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■女子中学生・春ランラン(12)

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雅海はいつまでたたっても貴子さんがきてくれず、ずっと女の子の身体のままなので
「貴子さん何かで忙しいのかなあ」
などと思いながら、毎日女の子の身体に男子制服を身につけて登校していた。
 
学生服の胸が苦しいなあと思っていたが母に言うと
「だからセーラー服にすればいい」
と言われる。
 
(ほんとに君は女子制服にしたほうがいいと思うぞ)
 

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強飯監督が軽トラに載せて運んできた機械を見て部員たちは驚いた。
 
「ピッチングマシンですか?」
 
「そうそう。君たち近藤君の球にかすりもしなかったろ?でも君たちはあの速度を体験した。体験しただけでも貴重なことだと思う。あんな凄いピッチャーと対戦できる機会なんてめったに無いから。経験したら後はあの記憶を思い出しながら、技術的に打てるようになるだけだよ。このマシンで近藤君並みの剛速球に慣れて打てるようになろう」
 
それでボールの速度を140kmに設定してみんなで打ってみるが誰も打てない。
 
「でもこれ毎日やってればその内打てるようになりますよね」
と菅原君が言う。
 
「そうそう。特に菅原君は近藤君からホームラン打ったじゃん」
「そうですよね!」
「だから頑張ろう」
 
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前川君が言う。
「でもよくこんな高いマシン学校は買ってくれましたね」
 
(多分50万円くらいする)
 
「いや僕のポケットマネー」
「大丈夫ですかぁ?」
「女房には内緒で」
 
なお強飯先生の先日の東京行きの費用は先生は自腹のつもりだったが校長が業務上の出張として認めてくれて全額学校から出ている。
 

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5月21-22日(土日).
 
千里Rは旭川に行き、フルート・ピアノ・龍笛・剣道のレッスンを受けた。いつもは夕方、天子のアパートにも寄るのだが、剣道の指導をしてくれる越智さんがこの日は都合があって遅れたので、稽古が遅くまでに及び、Rは越智さんから連絡があった後、14時くらいに天子に電話し
 
「今日は行けないみたい。ごめんね」
と言っておいた。
 

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5月22日(日)には、いつもの不動産屋さんのCMの撮影もあり、これは千里Gが代理で出て行った。(司令室のお留守番をするVが不安そうな顔をする)
 
5月21日は雨模様だったのだが、22日は良い天気に恵まれた。
 
(goo過去の天気によると2005.5.21の旭川は雨のち晴れ、22は晴れのち曇)
 
共演者は中学1年生の女子・響姫ちゃん、と男の娘!の“仮名”花子ちゃんである。花子ちゃんはセーラー服を可愛く着こなしている。Gは親切心を起こしたくなったがVから「余計な親切をしないように」という直信が飛んできたので、やめとくことにした。花子ちゃんは実はディレクターさんの息子で
 
「お前、セーラー服で通学するなら睾丸取るか?」
と(きっとジョークで)言うと
「それ絶対嫌」
と言ったらしいので、女性指向は無いようである。Gは今なら可愛い女の子になれるのにもったいないと思った。
 
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この日は景勝地・神居古潭で撮影したあと、旭川郊外の大きな家にお邪魔した。
 
広い敷地である。そして千里や共演者が驚いたのが、家を取り囲む“トラック”である。3人は唐突に陸上競技っぽいランニングとショートパンツという格好に着替えさせられる。花子ちゃんは千里・響姫とは別の部屋で着替えたが、ちゃんと胸がある。
「ブラジャー着けさせられた。恥ずかしー」
と言っていた。足に毛が無いのはそもそもセーラー服を着るために剃られたらしい。
 
それでスターティングブロックを設置し、ディレクターさんがスターターを務めてスターティングピストルを鳴らす。それでトラック1周!するところを撮影された(カメラは先行して走る軽トラに載せている)。
 
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千里と響姫ちゃんは平気だったが、花子ちゃんは息が上がってた。
 
この土地は約40m×80mの3200m2(約1000坪) でその土地の外周に3レーンのトラックを作っている。これが一周200mになっているのである(*14).
 

