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■春根(13)

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(C) Eriki Kawaguchi 2019-11-22/改2020-04-18
 
映画『ヒカルの碁』の撮影は順調に続いていた。
 
撮影には2台のカメラを使用しており、片方にメイン監督の中村監督、片方に助監督の高原さんが付いている。2つのカメラは各々出演者がダブらないような場面を計画して撮影を進めている。このあたりは今回“撮影プラニング”のクレジットで参加することになった河村監督のチームが開発したソフトで計画をしている。
 
葉月は橘中ミナコの自宅でミナコと父が対局する場面の撮影をアクアの代理で撮影した後、次の出番まで(予定表では)30分ほど空くはずなので、トイレに行った後控室で少し休んでいようと思った。
 
ハードな撮影なので、休めそうな時は積極的に休んでいないと体力がもたない。アクアさん、ほんと体力あるよなあ。アクアさんって本当は4〜5人居るんじゃないかと思うほどだよ、などと思いながらトイレ(むろん女子トイレを使う)に入る。便器に座ったまま5分ほどボーっとしていてから、ハッと気付いたように意識を戻し、あそこを拭いてから立ち上がる。
 
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拭くのって、まだ男の子だった頃もしてたけど、あの頃はタックだったから結構しっかり拭く必要があった。でも女の子になってしまった後は、タックしているのよりは濡れないので楽になったよなあ、などと考えていた。女の子の身体って割といいよね?
 

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服を整え、流してから個室を出て、手を洗って女子トイレを出ると、ちょうど男子トイレにヒカルの衣装を着けたアクアが入って行く所だった。
 
「お疲れ様です」
「お疲れ様です」
と声を交わす。アクアは男子衣装の時は男子トイレ、女子衣装の時は女子トイレを使用しているようである。でも葉月はどちらの衣装の時も女子トイレを使う。実際、男子トイレは使えない身体になってしまっている。
 
それで控室に戻る前に、念のため次の出番の棋院の場面の進行が遅れていないか確認しようと思い、棋院のセットの方に行ってみた。
 
え?と思った。
 
そこでは橘中ミナコ(アクア)が緒方精次九段(大林亮平)と打っているシーンが撮影されていたのである。この時間帯は、緒方九段と桑原本因坊(藤原中臣)の対局シーンが撮影されているものと思ったが、どうも進行が遅れているようだ。葉月がそれを見ていたら、河村さんが寄ってきて
 
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「ごめん、今井さん。少しこちらの進行が遅れているから今井さんの出番は1時間半後になるから。これ新しいスケジュール表」
と言って、スケジュールを印刷した紙をもらう。
 
「ありがとうございます」
と言って、受け取ったが、葉月は混乱した。
 
だって、ボク、さっきトイレでアクアさんと遭遇しなかったっけ??ここにいるのがアクアさんなら、さっき会ったのは誰??
 
葉月はしばらく考えていたものの、どうも疲れているようだと思い、控室で寝てようと思った。それで控室(もちろん女性用控室)に戻ると、そこにいる女優さんたちに「お疲れ様です」と声を掛け、仮眠室に入り、空いている布団に潜り込んだ。
 

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貴司と美映は(2019年)7月29日(月)に豊中のマンションから姫路の家に引っ越すことにしたので、プラドに乗って前日に下見をしてきた。姫路市内で名物の穴子飯を食べてから豊中のマンションに帰宅する。最後の帰宅である。途中、西宮名塩SAで休憩した時、ちょうどトイレに入っている時に千里からメールがあった。
 
《明日貴司が会社に行っている日中だけでいいからプラド貸して》
《明日は引越に使うんだけど》
《引越?どこかに引っ越すの?》
 
なぜ今更そんなこと訊く〜!?と思うが、この手の自分のしたこと・言ったことを全く覚えていないのは昔からの千里の通常営業である。
 
《千里(せんり)のマンションを出なきゃ行けなくなったけど、千里(ちさと)が姫路の家を貸してくれるというから、そこに引っ越すんだけど》
 
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《ああ、じゃ美映さんと離婚したのね?》
《離婚はしてないよ。会社の住宅手当が打ち切られたから出なきゃいけなくなったんだよ。それで困っていたら千里があそこを貸してくれるというから》
 
