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■春茎(6)

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朝10時すぎに手術は始まった。
 
普段の帝王切開の手術の雰囲気ではない。人工心肺まで用意し、輸血用の血液も準備している。
 
医師は執刀医(大学病院の産科医)、助手の医師(この病院の院長)、立会人を兼ねた先代院長、そして大学病院から来た麻酔科医と外科医までスタンバイしている。更に助産師もベテランの人2名を含む4人、看護師4人という万全の体制である。
 
何か起きた時に対処しやすいよう、硬膜外麻酔を選択した。全身麻酔にする案もあったのだが、全身麻酔にすると胎児にも影響が出る。医師団は和実か赤ちゃんかどちらか選ばざるを得ない場合は赤ちゃんを優先して助けて欲しいという和実の願いに応えるため、胎児に影響が出にくい硬膜外麻酔にしたのである。
 
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麻酔科医が麻酔薬を投入し、麻酔が効いたことを確認して手術を開始する。お腹の皮膚を横に10cmほど切開。腹膜は縦に切開する。
 
その腹膜の下に医師はあり得ないものを見た。
 
子宮があるのである!?
 
執刀医は思わず確認した。
 
「あなた、月山和実さんですよね?」
「はい」
「生年月日は?」
「1991年11月16日です」
 
千里が
「合っています。そしてこの人は月山和実本人に間違いありません」
と言う。
 
医師たちがお互い顔を見合わせるが、先代院長は言った。
「通常通り帝王切開をしよう」
「そうですね」
と執刀医は答えて作業を続けた。
 

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子宮を横に切開する。
 
そして執刀医は胎児を取り出した。
 
胎児が明確に生きているし、ざっと見た感じでは奇形なども見られないので、手術室内にホッとした空気が流れる。
 
「女の子だね」
と臨席している先代院長が言った。
 
助手を務める院長が赤ちゃんの口に指を入れて中の羊水を吐き出させる。
 
途端に赤ちゃんは「おぎゃーおぎゃー」と泣き出した。
 
また手術室内の空気が良くなる。手術室の外でも
 
「やった!産声だ!」
という桃香の大きな声が聞こえた。
 
和実に抱かせる。和実は感激して泣いている。1人の助産師が記念写真を撮る。
 
別の助産師が赤ちゃんの足にタグを付ける。
 
へその緒を結索して切断する。
 
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和実には麻酔科医がすぐに薬を投入して眠らせた。執刀医が子宮内の物質を取り除き、きれいにしてから切った部分を縫合する。
 
この時また不思議なことが起きた。子宮を縫合した後、続けて腹膜を縫合しようとした時、子宮が消えてしまったのである。
 
腹膜を縫合しようとしていた執刀医がギョッとして声をあげるが、先代院長は動じず
 
「平常に縫合しよう」
と声を掛けた。
 
「ええ。そうしましょう」
と言って、執刀医は普通に腹膜と皮膚を縫合した。
 
一方、助手を務める院長の方は布の上に赤ちゃんを置き、助産師たちと一緒に赤ちゃんの身体に異常が無いか目視でチェックしていたが問題無いようである。
 
赤ちゃんはすぐに手術室内に用意されていた保育器に移され、NICU(新生児特定集中治療室)に移された。その移動途中で淳や光里も赤ちゃんを見ることができた。
 
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「子宮が出現して消滅した件はどのように報告書に書きましょうか?」
と院長は執刀医(大学病院の産科医)に尋ねた。
 
執刀医は先代院長と目で会話する。
 
「何も見なかった。僕たちは腹膜の間で奇跡的に生きていた胎児を取り出した」
と執刀医は答えた。
 
「それがいいですね」
「うん。あまり変なこと書いたら頭おかしいと思われるよ」
と先代院長は言った。
 
「でも僕はこの出産を一生忘れないよ」
と執刀医は感慨深く言った。
 
「私もです」
と院長も言った。
 
なお赤ちゃんの出生時刻は3月11日10:31と記録された。産声をあげた瞬間、先代院長が時計を見て確認しておいたものである。
 

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「子宮が出現したのは、ちー姉の力かな?」
と青葉は言った。
 
以前何度か類似の事例があったよなあと思い起こす。
 
「そもそも赤ちゃんはちゃんと子宮の中にいたのさ。でなきゃ妊娠が維持できる訳がないんだよ。和実は霊的な半陰陽だからね。ちゃんと霊的には子宮も卵巣もあった。普段の検査で見えなかったのはそれが曖昧な存在だったからだけど、あそこには桃香がいたからね」
と千里は答える。
 
「桃姉とちー姉のコンボが思いも寄らない効果を生み出すみたい」
「まあ桃香はちょっと面白いね。実は私より青葉より遙かに凄い霊能者だったりして」
 
「それはさすがに無いと思うけどなー」
「ちなみに桃香のポケットには例のグリーンアメジストの数珠を入れておいた」
 
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「あれは増幅装置だからね」
 
実は青葉もローズクォーツの数珠、千里も藤雲石の数珠をポケットに入れていた。この3つはインドの大賢人から千里がもらったものであるが、そのことは千里以外は知らない。青葉が知っているのはこの3つがセットであるということだけである。
 
