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■娘たちの1人歩き(11)

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千里は5月13日はクロスリーグの試合に出て、14日はレッドインパルスをこの春退団した餅原さんの結婚式に出、その夜は貴司と横浜でデートした。
 
2016年5月15日。
 
この日は物凄い日になった。
 
15日の朝、眠っている貴司を放置して、千里は予め借りていた福祉車両を運転し、青葉やジャネが泊まっていたホテルまで行く。ジャネは車椅子ごと車に載せ、青葉・圭織・ジャネの母と一緒にブラインド・バスケットの会場に行った。千里が思った通り、目の見えない人たちがバスケットをしているのを見て、ジャネは競技復帰の意欲がかなり高まったようである。
 
千里は鱒鷹さんの目を青葉にも診せた。青葉は改善の余地があると言い、彼女は定期的に青葉のセッションを受けることになった。
 
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新幹線で岐阜羽島まで移動する。麻耶が迎えにきてくれたので、彼女が運転する福祉車両で一行は義肢製作所に入った。それで開発中の“本人の意志で動く義足”を付けてもらったのだが、運動神経の良いジャネはその場でこの義足を付けたまま走ってみせた。技師が驚いていた。
 
「普通の人なら走れるようになるには数日かかるのですが」
「さすがジャネさん!」
 
ジャネはこの義足の使用実験に協力することになり、取り敢えずこの義足は“お持ち帰り”することになった。
 

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この会社の福祉車両を借りてそのまま金沢まで帰ることにする。そして途中のハイウェイオアシスで休憩していた時、一行はステラジオのホシとナミに遭遇した。
 
それで一緒にしばらく話している内に、青葉はホシの話した内容から衝撃的な事実を知った。それは水泳部の連続怪死事件について、青葉が“解決した”と思っていた内容をひっくり返してしまうものであった。
 
青葉は20年前の事件について最初に語ってくれた木倒カタリと再度会う必要性を感じた。それで千里に頼む。
 
「ちー姉、悪いけど、ちょっと付き合ってくれない?」
「うん。これはさすがに青葉をひとりで行かせる訳にはいかない」
 
カタリはこの件を追及されたら逆上して青葉に危害を加えようとするかも知れないと千里も思ったのである。
 
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それで2人はその日の深夜、木倒家を訪問した。カタリは全て覚悟していたようで、静かに全ての真実を話してくれた。
 
ところがこの話し合いの途中で、もし聴いてしまえば1分以内に死んでしまう“死の歌”がメーン長浜が使用していたカーナビに残っている可能性があることに気付く。そこで青葉は深夜ではあったが、東京のΘΘプロの春吉社長に電話した。
 
「分かった。誰かが使ってないか、すぐ調べさせる」
 
春吉は社員と配下のタレント全員にメールし、その結果立山みるくが自分の車に取り付けていることが分かり、即みるくに電話して電源を落とさせた。そしてそのまま会社に持ってくるように言ったのである。
 

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青葉と千里は木倒カタリ、およびスナックの勤めを終えて帰宅してきたクミコ(木倒サトギの妻)と夜中3時頃まで話し合い、その後、くれぐれも早まったことはしないようにとクミコに言ってから木倒家を出て、金沢市内のホテルに泊まった。そして朝1番の新幹線で東京に出て青葉はΘΘプロに行った(千里は合宿所に行った)。福祉車両の返却は朋子に頼んだ。
 
5月16日朝、ΘΘプロに入った青葉はカーナビをチェックし、確かに“死の歌”が入っていること、みるくが電源を落としていなかったら2分後に再生されていたことを確認した。みるくが悲鳴をあげて腰を抜かした。
 
「その再生前に発見できたのだからあんたは運が強い」
と大堀浮見子が言う。
 
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「確かに私って悪運が強いって小さい頃から言われていた」
とみるくも言った。
 
そしてこの後、青葉は春吉社長から、まだ誰にも言っていなかった事実を聞くことになり、それでピュア大堀と木倒ワサオの死の状況がほぼ解明された。春吉社長はまた、事件の発端を作ってしまい、それで多数の人が死んだことで自責の念にかられているホシの心のヒーリングを依頼した。
 

