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■春根(11)

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千里と貴司は10分くらい階段を探し回った。家の外周まで見たが外側にも階段は無い。
 
「やはり階段は無い気がする」
「建てた所に訊いてみる」
 
それで千里は南田兄に電話してみた。
 
「え?2階に行く階段ですか?ちょっと待って下さい」
と言って、彼は図面を確認しているようである。そして5分ほど待たされた上で聞いた返事に、さすがの千里も呆れた。
 
「済みません。階段作り忘れました」
 
横で聞いていた貴司も驚いている。
 
しかしまあよくそれで検査合格したものである!
 
「作ってくれる?」
「じゃ、清川と前橋を明日にも行かせて作りますので」
「清川君だけだと心配だけど、前橋さんも来るなら安心かな」
 
清川は何も考えずに突っ走るような所があるので、彼が作ったら階段の着いた先が壁になっているような、純粋階段(*9)にでもなりそうだ!
 
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ともかくもそれで明日にも階段を増設してくれることになった!
 
(*9)純粋階段とは、階段の登った先あるいは降りた先に行きようがなく、役に立たない階段のこと。多くの事例は元々はふつうの階段だったものの、登った所にあった扉や通路が改築の際に撤去されてしまったものと思われる。通り道としての機能が無く、単純に階段としてだけ存在しているので“純粋階段”という。類似概念として純粋門、純粋トンネル、純粋シャッターなどもある
 
ちなみに純粋トンネルとは山が無いのにトンネルだけ残っているもので、JR牟岐線の町内トンネルは有名。
 

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貴司は、階段を作ってもらえるという前提で、7月29日(月)に引越することにした。
 
引越屋さんが土日は全部埋まっていたので、平日の引越になった。近い日程なので料金が割高になるが、引越を遅くすれば遅くするだけ、マンションの日割り家賃(1日約1万円)をその分払わなければならない。
 
引越屋さんのお任せパックにしたので、荷造り・荷ほどきもしてもらい、当日は貴重品などだけ貴司が自分で運ぶことにした。
 

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「広いおうちだね!本当に家賃2万円でいいの?」
と美映は引越前日に姫路の家に下見に来てから言った。
 
「うん。ここを建てた音楽家さんが、自分で住むつもりだったのが、都合が悪くなったとかでさ、空き屋にしておくと傷むから、誰かに住んでいてもらったほうが助かるということらしい」
 
「へー。音楽家さんかぁ」
と美映が言ったので貴司はドキッとした。まさか千里だとは思ってないよね?
 
1階にある2つの部屋を見せ、
 
「南側の部屋は明るいからビバちゃんが使えばいいよ。僕はどうせ夜中しか帰って来ないから、東北の部屋を使うよ」
と言うと、美映は頷いている。
 
その東北の部屋の階段(「時代劇みたい!」と面白がっていた)で10段くらい降りて地下のバスケット練習場を見せると
「ここで1日ずっと練習してようかな」
などと言っていた。
 
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階段を戻ってから、キッチンの端に新設された、上に行く階段を登っていく。ちなみに緩菜は貴司がずっとだっこしている。
 
「あれ?更に上にも階段がある。3階もあるの?」
「聞いてなかった。行ってみようか?」
「3階にはそのオーナーさんが住んでいたりして」
「それはないと思うけどなあ」
「そしてそのオーナーさんというのは実は椅子に座った骸骨で(*10)」
 
「なんかそういう恐怖映画が昔あった気がする」
などと貴司は言っている。
 
(*10)愛人の音楽家とか死ねばいいのに、という意味で美映は言っているのだが、貴司はその皮肉に全く気付いていない。
 

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↓概略図面。なお部屋は全てフローリングの洋室である。

 
「ちょっとオーナーに問い合わせてみる」
と言って貴司は階段を登りながら千里にメールを送ってみた。すると階段を登り切る前に返信があった。
 
「すごーい!広いサンルームがある。こちらはペントハウスっぽい」
と美映が喜んでいる。
 
「オーナーさんによると、物干し場と屋根裏部屋だって」
「うん。日本語で言うと物干し・屋根裏、英語でいうとサンルームにペントハウス(*11)」
 
「なんか言い方で物凄く印象が変わるね!」
 

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「日本語ではお手伝いさん、英語ではメイド」
「ほほぉ」
 
「日本語ではオカマさん、英語ではレディボーイ」
「それ少し違うし、レディボーイはむしろ和製英語ならぬタイ製英語」
「なんか詳しいじゃん」
「えっと・・・」
 
「日本語では援助交際、英語ではセックス・フォー・セール」
「そう言っちゃうと身も蓋もない。それにあれって必ずしもセックスしないと思うけど」
「ふーん。女子高生とデートしてお小遣いあげたことあるの?」
「僕はロリコンの趣味は無い」
 
