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■春根(5)

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(C) Eriki Kawaguchi 2019-11-15/改2020-04-18
 
真珠の母が知り合いから紹介してもらったと言って、50歳くらいの男性風水師を連れてきた(この問題を風水師に頼むのは生物の問題を地理の先生に質問するようなものだと真珠は思った)。
 
風水師はその切株を見てギョッとしたような顔をし
 
「これは私の手には負えません。師匠を呼んでいいですか?」
と言った。
 
なるほど。自分の仕事ではないということは分かる程度に“力”はあるわけだ。
 
それで翌週、東京在住という70歳くらいの威厳のある中国人っぽい風水師さんがやってきた。その人も切株を実際に見てから
「うーん・・・」
と、うなる。
 
そして「これは準備が必要だ」と言って、来月また来ると言い、その日は帰った。たくさん写真を撮っていたが、写真に写るわけがないと真珠は思った。
 
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「ところで真珠、なんでそんなの着てるの?」
と母は訊いた。
 
「うーん。魔除けかなあ」
と真珠は平然とした顔で答えた。
 

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7月21日(日).
 
ロックギャルコンテストの本選が例年通り、新宿文化ホールで行われた。石川県予選で1−3位になった、月乃岬、雪渡知香、落合茜の3人は北陸予選でも1−3位となったのだが、この本戦でもそのまま1−3位になってしまった。
 
岬はむろん第6代ロックギャルとしてデビュー決定である。笑顔で審査員の、冬子、コスモス、千里(千里1)などと握手した。
 
2位の雪渡さんも一緒にデビューしないかと誘ったのだが、1位になった岬があまりにも凄すぎて、自分はもっと鍛えてからどこかのオーディションに出たいと言って、辞退した。もしかしたら来年またこのオーディションに応募するかもというので、審査委員長の冬子は「お待ちしてますよ」と言って笑顔で送り出した。
 
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続いて呼び出した茜は「月乃は優勝しましたか?」と訊くので「もちろん」と言う。すると、あの子は自分が見ていないと不安でたまらないので、岬と一緒に東京の中学校に転校して、研修生になりたいということだったので認めた。
 
「お友だちだったね。いいよ、いいよ」
 
と言って歓迎である。正直、岬がいなかったら、雪渡さん、福岡の坂井さんと、この落合さんの3人の争いだったかもというくらい、彼女は優秀だった。それでコスモスも冬子も快諾したのである。両親は研修生になるのに東京に出てきて事務所の寮に入るという話に驚いていたようだったが、元々2人ともアイドル好きの親ということで、娘の意志を認めてあげたようであった。
 
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茜が岬のスマホに電話して
「オーディション合格のお祝いで一緒に食事しようよ」
と誘おうとしたのだが、電話をお母さんが取り、岬は急に気分が悪くなったので、ホテルの部屋で寝ているということだった。
 
「緊張が緩んで反動がきたのかも知れないですね」
と言い、ケーキを(3人分)買って向こうの部屋にお見舞いに行き、岬は眠っていたが、お母さんに
 
「岬には明日の朝にでも食べてと言っておいてください」
と言って渡して来た。
 

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茜の学校は既に7月20日(土)から夏休みに突入していたのだが、茜たちは両親とともにいったん石川県に戻り、岬およびそちらの両親とともに、7月22日(月)に学校に出て行って転校したいという旨を申し出た。
 
学校では担任の先生が驚いたものの、オーディションに合格してタレントになるという2人に
「おめでとう。頑張ってね」
と言って、笑顔で送り出してくれた。
 
その日の内に市役所に行って転出の届けもする。
 
夕方、2人が荷造りなどしていたら、クラスメイトが大量に押し寄せてくる。香美の報せでみんな驚いて集まってきたのである。
 
「とりあえず送別会するよ!」
ということで、結局、公民館を借りて2人の送別会をしてくれた。
 
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「それで茜は平野君と同棲するの?」
「そんなことしないよ。事務所の寮に入るし、そこ男子禁制だし」
「まあそもそも男女交際禁止だしね」
「“男女”ってことは女同士はOK?」
「女同士OKなら、平野君が女の子になれば交際可能だね」
「あれ?契約書の条文どうなってたっけ?」
 
そして翌日7月23日(火)、香美たち数人の友人に見送られ、茜と岬は各々の母と一緒に手に持てる程度の身の回りの荷物だけ持って再度東京に出ていき、足立区の寮に入った。寮は隣の部屋にしてもらっていた。その上で区役所で転入の手続きを取った。
 

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その日の午後、母が区役所に行ってその後、日用品の買物などに行ってくれている間に、茜はひとりで埼玉県にある啓太の祖母の家に行った。
 
茜が東京に引っ越してきたことを聞いて啓太たちはびっくりしていた。
 
祖母と啓太の母は茜を歓迎してお茶とおやつを出した上で、2人揃って外出してくれた!
 
