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■娘たちの1人歩き(17)

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(C) Eriki Kawaguchi 2019-09-24
 
7月16日(土)、ステラジオのホシは高岡の青葉の自宅を訪れ、青葉の自室でヒーリングを受けていた。いつもは高岡市内のホテルで会うのだが、この日は青葉が忙しかったので、向こうから来てくれたのである。
 
ホシがぼんやりとして青葉からヒーリングされていた時、机の下に紙が落ちているのに気付く。
 
「あ、それは・・・」
青葉が取り上げようとしたが、ホシは取られないように紙をガードして中身を読む。
 
「何これ〜〜?」
 
それはマリが書いた『エメラルドの太陽』という詩であった。
 
「済みません。見なかったことにしてください」
「それはいいけど、何よこのぶち壊れた世界観は?」
「マリさんですから」
「太陽がエメラルド色とか、音が見えるとか」
「マリさんですから」
「あの子、薬やってるんじゃないの? LSDとかPCPとかDMTとか」
「あまりにも詩の内容がぶっ飛んでいるので、度々薬物検査を受けさせられていますけど、陰性なんですよね。マリさんにとっては音が見えたり、光が聞こえるのは普通の感覚らしいですし、宇宙人とはお友だちらしいですし」
 
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「あの子、頭壊れているのでは?」
「壊れていることは自覚しているみたいですね」
 
ホシは考えた。LSDの支配下で“死の歌”を書いてしまって以来、自分の詩や音楽に凄く臆病になっていた。しかし薬などやっていないマリがこんな詩を書くのなら、自分の少しぶっ飛んだ詩くらい、許されるんじゃないかなあ。
 
それでホシはいったんヒーリングを中断させてもらって、数日前から発想はしたものの、怖くて具体的に書き出すことができずにいたイメージを曲にまとめたのである。
 
これが約半年ぶりに書いた『ぷかぷかゴーゴー』で、この年のYS大賞優秀賞を取ることになる。発表された時は、あまりの歌詞の“ぶっとび”具合で騒然となったが、その直後にアクアが歌うマリ作詞の『エメラルドの太陽』が出て「マリちゃんはもっと壊れている!」と言われたのであった。。
 
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青葉はこの日ホシたちが帰った後で、マリから頼まれた『エメラルドの太陽』に曲を付けたのだが、かなり悩んだ末、歌詞の一部を修正する提案をして7月17日の午後、“ケイ”に送付した。ケイもその歌詞修正に賛成した。
 
しかしマリは怒った!
 
それでマリとケイが言い争っている時にコスモスが来訪する。
 
コスモスは言いにくそうにして、実はアクアに『時のどこかで』の挿入歌を歌わせたいという話が急浮上し、何か適当な曲が無いかという相談だったのである。するとアクアと聞いて、マリは今届いたばかりの『エメラルドの太陽』の譜面を見せた。
 
ケイは「ごめん。とても使えないよね。何か適当な曲を急いで書くから」と言ったのだが、コスモスは「使えます」と言った。
 
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「和子・・・じゃなかった和夫がタイムリープしている最中に迷子になってしまって、変な亜空間のような所を漂流する場面があるんです。この曲はその場面にピッタリです」
 
「なるほど!そういう場面でしか使い道がないというか」
 
「でもこの歌詞、少し変更されているのよ。オリジナルの歌詞はもっといいんだよ」
と言って、マリは元々の歌詞を見せる。
 
しかしコスモスは微笑んで
「すみません。この修正されたバージョンの方を使わせてください」
と言った。
 
マリは不満な様子だった!
 

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千里たち日本代表の一行は7月17日の朝7時前に合宿所を出発して成田に移動した。そして南米に向けて出発しようとしていた時にコスモスから電話が掛かってきて、急ぎの仕事で申し訳無いのだが、アクアのCDを急遽発売しなければならなくなったのでカップリング曲を書いてくれないかというのであった。
 
「いつ発売するんですか?」
「『時のどこかで』の挿入曲なんです。映画が8月12日に公開されるので8月11日に発売という線で。本当は水曜日に発売したい所ですが、どうしても時間が足りなくて」
 
