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■春茎(5)

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(C) Eriki Kawaguchi 2019-06-17
 
岬はまた夢を見ていた。
 
庭に背の高いひまわりが生えていた。2mくらいある。ロシアひまわりかなと思う。お母さんが来て「花も終わったから切っちゃうよ」と言い、最初鎌で根本を切ろうとしたが切れないので、鋸(のこぎり)を持ってきて何とか切った。
 
太くて長いひまわりの茎が切り離されて倒れているのを見る。お母さんはそれを一輪車に乗せてどこかに持って行ってしまった。
 
更にお母さんはスコップを持ってきて根っこを掘り返して除去した。
 
跡には穴が残った。
 
岬はその根っこを抜いた穴をじっと見つめていた。
 

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2019年2月、コスモスは鱒渕が少しオーバーワークではないかと心配し、秋乃風花と相談の上、鱒渕に助手を付けることにした。
 
「竜木梨沙(たつのきりさ)です。よろしくお願いします」
「玄子絵菜(くろこえな)です。よろしくお願いします」
 
と若い女性2人が挨拶した。2人とも20歳らしい。
 
「2人ともどこかで会っている気がする」
 
「§§ミュージックの研修生・羽藤玲香さんが参加しているバンド“イグニス”でギター弾いています」
と竜木梨沙が言う。
 
「ああ、思い出した!」
 
「私はこの夏まで大阪のイベンターで働いていたので、アクアさんのイベントに動員されてお手伝いに行ったことがあります。一昨年は私がアクアさんの乗る車の運転をしたので」
と玄子絵菜が言う。
 
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「ああ、あなたも思い出した!」
 
「ふたりとも普通運転免許と自動二輪免許は持っているから、トランスポートにも使っていいから」
とコスモス。
 
「自動二輪取ってからの期間は?」
「3年です」
「4年です」
 
「だったら2人乗りOKね。普段何に乗ってる?」
 
「二輪はYZF-R25、四輪は所有していませんが、バイト先でノートとかセリナとか運転していました」
と竜木梨沙。
 
「二輪はGSR400、四輪は会社のオデッセイとかハイエースとか運転していました」
と玄子絵菜。
 
「ふたりとも大丈夫そうね!」
 
「山村さんが運転の試験をして合格と言ってたよ」
とコスモス。
 
「山村さんが見てくださったのなら安心です!」
 
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そういう訳で、この2人の参加で鱒渕の負荷はぐっと減り、再度過労死の瀬戸際まで行くのは避けられたのであった!
 
鱒渕はコスモスと話し合い、竜木梨沙には夢紗蒼依絡み、玄子絵菜には松本花子絡みの仕事をさせることにし、お互いのプロジェクトのことについては絶対に相手に話してはならないと厳命した。これをやりやすくするため、松本花子に関わる玄子絵菜は§§ミュージックの社員、夢紗蒼依に関わる竜木梨沙はサマーガールズ出版の社員、と所属も分けることにした。
 
「万一漏らしたら罰金10億円だから」
とコスモス。
 
「ひぇー」
 
「実際情報漏れがあったら、10億といわず100億規模の損害が出る可能性あるから気をつけてね」
「はい!」
 
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また鱒渕はコスモスと話し合い、マリが産休に入っている間に2人には中型免許と大型二輪免許を取ってもらうことにし、交替で自動車学校に行って、3月までに取得してもらった。
 

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2月中旬、ドラマの撮影の合間を縫って、次のアクアのシングルの音源制作とPV撮影が行われた。今回のシングルは『鍛冶橋から呉服橋まで/白い霧の中で』というタイトルで、『鍛冶橋から呉服橋まで』はマリ&ケイの作品(実際にはGolden Sixのカノンが調整をしている)で『白い霧の中で』は加糖珈琲+琴沢幸穂の作品である。
 
