広告:まりあ†ほりっく3(MFコミックス)
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■春避(4)

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ここで!服装が問題になる。
 
モッパーは今着替えた、練習用のユニフォームで良い。
 
テーブルオフィシャルは制服である。
 
2・3年の女子はちゃんと制服を持って来ている。
 
「ぼく、制服持って来てなかった」
と晃が言っている。
 
とろこが舞花が言った。
 
「ルミの制服ならあるよ」
 
「え?お姉ちゃん、ぼくの制服持って来てくれたの?」
と晃は尋ねたが
 
「はい、どうぞ」
と言って舞花が渡したのは、女子制服!である。
 
「それを着るの〜〜?」
「女子制服着たかったでしょ?堂々と着られていいね」
「でも〜」
 
「時間無いからすぐ着替えて」
「分かった」
 

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それで晃は舞花が持って来た女子制服に着替えた。
 
なんでも昨年卒業した先輩から譲ってもらったものらしい。
 
晃はまずスカートを穿いてからユニフォームのショートパンツを脱いだ。その後、ユニフォームの上を脱いでアンダーシャツの状態になってから、夏服女子制服のブラウスを着た。彼がブラウスのボタンをスムースに留めるので、春貴は「へー」と思う。女物の服をかなり着ているとしか思えない。リボンは舞花が結んであげた。
 
「さ、行こう」
 
それで8人で出て行く。春貴は、晃がスカートを穿いてもちゃんと歩けるのを見て、スカート穿き慣れてるなと思った。やはりプライベートでは結構穿いているのだろう。
 
残りの6人は春貴と一緒に2階席に移動した。
 
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「モッパーの仕事よく見ててね。たぶん、来月の地域リーグでは、君たちもすることになるから」
と春貴は言った。
 

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それで試合を見学する。
 
モッパーの4人が2名ずつ(松夜・河世/五月・美奈子)コートの対角線の所でスタンバイし、アイコンタクトでモップを持って走り出す。両組はお互いに相手の組の動きほ見ながら同じ速度でモップを掛けていく。そして最後はピタリと同時に終了するので
 
「美し〜い!」
と新規加入6人が感動していた。
 
その後も、タイムの時などにささっと出て行きスリーポイントラインの内側を急いで掃除するし、選手が転んだりしたら、その部分をすぐ雑巾で拭くし、常に「掃除するぞ、掃除するぞ」という気持ちでスタンバってないとできない仕事だなと6人は感じ取ったようである。
 
やがて1時間ほどの試合が終わる。
 
「見てるだけで疲れたぁ!」
と彼女たちは言っていた。
 
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試合が終わったのは、15:40頃である。
 
体育館の入口のところでモッパー・テーブルオフィシャルを務めた8人と合流する。
 
「今日は叱られなかったぁ」
などと美奈子が言っていた。
 
「私も思った。中学の時はモッパーやる度に叱られていた」
と五月。
 
なるほど、それで不安そうな顔をしていた訳だ。
 
「まあ君たちも進化したんじゃない?特に問題になるようなのは無かったと思うよ」
と舞花が言う。
 
「このままモッパーのプロを目指す?」
「どうせならバスケットのプロを目指したいですぅ」
「今日モッパーやった子たちも、来月の地域リーグではテーブルオフィシャルのほうもしてもらうから、練習しててね」
 
「自信無ーい」
「でもちゃんとできるようにならないと、まずいからね」
 
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「ぼくどこかで着替えたいんですが」
と女子制服姿の晃が言うが
「家に帰ってから着替えればいいよ」
と舞花。
 
「お母ちゃんに叱られるぅ」
「お母ちゃんには理解してもらわなくちゃ」
「何を理解するの〜〜?」
 
日和が女子制服姿の晃を羨ましそうに見てるなと思った。やはり女子制服を着たいのだろう。
 
「でもお腹空いたぁ」
「じゃギョウザ食べに行こうか」
「行きましょう!」
 

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ということで、春貴は松夜のお父さんに頼んで、マイクロバスをすぐそばのイオンタウン金沢に入れてもらう。そして王将でギョウザを大量にテイクアウトし、マイクロバス内で食べた。
 
「私もいいんですか」
と松夜のお父さん。
 
「どうぞどうぞ。足りなくなったら追加で買ってきますから」
 
ということで、みんなたくさん食べて、本当に追加で買ってきた!(春貴はやはりこの手の出費が・・・・給料無くならないか?)
 