《私があそこを貸すって言ったの?》
《そうだけど》
《ふーん。住宅手当が無くなったのなら仕方ないか。でも寝室では美映さんと寝ないでね》
 
《それは千里と話して、美映は1階南側のサービスルームを使って、東北のベッドルームは僕が使うことにしたんだけど》
 
《それならいいや。でも美映さんとまだ別れていないのなら、家賃30万円くらい払って。本当は月100万円取りたい所だけど、貴司だから特別》
 
《千里が2万円でいいて言ったんだけど》
《私がそんなこと言った?》
《言った》
 
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《じゃまあいいや。だったら差額は身体で払って》
《それも千里が身体で払って言うから、そうすることにした》
《仕方ないなあ。だったら居住1ヶ月につき労働奉仕3ヶ月くらいで》
《身体で払うって、そっちの意味?》
 

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《でも関西で6人乗る車が欲しいのよねー。あ、だったら引越に使うなら、もっと大きな車を代わりに貸すよ。貴司、大型免許持ってたよね?》
 
《仕事の都合で中型までは取ったけど、大型は取ってない》
《中型って8tトラック運転できたっけ?》
《できない》
 
《2トン・トレーラーは運転できるよね?》
《牽引免許持ってないから無理。ってか2トントレーラーなんて存在するの?》
《持ってるんだよね〜。友だちの引越とかによく貸してる。4トントラックは運転できる?》
《運転できるけど、大きすぎて困る。運送屋さんも頼んでいるし》
 
《軟弱だなあ。ハイエースは?》
《そのくらいなら大丈夫》
《じゃハイエース持って行くからプラド貸して》
《まあいいけどね》
 
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それで千里(ちさと)はその日の夜の内に、市川ラボに駐めていた“キャラバン”(雨宮先生が“借金の形に取った”ものの使い道を思いつかないと言って常総ラボの前に放置していったもの。中にあったパン焼きの設備は取り外した)を運転して千里(せんり)のマンションまで行き、自分が持っている鍵で駐車場に勝手に入り、キャラバンを駐めてプラドを持ち出した。
 
千里が持っているマンションの鍵はキャラバンの座席に置いたが、結局自分はこのマンションで貴司と一緒に暮らせなかったなと思うと少し涙が出た。
 
(なお千里はこの車がハイエースではなくキャラバンであることに気付いていない。最初に勘違いしたのが、そのままになっている)
 
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それで千里は7月29日は朝からプラドで敦賀駅まで走って、東京から来た冬子とコスモス、マネージャーの山村と鱒淵、TKRの三田原を迎え、小浜まで走っていく。実は5人乗せたかったのでプラド(7人乗り)を使いたかったのである。山村は助手席に乗せたのだが、こちらをじろじろ見ていた。どうも2番か3番が判断が付かないようだ。山村(こうちゃん)はアクアの3人も見分けが付かないみたいだからなあ、と千里は思った。
 

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一方の貴司は美映に
「引越に便利なようにハイエース借りてきた」
と言って
「キャラバンに見えるけど」
と美映に突っ込まれ
 
「あれ〜〜?」
と実際驚いていた。
 
しかしキャラバンがあって良かったのである。
 
“運送屋さんには任せたくないもの”が意外に多く、キャラバンの荷室が半分くらい埋まった。プラドでは載りきれない所だった。
 

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当日は朝から荷造り担当者が来て、どんどん荷物を箱詰めしてくれる。午後には4トントラックを持って来て、マンション敷地内に許可を取って駐め、そこに荷物を運び込んだ。微妙に入りきれなかったものも運送屋さんの事務の人が乗って来た車に積み、それでも乗らない分は結局キャラバンに積んだ。
 
