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■春茎(4)

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それで鱒渕は松本花子のシステムを軌道に乗せる作業に関わる一方で、何度も小浜まで行き、カウントダウンライブのテストや準備にも参加した。鱒渕はピアノやギターも上手いし、歌も上手いので随分テスト歌手も務めた。
 
一方でその時期にはローズ+リリーの10周年記念ツアーもやっていたので鱒渕は完璧にオーバーワークだったのだが、仕事中毒の鱒渕はそのくらい忙しくやっている方が充実しているようで快適だった。
 
小浜でのカウントダウン・ライブ本番では、鱒渕が楽屋に、風花がステージ傍に陣取り、お互いにインカムで連絡を取りながら、出演者に指示を出した。この作業も昨年までは風花はUTPから派遣されてきているアシスタントと2人でやっていたが、アシスタントがアーティストの顔を識別できなかったりして、あわやという事態も発生していたらしい。今回は全くそのようなトラブルは起きなかったので、氷川さんも
 
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「ほんとに鱒渕さんがいてくれて助かった」
と言っていた。
 

カウントダウン・ライブが終わってすぐ、今年の東北復興支援イベントの詳細が発表され、マリが歌う予定であるというので世間では大いに驚かれた。但し2月10日までにマリが出産した場合であり、出産日がそれより遅れた場合は“誰かが女装してマリの代役で歌う”というコメントをアクアが読み上げた。
 
わざわざアクアがそれを発表したことで、マリが出られない場合の代役というのはアクアなのでは?という憶測からその時点で売れ残っていたチケットが全部売れてしまい、鱒渕はコスモス社長の戦略に感心した。
 
「誰もアクアが代役するなんて言ってないし」
とコスモスは言っていた。
 
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「実際は誰にやらせるんですか?」
「ハイライトセブンスターズのヒロシさんにお願いした」
「凄い!」
「観客もヒロシさんなら許してくれるでしょ?」
「逆にそのくらいのクラスの歌手でないと納得しないでしょうね」
 
「まあヒロシさんに断られたらアクアにやらせるつもりだったけどね」
「チケット買った人はそれ結構期待していると思いますけど」
「だからアクアもゲスト出演させる」
「ああ、それはいいことだと思います」
 

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2019年1月7日、青葉は仙台から東京に行き、水連で専務理事さんと会い、タッチの特訓をしてくれと言われた。それでその日の夕方から早速金沢市内のプールで特訓を始めることになったのだが、それで東京から金沢へ帰るのに新幹線に乗ったら、隣にある人物が乗ってきた。
 
「あれ?青葉、偶然だね」
と“千里”は言ったのだが、青葉は顔をしかめて言った。
 
「丸山アイさん、いったい何の冗談ですか?」
「うっそー!? 私の変装分かった?」
 
「それで欺されるのは、姉のことをあまり知らない人だけだと思いますけど」
 
「そう?私この変装で、桃香ちゃんとも細川貴司君ともセックスしたのに」
「それどちらも、ぼんやりさんだし」
と青葉は言っておく。
 
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「ところでさ、内密の話があるんだよ。ここでは話しにくい。グランクラスの並びの席を取ってるから、そちらに移動しない?」
 
「ええ」
 

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それで一緒にグランクラスに移動した。1B,1Cで端の並びなので話し声が他に聞こえにくい。
 
「一部でさ、TKRを★★レコードが吸収するという話が出ている」
と千里に扮した丸山アイは言った。
 
「それ何か意味があるんですか?TKRの利益は株主である★★レコードに還元されているし、TKRって、実質アクアとステラジオだけで支えられているから万一どちらか、というか特にアクアにトラブルがあったりしたら倒産は避けられないです。そのリスク回避のために別会社にしたのに」
と青葉は素直な疑問を提示する。
 
「それが分かってない人たちがいるんだな。2018年度の★★レコードの売上はたぶん160億円くらい。これに対してTKRの2018年度の売上は恐らく70億円くらい」
 
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「そんなに差が縮まってます!?」
「だから村上社長としてはTKRを吸収すれば★★レコードの売上げを250億円にできるという皮算用をしているのさ。松前社長の時代はアクアの分を除いても280億円の売上があったんだけどね」
 
「それは★★レコードの売上げを支えていたアーティストが軒並み勢いを失っているからですよ。スカイヤーズ、スイート・ヴァニラズ、AYA、スリファーズ、XANFUS。これにローズ+リリーを加えた6組がビッグ6と言っていたのに今やローズ+リリー以外の5組は3年くらい前の10分の1以下の売上げになっています。その一方で新しい元気のいいアーティストが出て来ない」
 
