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■娘たちの1人歩き(7)

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3日目は午前中は昨日と同じパターンで、午後からはこの3日間で仕上げようと言われていた曲を1人ずつ歌わされた。しかしステージ・オーディションまで通った子ばかりなので、全員きちんと歌うことができた。
 
「みんな優秀だね」
と明智さんがマジに褒めていた。
 
それが終わった後、またダンスレッスンをして、最後は1時間の座禅をして夕方4時頃合宿終了となった。
 
「このあと、皆さんには東京に移動してもらい、明後日、5月7日に決勝戦の撮影がありますので、今夜・明日は都内のホテルに泊まってもらいます。その間の行動は自由ですが、深夜外出などは避けてください。朝8時と夜10時に点呼を取りますが、居なかった人は10点ずつ減点します」
 
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と高平ADが言った。
 
「私、外に出たらホテルに戻ってこれる自信が無い」
などと方向音痴の八島が言っている。
 
「私と一緒にお出かけしようよ」
と紀子が言う。
 
「私も一緒にいくよ」
と翠も言って、この3人は一緒に行動することになった。
 
それで明智や高平たちも付き添い、マイクロバスで東京まで移動して新宿区内のホテルにチェックインした。
 

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アクアは4月29日から5月5日までドームツアーをしていたのだが、5月3-5の関東ドーム3日間を終えてから、6-8日の3ヶ日間は休みをもらい5月9日(月)に呼ばれて事務所に出て行くと
 
「健康診断を受けてきて」
と沢村デスクから言われた。
 
「去年はそんなのありませんでしたよね?」
 
「★★レコードの若いA&R(制作担当)さんが癌で亡くなったらしい。まだ28歳だったんだって。忙しいもんだから、健康診断受けろというのを3〜4年受けていなかったって。本当は会社は従業員に毎年1回健康診断を受けさせる義務があるんだけどね。それで町添部長が特に訓示して、今年は制作部の社員はどんなに忙しい人でも必ず受けろということになって」
 
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「へー」
「そしたらまず北川奏絵さんに癌が見つかって」
「え〜?あの方にも随分お世話になったのに。大丈夫なんですか?」
「幸いにもまだ早い段階だったから命には別状無いって。半年くらい入院しないといけないらしいけど」
「わぁ。どこかで時間取ってお見舞いに行きたいです」
「うん。調整するよ。それでその北川さんのお見舞いに行っていた滝口さんという人にも癌が見つかって」
「ひゃー」
「こちらはかなり進行していて、医者は命の保証ができないと言っているって。来週手術するらしいけど」
「わぁ。助かるといいですね」
 
「滝口さんは部長訓示も無視して健診に行ってなかったんだけど、癌患者って特有の臭いがするらしいね。それを偶然通りかかったお医者さんが気付いて強制的にレントゲン取ったら癌が見つかったということ」
と沢村は言う。
 
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「臭いですか!」
 
「それでとうとう社長命令が出たのよ。健康診断受けなかったら夏のボーナス無しって」
 
「それなら受けますね」
「ボーナス無しは困るよね。それで、社員だけじゃなくて、契約している歌手・タレント・作詞作曲家とかも費用出すから健康診断を受けてということになったらしい」
 
「作曲家さんたちもですか!」
 
「作曲家さんたちが一番危ない。会社員じゃないから、もう10年くらい健康診断なんて受けてないという人がザラだから」
「ああ」
 
「でも売れっ子の作曲家さんに急死されたら、打撃は大きい。1年前に本坂伸輔さんがお風呂で急死したのとかも、CDの発売延期がたくさん発生して大変だったみたいよ」
 
アクアは上島のおじさんのことが気になった。おじさん、きっと健康診断なんて受けていない。上島のおじさんに何かあったら、それこそ倒産するプロダクションやレコード会社も出るのではという気がした。
 
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「でも私、毎年一回、腫瘍が再発したりしていないか全身くまなくMRIで検査されているんですが」
 
「そういえばそうだったね。でもたぶん検査項目はまた違うだろうから」
 
なお、★★レコードおよびTKRから人間ドック1日コースの費用が出るらしいが、§§プロおよび§§ミュージックでは、紅川会長・秋風コスモス社長が話し合い、所属タレント・研修生は全員2日コースの人間ドックを受けてくれということになったということだった。
 

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それでアクアは健診のクーポンと問診票をもらった。しかしそれを見て戸惑う。
 
「あのぉ、14歳・性別女になっているんですけど?」
「あれ?年齢間違ってたっけ?」
「ボク男の子ですー」
「建前としてはそうだろうけど、お医者さんに診てもらうのには正しい性別を書いておかないとまずいよ」
と沢村は言った。
 
ボク、この事務所では女の子と思われているんだっけ??
 

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そういう訳で龍虎はまあいいやと思い、前日21時以降絶食して、指定された病院に来た。クーポンを渡して診察票と部屋番号を印刷した紙を渡される。まずはその部屋に行って病院着に着換えてくださいということだった。
 
行ってみると小さいものの個室である。ベッドの頭の所には“長野龍子様”と書かれている。この誤字はいつものことなので気にしない。病院着はピンクのなんだか凄く可愛い甚平とズボンのセットである。やはり脱ぎやすいように甚平になっているのかなと龍虎は思った。
 
財布などの入ったバッグは部屋備え付けの金庫に入れ、まずは採尿・採血から始める。自宅で取っておいた検便を提出する。身長・体重・ウェストサイズの測定、肺活量検査?(水泳選手並みの肺活量ですねと言われた)、胸部X線直接撮影、とやった所でお昼の時間だが、今日のお昼は食べられない。
 