 
(*14) トラックの円周部分を半径20m, 直線部分を40mとすると、一周は(2πr+2h) = (40×3.14 + 80) = 205.6m になる。これを所有者さんは正確に200mになるようにトラックを作った。土地の面積は 2r×(2r+h) = 40×(40+40) = 3200m2= 970坪 となる。
 

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「所有者さんも息子さん・娘さんも毎日ここを30周するそうです」
「200m×30 で6km ですか」
「中学生の皆さんは6kmくらい一気でしょう」
「運動部に入っている人なら一気でしょうね」
 
「私吹奏楽部」
と響姫ちゃん。
「運動部ですね」
「部活で毎日ジョギング3kmと坂道ダッシュ30本やってます」
「多分吹奏楽部は運動部の中でも最もハードな部活」
 
「私は剣道部」
と千里は言う。
「毎日5km走ってますよ」
「ああ」
 
「へー、剣道ですか。うちの兄が剣道やるんですよ」
と御主人は言っていた。
「この家の掃除するの、実は兄一家にも手伝ってもらいました」
「広い家は掃除も大変ですよね!」
 
「やはり運動部の人なら200m走っても走った内に入りませんね」
 
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「ぼく放送部」
と花子ちゃん。
 
「朗読するのに肺活量を鍛えるため運動しよう」
「運動苦手〜」
「ああ。それは身体付きを見れば分かる」
 
「やはり将来性転換して女の子になるために筋肉付けないようにしてるんでしょ?」
などと響姫ちゃんが言う
「性転換手術ってむっちゃ痛そうだからパス」
と花子ちゃんは言う。
 
「痛くなければ女の子になってみたい?」
「あまり真剣に訊かないで〜」
 
(Vから「くれぐれも余計な親切はしないように」と直信がある)
 
「ところで花子ちゃんの本名は?」
「花道なんだけどね」
「お父さんはスラムダンクのファンか!」
「だったらどっちみち“花ちゃん”でいいね」
「花ちゃん・・・・」
 
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ここの所有者さんは国体出場経験もある陸上選手らしい。でも息子さんは水泳部で娘さんはバスケット部らしく
「息子も娘も陸上をやってくれない」
と文句を言っておられた。
 
でも運動一家だけあって、親子とも均整のとれた身体付きをしていた。奧さんはテニス選手だったらしい(この家にはテニスコートもある)。ほんとに運動一家である。
 
千里たちはここのトラックにハードルを置き、そこに腰掛けてフルートを吹いた。また邸内体育館!では鉄棒の上に腰掛けてフルートを吹いた。この鉄棒の上に乗ったのは千里と響姫ちゃんである。花子ちゃんは鉄棒の上に行けなかった。
 
しかし今回はちょっと異色構成のCMになった。
 
でもこんなに運動施設のあるおうちはいいなあと千里(G)は思った。
 
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撮影が15時頃終わったのでGは美輪子に送ってもらって天子のアパートに行った。美輪子もついでに寄らせてもらう。
 
「あら、津気子ちゃんの妹さんだったね。いらっしゃい」
と(目の見えない)天子が歓迎した。
 
目が見えなくても勘で分かっちゃうのがこの人の凄い所だ。
 
「でも千里ちゃん、予定が変わったのね。ほんの1時間ほど前に今日は都合が付かないから行けないって連絡あったのに」
 
「まあそういうこともあるかもね〜」
と千里Gは言っておいた。
 
美輪子が買ってきたお寿司なども摘まんで瑞恵と4人で楽しくおしゃべりし、天子の笛の練習なども見てあげた。
 
それで18時頃、千里Gは美輪子の車で旭川駅まで送ってもらい別れた。
 
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一方18時頃まで越智さんに稽古を付けてもらった千里Rは、きーちゃんの車で送ってもらい18時半頃、天子のアパートを訪れた!
 
