広告:世界一のはるな愛になるダイエット
[携帯Top] [文字サイズ]

■春避(11)

[*前p 0目次 #次p]
1  2  3  4  5  6  7  8  9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 
前頁 次頁目次

↓ ↑ Bottom Top

一般利用なので2階の控室は使用できない。でもトイレは1階にも一般向けのトイレがあるので大きな問題は無かった。むろん晃は
「ちゃんと女子トイレ使ってよね」
と姉に言われたので、素直にそうした。晃としても“タップ”されているので個室しか使えない(されてなくても普段から個室を使うことが多いが)。
 
母は駐車場の車の中で寝ていると言っていた。今の季節ならそれでも行ける。夏になったら中に入って待機しないと辛いだろうが。実際には“きつねうどん”とお稲荷さんを食べてから寝ていたようである。(坂下君たちが来たのでお店を開けてくれていた)
 
「油揚げのほうがうどんより多いって面白ーい」
「お稲荷さんが凄く美味しい」
と言っていた。さすが油揚げのプロである!
 
↓ ↑ Bottom Top


使用している油揚げは、管理人グループ(当初5名)で食べ比べをして最高に美味しいと思った豆腐店のものを使用している。
 
その豆腐店は家族だけで経営していたのだが、ここに油揚げを大量出荷するためパートさんを雇ったらしい。この豆腐店が使用している大豆は北海道美唄市の契約農家から買っているもので、向こうは家族だけで生産してるので増産は困難という話だった。試しに旭川のH新鮮産業の大豆特級品を試してみてもらった所「これもいい大豆だね」ということになり“きつねうどん”向けの製品は主としてこれを使ってもらうことにした。
 
管理人グループで食べ比べ(ブラインドテスト)してもらったが、どちらが美味しいかは意見が分かれたので充分高いレベルのようである。
 
↓ ↑ Bottom Top


しかし特級品は栽培に手間が掛かるため、生産量に限りがある。千里はH新鮮産業の杉村真広COO (*12) に頼んで、この特上の大豆の生豆を分けてもらい、氷見の山間部に取り敢えず1haの土地を買って育ててみることにした。H新鮮産業の名前を使わないこと、毎年栽培数に一定率を掛けた額をH新鮮産業に払うことを条件とした。
 
H新鮮産業の“特級品”は"F1"(一代雑種)ではない“固定種”なので育て方が良ければ毎年充分な品質の豆が採れる。“上級品”が"F1"を使用していて、普通の人にはそちらが美味しく感じられるが、H新鮮産業では真広のポリシーとして、F1は限定的にしか使用していない。中級品・下級品も固定種である。なお下級品は飼料・油用である。
 
↓ ↑ Bottom Top

近年日本の農業ではF1が物凄く多くなっている。日本の野菜の8割がF1だとも言われる。青首大根などがF1である。F1は概して育成が楽で大きさが揃いやすいので箱詰めが楽で、消費者もサイズが均一的で使いやすいし美味しいと感じるものが多い。しかしF1の子供は親と全く違う性質になったり、そもそも子供ができなかったりするので、毎年、種を種苗会社から買う必要がある。
 

↓ ↑ Bottom Top

(*12) COO=最高業務執行委員。H新鮮産業は委員会設置会社に移行したので、父親の杉村蜂郎(67)がCEO(最高経営執行委員)となり、真広(37)がCOOとなって、真広が事実上の会社指揮者となっている。社長会などには蜂郎が出て行くし、毎朝の訓示をしたり、銀行や取引先との談話なども主として蜂郎がする。
 
つまりその手の“社長であるがための雑用”を父が引き受けているのである。
 
但し旭川の“女社長会”には真広が出て行っており、幹事のひとりにもなっている。さすがにこれは父にはさせられない。父に「スカート穿いてお化粧して出席してみる?」と訊いたら「勘弁して〜」と言っていた。
 

↓ ↑ Bottom Top

大豆耕作のために、おキツネさんの夫婦者を3組雇い、彼らに畑を耕してもらうことにした。なんか「油揚げたくさん食べさせてあげるから」という話が物凄く大きく発展してしまった。彼らの食欲が千里の想定を遙かに越えていた。結果的に体育館をもう1個建てられるくらいの投資をするはめになった。
 
大豆は連作障害を起こすので、地元農協の指導員さんと話し合って、大豆(夏)・ほうれん草・レタス(冬)・水稲(夏)・小麦(冬)というサイクルで輪作してみることにした。耕作地を短冊状に分割して大豆を育てるエリアと水稲を育てるエリアを交互に配置する。つまり大豆は同じ場所では2年に一度育てることになる。
 
彼らのグループを“朱雀ファーム”氷見支部ということにし“きつねうどん”で働くファイアーバードの管理人たちは“朱雀フード”氷見支部ということにした。
 
↓ ↑ Bottom Top

“きつねうどん”を食べにくるおキツネさんたちはこの2グループである。
 
農耕組を夫婦者にしたのは、農耕には男手が欲しいが独身者だと管理人グループの女子たちとの恋愛問題が起きて、レイプが起きたり、メスの取り合いで喧嘩したりすると困る。それで夫婦者を雇ったのである。なお彼らにはレイプ即去勢と通告している。
 

↓ ↑ Bottom Top

“去勢”がハッタリでないことを示すのに、“男の娘”キツネの空太ちゃんをみんなの見ている前で(麻酔を掛けた上で)ペニスの切断と睾丸の除去をしてみせた。これはオスたちにはかなり効いたようである。怯えていた!
 
