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それでチケットを買って(鞠古君が3枚買った)、男女の更衣室前で別れる。男子の更衣室の入口にはスタッフはいないので、鞠古君はバストが目立つものの中に入ることができた。
問題は女子更衣室の入口である。ここにはスタッフさんがいて
「ちょっと。ここは女子更衣室。男の子は男子更衣室に行って」
と言われる。それで雅海が証言する。
「この子、男の子に見えるけど女の子なんです」
「うそ言っちゃいけない」
「何なら胸に触ってみてください」
「あれ、あんた胸があるね」
「この子性別よく間違われるんですよ」
「ふーん」
ということで通してはくれたものの付いてくる!
中の女性客たちが緊張してこちらを見てる。「きゃっ」と悲鳴をあげかけた人もいるが、雅海が付いてるし、スタッフさんも付いてきているので取り敢えず注視している。
それで留実子が服を脱ぐと、確かに女物の下着を着けている。でもおばちゃんは見ている。それで留実子は下着も脱いで裸になった。
「ほんとに女の子なんだね!」
とおばちゃんは言った。
(なおこの日、留実子はかつらを着けて丸刈りの頭を隠していた。この後は水泳帽をかぶるので水泳中にかつらが外れる恐れは少ない)
「女子更衣室使って問題無いですよね」
「うん。まあいいことにするか」
などとおばちゃんは言っていた。
雅海は服の下に水着を着けていたので、そのまま服を脱ぎ、女子用水着を着けた留実子と一緒にシャワーゾーンを通ってプールサイドに出た。
鞠古君が待っている。
「ともは無事着替えられた?」
と留実子が訊く。
「中にいたおじさんに注意されたけど、ちんちん触らせて納得してもらった」
「鞠古君も大変だね」
鞠古君は病気治療のために女性ホルモンを投与されているので(*8) バストが膨らんでおり、女子用ワンピース水着の上に男子用トランクス型水着を重ね着している。女子用水着だけでは、ちんちんの形が膨らんでまるで変態みたいに見えるし、泳いでいる内にこぼれる恐れもあるらしい。
男性器を隠すだけならパレオでも隠せると思うが、彼は別に女の子になりたい気持ちとかは無いのでパレオは着けない。だから女子水着を着たい男の娘とは方向性が逆である。
(*8) 鞠古君の睾丸については、事情が複雑で筆者もよく考えなければ分からないが取り外してライブ保存キットで動態保存されているはず。鞠古君の身体に現在入っていて女性ホルモン投与により死につつあるのは千里U(実質W)の睾丸、つまりQ大神が千里の細胞から作った千里クローンの睾丸である。鞠古君の治療が終わった段階で破棄される予定(保存している鞠古君の本来の睾丸に戻す)。
ふたりのデートを邪魔してはいけないと思い、雅海はウォーキングコースに行き、ずっと歩いていたが、鞠古君と留実子は長距離コースでひたすら何百メートルも泳ぎ続けていたようである。すごいなーと思った。
雅海は女子水着を着たのはもう多分5回目くらいなので、女子水着を着てても特に緊張したりはしない。昨年夏の水泳の授業では男の身体に女子水着を着けたが女の身体で女子水着になったのは、昨年夏のパーキングサービスのライブの時以来であった。
「やはり女の身体に女子水着を着けるほうが楽だな」
などと雅海は思っていた。
5月2日、雅海はいつも通り、学生服を着て学校に出かける。
「あんたいい加減セーラー服に換えたら?」
「えへへ」
などと母と言葉を交わし、出て行った。でもやはりぼくその内セーラー服で通学するようになるんだろうなあと自分でも思った。
雅海は男子制服を着てても学校で女子トイレ・女子更衣室を使う。男の身体で女子トイレ・女子更衣室を使うのは軽い罪悪感がある。でもこの日はそういう感覚が無く、ごく普通に女子トイレを使うことが出来たし、体育の時間に着替えることができた。