「それでローズ+リリーをテコ入れしようとして『郷愁』なんてのを作らせた」
「そして更に売上げを悪化させた訳ですね」
 
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「TKRが★★レコードに吸収されたらどうなると思う?」
「最悪ですね。アクアが自由に活動できるのはTKRがああいう性別曖昧なタレントに寛容だからだし、ステラジオにしてもあんな無軌道な制作を★★レコードは許してくれませんよ。★★レコードがTKRを吸収したら、きっとアクアには男なら男らしくしろって言うだろうし、ステラジオには法令を遵守しろと言います」
 
「だろうね」
 
「結果的にアクアは潰されるし、ステラジオは★★レコードとの契約を切ってたぶんЮЮレコードあたりに移籍します」
 
「ボクと同じ予想だ。まあそういうことで、この吸収合併を阻止したい。それに協力してほしい」
 
と丸山アイは言った。
 
「どうやって阻止するんです?」
「株を買い占める。今賛同者が5人集まっている。他にも資金力のある人に声を掛けていく。ただしボクがこういう工作をしていたことは内緒にして欲しい」
 
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「共謀したとしたらたぶん証券取引法違反ですよね?」
「それに問われる危険がある。だからこういうことについて、物わかりの良さそう人にだけ声を掛けている」
 
「どのくらい株を買い占めるつもりなんですか?」
「1人1人は5%未満」
「大量保有報告書を出さなくてもいいようにですか!」
「よく分かっているじゃん。バレると合併派の工作が始まるからそれを避ける。そして合計34%以上」
 
「合併に必要な特別決議を阻止出来る数字?」
「そうそう」
 
「今★★レコードの株価っていくらでしたっけ?」
「村上さんが社長になって以来、どんどん成績が悪化しているから株価も下がりっぱなしなんだよ。今朝の寄り付きでは900円だった。5%は250万株。だから200-240万株くらい買って、TKR合併に反対票を投じてもらえると嬉しい。4月になったら売ってもいい」
 
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「200万株で900円なら・・・18億円か」
「青葉ちゃんならお小遣い程度でしょ?」
「それ買っていたら上がりません?」
「★★レコードがTKRを吸収するという情報は来月下旬に公になる。そうしたら値上がりすると思うけど、それまでならそんなに上がらないと思う。多分上がっても1500円くらい」
 
「1500円なら30億円・・・」
「それでも青葉ちゃんにはおやつ代程度」
 
「私はマリさんじゃないですよ!」
「あの子の年間おやつ代は恐ろしそうだよね」
 

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「でも私はお返事しないですよ」
と青葉は言った。
 
「うん、それでいい」
「でも握手してもいいかな」
「OKOK」
 
それで青葉は千里に扮した丸山アイと握手した。
 
「ところでボク、やっと分かった」
と丸山アイは言った。
 
「何がですか?」
 
「松本花子って、青葉ちゃんと千里ちゃんでやってたんだ?」
 
「こちらもカウントダウンのおかげで、夢紗蒼依をアイさん、ケイさん、千里姉の3人でやっていることが分かりました。たぶん若葉さんも絡んでいるかな。恐ろしい額の投資をしておられるようだから誰かスポンサーがいないと無理でしょうし。冬子さんに近くて豊かな資金力を持っている人というと若葉さんを思い浮かべます」
 
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「その返事はしないけど、なぜ千里ちゃんが双方に関わっているかは知ってるよね?」
 
「そりゃもちろんですよ」
 
青葉と丸山アイはお互いに笑顔を見せ合った。
 
「小浜の本拠地に今度青葉ちゃんを招待するよ」
「何かあるんですか?」
 
「アクアのライブイベントをこの夏に小浜でやるから」
「小浜で?集客出来ます?」
「アクアなら、沖ノ鳥島でやったって7万人来るさ」
 
「そうでしょうね!」
 

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2月3日、マリは赤ちゃんを出産した。これでマリが3月11日のライブで歌えることが確定し、ケイが報道各社にFAXを送ってそのことを明言した。またケイはヒロシの“女装代役”が無くなったので、ヒロシに違約金として2000万円を払った。しかしヒロシはこの違約金を受け取らず、復興イベントの売上と一緒に被災自治体に寄付してほしいと言ったので、それに加えさせてもらうことにした。
 