それで啓太と茜はふたりっきりになる。
 

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茜は誰もいないのをいいことに啓太にまずは深いキスをしてから、気持ちいいことをしてあげた。その上で言った。
 
「それでさ、啓太」
「うん。何?」
 
啓太は恍惚の表情のまま茜に尋ねた。そして次のことばで冷水を浴びせられた気分になる。
 
「私たち別れよう」
「え〜〜〜!?」
 
「だってタレントは恋愛禁止なんだもん」
 
「じゃ・・・結婚の約束も取り消し?」
と啓太は不安そうである。
 
「26歳になったら恋愛禁止も解除されるから、その時点でもし、お互い独身だったらあらためて考えるというのでどう?その時、啓太がもし病気治療のために、おちんちん切ってしまっていても、それは気にせず結婚してあげるよ」
 
「26歳・・・12年先か・・・」
 
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それは永遠に近い時間のようにも思われた。自分たちがこれまで生きて来た時間と大差無い時間である。
 
啓太はしばらく考えていたが、
 
「分かった。別れよう。でも握手はいいよね?」
と言って握手をした。
 
「まあ元クラスメイトのお見舞いくらいはいいだろうから、岬と一緒にお見舞いに来てあげるよ」
 
「分かった、それでいこう」
 
そういう訳で、茜は円満に(?)啓太と別れたのであった。
 

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「そうだ。ブラジャーはまた私が買ってお見舞いに来る時に持って来てあげるね」
「母ちゃんに買ってもらうよ」
「遠慮しなくていいよ。友だちなんだし」
「友だちね〜」
 
啓太は治療薬の副作用でバストも膨らんでいるので、実は今月頭くらいから茜の勧めでブラジャーをしている。実際問題としてブラジャーをしていないと走った時に胸が痛い。女子って大変なんだなあと啓太は思っていた。
 
「パンティも女の子用を穿く?」
「嫌だ。あれ履くと、チンコ取られてしまったような気がして、凄く嫌な気分になる」
 
実は一度茜に「穿いてごらんよ」と唆されて穿いてみたのだが、凄く不愉快だった。
 
「岬なんて男の子だった頃から、よく女の子用パンティ穿いてたのに」
「あいつは穿きたかったろうけどな」
 
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「じゃ御守りに私のパンティ置いていくね。洗濯済みのだけど」
「それはもらっておこうかな」
 
それで茜はビニール袋に入れた自分のパンティを啓太に渡した。啓太はそれを大事そうに机の引き出しに仕舞った。
 

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「そうだ。もう一度キスしようか?。それともセックスがいい?」
「しない。それを最後のキスにしたくないから。セックスはできないこと知ってるくせに」
 
治療薬の副作用で啓太のおちんちんは全く立たない。射精もできない。さっきは立たないなりに気持ちいいことをしてあげたのである。
 
「OK。じゃ握手」
 
と言って2人は再度握手をした。
 
その上で茜は服を着た。
 
その後はふつうに一緒にゲームなどして遊んだ。
 
やがて祖母と啓太の母が帰宅するので、茜は晩御飯も啓太の家で食べた。20時頃、茜の母が啓太と祖母へのお土産を持って茜を迎えに来たので、茜は母と一緒に寮に帰還した。
 
岬と茜の母は翌日は娘たちと一緒にこちらで通うことになる中学に挨拶に行くと同時に転入の手続きをする。制服を作ってくれるお店を紹介してもらって、一緒に採寸に行った。そのほか様々な手続きや打合せのため母たちは数日東京に滞在(寮の各々の娘の部屋に泊まった)した後、新幹線で一緒に帰っていった。
 
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その母子は不安そうな顔で医療相談室に入ってきた。
 
「どのようなご相談ごとですか?」
とにこやかな顔で“前橋善枝”というネームプレートを付けた医療相談員は質問した。
 
「実はこの子に治療を勧められたのですが、全然お金がなくて」
 
「あら、それは大変ですね。どういう治療が必要なんですか?」
と彼女は優しそうに、その10ヶ月くらいの赤いヘビー服を着た赤ちゃんを抱いた若いお母さんに尋ねた。
 

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アクアたちは7月20日(土)から多くの学校が夏休みに突入したことから、映画も本格的なクランクインとなった。20日に都内のスタジオに撮影参加者の多くが集まり、監督やプロデューサーからの説明を受ける。この日は撮影開始日ということで、日本棋院から監修してくれる桜坂由実四段に、昨年プロになったばかりの峰川晴絵二段も来てくれていた。
 
桜坂四段とアクア(アマ四段)、峰川二段と藤原佐為役の城崎綾香(自称6級)で早碁による記念対局をしたら、9子置きで打った綾香は早々に投了したが、6子置きで対決したアクアは桜坂四段に勝ってしまった!
 