「日本語では籠球(ろうきゅう)、英語やフランス語やロシア語ではバスケットボール、ドイツ語ではバスケットバル、スペイン語ではバロンセスト、中国語ではランチュウ、韓国語ではノングー」
「そのあたりは分かる。だいぶ国際大会で覚えた」
「貴司もまた日本代表に復帰できるよう頑張ろう。専用の練習場もあるんだし。深夜でも練習できるじゃん」
 
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「そうだね。そのくらい頑張ろうかな」
 
「日本語ではよだれかけ、英語ではビブ(bib)、複数形はビブス(bibs)」
「あれ?紅白戦とかの時にかける奴は?」
「同じ単語だよ」
「あれはよだれかけだったのかぁ!」
「似たような形だもんね。ちなみにスタイは商品名、ゼッケンは和製ドイツ語」
「本当のドイツ語じゃなかったの!?」
「ドイツ語では何だろう? Trikot Nummer トリコー・ヌマーかも。不確か」
「トリコーがユニフォームのことだっけ?」
「そうそう。ドイツ語で Uniform ウニフォームといえば日本語の“制服”に近い」
「ああ」
 
「日本語ではノマド、英語ではテレワーク(telework)」
「ノマドって日本語なの?野の窓?」
「和製英語だよ。アメリカ人には通じない。英語の nomad ノウマッドは遊牧民という意味」
「へー」
 
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「日本語ではヴィジュアル系、英語ではグラムロック」
「違うような気がするけど?」
 

3階を見たあとで2階に戻って部屋を見ていたが、美映は家の中の仕掛けに喜んでいた。
 
2階の東北の寝室と隣のクローゼットの間は、掛け軸の裏にある抜け穴で通り抜けられるし、クローゼットと2階キッチンの間は、どんでん返しで行き来できる。また2階と1階の東北にある寝室は1階の天井と2階の床が開けられるようになっており、その間を隠し梯子で行き来することができる。1階と2階の間に高さ1mほどの狭い空間が存在して隠し部屋になっている。
 
「まだ他にも仕掛けがありそう。色々探検してみよう」
などと美映は言っていた。
 
なお先日貴司が千里と一緒に見に来た時は地階と1階を往復するだけだったエレベータが、3階まで行けるように改造されていた。2階のエレベータ乗降口も押入れに見える襖の向こうである。貴司はこの改造だけで100万くらい掛かってないか?という気がした。しかしよく1日で改造したものである。
 
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(*11)屋根裏部屋はむしろロフトに近い。ロフトは屋根の“下”を有効利用したもの、ペントハウスは屋根の“上”にもう1個部屋を作ってしまったもの。この姫路の家の“3階”は屋根が斜めではなく平らで面積も広いので、ペントハウスに近い。ただし豪華な家具などは入れていない。現時点では何も無い空間である。床はフローリングの上に暫定的に100円ショップ!で買ってきた様々な色のクッションタイルを敷いている(接着はしていない)。ランダム模様に見えるが、実はグリーンのタイルだけ見ると、 TAKASHI NO BAKA! になっていることに、貴司も美映も全然気付かなかった!
 
なお、屋根には太陽光パネルが80枚載せてあり、これが生み出す年間電力量は26000kwh程度で、この家で消費されると予想される電力量をほぼカバーしてくれると思われた。またサンルームに置かれた集光器(太陽を自動追尾)から光ファイバーで、地下室も含めて各部屋に設置した照明灯に光を運んでいるので昼間はほとんど電気照明を点ける必要が無い。地下室の場合は空堀り部分からの採光もある。また冬はサンルームで発生した熱気を、夏は地下室の冷気を、主たる居住空間である1階の部屋に配熱するシステムも作られている。更に全室ともに人が居ない時は自動的に電気照明が落ちるシステムになっている。
 
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そして美映は節約家だし、2階は通常ブレーカーを落としていたし、電気をじゃんじゃん使うような機械(パソコンとかテレビとか)も使わなかった。またスポーツウーマンの彼女はエレベータはほとんど使わずに階段ばかり使用した。
 