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この後
「せっかく金沢まで来たから少し買物したい」
という声がある。
 
それで“人混みに近づかない”というのと、スマホを持つ人を含む最低3人以上で行動するという条件で18時半まで約2時間自由時間とすることにした。
 
(この日の金沢の日没は19:14)
 
春貴は何かあった時にすぐ駆け付けられるようにというのも兼ねて、マイクロバスの中で仮眠させてもらった。
 
日和は、夏生・美奈子と五月に連れられて(連行されて)、お店の中に入って行ったので、1時間後が想像できたが、まあいいことにした。彼が可愛い格好で帰宅しても、きっとお母さんは驚かない。
 
松夜のお父さんは「カーマ(*4)見てきます」と言って1人で出掛けた。3人以上ではないが、おとなだし男性だから大丈夫だろう。
 
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(*4) この時点では既に"DCM"に改名しているが、まだまだ“カーマ”の名前のほうが通っている。DCMはダイキ(西日本)、ホーマック(東日本)、カーマ(中日本)、という偶然営業エリアが重複していなかった3つの中堅ホームセンターが三井物産の支援の下、経営統合して生まれた企業である。DCMの"M"は三井物産であるといわれる。
 
ダイキとカーマの合併話が進んでいた所にホーマックも乗ってきて3社統合が実現した。この3社は以前は、ホーマック、ダイキ、カーマの頭文字を取った“ホダカ”というブランドも作っていた。
 
ホーマックは Homac←Home Amenity Center、 ダイキは創業者(大亀孝裕:おおがめ・たかひろ)の苗字の音読み、カーマはインドの愛の神カーマ(東洋の愛染明王・西洋のキューピッドに相当する)に由来する。
 
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晃は姉の舞花と愛佳と一緒に、結局着替えないままショッピングモールの敷地を出た。
「着替えたいよぉ」
と言っていたのだが、
「知り合いに遭遇する確率は低いから問題無い」
などと舞花は言っていた。
 
「昨日の『霊界探訪』で出て来た“一言主神社”ってあれ多分本物だよね」
「私もそう思った。ネットでは創作だろうという意見が強かったけど」
「どこかのショッピングモールから出て、なんか適当に歩いていたね」
「あの歩き方の規則は分かった。最初自分の影のある方向に歩き始めて、その後、右・左・左の順に曲がるんだよ」
 
「よく観察してたねー」
 
(↑偶然だと思う)
 
「出発点のショッピングモールってここかも知れないよね」
「どこが出発点かは分からないようにモザイクとか掛けてたね」
「金沢で大きなショッピングモールというと、まずここを連想するよね」
「ここかも知れないよね」
 
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(不正解!あれは金沢駅に近いAショッピングプラザである。金沢市内の大きなショッピングタウンというと、示野は確かに大きいが、他に大桑町界隈、県庁の北側付近なども規模が大きい、また山環の沿道も成長著しい)。
 

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ということで女子制服を着たままの晃は、舞花・愛佳と一緒にその付近を歩き回ったのだが、それらしき場所には到達できなかった。神社には遭遇したものの、一言主神社ではなかった。
 
「真珠ちゃんも言ってたけど、強い願いを持つ人でないと辿り着けないんだと思う」
と晃は言う。
 
「晃が女の子になりたいとい強い願いを持っていれば辿り着けるはず」
「そんなこと願ってない」
「でも女の子になりたい気持ち無いの?」
と愛佳が訊く。
 
「ぼくは男の子ですー」
「いや、この子は女の子になっても普通にやっていける」
と舞花。
「無理だよお」
「いや、それは問題無い気がする」
と愛佳も言っていた。
 
「実際この世界が17歳までは無性で18歳になる時に自分で男か女か選ぶという世界なら晃は女を選ぶでしょ?」
 
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「え〜〜?どうしよう?」
「悩むということ自体、実は女になりたいんだな」
「月曜から女子制服で通学しなよ」
「そんな恥ずかしい」
 
やはり恥ずかしいだけのようである。
 
「小さい頃は普通にスカート穿いてたじゃん」
「子供だかせらよく分からなくてお姉ちゃんと同じ服を着てただけだよ」
「ああ、だいぶ晃ちゃんのことが分かってきた」
 

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結局1時間ほど歩き回ったものの成果は無い。
 
「そろそろ帰らなきゃ」
「疲れたよ」
「仕方ない。帰るか」
ということで、スマホのGoogle Mapを見ながら示野のイオンタウンへの道を進む。スマホの表示では、15分で辿り着けると表示されているので余裕のようである。
 