「ちなみに青葉にも霊的には子宮と卵巣があるよ」
と千里3は言ったが、青葉は聞かなかったことにした。
 

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2019年3月16日、高野山の★★院で、瞬嶽の七回忌の法要を行った。
 
もちろん青葉も千里も出席したのだが、青葉はもう6年も経ってしまったのかと、涙を浮かべて師匠の遺影を見ていた。
 
菊枝は高知からここまで出てくるのが体力的に厳しいということで欠席である。菊枝は近場なら妹さんの運転する福祉車両に乗って出歩いているようだが、やはり移動だけでかなりの体力を消耗するようである。
 
今回の法要では、長谷川一門の主座である瞬嶺さんも欠席した。瞬嶺さんは今年で102歳になる高齢だが、昨年あたりから足腰が立たなくなり、最近は寝ていることが多く、布団から出て歩く時の方が少ない状態らしい。瞬嶽亡き後毎年夏に行っていた回峰行にも、瞬嶺は3年前から参加していない。回峰では若い僧数人に日替りで先頭を務めさせている。
 
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それで誰が導師をするかで少し揉めた。
 
「当然瞬高さんでしょ?」
と瞬醒は言ったが
「俺は瞬法が適任だと思う」
と瞬高は言う。
「俺は師匠から遺物ももらってないから対象外だよ。瞬醒がずっと師匠の傍に仕えていたのだから瞬醒がやるべき」
と瞬法は言った。
 

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瞬嶽が亡くなった時、遺物は瞬嶽師匠自身により下記のように継承された。
 
袈裟は瞬花に、鉢は瞬葉に、鈴は瞬嶺に、書籍は瞬高に、庵と寝具は瞬醒に、毛筆と硯は瞬海に。そして瞬法は何ももらっていない。
 
(なお瞬醒と瞬嶺はもらったものを交換した)
 
実は葬儀の席でこの分配が問題になり、一部には会議で誰が何を受け継ぐかきちんと決めるべきだという意見もあった。
 
しかし瞬法が言ったのである。
「師匠が自分で各々のものを受け継がせたんだ。それでいいじゃないか」
 
何ももらっていない瞬法が言ったから、その言葉には重みがあった。それで遺物は師匠が直接指名した各々がそのまま受け継ぐことで全員が了承したのである。青葉は瞬法さんにこれを言わせるため、敢えて彼には何も残さなかったのではないかと思った。
 
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しかし実際問題として、瞬嶺さんが動けない状態の中で、代わって導師を務められるのは、お互いに譲り合っている、瞬高・瞬醒・瞬法の3人の誰かしかありえない気がした。
 
「ここは師匠の鉢を受け継いだ瞬葉ちゃんに決めてもらおう」
 
うっそー!?
 
「私は若輩者です。選者は瞬海さんに」
と青葉は辞退した。
 
瞬海さんは師匠の毛筆と硯を受け継いではいるが、それは多分本来は瞬法さんが受け継ぐべきものだったのではないかと、ずっと言っていた。誰が見ても、この3人からは1歩下る。
 
青葉から言われて瞬海さんも「やはり自分が決めなきゃいけないか」といった顔をした。師匠がわざと瞬海に遺物を渡したのは、こういう役目をさせるためだったのだろう。
 
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「瞬高さん、お願いできませんか?」
と瞬海は言った。
 
「じゃそれで」
と瞬法も瞬醒も言ったので、瞬高は渋い顔をしながらも導師を引き受けた。
 
ここで導師をするということは、瞬嶺さんに何かあった場合は、長谷川一門の主座を継承することにもなるだろう。少なくとも多くの出席者はそう取るはずである。
 

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それで瞬高さんが導師の席に就き、その左右に瞬法・瞬醒、その脇に瞬海・瞬常、その脇に瞬大と瞬行が並び、7人体制で読経が行われたし、それ以外の“瞬”の字をもらっている弟子が一般席の最前列に陣取って法要は進められた。
 
例によって“瞬”の字を持つ弟子の中で唯一、瞬里(千里)だけは席に座らず、法要の裏方の人たちに指示して出席者の案内、高齢の人が多いだけにその補助(時にはトイレに行く手助け)、また飲み物を配ったりする作業をしていた。
 
法要には**宗の貫首で福井県∽∽寺の導覚、**宗の2大派閥の門主、京都の**と**(この2人が並ぶこと自体が極めて珍しい)、**宗の法主、山梨の**寺の**、更には神道からも**大社の**宮司、**大社の**宮司などが出席していた。霊能者でも、竹田宗聖、火喜多高胤、中村晃湖などの有名所が出席している。
 
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丸山アイも来ていたが、読経の間は外に居たようで、焼香になってから入って来て、すっと出て行った。アイは小学2-3年生くらいの女の子を2人連れていて、アイが焼香する間はどうもアイのマネージャー・楠本京華が見ていたようである。青葉がアイに尋ねたら「ボクの子供」と言っていたが、さすがにアイの子供にしては年齢が高すぎる気もした。だいたいアイに妊娠能力があるのかも青葉は疑問に感じた。むしろ妊娠させる能力があったりして??
 