PVについては、『鍛冶橋から呉服橋まで』はドラマ『ほのぼの奉行所物語II』のエンディングで使用するので、ドラマに出演する松田理史君と岡原襟花ちゃんが実際にドラマの衣装をつけて、車が行き交う現代の鍛冶橋から呉服橋までの歩道を歩いて行くシーンを撮影して使用した。
 
『白い霧の中で』は男女が全く視界の利かない濃霧の中、お互いを求めて動き回り、最後に出会うことができて抱き合ってキスするという物語仕立てになっている。その男女双方をアクアが演じた。実際の撮影ではアクアが男の子・葉月が女の子の衣装を着けて1度撮影し、続けてアクアが女の子・葉月が男の子の衣装を着けて再度撮影し、編集でつなぎ合わせている。
 
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最後のシーンは実際に2人はハグしているが、キスは寸止めである。
 
「本当にキスしてもいいけど」
と監督は言ったが
「寸止めにしましょうよ」
とアクアが言って、寸止めになった。でも西湖はアクアさんと本当にキスしたらアクアさんのこと好きになっちゃうかも、などと思ってドキドキしていた。
 
しかしハグした時、アクアも西湖も
「西湖ちゃん、抱いた感じが女の子の感触」
「アクアさん、抱き合った感じが女の子の感触」
 
とお互いに思ったが、口には出さなかった。
 
しかしそれで西湖は「やはりアクアさんって性転換手術しちゃったのでは?」と思い、アクアも「西湖ちゃん、まさか早まって女の子の身体に改造しちゃったんじゃないよね?」と思った。
 
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2月3日にマリがあやめを産んだ時、ケイは『天使の歌声』という曲を書いたのだが、この曲に目を付けた和泉(KARIONのリーダーでアクアのディレクター)はこの曲を入れてローズ+リリーのシングルを出そうと提案した。
 
2018年4月以来、ケイが多忙すぎたし、更にマリが妊娠したことで、今年度はまともに音源製作ができなかったのだが、このままだとローズ+リリーは活動停止していると思われるかもという意見もあり(実は海外では解散説も出ていた)、バタバタと音源製作して3月27日、ローズ+リリーの28枚目のシングルとして『天使の歌声』をリリースした。
 
収録したのは『天使の歌声』『恋愛自動販売機』『出現』『ねこ』の4曲で、全てマリ&ケイの曲であるが、歌詞はケイが書いた詩にマリ、和泉、琴沢幸穂が補作している。この4曲の中で『恋愛自動販売機』は実際には松本花子が作った楽曲だが、ファンには「高校生の頃のケイっぽい作品だ」ということでかなり好評だったようである。
 
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これらの曲は全て10個以内の楽器で演奏してシンプルな音作りをしている。近年のローズ+リリーの楽曲は、ひじょうに多数の楽器を使用した重厚な演奏が特徴になっていたが、敢えて楽器の数を絞り、ハーモニーの回復を図った。
 
またこのシングル制作の勢いに乗って、4月30日にはアルバム『戯謔』も発売した。『天使の歌声』と同様に少ない楽器で演奏し、ハーモニーの美しい楽曲が多くなっている。
 
この『戯謔』は『フラワーガーデン』に始まる“オリジナル・アルバム”のシリーズではなく、あくまで番外編ということで、★★レコードの村上社長の了承を得た。この作業は鱒渕自身が村上さんに説明したのだが、村上さんは何だか鱒渕を怖がっているようだった!?
 
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もっとも村上は鱒渕に「今年のローズ+リリーのオリジナル・アルバムのタイトルは『恋物語』にしよう。今度こそは絶対売れるから」などと言った。
 
困惑した鱒渕はとりあえず持ち帰ったのだが、その話を聞いた千里は言った。
 
「冬たちは自分たちが出したいタイトルでアルバム制作を進めればいい」
「でもそれだと★★レコードから出せないのでは?」
「大丈夫。そのアルバムをリリースする頃は、★★レコードの社長はもう村上さんではないから」
と千里は言った。
 

