広告:オトコの娘コミックアンソロジー-~小悪魔編~ (ミリオンコミックス88)
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■娘たちの1人歩き(8)

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2日目。朝からトイレに行き採尿するが、この時、バリウムの便が出たのでホッとする。以前ちゃんと出てくれなくて苦しんだ経験もある。それで下剤を少し多めにもらったのである。
 
おしっこのコップを提出した後、朝食前にMRIに入り、30分くらい検査されていたようだが、龍虎は眠っていた。これを出た後で、部屋に戻って配膳されていた朝食を取る。その後、血圧測定した後、採血する。採血も採尿も昨日1度されているが、やはり初日より2日目のほうが本来の数値が出ることが多い。
 
更に心電図検査を受ける。昨日の夕方、急に膨らんでしまった乳房に電極を取り付けられると、何か変な感じがした。心電図検査が2日目になっているのも1日目は不安定だからである。腹部エコー検査までした所で午前中の部が終わる。お昼を食べてから、最初にMRA検査というのを受けた。くも膜下出血などの危険をチェックするものらしい。くも膜下出血は若い人でもやるし、君はハードスケジュールでお仕事しているから気をつけた方がいいと言われた。検査結果では異常は見られなかった。その後、胸部エコー検査というのを受けた。これはおっぱい!を超音波で見て、腫瘍などの兆候が無いか調べるものである。
 
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確かにこんな検査は渋川の病院では無かった! 普通男の子に乳癌の可能性は考えない(でも男性でも乳癌になる人はあると聞いた)。
 
そしてその後、行った検査で龍虎は衝撃を受けることになる。
 

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龍虎が行ったのは婦人科!である。
 
スカート穿いたりブラジャー着けるのが平気な龍虎も、こんな所に来るのはさすがに恥ずかしい。廊下で待っている間に《じゅうちゃんさん》の声が脳内に響き『ちょっと、ちんこ外しておくぞ』と言われた。それで感覚が変わったので、さりげなく触ってみると、男性器が無くなっているようである。つまり今龍虎の股間は女性型になっている。
 
名前を呼ばれて診察室に入ると、最初に上半身裸になってくださいと言われるので服を脱ぐ。
 
医師が龍虎の身体を眺めている。
 
「君は・・・14歳か。バストの発達が遅いと言われたことない?」
などと言われる。
 
そうか!女子として受診するとこういうことを訊かれるのか!
 
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龍虎はそういうことを認識したのと同時に自分の身体は随分女の子っぽくなっている気はしたものの、女の子としても未熟で、やはり自分はまだ中性なんだなと考えた。
 
「私小さい頃に大病していて、その影響で性的な発達も遅れているんですよ」
「どんな病気?」
「**性**腫瘍という病気なんですが」
「ちょっと待って」
と言って医師はデータベースを調べていた。
 
「なるほど。この病気なら第2次性徴も遅れるだろうね。でもこのくらいまでバストが発達しているのなら、この後高校3年くらいまでの間にどんどん女性的な体つきになっていくだろうね」
「はい。主治医の先生からもそう言われています」
 

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「じゃ内診しようか」
と医師は言った。
 
「ない・・・しん?」
「ああ、受けたことない?」
「はい」
「だったら最初はちょっと恥ずかしいかも知れないけど、処女は傷つけないようにするから安心してね」
 
「はい」
と答えたものの、処女は傷つけないって・・・どういう意味???
 
それでパンティを脱ぐように言われ、変な形の椅子に座らされる。すると身体が持ち上げられるので、何だ何だ?と思う。正確には持ち上げられたのは下半身である。それでジェットコースターに乗った時のように下半身の方が上半身より高くなる。そして両足が広げられる。
 
ちょっとぉ!!!
 
そして・・・あそこに何かが入ってくるのを感じる。
 
うっそー!?
 
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ボク、この先生に処女を献げちゃった?と一瞬思ったが、先生は「処女は傷つけないようにする」と言っていた。実際痛みは感じないし・・・などと思っていたら抜かれる感覚がある。
 
「はい、おしまい」
と言われ、椅子は元の状態に戻った。
 
「処女膜は一切傷つけてないから安心してね」
「ありがとうございます」
 
そっか!処女膜が無事なら処女なのかな?と思ったが、すぐ別の問題に思い至る。
 
ボクって処女膜もあるの〜〜〜!?
 