そういう訳で、家は大きいのに電力消費量は普通の家庭並みで、結果的に毎月電力会社から数万円もらえる状態が続いたので千里は貴司に電気代は一切請求しなかった。
 

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世界水泳選手権が28日で終わったので、青葉たち日本代表一行は7月29日(月)の朝、帰国した。青葉もジャネも帰国したらすぐに深川アリーナに行き、25mプールで29-30日の2日間、ひたすら泳いだ。青葉は夜は深川アリーナの休憩室に泊まったのだが、ジャネは筒石さんのマンションに泊まったようである。たぶんセックスはマラに任せて、マソはぐっすりと熟睡しているだろう。
 
31日は日本水連から呼ばれたので出て行った。
 
日本水連は長年、他の競技の総括組織も入っている、代々木の岸記念体育会館に入っていたのだが、青葉は行く度に「このビル崩れないよね?」と不安を感じていた。そのせいか近年はここから出て行く組織もあったのだが、とうとう建て替えることになり、神宮外苑に新しく建てられたJAPAN SPORT OLYMPIC SQUARE(2019年4月30日竣工・最寄駅=銀座線外苑前駅)に6月18日付けで移転したのである。日本水連はここの8階に入っている。
 
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水連での話はやはりフライングの件だった。過去の競技会での青葉の反応も一般に速すぎると言われ、反射神経が良いのはいいが、今回のようにフライングとみなされると、もったいないので敢えて時間を置いてスタートして欲しいと注意された。青葉も気をつけるようにしますと答えた。なお世界水泳の文部科学省への報告は、ワールドカップもあるので、その後に世界水泳で入賞した選手全員で行くということであった(これは一応メールでも連絡を受けていた)。
 

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水連を出た後、新宿で千里3と会って一緒にお昼を食べた。
 
青葉は日本往復を支援してくれた御礼を言い、航空券代と車代込みで20万円渡しておいた。
 
「でもドーピング検査のは、どうやったの?」
「青葉も、うかつだなあ。選手はいつでも抜き打ち検査があるのに。青葉は特にスタートが異様に速かったりしたから、覚醒剤系を使ってないか疑われていたと思うよ」
 
「実はさっき水連でもあらためて注意された。あれは気をつけるよ」
 
「ドーピング検査は代役さんに受けさせたから大丈夫。ちゃんと青葉の尿を使用したから問題無い」
「私のおしっこを取ったの〜〜!?」
 

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「ところで本題なんだけど」
と千里3は言った。
 
「青葉、最近いつ生理あった?」
「えっと・・・7月20日、大会が始まる前日だった」
「ふだんより重くなかった?」
 
青葉は考えた。
「なぜ知ってるの?」
「それはその生理が本物になったからだよ」
「どういう意味?」
 
「青葉、今天然女子になっちゃったから」
「へ?」
「卵巣も子宮もあるし、膣も本物になってしまっている」
「嘘!?」
「なんなら病院に行ってMRI撮ってもらうといい」
「待って。そんなの撮らなくても自分で分かるはず」
 
と言って青葉は自分の体内をスキャンしてみる。
 
「ほんとにある」
と青葉は実際にそういう器官が存在しているのを確認できた。
 
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「青葉、1番と握手か何かしたでしょ?7月20日に生理があったのなら今月の初めくらいに」
 
「握手?」
と言って考えてみると、握手はしていないものの、南米から帰国した日に空港で千里1が自分の手から荷物を取っていったことに思い至った。あの時千里1と手が接触している。あれも握手になるのだろうか?
 
「その日、お腹の付近が動き回っているような感覚にならなかった?」
「なった。その晩はずっと寝てた」
 
「その時に、女の子になっちゃったんだね」
「なんで?」
 
「瞬嶽さんが私たちの身体に記録した**の法が勝手に起動したんだよ」
「それって・・・羽衣さんが数年おきに使っているやつ?」
 
「そうそう。あの人は100歳越えているから使う度に10年くらい若返る。青葉もこの法で若返った。今歴史的には22歳だから、約2歳若返って20歳くらいの身体になっている。青葉って年齢を極端に勘違いされること多かったけど、少しは緩和されるかもね。世界水泳でメダル取れたのも20歳に若返ったのもあると思うよ。水泳って若い人絶対有利だもん。そして若返りと同時に性別も女になってしまった」
 
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