(Vが「あ〜あ」と思いながらも「まあいいや」と放置した)
 
「あら何か忘れ物?」
と天子が言う。
 
「ううん。これ今日は急用ができて来れなかったからお土産だけ置いて帰るね」
と千里Rは言って洋菓子の箱を渡した。
 
「今日は来れなかったって、お前3時半頃来てついさっきまでここに居たじゃん」
 
「あ〜れ〜!?」
 
千里の平常運転であった。
 

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5月の後半、S中では体育祭の練習が熱心に行われていた。2年・3年は3クラスを赤白青に分けるが、2クラスしかない1年については各クラスの内部で出席番号を3で割った余りで3つに分けて、組分けをした。
 
女子生徒は全員チア要員となって赤白青とその組の色のスカートを穿き、ボンボンを持って踊る。もちろん男子でもやりたい人は参加してよい。女子でも希望者は詰め襟を着て応援団に加わってもよい。
 
留実子は元々応援団なので体育祭でも当然詰め襟で応援団である。いつものように太鼓係を務めた。
 
鞠古君は「チア面白そうだから僕もしようかな」と言ってチアの衣裳をもらってスカートを穿き(*15)、ボンボンを持って踊った。長身の前河杏子は「私応援団していい?」と言う。「杏子ちゃん似合いそうだね」と言われ、鞠古君の詰め衿を借りて応援団に加わった。
 
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セナと沙苗はふつうにチアに加わった。雅海も
「雅海ちゃんは当然こっちよね」
と言われてチアの衣裳を渡され、ボンボンを持って踊った。
 
公世と司は「ぼくは男の子だよ」と言って詰め襟で応援団に加わった。
 
潮尾由紀(よしのり)は
「ゆきちゃんチアしなよ」
と言われて恥ずかしがりながらもチアのスカートを穿いてボンボンを持って踊った。
 
(*15) 鞠古君はスカートを穿くこと自体は好きだが女の子になりたいわけではない。彼にとってスカートは日常の服であり(龍虎などの感覚に近い)自宅ではわりとスカートを穿いている。
 
「スカートはオナニーしやすい」
などと危ないことも言っている。
 
ただ普段人前では留実子に殴られるから!穿かないだけである。
 
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5月28日(土)は体育祭が行われた。3年1組女子はこのように競技に出た。
 
100m 萌花、優美絵、美都、穂花
200m 世那、佐奈恵、小春、恵香
800m 雅海、沙苗
1500m 千里、玖美子
クラス対抗リレー(200m) 蓮菜
スウェーデンリレー(400m) 絵梨
 
「私、今年も1500走るの〜?」
「千里君なら1500は一気だろ?」
「私マラソンは20位だったよー」
「それも優勝できる癖に」
 
「え?ぼく女子の種目に出るの?」
「当然当然。雅海ちゃんは可愛い女の子」
「でも800mなの〜?」
「去年も走ったでしょ?」
 
去年は男子の800mを走り“女子並みのタイム”を出している。
 

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千里の出た1500mでは、1位が留実子、2位が陸上部の子で3位が玖美子、千里は6位だった。
「手抜きが酷い」
と玖美子に言われた。
 
雅海は女子800m最下位で“最弱の証明”をした。でも彼女は800mを走る体力だけはある。
 
公世は男子3000mで圧倒的1位だった。毎日20km走っている公世にとっては3000mは一気である。マラソンの時と同様、陸上部の子と最初は競ったが、途中から大きく引き離した。
 
司は男子800mに出て3位だった。
 
潮尾由紀は「女子の1500に出てよ」と言われるのから逃げて男子に出してくださいと言ったら男子の3000mに入れられ、それでも16人中8位でまあまあの成績だった。
 
3年生の変形リレーはスプーンリレーだった。また集団演技はマスゲームであった。千里はよく分からないものの前の人の動きに合わせて行動していた。千里が2人入ってた気がするのは、きっと気のせい。
 
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部活対抗リレー、女子は剣道部が、ノラン→如月→千里→玖美子とつないで優勝した。男子でも剣道部が、秀香→由紀→竹田→公世とつないで優勝した。
 
「剣道部すげー。ほぼ女子で男子の部にも出て優勝するとか」
「竹田君も性転換すれば全員女子」
「俺は女にはならねー」
「でも竹田君が性転換手術受けても、女子の部への出場は拒否されそう」
「だから性転換とかしないって」
 
でも剣道部の“一部女子”が男子のリレーに出ていたのを見て留実子が
「あ、ぼくも男子応援団に出ればよかった」
と言っていた。
 
応援団女子が留実子ひとりなので今年は部活対抗リレーには出なかったのである。旗手という立場上、兼部しているバスケ部にも出なかった。
 
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でも組対抗リレーではしっかり優勝した。例によって
「女子の部に男子が出るのずるい」
と言われていたが。
 
 
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女子中学生・春ランラン(12)

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