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千里はこの日5月16日から日本代表の第3次合宿が始まっていた。
 
5月18日。青葉から緊急連絡が入る。K大水泳部連続怪死事件で最後の犠牲者になるのを青葉と千里のおかげで免れた筒石が“死の歌”を含むSDカードを持っていたというのである。
 
「何かアプリと一緒に入っているんだよ。ちー姉のお友だちでさ、こういうのを分析できる人いないかな?アプリの動作仕様を知りたい」
 
「いいよ。だったらそのアプリと、ファイルリストをこちらにメールして」
 
千里は《せいちゃん》にその分析を依頼した。
 
「ああ、これはJavaで書いてある。簡単に解読できるよ」
と言って、《せいちゃん》は自作のツールを使ってJavaのバイトコードから、ソースを復元した。
 
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「要するに毎日1曲演奏して、21日目にはこの21番目の曲を演奏するんだな。単純なプログラムだよ」
「その21番目の曲が“死の歌”というわけか」
「つまり21日目が命日になるわけだな」
 
千里がその内容を青葉に伝えると、青葉は至急このSDカードを持っていたと思われる人から回収する必要があると判断。圭織と一緒に亡くなった水泳部員の遺族宅を回り、怪しげなSDカードがないか、またそれを故人のスマホにコピーされていた可能性があるので、あったらそのスマホも回収させて欲しいと言って回り、幸いにも全てを回収することができた。スマホの中に入っていた写真・スクリーンショットなどの類いはその場でUSBメモリーにコピーして家族に渡し、スマホの回収をさせてもらった御礼として1万円のQUOカード(青葉の自腹)も渡した。
 
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そしてこの回収したSDカードとスマホを高野山に収めてきて、これでやっとこの事件の金沢側の事件は解決したのである。
 
唯一未解決となったのは木倒マラが性転換手術を受けていたかどうかが分からない!ということだけだった。マラはクミコと普通に性生活を送りながら、多数の男たちと浮気をしていたのである。その男たちは全員ストレートだったと思うとクミコは言っていた。
 
(木倒クミコが、数虎(スートラ)のチイママ・玉梨乙子(たまなし・おとこ)からプロポーズされ再婚したのは、青葉の予想外だったが、おかげでクミコも、またカタリも立ち直ることができた。青葉は後日、この玉梨乙子と度々関っていくことになる)
 
この事件の最終的な処理は更に7月まで掛かることになる。今回の事件は極めて複雑怪奇な構造を持つ事件だった。
 
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さて、オーディションの方だが、5月7日に決勝戦の様子、優羽たち3人が呼び戻されて“大先生”の指示でユニットを結成することなどが通告される様子を撮影したのだが、この時点ではその“大先生”を誰にするか!決まっていなかった。
 
名古尾プロデューサーと★★レコード加藤次長、それに蔵田孝治は会談し、このユニットのお世話を、雨宮三森の弟子で昨年アクアのアルバムの制作を指揮した毛利五郎に依頼すること、毛利は実力はあるが無名なので“大先生”の役として既に引退していた作詞家の馬佳祥にお願いする方針を決めた。
 
それで5月9日の午前中にまずはケイ!(蔵田に呼び出されて交替した)と町添部長が馬佳祥先生の所に行って売上のマージンを払う方式で引き受けてもらえないかと交渉した。馬佳祥先生は「名前を貸すのは問題無いし、僕は過去にこの業界でたくさん儲けさせてもらったから、マージンも要らない。その若いプロデューサーさんに自由にやってもらって」と言ってくれた。むしろ自分のネームバリューが必要なところには実際に自分が出て行って話をするからとも言って下さった。先生はそういう“影武者”をするのを楽しんでおられるようだった。
 
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午後からはケイがひとりで毛利五郎のアパートを訪問し、事実上のプロデューサーになってくれることを依頼。快諾を得た。夕方にはケイと毛利の2人で馬佳祥先生の自宅を訪問、挨拶をして、これでプロデュースする人は確定した。
 