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視力・聴力検査、眼圧測定。散瞳してサングラスを掛けて1時間待っている間に腸の内視鏡検査を受けたが「ヒェー!?」と思った。
 
(もっと悲鳴をあげたくなる検査が翌日待っていることを龍虎は知らない)
 
眼科に戻って眼底検査を受け、縮瞳薬を点眼してもらいサングラスを掛けたまま、今度はバリウムを飲んで胃の透視を受ける。これが終わるまではごはんは食べられなかったのである。下剤を(少し多めに)もらいしっかり飲んでおく。その後で内科検診に行ったのだが、龍虎は腕を組んだ。
 
《じゅうちゃんさん》がVサインをしている。
 

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「まあ座って」
というので椅子に座る。
 
「うん。心音に特に問題は無さそうだな。まあ明日心電図取るけどね」
などと言いながら、《じゅうちゃんさん》は龍虎の乳首の少し斜め下付近をアルコール綿で消毒した後、注射器を刺して何か注入する。
 
『なんか胸が膨れてくる気がするんですけど!?』
と龍虎は“心の声”で彼に語りかけてみた。すると彼も“心の声”でお返事する。
 
『脂肪を注入したからこれで1サイズアップする。次からはBカップのブラを買うといい』
『そんなにバストが大きくなると困るんですけど!?』
『困らないくせに』
と言いながら、《じゅうちゃんさん》は反対側のバストにも注射をした。
 
左右を見比べている。
 
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『しまった。右が少し小さい。もう少し注入するな』
と言って、そちらに少し追加で注入した。
 
『これでOK』
と言ってから今度は普通の声で
 
「そこのベッドに寝て、下着を脱いで」
と言われる。
 

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龍虎がやれやれ、今度は何されるんだろう?と思いながらベッドに寝る。ズボンとパンティを降ろす。《じゅうちゃんさん》は龍虎の偽装男性器を取り外すと、“割れ目ちゃん”を開いてよく消毒する。そして、ガラスの容器に入った卵形の臓器のようなもの、それにつながっている筒状のものを取り出し、その卵形の部分を先に、龍虎の割れ目ちゃんの奥にある深い穴に押し込む。そして小型のマジックハンドのようなもので、物凄く深くまで押し込んだ。左側に圧迫感を感じるので、どうも左側に挿入されたようだ。
 
更に彼は同じガラス容器に入っていた同じ形のものを同様にして穴に押し込み、やはりマジックハンドで深い所まで押し込む。今度は右側に圧迫感があるので右側に挿入されたようである。恐らくは本来物凄い痛みがあるのだろうが、多分痛みがブロックされているのだろうと龍虎は思った。
 
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『これでOK。だいたい半年以内には生理も始まると思うけど、処理はできるよな?』
 
と言いながら《じゅうちゃんさん》は龍虎に元通り偽装男性器を填め込んだ。
 
(この偽装男性器は龍虎の力では取り外しができない。じゅうちゃんさん・こうちゃんさん、などにしか着脱できないので、普段は龍虎は小さいながらも男性器のある生活を送っている)
 
『まさか今の**?』
『去年は**と**を設置したから、今年は左右の**と**を設置した。これで龍ちゃんは完全な女の子だよ』
 
『そんなの困るんですけどぉ』
『20歳になったら男に戻してやるから心配するな』
『ほんとに?』
 
『今お前は睾丸が無いから中性のままなんだよ。このままでは青年期の身体の発達が進まないし、骨も脆くなって骨折しやすい。だから一時的に女の子にして身体を成長させる。骨密度も上げる』
 
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『・・・・』
 
『これで少しだけ身長も伸びると思うぞ』
『それは嬉しいかも』
『それとも今すぐ元気な睾丸を体内に入れる?』
 

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龍虎はしばらく考えた。
 
『今は入れたくない』
『睾丸を入れたらだいたい半年以内には声変わりが起きる。男になってから高校生になるか』
 
『その声変わりを起こしたくないんだよ』
『だったら卵巣を入れる選択しかないな』
 
『ほんとに20歳になったら男の子に戻してくれるの?』
『その時、お前がそれを望むならな』
 
それ個人的にあまり自信が無い〜と龍虎は思った。自分が女の子になりたいと思うようになっちゃったらどうしよう?という不安がある。でも確かに中性のままというのは色々問題があるかも知れない気がする。
 
『でもこれ誰の卵巣なの?』
『お前のだよ。お前の骨髄液を採取してIPS細胞に変えて、もう8年近く育てて来た。だからそれ、まだ小さくて実は小学校低学年くらいの女の子のサイズなんだけど、14歳の身体に入れば急速に機能発達して14歳の卵巣として働き始めるはず』
 
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『へー!』
 
『まあお前は身体のサイズ自体が小さいから、小学校低学年くらいの臓器がむしろ適合する気がするよ』
 
『あ、それはそうかも』
 

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『ちなみにお前の身体のパーツはほぼ全て作られているから、脳を損傷しない限りは、狂ったファンに襲撃されて大怪我しても、心臓でも肝臓でも手足のパーツでも目や耳でも、いつでも交換可能だから』
 
『それ何か嫌な感じ』
 
『ちなみにチンコのコピーも作っているから、実は治療中のお前の本来のチンコとIPS細胞から作られたチンコと、チンコは2本ある』
 
『2本もあるの?』
『何なら20歳になったら2本ともくっつけてやろうか?』
『2本あっても困るよ!』
 
『2人の女と同時にセックスできるぞ』
『それ位置的に無理がある気がする』
 
この日はこれで診察終了で、龍虎は夕食は食べることができた。部屋まで持ってきてもらったご飯を食べると、今朝もお昼も食べていなかったのもあるだろうがものすごく美味しい!と思った。
 
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娘たちの1人歩き(7)

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