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さて、今年(2005年)6月の上旬、千里が細い道を走り降りたら、左手の家がどうも空き家になった風であった。沙苗に訊いてみると、
「ああ、小野さんはこの付近が寂しいからってL町に新しい家を建てて引っ越したんだよ」
と言う。
「へー、L町付近に家建てる人多いね」
「道路沿いにどんどん新しい家ができてるみたい。あの道路は市が除雪してくれるし」
「ああ。C町なんて除雪は後回しだから4-5日身動きできないことあるもんね」
貴司の家もL町である。L町の中では比較的古い住人になるようだ。
「バス路線は無いから車があること前提だけどね」
「まあこの付近もバスがあるといっても1時間に1〜2本だからなあ」
「実際使ってるのは学生とお年寄りだけだよね。乗客が私1人で申し訳無い気分になることもある」
「乗客が居ないよりマシ」
「そうだよね!」
千里はコリンに小野さんの引越先に行ってもらった。
「こんにちは、私C町の住人で米沢と申します」
「はいはい。C町のどの付近におられましたかね?」
「鈿女(うずめ)神社の隣の古い文化住宅を改造した家に住んでるんですよ」
「ああ、あそこに家が建ってましたね!」
「あそこ昔は文化住宅が30軒くらい並んでいたらしいんですが、今は私とお隣の深草さんだけで」
「へー」
「それで小野さんのC町のおうちなんですが、何か使うあてはあります?」
「いえ。可能なら売りに出したいくらいなのですが、不動産屋さんに訊いたらあの場所を買う人があるとは思えないと言われて取次の登録も断られたんですよ」
「それでしたら私に売っていただけません?」
「いいですよ!」
ということで、コリンは御主人が帰宅する夕方の時間に再度小野家を訪問し家の売却の交渉をまとめた。奧さんは100万円くらいならと言っていたのでコリンは120万円の現金を用意していたものの、御主人はあんな古くて狭い家にそこまで価値は無いと言い、住宅は無価値、土地代だけで、30坪の土地を坪単価2万円として60万円で譲渡することで合意した。
それでコリンはその場で現金で60万円(+消費税3万円)払い、更にお孫さん(4歳と2歳)のおやつ代と称して2万円押しつけた。
(ここは50代の夫婦、最近東京から戻って来た27-28歳の娘さんとお孫さん2人の家庭。この孫たちを育てるために夫婦は新しい家を建てた。娘さんの夫を見ないが、色々あったらしいと沙苗が言っていた。←田舎の噂は怖い:きっとそれもあって新しい環境に移動したかったのだろう)
登記の変更のための委任状を翌々日には郵送してもらえたので法務局に行って、この物件を入手した。
千里はボイラーの機械を新しいものに更新させ、お風呂もシャワー付きの広い浴槽のものに交換させた。またトイレも洋式便座に変更した。そして畳の表替えとふすま紙の交換もした。エアコンも取り付けた。更に玄関のドアが古いシリンダー錠だったのをカードキーに交換しドアホンとモニターも取り付けさせた。これらの改造は6月中に完了した。改造費は100万円くらいである。
手続きは全て米沢湖鈴名義で進めたので、ここの土地と家も米沢湖鈴名義となった。
千里(R)は自分で指示していて、なぜ自分がこの物件を入手したのか理由は分かっていない。
さて留萌北部の海岸線を走る国道232号からL町方面へ分岐する道(S中の校内マラソンのコースにもなっている)の分岐してすぐのところに1960年代から続くそば屋があった。スケソウダラ漁の盛んな時期は店も大きくて従業員も多かったが、留萌が寂れてくると客も減り、店も1980年代と数年前と2回建て替えて、建て替える度に小さくなっていった。
現在は家族だけで経営している。メニューは、にしんそば、スケソウダラそば。ほたてそば、いかそば、など海産物を載せたそばがメインだが、とろろそば、月見そば、山菜そば、油揚げそば、など安いメニューもある。
貴司はL町の自宅から町中のQ神社まで土日にはジョギングで往復するのが常であるが(神社の倉庫部屋でオナニーのついでに漫画を読む。たまに手の空いた千里とバスケの1on1をする:実際に応じているのはG)。そして帰りのジョギングではいつもこの店に寄って、にしん・すけそうだら・ほたて・いか総載せそば(950円+消費税47円)を頼むのが楽しみになっている。
6月中旬のある日、S中の広沢先生がこの店を訪れた。
「いらしゃーい」
と言って、可愛いエプロンドレス姿の少女が応対に出るが入ってきた人物を認識すると「きゃっ!」と声を挙げて顔の下半分を手で抑えた。
「恥ずかしがることはないよ、ゆきちゃん。私はただのお客」
と広沢先生は笑顔で潮尾由紀に言った。
広沢先生は“にしんそば”を注文して美味しく頂いたあと、由紀の母と少し話した。それで月末に予定されている、2年生の夏季教室について打ち合わせたのである。
6月11日(土).