その時、舞花は何か碑のようなものを見た。しめ縄が張られている。
 
「何だろう?」
「字が崩し字だから読めない」
「“傾”かなあ」
「そう言われるとそのようにも見える」
 
「じゃ一言主神社の代わりにここでお願い事をしていこう」
と舞花。
「何それ?」
と晃。
 
でも舞花は
「晃が女の子になって女子選手になれますように」
などと声に出して言って合掌している。
 
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「じゃ私は、H南高校がウィンターカップに行けますように」
と愛佳。
 
「あんたも女の子になれますようにと祈りなさい」
「そんなの祈りたくない」
と晃。
 
「だいたい通りすがりの正体不明の石碑に祈るとか危険すぎる」
と晃は言っている。
 
全くである。舞花はあまりにも安易すぎる。さっき通り掛かった神社ならまだ良かったのに。
 

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しかしそういう訳で、晃は何も願い事はせずに、3人はイオンタウンに帰還した。少しだけ時間があったので、トイレ(もちろん全員女子トイレ)に行ったあと、マックスバリュでパンを買って、マイクロバスの車内で食べた。
 
そういう訳で結局晃は女子制服のまま帰宅することになった!
 
晃が結局着替えてないのを見て、春貴は、やはりこの子、女子制服を着たいのかなと思った。
 
晃はそもそもあまり男性ホルモンが強くないタイプのようである。女顔だし、喉仏もあまり目立たないし。声は普通の女の子よりは低めなのだが、女の子の声だと思って聞いていると特に違和感を覚えない程度である。彼の話し方がそもそも女の子的な話し方である。音楽の時間はアルトで歌っているらしい。テノールの下のほうの音域が出ないのである。
 
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晃の身長についても、お母さんが174cmの長身らしく(中学高校でバスケをしていたらしい)、性別問題より遺伝的なものがあるようだ。舞花はそれほど背が高くないが、お父さんが163cmと男性にしては背が低いので、舞花はお父さん似なのかも知れない。運動神経は、明らかに舞花のほうが晃より良いけど。
 
ちなみに日和は可愛いワンピースを着て、髪には花飾りの付いたカチューシャを着けていた。カラーリップも塗られている。そして嬉しそうな顔をしていたので、こういう服装が好きなのだろうと春貴は思う。みんなから可愛い、可愛いと言われて少し照れていた。ちなみに彼は音楽の時間はソプラノ!らしい。彼の場合はどう考えても人為的な方法で男性的発達を停めているとしか思えない。背が低いのも恐らくホルモンニュートラルのせいだ。
 
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その日帰宅した日和を見た母は
 
「あら可愛い。そんな服持ってたんだ?」
と訊いた。
「うん、まあ」
 
「明日も行くの?」
「今日、初戦は勝ったんだけど、午後からの準々決勝で負けたから、明日はお休み」
「ふーん。分かった」
 
「あんた月曜日からは女子制服で通学する?」
と母は訊いた。
 
「どうしよう?」
と日和は迷うような顔をした。
 

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その日帰宅した舞香と晃を見て、母も父も“何も言わなかった”。
 
母と父は一瞬顔を見合わせたが、頷き合っていた!
 
(晃はとっても“理解”されている!)
 
弟たちも何も言わない。チラッと見ただけである。
 
「お疲れさん。どうだった?」
「初戦は勝ったけど、準々決勝で負けた」
「ああ残念だったな」
「だから明日はお休み」
 
「了解了解。御飯できてるよ」
「シャワー浴びてから食べる」
「ああ、それもいいかもね」
 
それで姉が譲ってくれたので、晃は男物の服と下着を持ち、お風呂場に行ってシャワーを浴びた。
 
身体を拭いてから下着を着けようとして、自分が女の子用ショーツを持ってきていることに気付く。
 
「ま、いっか」
と思い、そのまま穿いた。姉は最近「また買ってきたよぉ」などと言って何度も女の子下着を買ってくるので(資金源は多分母)、現在晃の部屋の衣裳ケースには、女の子ショーツが20枚くらい、キャミソール6枚、プラジャー(A65) 5枚が入っている。特に女の子ショーツはもう穿くのにほとんど抵抗がなくなってきつつある。(つまり女の子下着を結構着けている)
 
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