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2019年3月10-11日、福島市のムーランパーク(定員1万人)でこの会場のこけら落としも兼ねて、ローズ+リリーを含む08年組と協賛アーティストによる東日本大震災復興支援イベントが行われた。
 
これに青葉も千里も演奏参加していない。その時期は2人とも仙台市内の病院で和実のそばに付いていた。
 
和実のパートナーである淳は、2018年9月11日に射水市の病院に入院し翌12日に性転換手術を受けたのだが、淳と和実はその前日の9月10日に“生”で淳が男役・和実が女役のセックスをしていた。それで9月10日が受精日だとすると、3月11日で8ヶ月目に入るので、このタイミングで帝王切開を行って赤ちゃんを取り出すことにしたのである。
 
子宮外妊娠は、99.99%の医師が「妊娠継続は不可能」と言い、中絶を勧めるのだが(むしろ有無を言わさず中絶される)、和実を診てくれた病院の先代院長さんが、偶然にも、子宮外妊娠した女性が強引に妊娠継続を主張したため注意深く見守り続け生児を得た経験があった。しかし今回はそもそも妊娠したのが女性でもないという、とんでもない事例であったが、和実と淳は公正証書の念書を病院に提出して、全ての責任は自分たちで取るし掛かった費用も全て払うと言って、妊娠継続とそのメンテを認めてもらった。病院とも話し合って、和実の身体を霊的にメンテできる青葉または千里が常時傍についているというのも“非公式”に約束していたので、その間、青葉と千里の負担も尋常ではなかった。病院側も専任の助産師を2人と看護師3人をわざわざ雇って和実を常時監視続けた。
 
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実を言うとこれに掛かった莫大な費用は全て冬子が出してくれた。
 
和実は一時期妊娠状態が不安定になり、病院側も淳に「限界かも知れないから、その場合は中絶しますよ」と通告していたのだが、その後唐突に安定してしまい、これなら最後まで行くかもという空気になった。
 
そして8ヶ月まで来たので、あと2ヶ月の不安定な妊娠継続より未熟児のまま取り出して保育器で育てようということで帝王切開となった。そもそも和実の膣は人工的に作ったものなので赤ちゃんの頭が通過出来ない(はず)。それで帝王切開以外の選択が無いというのは最初から話していた。
 

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出産の場に立ち会ったのは下記の人たちである。
 
淳、光里(和実の母)、青葉、千里(千里3)、桃香。
 
この内、淳と光里に桃香は廊下で待機し、青葉と千里は手術着を着て手術室内に入っていた。廊下には、和実の友人という、白鳥清羅・忌部繭子の2名も来ていた。
 
この他に希望美(2歳8月), 早月(1歳10月), 由美(0歳2月)を、和実の姉・胡桃が別室でまとめて面倒を見てくれている。子供たちを近くに置かないのは、万が一和実が死亡した場合に、その悲しい現場に置かないための配慮である。
 
医師は赤ちゃんが無事生まれてくる確率は50%くらいで、更に和実が死亡する確率も20%くらいあると言っていた。無理な状態で妊娠しているので、胎児と母体をつないでいる臍帯が外れる時、太い血管が切れてしまう可能性もあり、そうなると助けようがないと主治医は言っていた。
 
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廊下で待機している間に、白鳥さんは盛んに桃香に話しかけていた。
 
「赤ちゃんも和実ちゃんも大丈夫かなあ」
「大丈夫だよ。和実は非常識だから出産くらい無事に乗り越えるし、赤ちゃんも元気に生まれてくるよ」
と桃香が断言する。
 
「男の子だと思う?女の子だと思う?」
「きっと可愛い女の子」
 
白鳥さんは更に、産まれてくる子はどんな子だろうね?どちら似だろう?将来何の仕事をするかな?などと話しかけ、桃香は勝手に色々想像して答えていた。実はこの作業が“赤ちゃんが蒸発しない”ために必要なのである。
 
この他に実は何かの場合に協力できるよう、千里2も病院内で待機していた。
 

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