メスたちは興味深そうに見ていた!
 
なお空太ちゃんは、完全な女の子に変えてあげて、名前も日空と改め女子としてフラミンゴの管理人グループに加えた(追加した2人の内の1人)。他の女子に色々と女の子のことを教えてもらい、女の子の服も着られて幸せそうである。
 

↓ ↑ Bottom Top

“きつねうどん”で使用している醤油は地元醤油店の醤油である。だしは天然昆布だしである。昆布は朱雀フードの根室支店からの直送である。お稲荷さんやおにぎりに使用しているお米は、こしひかりより美味しいとして人気上昇中の石川県産“ひゃくまん穀”である。粒が大きめでもちもちとしており女子高生たちにも好評だった。
 
味の管理は、氷見市在住で以前氷見糸うどんのお店に勤めていた三島さんという40代の女性に見てもらっている。このプロジェクトに関わる、今の所唯一の人間である!彼女には“きつねうどん”支配人の肩書きを与えた。彼女も
 
「何このきつねうどん?油揚げが麺の倍入っている」
と言って呆れていた。
 

↓ ↑ Bottom Top

実は麺の仕入れに関しても、彼女のコネを利用させてもらった。毎日100食くらい売れるので販売元の社長さんが見に来たら、大きな道からも外れた小さな店舗だったので驚いていたらしい。
 
「こんなロケーションでこんなに売れるって信じられない」
と言っていた。でも社長さんはちょうど練習を終えたバスケ部員たちが体育館から出て来て、きつねうどん・お稲荷さんを注文してテラス席で食べているのを見て
 
「なるほどー。運動部員は食べるだろうなあ」
などと納得していた。
 
バスケ部員以外でも、学校での練習が終わったあと、ここまで来てうどんを食べて行く他の部の部員たちも結構居た(*15)。なんと言っても安いしたくさん食べられる。みんな天かす・ネギを大量投入していた。
 
↓ ↑ Bottom Top

でも実は売上の6割を(店舗グループと農耕グループの)従業員たちが食べている!!
 
なお容器は、おキツネさんたちは全員マイ食器・マイ箸を使用する。薄いピンクのストライブ模様のメラミン食器・箸に、黒いマジックで各自の識別マークを描いたので、人間たちが使う薄いブルー無地の紙製食器・間伐材の割箸と紛れることはない(*13).
 
女子バスケ部員たちも夏休み頃から“マイ食器”を使うようになるが、彼女たちに割り当てたのは藍色の砥部焼(*14) の丼に藍色に塗装された木製の箸で、テプラで LOVE, MAIKA, LUMI, VENUS など名前?をアルファベットでプリントしたものを貼り付けた。
 
おキツネさんたちの多くが“きつね舌”なので、だいたい冷製の“ぶっかけ”で食べていた。氷見糸うどんは実はこの冷製で食べるのがとても美味しい。
 
↓ ↑ Bottom Top

彼らが最初に必死で練習したのが“箸”の使い方である。手づかみや直接容器に顔を突っ込んで食べるのは禁止と言われた。握り箸で使っていた子が多いが、若い子たちには、しっかり人間同様の箸の使い方をマスターした子も結構居た。
 

↓ ↑ Bottom Top

(*13) 人間の多くは3種類の錐体(赤緑青)を持っているが、キツネの多くは2種類の錐体(赤青)のみを持っているので、人間とは見え方が異なる。
 
赤:低周波数に反応、青:高周波数に反応、緑:中周波数に反応
 
しかし赤と青の識別はできるので、キツネ用を赤系、人間用を青系の色にした。しかしオスの中には色の見分けが苦手な個体も居るので、キツネ用は縞模様にして、区別しやすくした。
 
そもそも色だけで分けてはいけないというのは、全てのデザインにおいて必須のことである。昔のマック用開発者マニュアル Inside Macintosh にはこのことが強く書かれていた(当時はまだモノクロディスプレイの使用者も居たこともある)。しかし、このことが分かってないデザイナーがあまりにも多くて困る。トイレの男女マークが色以外では区別が付かないものなど、ほんとに酷い。
 
↓ ↑ Bottom Top

なお人間にも、女性には希に4種類の錐体を持ち、昆虫並みの色識別のできる人がいるが(千人に1人くらいらしい)、キツネにもメスにはたまに、緑錐体を持っていて黄色と青の識別ができる個体も居る。特に“一族”のメスにはこういう子の比率が高く、彼女たちは人間に近い色識別力を持つ。千里が眷属にしている、小道・小杉・小綿などはこの能力を持っている。
 

