広告:オトコの娘コミックアンソロジー-~小悪魔編~ (ミリオンコミックス88)
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■春避(13)

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(C) Eriko Kawaguchi 2023-02-03
 
人形退避作戦の後、春貴は花山星子にアコード(舞花の母の車)で氷見市まで送ってもらった。
 
「寝ててくださいね」
 
と言われて、春貴は後部座席でシートベルトは付けたまま寝ようとしたのだが、搬出作業で神経がたかぶっていたせいか、なかなか寝付けない。こちらが眠れずにいるようだと見て、花山さんは話しかけてきた。
 
「千里さんは多分、奥村さんに、中学時代の自分を重ねているのだと思います」
「中学時代?」
「千里さんは高校はスカウトされてバスケの強豪に入ったんですけど、中学時代に入った女子バスケ部は最初5人しか部員が居なかったんですよ」
「へー!」
「少なくとも過去5年くらい大会で1度も勝ったことがないというチームで」
「うちみたいだ」
 
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「でも千里さんが入った後、凄く頑張って、その年の夏の大会では地区3位、翌年には準優勝、3年の時にとうとう地区大会で優勝して北北海道大会に進出したんですよ」
「すごいな」
 

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「結果的にはそれで強豪の高校の先生に見初められて、そこの高校に入り、インターハイや皇后杯に出ることになるんですけどね。3年のウィンターカップでは全国準優勝しましたし」
「どん底から頂点までよじ登ったんですね」
 
と言いながら春貴は、千里さんの性別問題って、だったら中学の時点で既にクリアされていたのかと考えた。少なくとも中1の時には女子選手だった訳だ!ということは少なくとも小学5年生になるまでに性転換していた!??
 
「きっと奥村さんも2年後くらいまでにはインターハイに行くかもと思ってますよ」
「そうなりたいですね。しかしインターハイとか行くことになったら費用が凄そう」
「千里さんの場合は、元々強豪校だったからOGでたくさん寄付してくれる人があって資金はわりと豊かだったみたいですね」
 
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「やはり寄付かぁ」
「自分がお世話になったからと千里さんは毎年母校に1000万円ほど寄付していますよ」
「さすがー」
 

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「自分が子供の頃貧乏で苦労したこともあるのでしょうけど、お金を持っている人は、それに見合う社会的な貢献をするべきと千里さんは思ってますね。だから災害とかがあると必ず多額の寄付をしてますし」
 
「Noblesse oblige (ノブレス・オブリージュ)ですね」
 
「そんな感じです。春貴さんのバスケット部に協力してるのも、人形美術館に協力するのも、やはり社会貢献的な意味合いも強いと思いますよ」
 
「いや感謝してます」
 
「富を所有するにはそれなりの覚悟と能力が必要だし、それに見合う義務も生じます。宝くじに当たった人がしばしば破滅するのは、覚悟ができてないし、大金を保持する能力に欠けているからだと思います」
 
と花山さんが言った時、
 
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あ、宝くじ買ったの忘れてた!
 
と春貴は思った。
 

帰ったら当選番号確認しようと思い、取り敢えずGoogle Keepにメモした。
 
「お金は貯めるより維持するほうが難しいとは言いますね」
 
「ですよ。宝くじが当たっ時の最悪の対応は、それを人に言いふらし、会社を辞めて豪遊し、気がついたら賞金は全部無くなっていて、大量の借金まで残っていたというパターン」
 
「ああ、そういう人は多そう」
 
「会社は辞めない、誰にも言わないというのがまずは大原則ですね」
「全くです」
「最初に借金を全部返してしまう。そして残ったお金を使う」
「それも鉄則ですよね」
 
「子供の学資あるいは老後資金を確保して自分でも簡単には取り崩せない状態にしたら、後は、基本的には配偶者あるいは絶対的に信用できる友人1人か2人とだけ話しあって使い道を決めて行く。親や子供にも話さない」
 
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「親が一番危ないです」
 
「あぶく銭だからパーと使ってしまう、なんてのも悪くない使い方ですよね」
「それもいいと思いますよー」
「世界一周旅行してきてそれで終わりとか」
 
「それもいいけど海外旅行はコロナと戦争が終わってからかな」
 
「今は世界情勢が悪すぎですね」
 

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春貴は能登空港近くの長い直線が続く区間で眠ってしまった。その後熟睡して、氷見に到着しても目が覚めなかった。星子は念のため道の駅でトイレに行った後、春貴のアパート前に車を駐めた。駐車場所は、ひとつだけ空いているのが奥村さんの駐車スペースかなと判断した。実は春貴のパッソはファイアーバードに駐めたままだったので、ここは空いていた。そして星子は春貴が起きるのを待った。
 
