特に他人に害を加えたりというのもないようなので、暖かく?見守ることにした。姫神様に愛されたせいか、種雄は地元の人や、デファイユ津幡に来る多くの人に親しまれ、100歳まで生きることになる。
 

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2020年3月13日(金)、日本水連は4月2-8日に予定していた日本選手権の日程短縮(4/2-7)と無観客実施を発表。延期もあり得るとした。
 

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