↓ ↑ Bottom Top

(*14) 砥部焼は愛媛県砥部町付近で作られている磁器で、厚手の丼などを生産しており、その丈夫さから上級の飲食店で全国的に使用されている。
 
一般に使用されている陶器の丼だとどうしても欠けやすいが、砥部焼は夫婦喧嘩で相手に投げ付けても割れないとして“喧嘩器”と呼ばれた。キツネたちも運動部員たちも、わりと雑なので、丼を落とすのは日常茶飯事と考え、千里は値段は高いものの砥部焼を導入した。コロナが終息したら人間用は全面的にこれに切り替えるつもりである。紙製はテイクアウト・デリバリー用とする。
 
(キツネは配達用スクーターに乗れるのか?)
 
砥部焼は日本の4大磁器産地、有田・瀬戸・九谷・砥部の中で、唯一、有田系ではないものである。江戸時代中期、大洲藩藩主・加藤泰候の指示の下、杉野丈助という職人が磁器の開発に取り組み、苦労の末1777年に磁器製作に成功した。急傾斜の山林に窯を構え、急流を利用した水車で陶石を細粉化し、豊富な木材で焼いて高温焼成した。白地に藍色の絵が描かれたのが特徴である。
 
↓ ↑ Bottom Top


(*15) 学校とファイアーバードの行き来が多くなり、その間の道路の歩道には生徒たちの要望で、市の許可を取り7月には屋根と壁が取り付けられた。この結果、雨や雪が降っても快適に往復できるようになった。
 

↓ ↑ Bottom Top

さて、6月19日に、晃たちがファイアーバードに行った時、坂下君と菅野君はもう練習していた。
 
「早ーい!」
「女子は昨日は頑張ったな。北信越大会で初戦突破とか凄いじゃん」
「向こうが午後の準々決勝にそなえて主力を温存していたからね。まともにやって勝てる相手では無かった」
 
「ああ、無名校が急に強くなった場合、最初の年だけはそれが利くんだよ。来年はそれが使えないし、ウィンターカップ予選とかでは強豪がみんな本気で潰しに来る」
 
「うん。だから10月までに私たちは進化しないといけない」
「まあお互いがんばろう。俺たちの世代も今年がラストイヤーだし」
 
「坂下君は高校出たらどうするの?」
「俺程度の腕ではBリーグとか行けないし、俺は大学行く頭も無いし、どこか趣味のチームとかあったら、そこに入れてもらって活動するくらいかなあ。谷口さんたちは?」
 
↓ ↑ Bottom Top

「私も受験勉強とか何もしてないし大学は無理。やはり趣味のチーム見付けるしかない」
と愛佳は言っていた。
 
「何なら一緒にクラブチーム作る?」
「作るのはいいけど、男子と女子では一緒に試合に出られないし」
「坂下君、性転換とかする気は無い?」
「俺が性転換しても女子トイレに入ったら痴漢で捕まる」
 
「菅野君なら女子トイレ行けそうな気がする」
「やめて。変な道に誘うのは!性転換とかしたら勘当される」
(↑嫌だとは言ってない)
 

↓ ↑ Bottom Top

一方舞花は進路についてはウィンターカップが終わってから考えようと思っていた。金沢の私立なら、何とか滑り込める所もありそうだし、現役合格できたら私立に通ってもいいと両親からは言われている。国公立では富山県立大と富大芸文(*16) は受けてみるつもりだ。
 
(*16) 富山県立大学は射水市にある理系の大学。情報系コースには女子も多い。舞花は数学や物理はわりと得意である。看護学部もあるが舞花の性格では看護師なんてまず無理。患者を5-6人殺しかねない。ここは氷見からは比較的近く、頑張れば自宅通学できないこともない(氷見線→あいの風とやま鉄道→バス)。
 
バイクなら楽に通学可能だが、両親が「バイクはダメ」と言っている。免許を取るだけなら取ってもいいと言われたので、今年の夏休みに普通免許と一緒に取るつもりである。
 
↓ ↑ Bottom Top

富山大学芸術文化学部(略称:富大芸文(とみだい・げいぶん))はキャンパスが高岡市北部にあり、自宅から自転車で通学可能てある。美術系の大学である。舞花はわりと絵が上手い。ただここに合格するには絵の腕より共通テストの一般科目である程度のスコアを出す必要があり、県立大より厳しい。
 
天才的に絵がうまい場合は共通テストの成績が多少悪くても合格する可能性はあるが、舞花もさすがにそこまでの実力は無い。そこまでの腕の子は、きっと美大(金沢美術工芸大学)に行く。
 

↓ ↑ Bottom Top

↓ ↑ Bottom Top

前頁 次頁目次

[*前p 0目次 #次p]
1  2  3  4  5  6  7  8  9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 
春避(11)

広告:放浪息子(2)-BEAM-COMIX-志村貴子