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2019年2月8日、金沢市のG大学で第1期の合格者発表が行われた。夏野明宏は合格していた。授業料全免のSA, 半免のSBには入っていなかったものの年間20万円割引されるAに入っていた。母は
 
「20万円だけなの〜?」
と不満そうであったが、まともに全額払うよりはマシである。
 
翌日には入学手続き書類が到着したので、すぐに学納金を振り込み、書類を返送した。これで明宏はG大学に入学できることになった。
 

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明宏と母は大学近くのアパートを探すことにし、大学の書類で推奨されていたT不動産に行ってみたのだが、混雑していて予約してもらわないと対応できないし、その予約も今日はもういっぱいで明日以降になると言われた。
 
「他を当たってみようか」
 
それでネットで検索して見つけておいたA不動産に行ってみる。
 
「どこにあるんだっけ?」
「旗は立っているけど」
「店舗らしきものがない」
「倒産したのかな?」
「あるかも」
 
それでどうしよう?と言っていたら、近くに別の不動産屋さんN不動産があるのに気付く。
 
「ちょっと入ってみる?」
「そうだねー。近くだし」
 
それでそこに入ってみると、店舗が凄く広いのでびっくりする。番号札を渡され少し待つ。フリードリンクなどもあるので飲みながら待っていたら、10分程で窓口に案内された。窓口の担当者さんは明宏たちの希望を聞きながら幾つかの候補を挙げた。
 
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「実物を見てみますか?」
「見てみます」
 

すぐに40歳くらいの女性が案内してくれて、N不動産の車で現地まで行った。
 
オートロックである。その割には家賃は3万円ということで格安だ。部屋はワンルームかと思ったが居室と台所の間にドアがあるので1DKになるらしい。築30年経っているので、それで少し安いようである。
 
「明るーい」
と明宏も母も声を挙げた。全面窓なので部屋が明るい。窓は北東向きである。多分朝日とともに目覚めることができる(*2).
 
「まあ難点としては4階なのにエレベータが無いことなんですけどね」
「それは歩けばいいね」
「うん。足の鍛錬だね」
 
4階建てなので窓の外を見てもここを覗けるようなアパートが存在しない。この界隈はほとんどの建物が2階建て以下である。
 
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なおネットは光回線が引いてあるということで、NTTと契約したら半月程度で使えるようになるということだった。しかし明宏は「私はゲームもしないし、光回線が必要なほどもネット使わないからUQ Wimaxにしようかな?」と言い、追ってそちらの販売店に行くことにした。
 
他に電気、水道、プロパンガスの契約が必要である(ガスレンジを使わなかったとしてもお風呂がガスになっている)。テレビを置けばNHKとの契約が必要だが、明宏は「テレビも要らない」と言った。
 
それでそこを契約することにした。ここは大学まで歩いて10分という場所である。但し10分で歩いて大学に到達するには傾斜の急な階段を上らなければならない!ので、通常はG大学の系列のG高校前のバス停からシャトルバスに乗ればよいということであった。不動産屋のスタッフさん(本当は協力会社の家電店の社員らしい)は親切にそのバス乗り場にも連れていってくれた。アパートから150mくらいだからアパートの階段を降りる時間を入れても急げば3分程度でここに到達できるだろう。
 
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「このアパートの近くにコンビニがあったんですが、それは潰れてしまったんですよ」
 
「でもこのバス乗り場の前にコンビニがあるから、まあいいかな」
 
それで明宏はこのアパートを契約することにしたのである。
 

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(*2)この部屋は玄関が南西にあり、窓は中に入って真正面の北東にあった。
 
明宏は2000年生まれなので“もし明宏が男なら”本命卦は離になり、南西は絶命、北東は五鬼となり、最悪の部屋である。しかし“もし明宏が女なら”本命卦は乾になって、南西は延年、北東は天医になり、とても良い部屋である。
 
つまりこの部屋は明宏の性別により吉凶が反転する。
 

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契約書は郵送するのでそれに署名捺印して返送してくれと言われた。わざわざ郵便を往復させるのは実家の所在確認のためだろうなと明宏は思った。
 
書類は2日後に到着したので、記入して母の印鑑ももらった。
 
それで書類を返送しようとして、唐突に明宏はその記載に気付いてしまった。
 
《このマンションは女性専用ですので、男性の連れ込みはご遠慮下さい。但し2等親以内の男性親族に限っては入館証を発行しますので、N不動産にお申付けください。戸籍謄本で確認の上、写真付きの入館証を発行します》
 
男性の連れ込み不可って・・・それって入居者も男性は不可だよね?
 
 
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