野球の留萌地区決勝が行われた。相手はR中である。先発の山園は丁寧なピッチングで相手打線を抑え、攻めては阪井君が二塁打で出たのを前川君がタイムリーヒットで返すという効率のいい点の取り方で1点取りこれを山園君が守り切った。
司はこの試合で牽制で5人も刺し、R中の選手たちが天を仰いでいた。
これに勝ってS中は新人戦・春の大会に続いて3回連続で北北海道大会に進出した。
しかしS中は留萌地区大会の3試合を全て1−0で勝った。
「もっと打撃力を上げないといかんなあ」
と菅原キャプテンは呟いた。
6月11日(土).
雅海の所に貴子さんが出現する。
「もう男の娘には戻らず、このままずっと女の子でいいよね?」
「男の子に戻してください」
(きーちゃんは「生理が終わったら雅海を男の子に戻す」という約束を果たすためにきた。もっとも言われたのはひとつ前の生理の最中だったが)
「じゃ不本意だけど戻してあげるよ」
「ありがとうございます」
それで雅海はいったん!男の娘に戻してもらえた。
6月12日(日)には、バスケットフェアが行われた。女子バスケット部は波頭由紀まで入れた5人(交替要員無し)で参加し、1回戦は勝った。2回戦は雪子が限界で
「君は立ってるだけでいいから」
と言って4人で戦ったがギリギリで勝てた。
「私たち4人で勝てるって凄い」
そして3回戦でR中の3軍!に大敗して消えた。
しかし3軍の試合なのにこの試合をコーチと(フェアに参加しない)1軍メンバーがじっと見ていた。特に雪子の動きはかなりチェックしていたようである。
R中はS中の留実子と千里の動向について調べ、留実子が応援団、千里が剣道部で活躍中であることを知った。そして2人が夏の大会で各々の部を引退し、秋のバスケの大会には参戦してくるのではと考えた。バスケは3年生の引退時期が他の部活に比べて遅いのである。
6月11-12日(土日).
千里Rは今月の旭川行きをした。フルート・ピアノ・龍笛・剣道のレッスンを受け、天子のアパートにも寄った。
12日はバスケットフェアもあっていたのだが、この千里は特にバスケットには興味が無い。そもそもバスケットフェアには強い選手は出ないことになってるので数子も千里に声を掛けなかった。強い選手を出さないというのでは本当は雪子も出したくないところだったが、雪子も入れないと人数が足りないのでやむを得なかった。
6月12日(日).