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その日、茜が教室でこんなことを言い出した。
 
「ね、ね、男を女にする手術って、どうやるか知ってる?」
 
岬は少し離れた席に座っていたのだが、顔をそちらに向けないまま耳だけそちらに集中する。
 
「ちんこ切っておっぱい大きくするんじゃないの?シリコンかなんか入れて?」
と啓太が言っている。
 
「それだけじゃセックスできるようにならないじゃん」
「セックスって?」
「あんたまさかセックス知らないの?」
 
「茜、あとでゆっくり平野君に教えてやったら?」
と香美が言う。
 
「それは身の危険を感じるな。まあいいや。最初に睾丸を取り出すのよ」
 
「お前よく睾丸とか発音するな」
 
「睾丸は睾丸じゃん。鶏の睾丸とか美味しいのに。でさ、女になりたい男の人の睾丸を取り出して1ヶ月間、特殊なホルモン溶液に漬けておくと、これが卵巣に変わるんだって」
 
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「本当に〜〜?」
 
「なんか嘘くさい」
「それ漫画か何かの話では?」
 
とみんな信じていないようだ。
 
「睾丸も卵巣も元は同じ生殖鈍器というもので、それが男性ホルモンが作用すると内側が発達して睾丸になって、女性ホルモンが作用すると外側が発達して卵巣になるらしい」
 
「生殖どんき?」
「それ絶対言葉が違う気がする」
「いや、なんかそんな感じの名前だったのよ」
と茜の言葉はどんどんあやふやになる。
 
(多分生殖隆起あるいは生殖腺原基の誤り。その髄質が発達すると睾丸になり、皮質が発達すると卵巣になる)
 
「でもだから睾丸を特殊な女性ホルモン液に漬けておけば、睾丸組織の内側が退化して、外側の卵巣になるはずだった部分が発達して卵巣に変化するらしい」
 
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「胎児の発生段階ではそういうことが起きたかも知れないけど、生まれた後の男の睾丸を今更女性ホルモンに浸してもそんな変化が起きるとは思えん」
 
と常識的な指摘がある。
 
「でもそうやって卵巣が作れるらしいよ。それで作った卵巣を体内に埋め込む」
「ふむふむ」
 
「睾丸を取っちゃったから、陰嚢が余っているでしょ。それをちょっと加工して子宮にする」
 
「陰嚢が子宮になるの〜〜!?」
「だって陰嚢ってけっこう伸び縮みするらしいよ。子宮は赤ちゃんの成長にあわせて伸びないといけないから、ちょうどいい素材らしい」
 
「陰嚢が赤ちゃんのサイズまで伸びるとは思えん。途中ではじけちゃうよ」
「たぶん薄く延ばすんじゃないかな」
「薄くしたらますます破れそうだ」
 
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「それで卵巣と子宮ができて、陰茎は邪魔だから切り落とす」
 
「なんかあっさり言うなあ」
 
「だって女の子に陰茎は付いてないし」
「そりゃそうだけど」
「もし陰茎を切り落とさなかったら、女になった後、女湯に入って悲鳴あげられる」
「それは確かに問題だ」
 
「でもただ切り落とすだけじゃないんだよ。その陰茎の中身は捨てて外側だけ利用して、これを膣にするらしい」
 
「ほぉ」
 
「それは行ける気がする」
「陰茎で膣を作るから、ちょうど陰茎を入れられるサイズの膣ができる」
 
「お前生々しいことをさらっと言うな」
と久彦が顔をしかめて言う。
 
「それで最後、陰茎を切り落とす時に根本を少し残しておいてこれが陰核になる」
「あ、それも使えそう」
 
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「陰核からおしっこが出るからちょうどいいでしょ?」
「待て、普通の女は陰核からおしっこは出ないと思うが」
 
「え?そうだっけ?おしっこが出る所が陰核じゃないの?」
と茜が真顔で言うので、香美が額に手を当てて呆れている。
 
「お前、実は女じゃないんじゃないの?だからクリトリスからおしっこが出るなんて間違った知識持ってるんじゃないの?」
と啓太が言った。
 
「あれ〜〜〜?」
「お前が女かどうか確かめてやろうか?」
と啓太が言うと、茜はいきなり啓太のあそこを蹴り上げた。
 
啓太はその場に倒れてあそこを押さえ、1分近くうごめいていたが、やがて
 
「何すんだよぉ!?」
と言った。
 
「いや、今のは蹴られて当然」
「今のは平野が悪い」
 
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と男子も女子もみんな啓太に非があると言った。
 
岬はドキドキしながら、今茜が説明(?)した「男を女に変える方法」の内容を脳内で反芻していた。
 

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