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3人のユニット名はいったんドライ(ドイツ語の“3”drei)と放送されたのだが(泥縄で制作しているので、充分検討されたとは言えないものを発表してしまう)、英語の dry (乾燥した) と紛らわしいということで、毛利の提案で“三つ葉”と変更された。
 
このユニットにおける各々の役割について、ケイと毛利の2人ともが
「メインボーカルはヤマト」
と言った。
 
「歌の上手いシレンじゃなくてですか?」
という質問もあったのだが、
「シレンちゃんの歌は上手いけど花が無い。だからシレンちゃんはこのユニットのリーダーに指名しましょう」
 
「なるほど」
 
「でもスター性のあるヤマトと、歌の上手いシレンの2人だけでは絶対衝突してしまう。そこで気配りが凄くて人当たりの柔らかいコトリが必要になるんです。だからコトリはサブリーダーに指名しましょう」
とケイは説明した。
 
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(この時点でケイはまだコトリの秘められた音楽能力に気付いていない)
 
そこで3人、特にシレンとコトリに、メインボーカルはヤマトにして、君たちはコーラスと通告する必要があったが、これは毛利が
「そういうの慣れてるから、きちんと通告するよ」
 
と言って引き受けてくれた。彼はこれまで多数のアイドルユニットのプロデュースをしている。こういう役割通告やクビ宣告などもたくさんしてきたと言っていた。
 

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毛利は3人のオーディションでのパフォーマンスのビデオと、前回放送での、落選通告からテレビ局のスタッフに呼び戻されるまでの様子のビデオを見ていてこの話は最初に優羽(ことり)にすべきだと考えた。彼女が見た目のほんわかさに反して強い性格で、最も難関と思われたからである。波歌はわりと従順な性格と見た。
 
それで5月13日(金)の夕方、毛利は(女性である)金墨円香に付いてきてもらい、優羽が学校を終わった所をキャッチして、近くの飲食店に3人で入った。
 
毛利は
「君には申し訳ないが、このユニットのメインボーカルはヤマトちゃんとし、君とシレンちゃんはコーラスを歌ってもらいたい」
と通告したが、優羽は
 
「それが当然だと思います。あの子がアイドル性はいちばん高いです」
と言った。
 
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優羽があまりにもあっさり受け入れ、その理由も理解しているようなので、毛利も金墨も驚いた。
 
毛利たちが驚いているようなので、優羽は自分が§§プロを辞める時にコスモス社長と話したことを打ち明けた。
 
「私は組織とかでいえば会長とか理事長とか教祖とかになるタイプじゃなくて、その参謀で影の実力者になるタイプだというんですよね。推古天皇ではなく聖徳太子、中大兄皇子(なかのおおえのおうじ=天智天皇)ではなく藤原鎌足、周の武王ではなく太公望、ビル・ゲイツではなくスティーブ・バルマー、本田宗一郎ではなく藤沢武夫」
 
「なるほど、影のフィクサーを狙っているんだ?」
と毛利五郎が楽しそうに言う。
 
「シレンとヤマトは行動パターンも性格も価値観もまるで違うんです。でも私がいる限り、あの2人に喧嘩はさせません。3人で仲良くやっていきますよ」
 
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その後3人は1時間ほど話したが、お互いにとても満足のいく話し合いができた。
 
「だけどこんなに簡単に君が納得してくれるとテレビの映像としては面白くないんだけど」
「だったら私が自分がメインボーカルをやりたいと3時間くらい頑張ったものの毛利さんの説得で納得した、というシナリオにしませんか?」
「ああ、そういうシナリオを作るといいかもね」
 
それで急遽シナリオライターさんにそういう筋の台本を書いてもらうことにした。
 
「私が自分で書いてもいいんですが、自分で書くと書いている内に不愉快になってくる気がするので、どなたか他の方にお願いします」
「さすがにそうだよね。OKOK」
 
このシナリオは、3時間粘ったということにするが、実際の撮影は1分!で終わるものとなる。
 
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