8月11日(木)に発売するには8月10日までにCDショップに荷物が到着する必要があり、そのためには8月9日(火)までに発送する必要がある。アクアのCDは大量に売れるので実際には土曜日くらいには発送を開始しないと間に合わない。プレスは急がせても半月は掛かる。常識的に考えると7月20日くらいまでにはマスタリングを終える必要がある。
 
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「いつ録音するんです?そもそもアクアは今映画を撮っているのでは?」
「7月23日に苗場ロックフェスティバルに出るのに1日空けてもらっていたんです。それでその日に録音をします」
「アクアが倒れますよ!」
「私も抗議したんですけどね」
とコスモスも困っているようである。
 
「とにかく曲は南米までの移動中に書いて、向こうからメールかFAXで送ります」
「助かります!」
 

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千里はこの日程でアルゼンチンに渡った。
 
NRT 7.17 10:50 (JL006 777-300) 10:45 JFK (12'55)
JFK 21:59 (AA953 777-200) 7/18 9:46 EZE (10'47)
 
時間帯は成田(NRT)が+9、ニューヨーク(JFK)が−4で、時差13時間の所を13時間掛けて飛んだので、出発時刻と到着時刻がほぼ同じになった。実際にはジェット気流のおかげで30分ほど早く着いた。千里は「まるでタイムリープしたみたいだ」と思った。ブエノスアイレス(EZE)は−3でニューヨークとの時差が1時間である。
 
さて千里は『もっとオブリガード』という曲を機内で書いたのだが、例によってネットへの接続方法が分からない!それで同じテーブルで昼食を取っていた鞠原江美子がLAN接続してあげて、何とかCubaseのプロジェクトごと、楽曲を送信することができた。これがアルゼンチン時間(ART)の7/18 12時頃で、日本時間では同日24時頃になった。
 
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日本代表一行はこの日は昼食後、荷物を持ったまま体育館に移動して午後いっぱい練習をしてから、夕方引き上げ、ホテルに入った。
 

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一方コスモスたちはタイトル曲の『エメラルドの太陽』についてはもとよりコネがあった台湾の“向日葵音楽工作有限公司”(SFMS)に依頼して5日がかりで現代音楽っぽいアレンジを作ってもらい、7月23日(音源製作日!)のお昼前に納品されたのだが、『もっとオブリガード』については時間が無いので、千里がCubaseで作った伴奏をそのまま発売音源に転用してしまった!
 
しかし映画の挿入曲である『エメラルドの太陽』はできたら23日の苗場ロックフェスティバルでもお披露目したい。そこで、ケイのコネで下川工房のイリヤさんに依頼して、エレメントガード用(ライブ用)のアレンジを書いてもらった。これができたのが7月20日の夕方である。イリヤさんも他の作業をいったん棚上げにしてこの編曲をSFMS側のアレンジャーと連絡を取りながら、やってくれた。
 
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それでエレメントガードはこの2曲を7月20日夜から練習しはじめた。エレメントガード版でも、イリヤさんはキーボードを3つ指定していたので、追加伴奏者のキーボード奏者を2名入れている。実は羽藤玲香(レイア.桜野みちるの妹)と米本愛心(アコちゃん)である。時間が無いので演奏能力が把握できる人を使った。
 

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2016年7月20日、アクアはこの日終業式を迎えるが、この日は、いつになく出待ちのファンが多かった。バイクに乗っている者もいて、アクアが事務所の車に乗って出てきたら、それを追尾しようという態勢のようだ。
 
12時半頃、鱒渕が白いアクアで迎えに行くが、校門前にファンが集結しているという連絡で、裏門側から入った。そして玄関の所につけるが、ファンたちは双眼鏡でそのナンバーを見て「確かにアクアちゃんがいつも乗っている車だ」などと言っている。
 
やがて校舎内から学生服を着た男の子が出てくるが、双眼鏡で見ていたファンが「間違いなくアクアちゃんだ」と言っている。しかし実は実際に車に乗ったのは、アクアのそっくりさん・尾崎マリヤである。彼は最初から鱒渕の車に乗ってこの学校にやってきて、学校の裏口から入ったらすぐ降りて校舎を素通りし、玄関から出てきて鱒渕の車に再び乗り込んだのである。
 
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実は今日ファンの間で終結しようとする動きが数日前からあったので、昨日の内に秋田在住の彼を呼びよせておいたのである。
 