司は早朝ジョギングをした後、朝御飯を食べてからソフト部の前河杏子と公民館で会った。ここでもまた3km一緒にジョギングし、公民館の庭で投球練習をした。お互いに1球ずつ投げる。ボールは硬球を使う。杏子は硬球をウィンドミルで投げてくる。
一方、菅原君・前川君・阪井君は司−公世のコネで借りた早川ラボの庭で、ピッチングマシンでひたすらバッティング練習をしていた。学校でやると部活とみなされるが、ピッチングマシンが強飯先生の私物であるのをいいことに、菅原君のお父さんの軽トラに載せて早川ラボに持ち込み、練習をしている。
一応周囲には塀があるが、ボールが塀を越えて外に行かないように庭全体にネットを張っている。これはここのラボのスタッフさん?か数人でやってくれたが、凄い手際が良かったので感心して見ていた。
ここは猛獣侵入防止のため、建物も周囲を取り囲む塀も丈夫にできているので打球が激突しても全く問題無いという。なお、早川ラボの館内では千里・沙苗・公世・弓枝の4人が剣道の練習をしている。
千里は菅原君たちに
「ここは自由に使っていいけど私がいる時にしてね。ヒグマが現れた時に私がいないと、管理人の須賀(秀美)さんだけでは対処できないから」
と言っていた。
村山さんがいると、ヒグマを木刀か何かで叩きのめすのかなあ、などと菅原君たちは思っていた。ここのところ土日には菅原君たちはここでバッティング練習をしているが、今の所ヒグマには遭遇していない。
一方、公民館で練習していた司は、夕方帰宅するとシャワーを浴びごはんを食べて「お休みなさーい」と言って部屋に行き寝る。そして眠りに落ちていきながら思っていた。
「貴子さんまだ来てくれないのかなあ。生理だいぶ落ち着いてきたのに」
夜間はまだ念のためナプキンを当てているが今日の昼間はパンティライナーだけで済んでいた。
6月13日(月).
朝起きてからトイレに行った雅海は1ヶ月半ぶりに見たちんちんに違和感を覚えた。
「こんな変なもの無ければいいのに」
(だから「ずっと女の子のままでいいよね?」と訊かれたのに)
そして排尿すると思う。
「おしっこの出方が変だ!」
更に部屋に帰ってから着替えていて当惑する。
「なんでこんなに胸が無いの〜?」
(男の子にはバストはありません)
「これじゃ体育の着替えの時に困るよ〜」
(だから女の子のままでいれば良かったのに)
困っていたら唐突に部屋の中に女の子が出現する。
「村山さん!?・・・の妹さん?」
女の子は千里に似ているが背丈が低い。小学2-3年に見える。
「ぼくは“男の娘の味方・魔女っ子千里ちゃん”だよ」
「村山さんなの?」
「村山千里は本来小学1年生の時に死亡する予定だった。だからその本来の寿命の時に千里の身体はいったん死亡して3つに別れて再生した。それが千里α、千里β、千里γと名付けられた。ぼくはそのうちの千里γだよ。ぼくは肉体が無いから成長が遅いんだよ」
「あ、やはり村山さんって何人かいるよね?」
「ぼくにも何人いるか分からないけど多分10人以上は居る」
「いるかも知れない気がする」
「お困りのことがあったらお手伝いするよ。ちんちん切ってあげてもいいよ」
「ちんちんはどうでもいいんだけど(←やはりどうでもいいのか)おっぱいが無いのに困ってるんだよ」
「ああ、だったらおっぱいあげるよ」
と言って、魔女っ子千里ちゃん(千里γ)は“おっぱい”を出してくれる。
「これを胸に接着剤で貼り付けるといいよ」
「ありがとう!これなら何日か誤魔化せると思う」
「完全な女の子に変えてあげてもいいけど、大手術だから半日かかる。回復にも半年かかるし」
「手術は今は勘弁して〜。学校に遅刻するし(そういう問題か?)」
「それ胸をアルコールティッシュとかできれいに拭いてから付けないと炎症起こすから」
「そうする」
「あと剥がす時はエナメルリムーバー使ってね」
「分かったありがとう」
それで雅海はしばらく胸はブレストフォーム、お股はタックで乗り切ることになる。
しかしタックしているとおしっこの出る位置は女の子になっている時と近いものの出方が“まどろっこしい”感じだったし、ブレストフォームは偽装がバレないかひやひやで
「本当の女の子に戻りたーい」
と雅海は思った。
(だから女の子のままにしてもらったらよかったのに)
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女子中学生・春ランラン(14)