「アクアちゃん、(アマ)六段の免状を申請してもいいと思う」
と桜坂四段は言っていた。
 
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(一般にプロ初段に9子置いてまともな勝負になるのがアマ初段と言われる)
 

この記念対局の後、新幹線と旅館“昭和”の送迎バスで郷愁村まで送ってもらい、セットの説明を受ける。そしてその日の午後から撮影が開始された。桜坂四段と峰川二段もこの日いっぱい付き合ってくれた。
 
この日から8月いっぱいまでは多くの俳優さんが郷愁マンションに泊まり込んで撮影をする。一部は旅館“昭和”の方に泊まってもらう。
 
葉月は撮影開始までに10級くらいまでなっていてねと言われていたのだが、この日、「うまくなりすぎている!」と言われた。
 
「すみません。もっとへたに打ったほうがいいですか?」
 
「いや、その必要はないけど、石の打ち方がかなり様になってきているから、発達途上のヒカルの打つ指ということにしてそれを撮影しよう」
 
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空き時間に峰川二段が葉月と打ってくれたのだが
「アマ3級くらいだと思う」
と言って、春から始めたばかりと聞くと
「君、そんなに速く上達したなんて才能あるよ。女優やめて囲碁棋士にならない?」
などと勧誘していた。
 
実際夏休み突入直前に学校で葉月は囲碁部のエリカ(アマ初段)と3子で打っていたので3級というのは葉月本人も納得だった。葉月は『次帰宅する時は千代さんにお稲荷さん買っていかなくちゃ』と思っていた。
 

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7月23-28日(火−日)で、学校を舞台にした場面の撮影を、加須(かぞ)市の廃校で撮影した。『狙われた学園』や『時のどこかで』の撮影にも使用した所である。この期間、日本棋院からの紹介で参加してくれた熊谷市内の囲碁部の高校生、および郷愁村に泊まり込んでいる俳優さんたちを大型バス6台で運び、撮影している。今回は短期間なので学校には泊まり込まなかった。
 
但しアクア本人と西湖は7月26-27日は苗場ロックフェスティバルに出場しており、その間は主役抜きで撮影をしている。西湖だけでも撮影現場に出られないか?いう打診はあったが、山村マネージャーが西湖の体力が持たないとして断固拒否し、映画撮影側もそれは納得してくれた。結局、一部の撮影を姫路スピカおよびその従姉で体型がほとんど同じである竹中花絵まで使って撮影を進めている。ボディダブルの上手な使い方については、『ねらわれた学園』や『時のどこかで』でボディダブルの大量使用をした河村監督にも監修してもらっている。
 
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7月29日からはまた郷愁村のオープンセットの方に戻って撮影を続けた。
 

“その切株”の所に、先月も来た70歳くらいの風水師さん、それにその人の知人らしい40代っぽい女性の祈祷師さん?が一緒にやってきた。祭壇が作られ護摩が焚かれる。どう見てもこれは風水師のお仕事ではなく、密教系の儀式だなと真珠は思った。おそらくこの女性祈祷師のほうが主役なのだろう。
 
実際、祈祷師さんが中心になり、両脇に東京の風水師さんと、最初に呼んだ地元の風水師さんが並んで、呪文のようなものを唱えていた。
 
真珠は「へー」と思って見ていた。この儀式がどうも効いているようなのである。風水師さんたちは霊的な力は大したことないが、40代の女性祈祷師さんが意外に力があるようである。背景に龍のようなものが見える。この人の眷属であろうか。龍を従えているのは凄い。
 
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儀式は30分ほどで終わった。最後の締めに風水師さんが切株から1mほどの所に青銅っぽい剣を刺した。そして「この剣には触らないで下さい」と言った。
 
「これで大丈夫ですよ」
と東京の風水師さんは笑顔で言っていたが、40代の女性祈祷師さんは微妙な表情だった。
 
封印は掛かった。しかし完全ではないと真珠は思った。きっと女性祈祷師さんも同じことを思っているのではという気がした。
 
真珠の父は謝礼として風水師さんに分厚い封筒を渡していた。100万円かなぁ〜?と真珠は思った。
 

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