(現時点で男子制服で女子更衣室を使うのは、雅海(1組)と留実子(3組)の2人)
「雅海ちゃん、少しおっぱい大きくなった?」
「少し成長したかも」
などと女子のクラスメイトと言葉を交わしても、今はぼくも女子だもんねーとい気持ちから、照れずに言葉を交わすことができた。
この感覚もいいなあ。今回は8日までの限定(本当に期間限定ならいいね)だけど、中学卒業したら、貴子さんに完全な女の子に変えてもらおうかなという気分になった。
学校から帰ると母が言った。
「明日層雲峡に行くよ」
「層雲峡に何しに?」
「桜坂さんが5月3-5日に行く予定だったのが、急に行けなくなったらしいのよ。今からキャンセルしたらキャンセル料100%じゃん。だから代わりに行きませんかと言われて、父ちゃんがクーポンを3万円で買い取った。桜坂さんはただでいいと行ったんだけど、ただじゃ悪いからね」
「へー」
「家族4人で予約していたらしいのよ。桜坂さんとこは夫婦と娘さん2人。だから連れて行くのは娘2人。念のために山登(やまと)に性転換して温泉に行く気無い?と言ったら、女になってちんちん無くすのは嫌だというから、羽月(はるな)とあんたで」
「別に性別までチェックされないと思うけど」
「それが娘さん2人の部屋はレディスフロアに取られてるのよねー」
「ああ」
「それに僕、5日がゲームの発売日だから行きたくない」
と当の山登(やまと)。
性転換するのよりゲームの発売日を逃すのが嫌なようだ。まあさすがに性転換はジョークと思っているのだろう。
「私も友だち何人かと札幌に遊びに行く約束してたんだけどねー。そちらはキャンセル。山登もせっかく女の子になるチャンスなのに。ちんちんくらい取ってもいいと思うんだけどね。山登が女の子になれば私たち5姉妹になれるし」
などと羽月(はるな)姉は言っている。
「でもレディスフロアなの?」
「まーちゃんは既に性転換済みだから問題ないね」
つまりぼく女の子の身体のままでいないといけないのか。。。。まあ8日まではこの身体だからいいことにするか。
でもこの身体を姉ちゃんや母ちゃんに見られることになる!!
羽月姉が、自分が昔着ていた服を数枚雅海にくれて、雅海は他に下着を日数+1日分持って父の車(スプリンター)に乗った。
旭川のポスフール(後のイオン)で買い物して、本とかおやつを買い、お昼も食べて、16時頃に層雲峡に入る。それで旅館にチェックインした。連休なので人も多いようだった。チェックインの手続きをしている最中も電話がかかってきて
「申し訳ありません。満杯なんですよ」
と番頭さん?が答えたりしていた。
取り敢えず部屋に入る。両親は5階のデラックスツイン、雅海と姉は6階レディスフロアのツインがわりあててある。エレベータを降りた所にフロントがあって女性の仲居さんが座っている。
「いらっしゃいませ」
と言われて“白い恋人”の小さな紙袋を1つずつもらったが、ここに仲居さんがいるのは、やはり万が一にも男が侵入しないように見ているのだろう。
それで611号室に入った。
部屋の中にもウェルカムスイーツが置かれている。
「こちらの今もらったやつは?」
「あとで食べればいいんじゃない?」
「そだねー」
それでケトル(*9)でお湯を沸かし、お茶を入れてウェルカムスイーツのノースマンを食べた。
(*9) ティファールのケトルは2001年に発売され、お湯は保温しておくものではなく都度沸かすものという新しい?文化を生み出した。
(実は螺旋階段を1周登って昭和30年代の方向性に戻ったのだったりして)
それで少し落ち着いたころ、羽月姉は突然雅海に襲いかかった!