それで姫路に持って行ってもらう。貴司たちはキャラバンで先に姫路に行き、それは家の横に駐めた。そして運送屋さんの4トントラックと、事務の人が乗る車を家の前の庭に駐めることができた。家具などを所定の位置(前日に紙に書いてテープでフロアに貼り付けておいた)に置いてもらい、段ボール類はLDKに積み上げてもらった。
 
「さて、この段ボールはどうやって片付けようか?」
「まあ年末くらいまでには片付くかな?」
 
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実際は貴司は全くあてにならないので、美映が次の日曜に、お友だちをたくさん呼んで(数人は旦那付き)1日で片付けてしまった。お友だちがすぐ動員できるのが、阿倍子と美映の違いである。美映は高校の同級生とのつながりも卒業してから長いのに結構続いているし、バスケットの友人も多い。バスケットガールたちはみんな腕力も体力もあって大いに戦力になる。
 
片付けが終わった後は、ペントハウスで打ち上げパーティーをしたが、好評で
 
「ビバノン、ここで時々パーティーしようよ」
と言われていた。
 
もちろんBGMはアラベスク(Arabesque) の "Parties in a Penthouse"(*12) である!
 
パーティーの後は地下のバスケットコートで3×3をやって“腹ごなし”をした。
 
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(*12) Jake Miller, Airbourne に各々 "Party in the Penthouse" という曲があるがどちらも別の曲。つまり似た名前の曲が3つあることになる。各々の歌い出し↓
 
Arabesque : I'm living on a mountain... ("Parties in a Penthouse"というサビが有名)
Airbourne : I make a getaway from the day to day...
Jake Miller: Tonight we gon Party in a Penthouse...
 

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7月31日、青葉と千里(千里3)は、一緒に昼食を取って“千里1の暴走”の件を話し合った後、冬子から「もしよかったら見学しない?」と言われていたので、新宿のスタジオに行き、ローズ+リリーの『トロピカル・ホリデー』の音源製作に立ち会った。伴奏は Havai'i 99 のメンバーで、スターキッズはお休みなので、彼らも見学している。
 
「ほんとこの人たちノリがいいですね〜」
と青葉は七星さんたちと話していた。
 
「たくさん買ってきてもらったから、千里と青葉にも1本ずつあげるよ」
と冬子から言われて、タヒチの縦笛、ヴィヴォをもらった。
 
口ではなく鼻で吹くエアリード楽器なのだが、千里も青葉も一発で音を出すことができて、すぐメロディーも吹いてみせたので、Havai'i99の城野月さんが驚いていた。
 
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収録が終わった後で、青葉と千里はその月さんと彼女のフィアンセ(というより内縁の夫)の村原宏紀さんから個人的なことなのだけど、といって相談を受けた。最初は冬子に相談したいと言われたものの、どうも青葉と千里の方が良さそうということで、冬子は同席しなかった。
 
それで村原宏紀・城野月、千里と青葉の4人でスタジオ内の小ブースに入って話を聞いたのだが、月が千里を見て
 
「あれ?醍醐先生、それはウィッグですか?」
と尋ねた。
 
それで青葉は彼女たちの“相談事”の内容が分かってしまった。千里も察したようで
 
「もしかして、髪の短い私にも会いました?」
と尋ねた。
 
「あ、はい。先週帰国してすぐに郷愁村の方に行ってケイ先生たちに帰国の報告をた時に醍醐先生もおられて、髪が短かったのですが・・・もしかして妹さんか何かですか?」
 
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「実は双子の姉妹なんですよ」
と千里(千里3)は言った。
 
「そうだったんですか!」
 
確かにそうとでも説明しておかないと、説明不能だよね。
 
「ひょっとして姉に会った後、月さん体調がおかしくなったとかいうことは?」
と千里は尋ねる。
 
「もしかして何か関わりがあったのでしょうか?実はあの日、私唐突に身体が女の子に変わってしまって」
 
「ああ。また被害者が出ていたか」
と千里は言った。
 
「被害者!?」
 

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