この婦人科の検査で人間ドックの全ての検査が終了し、龍虎は部屋で普段着に着換えてから退院した。検査結果は後日郵送されるということだった。
 
それで龍虎は新幹線で自宅まで戻ったが、帰宅後トイレに行って気付いた。
 
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男性器を返してもらってない!!
 

5月5日の夕方に、明智と高平はオーディション合宿の参加者12名を都内のホテルに送り届けると、そのままΨΨテレビに行った。参加者のサポートと点呼係として助手の赤島がホテルには残っている。ΨΨテレビには、名古尾ディレクター、司会者のデンチューの2人、アシスタントの金墨、★★レコードの滝口がいる。
 
実は合宿には本来滝口が一緒に泊まり込む予定だったのだが、急な腹痛があり、とても参加できない感じだったので、前夜急遽滝口が明智に代わりを頼んだのである。
 
明智と高平は今回の合宿の全体的な様子を報告し、また各々の参加者について気付いた点などを各々レポートした。その上で合宿中の様子を撮影したビデオを5時間掛けて見る。
 
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「花山(はなやま)さんがいいね」
と名古尾ディレクターは言った。明智は読み方が違うと思ったものの、些細なことなので、この場では訂正しなかった。
 
「歌はこの中では飛び抜けてうまいですね」
という意見も出る。
 
「ただ、上手いというだけで終わっている気がする」
という意見もある。
 
「私は島田さんがいいと思った」
とデンチューの殿山憂佳。
 
「だけど男の子ですよ」
「そんなのちょっと手術受けさせて女の子に改造しちゃえばいいじゃん」
 
「今回の合宿中でそれ本人も他の参加者からかなり唆されていました」
 
「私は山本さんがいいと思った」
とデンチューのもうひとり昼村恋子。
 
「ちょっと面白いキャラだね」
「歌はいまいちだけど、何と言っても明るいのがいい」
「彼女、雑誌のモデルをかなりしていたみたいね」
「ああ、カメラでの撮られかたが分かっていると思った」
「いいアングルしてるんだよね」
 
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「私は森田さんがいいと思った」
と滝口が言う。
 
明智は、彼女は確かに滝口さん好みだろうなと思った。従順で、言われた通りに行動するタイプである。おそらくお母さんが躾けに厳しい人だったのではという気がした。こちらの期待通りに動いてくれるだろうが、スター性は無いと思った。案の定、金墨さんが
 
「あの子は30-40人の集団アイドルの一員ならいいけど、ソロでは無理」
と言う。
 
「僕もその意見に賛成。この子はソロで売り出したら1年以内に潰れると思う」
と名古尾さんも言う。
 
「そうですかねぇ・・・」
と滝口は不満そうだ。
 
「明智君は?彼女たちを身近で見てどう思った?」
 
「八島(やまと)ちゃんを推します」
 
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「ヤマトってどの子だっけ?」
 
「金沢代表の、八つの島と書いて“やまと”と読みます」
 
「この名前、ヤマトって読むの!?」
とみんな驚く。
 
「そうか。大八洲(おおやしま)で“やまと”か。日本の古名だ」
と名古尾が言った。
 
「この子、歌はまだまだですけど、鍛えれば伸びると思います。そして何よりスター性が強いです」
と明智。
 
「遅刻してきて、スマホ持ち込んで、居眠りしてなんて子が使える?」
と滝口が言う。たぶん滝口がいちばん嫌うタイプの子だ。
 
「この子はいい意味でも悪い意味でも目立つんですよ。それがソロ歌手または4〜5人以下程度のユニットでは強い武器になると思うんですよね」
 
「確かにこの世界、目立った方が勝ちという感じがあるよ」
と殿山が同調する。
 
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「金墨君は誰がいいと思った?」
と名古尾が訊くと
「ことりちゃん一択」
と金墨は言った。
 
「ことり?どの子?」
とみんな名簿を見るが見つけきれない。
 
「神奈川代表の子。優しい羽と書いて“ことり”と読む」
 
「あ!水着審査で物凄い可愛いビキニ着てた子か!」
と昼村が思い出したように言った。
 
「金墨さん、意地悪な質問してたから、あの子嫌いなのかと思った」
「この子、受け答えできそうだと思って無茶振りしてみたんだよ」
「そうだったのか!」
 
「あともうひとり、北海道代表の子は、波で歌うと書いて“しれん”と読む」
と金墨。
 
「うっそー!?」
「それどうやったら“しれん”になる訳?“ことり”もだけど」
 
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「まあ今回は難読氏名大会になりましたね」
と明智も言った。
 