「何するの!?」
「へへへ、お嬢ちゃん、おいらといいことしようぜ」
「ちょっとぉ!」
それで羽月姉は雅海のパンティーを下げ、お股を露出してしまった。
「へー。すっかり女の子になったんだね」
と言って姉は割れ目ちゃんを開いてみている。
「ちゃんとクリトリス、おしっこの出るところ、ヴァギナとあるんだね」
「やめてよー」
「いつ性転換手術受けたのさ?やはり1月にトマムに3泊4日ツアーが当たった友だちに誘われたからと言ってたの、あれ本当は札幌の病院で手術受けたんでしょ?」
ああ、それ疑われていたのかと思った。あれは本当にツアーを当てた司ちゃんに誘われてほんとにトマムに行ったんだけど。それに手術受けたら4日で回復することはないのだが、性転換手術を詳しく知らない人はそのあたりも分からないだろう。
「ごめん。ノーコメントで」
「まあいいや。でもあんたがレディスフロアに泊まる資格があることを確認できた」
と行って姉は解放してくれた。パンティを穿いてスカートの乱れを直す。
「疑ってごめんね。お詫びに私のお股も見せてあげようか」
「いい!」
でもその後はごく普通の会話をした。
「でも山登がよくちんちんぶらぶらさせて家の中歩いてるけど、かなり大きくなってるよね」
「思ったぁ。ぼくのはあんな大きくなかったよ」
「あんたはちんちんぶらぶらさせて歩くことは無かったけど、お風呂に入ってるのをうっかり開けてしまった時、小さな子供のちんちんみたいと思った」
「実際ぼくのは幼稚園児並みたったみたい」
「やはりあんたみたいな子はたぶん元々女の子なんだろうね。だからちんちんも発達しない」
「中学に入る時に女の子になっちゃった沙苗ちゃんもちんちん無くなる前は3cmくらいだったって」
「あの子は中学に入る時に手術したんだっけ?」
「沙苗ちゃんの場合、ちんちんがどんどん縮んでいって消滅したらしい」
「そういうこともあるんだ!」
「そしてちんちんが消滅したあと、ヴァギナができてその穴が充分深くなったと思ったら生理始まったらしい」
「へー。だったらあんたもその内生理来るかもね」
「・・・」
「どうしたの?」
「生理くるかもしんない気がする。留萌に帰ってからでいいからナプキン買うのに付き合ってくれない?」
「OKOK。生理が来たらもう一人前の女の子だね」
と羽月姉は言っていた。
ついでに
「取り敢えずプレゼント」
と言って自分が持って来たパッケージから2個くれた。
「付け方練習しなくていい?」
「それは分かる」
「ああ、やはり時々付けてみてたのね」
「御免。ノーコメント」
夕食は食堂に食べに行くのかと思ったら、部屋まで持って来たくれたので、雅海と姉は5階に降りて両親の部屋に行き一緒に食べた。
「ゴールデンウィークで人が多いから一度に客に来られると食堂がさばききれななくなるんだって。だから旅館の都合で各部屋まで持っていく」
「なるほどー。混んでいるから故のサービスか」
「客としても楽でいいよね。ただ家族や友人で複数の部屋に分泊した人はどこかひとつに配送する」
「ああ」
それで雅海たちはのんびりと夕食を味わったが、とても美味しかった。
夕食後は食器を廊下に出しておいて、お風呂に行く。
男女に分かれるところで父がチラッと雅海を見たが、雅海は堂々と女湯の方に向かった。母・姉と一緒に赤い暖簾をくぐる。そして服を脱ぐが母は頷いていた。
浴室に入り、洗い場で身体を洗ってから浴槽に浸かる。母・姉と近くに集まる。
雅海は身体のことで何か言われるかなと思ったのだが、特にそのことについては言われなかった。
「層雲峡なんていつでも来れると思ってるから実はなかなか来ないよね」
「そそ。一般に名所って地元の人はあまり来てない」
「私は中学の修学旅行で来た」
と羽月。
「ああ」
「小学校の修学旅行は稚内(わっかない)だったし」
「雅海は小学校の修学旅行、どこ行ったんだっけ?」
「私は定山渓温泉とルスツ」
「いいとこ行ってるな」
「ルスツは2〜3時間だったよ」
「もったいない!」
「たぶん短時間の安いチケット使ったんじゃないかな」
「ああ」
「リゾートなんてのも道内の人は行かないよね」
「まああれは東京の人がお金をたくさん落としてくれるためのものだから」
しかし最後に母は行った。
「あんたの修学旅行の件で広沢先生から照会があったんだけど、普通の女子と同じ扱いでいいですと回答しとくね」
え?
え??
え〜〜〜〜!?
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女子中学生・春ランラン(7)