自分も前部座席で仮眠する。7時半頃、春貴はようやく目覚めた。
 
「あれ?」
「あまりにも良くおやすみだったのでそのままにしておきました。ここがひとつだけ空いていたので駐めましたが、ここで良かったですかね」
「はい、大正解です。でもごめんなさい!」
「出勤時刻ですよね。このまま学校にお送りしますよ」
「でしたらその前に着替えなきゃ!この格好で学校に行ったら叱られる」
「だったら私もトイレ貸してください」
「使ってください!」
 
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それで部屋に入り、2人ともトイレに行き、春貴は急いで通勤の服装に着替えた。
 
「学校の教師はお化粧しなくてもいいのが楽です」
「大企業のOLとかすると、お化粧も大変ですよね。あ、そうそう。これ千里から、協力してもらったお礼ということです」
と言って、S市で有名なロールケーキ屋さんのロールケーキを渡した。
 
「ありがとうございます!」
 
それで星子が送って春貴は学校に出勤した。
 

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星子はその後、アコードの車内を掃除して満タンにした上で氷見市内で待機中の南野鈴子に連絡。彼女の車(神谷内から借りたエスティマ)と2台で高田家に行き、アコードを返却した。舞花の母には、ロールケーキを「お母さんと2人の娘さんで3人分」と言って3本渡した。
 
「あと2人の家にもこの後、配ってきますから」
「分かりました」
 
こう言っておかないと、舞香の母は「高田家・愛佳・美奈子で1本ずつ」と誤解しかねない。
 
実際この後、星子は鈴子の運転する車に乗り、一緒に愛佳の家、美奈子の家にも行き、お母さんにローケーキを渡してきた。その後、輪島に2人で戻る。鳥族同士で結構意気投合した。
 

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実は鈴子はこれまで“東の千里”(現在は千里1〜3)に付いていたので“西の千里”(千里4)に付いていた星子との交流があまり無かった。
 
千里が中学生の時は星子と会っているが、それ以来しばらく会ってなかった。千里の分裂(2017)の時、千里2や千里3をサポートしている星子を12年ぶりに見かけて「生きていたのか」と驚いた。でもその時はあまり話していない。
 
鈴子(すーちゃん)は先日までヨーロッパで千里2(鈴子は1番だと思っていた)のサポートをしていたので、輪島に居る千里から召喚された時、この千里何番だっけ?と疑問に思っていたのが、星子と話して、千里には1〜3番以外の“バスケットをしていない”千里も居ることを知り、やっと訳が分かった。でも鈴子はまだ千里2がABに分裂したことに気付いていない。
 
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なお「半月くらい休んでていいよ」と言ったのは千里2Bで、今回召喚したの千里6!だが、鈴子は前者を1番、後者を“今日知った”4番と思っている。
 
千里6は最初実は伊呉三姫(ミッキー)を呼び出すつもりだったのだが、彼女は4番が呼び出すかもと思い、氷見組を送り届けるのには休養中で悪いとは思ったものの、すーちゃんを召喚した。
 
ミッキーについては4番のほうは6番が使うかもと考えていたのだが、空いてるようだったので、現地で召喚され、人形の搬出を手伝っている。そして天野貴子が運転するバスで輪島に移動して翌日はフル稼働した。
 

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星子と鈴子は交代でエスティマを運転した。途中で千里から連絡があったので七尾市のお弁当屋さんで予約されていたお弁当30個を買った。穴水ICそばのJA-SSで満タンにしてから朱雀林業に持って行った。お弁当を降ろし、お昼をみんなで食べた後、あらためて車内を掃除してから鍵を神谷内に返却した。
 

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6月20日(月)、春貴は教頭に地震の被害の救援について報告した。
 
「人形美術館が崖崩れで半分埋まっていたんですが、中の人形は夜中0時までに30人くらいの人海戦術で全員救出しました」
 
「それは大変な作業だったね。でも無事で良かった」
と教頭も言ってくれた。
 
春貴は微妙な話があると言い、面談室に教頭と一緒に入る。偶然自分がS市に行くことを知った女子バスケ部の部員4名が自分達も手伝うと言い、君たちを学校と無関係のことで連れ出すことはできないと言ったが、自分たちは先生とは無関係に自分たちの意志で行くと言い、お母さんの車に乗ってS市まで行って手伝ってくれたと報告した。
 
教頭は話を聞いていたが
「奥村先生自身がその子たちに直接関わってないのなら大丈夫でしょう」
と理解を示してくれた。
 
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さて、晃と舞花は6/19 23:15くらいに南野鈴子さんが運転するエスティマで送ってもらって帰宅した。車内てもほとんど寝ていたのだが、帰宅してからもお風呂にも入らず熟睡した。
 