議論は夜中12時頃から始まり、2時過ぎまで続く内に3人に絞られた。
 
「歌手としては波歌(しれん)ちゃん、アイドルとしては八島(やまと)ちゃん、タレントとしては優羽(ことり)ちゃん、という感じかな」
と名古尾。
 
「その3人の傾向は今まさに名古尾さんがおっしゃった通りだと思います」
と明智。
 
それで実際、誰を優勝者にするかについてなかなか意見がまとまらない。その内、殿山が言う。
 
「面倒くさいから、3人とも優勝にして、この3人でユニット組ませたら?」
 
「ああ、そういう手はあるよね」
 
3時をすぎた所で昼村が提案する。
 
「これ私たちだけでは結論が出ない。ソウ∽さんに決めてもらいましょうよ」
 
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ところがここで名古尾が、実は療養中のソウ∽さんと会って来たんだけどと言って、状況を説明する。
 
「え?全然曲が書けない状態なんですか?」
「森原にもそれ言って断ったはずなんだけどと言われた」
「うーん・・・」
「森原はたぶんオーディションの結果が出る頃までにソウ∽さんを説得するつもりで見切り発車したのだと思う」
 
全員腕を組んで考え込む。
 
「誰かしっかりしたミュージシャンにビデオを見てもらいましょう。私ちょっと心当たりがあるので、明日・・・というか今日にも会いに行ってきます」
と滝口が言った。
 
「それ具体的には誰?」
「KARIONの水沢歌月さんなんですが」
「あの人なら信頼できる!」
「今いちばんの売れっ子だもんね」
「そうか。滝口さん、以前KARIONを担当してたもんね」
 
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「じゃ、歌月さんの意見を聞いてからまた明日の夜にでも会議をしようか」
 
「とにかくにも明後日・・・じゃなくて明日か。明日の午後には優勝者を公表しなければならない」
 
「明日最終結論ですね」
 
それでこの夜は3時半で解散したのであった。
 

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ところが翌日(正確にはその日)、滝口が水沢歌月=ケイのマンションに行くとケイは外出する所であった。★★レコードの北川が入院したのでお見舞いに行く所だということだった。成り行き上、滝口はその病院まで付いて行く。
 
ところが病院に来た滝口は通りがかりの医師から
「君は胃癌だ」
と言われ、緊急入院することになってしまった。
 
(この滝口の入院で社長命令が出て、結果的にアクアも人間ドックを受けることになった)
 
驚いて滝口の上司・村上専務が飛んでくる。村上は滝口と話し、すぐにΨΨテレビに飛んで行って名古尾と話し、更には病院近くの飲食店で連絡してきてもらった町添取締役とも話した。ふだん行動の遅い村上にしては珍しくよく動いたのだが、村上もテレビの撮影スケジュールが詰まっている中での滝口のダウンの深刻さを認識したのだろう。
 
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結果的にこのオーディションは町添部長配下の制作部が引き取ることになり、滝口が主宰していた戦略的新人開発室は解散することになる。そして村上はケイと会談し、このオーディションの優勝者をケイに決めてもらえないかと依頼した。
 

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ケイは明智が持って来てくれた、最有力候補となっている、花山波歌・月嶋優羽・雪丘八島の3人の歌唱ビデオを見た上で言った。
 
「全員不合格ですね」
「え!?」
 
「3人ともソロ歌手で売るにはいまひとつ足りないんですよ。だからこの3人で“ユニットを組んで”売り出すというのはどうです?」
とケイは言った。
 
明智が頷く。
「実はこの3人をまとめ売りしてはという意見はありました」
 
「だったらさ、いったん全員不合格と通告して退場させて、この3人だけ呼び戻して、ユニットを組んでレッスンを受けた上で、CDを作り、それを3人に手売りさせて5万枚とか売れたらデビューというのはどうだろう?」
と村上が言う。
 
「モーニング娘。を作った時の手法ですね。行けると思いますよ。テレビで放送したら、絶対5万枚くらい買いに来てくれますよ」
 
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「よし、それで行こうよ、明智君。今夜の会議には僕が滝口の代わりに出る」
 
「すみません、お願いします」
 
それで村上の案を名古尾も受け入れ“全員落選”の演出が決まったのである。
 
 
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娘たちの1人歩き(8)

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