車が校門の方へ近づく。事務員と予め学校に来ていた§§ミュージックのスタッフとで何とかファンたちに道を開けさせる。それで“アクア”を乗せたアクアが走り去る。それを数台のバイクが追いかけて行った。しかし校門の所に集まっていたファンたちは「ああん、行っちゃった」と言って渋々解散した。
 
ファンが解散したという連絡を受けて、やっと生徒玄関が開放され、生徒たちが出てくる。今日は1人では下校しないようにと言われたようで、全員5〜6人程度のグループである。その中で5人の女子生徒のグループがおしゃべりしながら校門を出て、やがて秩父鉄道の駅前まで到達する。そこで女生徒の中の1人が他の子にバイバイしてグループから離れる。
 
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「龍ちゃん、撮影頑張ってね」
「うん。ありがとね」
 
と言って龍虎は駅の中に入った。すると中に女子制服を着た西湖が居て
 
「お疲れ様です。電車は5分後に出ます」
と言って、龍虎に切符を渡した。
 
「ありがとう」
 
と笑顔で受け取る。2人は仲の良い女子中生2人組のような顔をして秩父鉄道に乗り、撮影地の最寄り駅まで行った。西湖は桶川市の中学に通っているが、早い時間に終業式が終わったので、事務所からの連絡でお迎え役を頼まれたのである。女学生1人より2人のほうが目立たない。龍虎の学校の女子制服は元々西湖も所持している。
 
なお電車に乗っていて、ふたりがアクアと今井葉月であることに気付いた人はいなかった(葉月の顔はこの頃はまだごく一部の熱心なファン以外にはほとんど知られていなかったのもある)。
 
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7月20日の午前10時頃、いつものようにバスケの練習をしようと、千葉市千城台にある房総百貨店体育館にやってきた、ローキューツの原口揚羽・紫の姉妹は戸惑った。
 
敷地全体にロープが張られ「立入禁止・債権者」という札が下がっていたのである。どうなっているんだろう?と思って見ていたら、ヤクザ風の男が近づいてきて「ここの地主は倒産したんだよ。ここはロックアウトしたから、お姉ちゃんたち中に入っちゃいけないよ」と言うのである。
 
原口姉妹はいったん引き上げると、すぐにローキューツのオーナーであるケイに連絡してみる。ケイは明日21日にロックフェスティバルのため苗場に向かう予定で準備に追われていたのだが、連絡をきいて驚く。すぐに顧問弁護士の岩波さんに電話して調べてもらった。
 
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すると房総百貨店が18日(月),19日(火)と連続で不渡り手形を出して、事実上倒産していたことが判明した。それで債権者が資産確保に動いたのだろう。
 
「それ債権者と話して借地権を主張することはできませんかね?」
とケイは岩波さんと話した。
 
「もちろんできます。正確には破産になった場合は、破産管財人は賃貸契約を持続しなければならないので、管財人に賃料を支払うことで建物を使用し続けることが可能です。但し、破産処理の過程で土地が競売されてしまいますと、その時点で賃貸契約は終了してしまいます」
 
「だとしたら、今はその賃料を誰に払えばいいんですか?」
「実はそれが問題なんですよ」
と弁護士は困ったように言った。
 
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基本的には破産になるまでは、房総百貨店に賃料を支払い続ければよいはずである。借家人が締め出されるいわれはない。ところがヤクザが絡んできたことから、債権者の中に悪質な者がいることが考えられ、そこと交渉するのは現時点では困難が予想されるということだった。
 
「法的にはこちらに権利があるのですが、ヤクザの実力行使に対抗するのはけっこう難しいです」
 
「それ、選手が嫌がらせを受けて、怪我したりするとまずいですね」
「そちらが心配です」
 
「いっそ房総百貨店からあそこの土地建物を買い取れませんか?たぶん10億円程度ですよね?」
「もっと安いと思います。しかし破産寸前の企業との不動産取引は不正な財産処分とみなされて破産法違反に問われる可能性があります」
 
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「となると、破産管財人が決まってから、その管財人と交渉した方がいい?」
「それがベストです」
 
「仕方ないですね。だったらそれまではどこか代替の練習場を何とかした方がいいですね?」
「それが可能なら、その方が安全です」
 

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