しかし以前より体力が持つ気がするのは、やはりずっと女子バスケ部で練習しているからだろうと思った。
 
6/20(Mon) 朝6時頃目が覚めてトイレに行く。凄く後ろのほうからおしっこが出る。昨日1日この状態でトイレを使っていたが、少し慣れてきたような気もする(←女子トイレに入ったことは特に気にしてない)。もしぼく女の子になっちゃったら、ずっとこんな感じでトイレすることになるのかなあなどと思った。
 
自分の部屋に戻ってから着替える。
 

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ちんちん隠れてるし、男物パンツ穿く意味無いよね?と思い、女の子ショーツを穿く。胸が揺れてブラジャー着けてないと痛いのでブラジャーを着ける(←なぜ“痛い”のか何も考えていない)。このブラも先週まで着けていたA65では入らないので母が買ってくれた?B70のブラを着ける。
 
ワイシャツを着ようとして無いことに気付く。
 
ロングTシャツ(≒ショートワンピース)を着て部屋を出、2階廊下(物干し台)を見てみた。掛かっているのは濡れたワイシャツばかりである。
 
下に降り、朝食の準備をしている母に声を掛けた。
 
「お母ちゃん、忙しい時にごめん。ぼくのワイシャツ知らないよね」
 
「ごめーん。洗濯物帰ってから干すつもりでS市に行ったから干してなくて朝気付いて廊下に干したんたけど、まだ乾いてなかった?」
 
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「廊下のは乾いてなかッた」
「そこにかかってる分もまだかな?」
 

2枚干してあるのに触ってみるが、どちらも濡れてる。
 
「まだみたい」
「洗ってないワイシャツ無かった?」
「うーん・・・」
などと言っていたら、舞花が言った。
 
「ワイシャツが無ければブラウスを着ればいいのよ」
 
(パンが無ければケーキを食べればいいのよ)
 
「うーん」
「そうね。あんたがブラウス着てても多分誰も変に思わない」
と母まで言っている。なんかぼくやはり周囲に誤解されてる気がすると晃は思う(←ほぼスカートを穿いているのに等しい状態を曝していることは気にしてない)。
 
「ワイシャツが無いんだから仕方ないじゃん」
と姉が言うので
 
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「じゃ今日はそうする」
と晃は言った。
 

中学の時もワイシャツが全部洗われていて姉からブラウス借りて行ったことあるけど、特に何も言われなかったし(←晃はみんなによく理解されている)。
 
いったん自室に戻り、衣裳ケースのいちばん上の段に入っているブラウスを取り出す。
 
「あれ?増えてる」
 
ブラウスは姉が押しつけた2枚しか無かったはずが7枚も入っている。うーん。。。確かに昨日の夢の中では母がブラウスを追加してくれたけど。
 
まいっか。
 
それで晃は学校のマークとロゴが入っているブラウス、つまり女子夏服!を着て、ボタンを留めた。左前の服のボタンを留めるのは小さい頃からしているのでスムースに留められる。
 
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ズボンは今まで穿いていたW76のものと、姉からもらったW66のものがある(*20)のだが、実際問題として最近W76のはきついと思っていた。ところが姉からもらったW66のものは楽に穿けるので、ウェストサイズの小さいものの方が楽に穿けるって不思議〜と思っていた。
 
今日は女子用の服をたくさん着たので、その延長で姉からもらったW66の方を穿いた。むろん楽に穿ける。
 
ヒゲ剃らないといけないかなと思ったが伸びてないのでいいことにした。
 
今日の時間割を見て教科書・ノートをカバンに入れ、シャープペンシルの芯を確認し、今日は体育があるので体操服を持つ。部屋を出て、2階廊下に掛かっているバスケ部の練習用ユニフォームを取って来てスポーツバッグに入れる。これはジャージ製なのでもう乾いていた。
 
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カバンとスポーツバッグを持ち、晃は1階に降りて御飯を食べた。
 

晃は7時半くらいに姉と一緒に家を出て、バスで学校に登校した。途中姉が妙に楽しそうな顔をしているのは何だろうと思った。
 
晃は学校に着くと、自分の教室に入って席に着いた。ワイシャツが無くてブラウス着て来たこと、誰かに何か言われるかなあと思っていたが何も言われなかった(←当然)。
 

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(*20) 舞花は現在W69のスラックスを穿いている。それでW66のものは晃にあげた。舞花はスカートならW66で入るが、スラックスはW69でないときつい。W63のスカートは晃にあげた!舞花は冷え性なので、夏はスカートで登校するが冬季はスラックスで登校することが多い。この学校の女子制服のボトムはスカートでもスラックスでもいいので、冬季になると女子の半数くらいがスラックスを穿いている。夏季でもあまりスカート好きじゃないと言ってスラックスを穿く子もいる。
 
だからこの日の晃のスタイルは完全に女子制服状態だったのである。
 

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春避(13)

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