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「でも、きみちゃん、よく走ってるよね」
「10kmは一気だよ。靴下と靴を激しく消費するけどね」
「でも筋肉たくさん付いたら女の子の服着てる時、性別を誤解されたりしない?」
「女の子の服とか着ないって」
(姉の)弓枝さんによると、ジョギングポイントまで行く時の服として可愛いスカート用意してあげたのに穿かないらしい!
もっとも公世の筋肉は“女子アスリート”の筋肉の付き方だよなあと玖美子は思っていた。彼の身体付きは女子マラソン選手などに似ている。恐らく去勢済みではないかと玖美子は密かに?想像していた。
(沙苗と千里と恵香に言っただけ。ちなみに恵香は“放送局”の異名を持つ!)
4月28日(木)の夕方、司の野球部の練習が終わるのを待ってから、雅海の母の車で司と雅海は一緒に留萌駅前まで行き、札幌行き最終高速バスに乗り込んだ。
留萌駅前18:30 (高速るもい号) 21:11時計台前
終点まで行かず、時計台前で降りて、雅海と司は&&エージェンシーが取ってくれたホテルのツインの部屋に泊まる。明日4月29日(祝)に、パーキングサービスのゴールデンウィーク・ツアー初日札幌公演があるので、雅海と司はバックダンサーのパトロール・ガールズのメンバーとして招集されている。
2人は車内でトレーナーとスカートという格好に着替えていたが、その格好でコンビニでお弁当を買ってからホテルにチェックイン。お弁当を食べてシャワーを浴びてから貴子さんに連絡した。
「頼んでいた件、そちらのお手空きの時間にお願い出来ますか」
「OKOK。今から行くよ」
と言って5分で来てくれる。
「じゃ2人とも可愛い女の子に変えてあげるね」
「お願いします。また明日の夜に男の子に戻して下さい」
「そんな1日だけなんてもったいない。ゴールデンウィークが終わる5月8日の夜まで女の子の身体をたっぷり楽しみなよ」
「え〜〜〜!?」
と言いながら、2人は眠りに落ちて行った。
翌日4月29日の朝、ふたりは爽快に目が覚める。この爽快さで女の子の身体になったことを感じる。トイレに行って、自分の身体を確認してから言った。
「5月8日の夜に男の子に戻してもらえるらしいけどどうしよう?」
「ぼくも考えたけど、学校が休みの間は特に問題無い気がする」
「でも5月2日(月)と6日(金)は?」
「1日くらいは何とかなるよ」
「そだね」
それで2人はまあ何とかなるだろうと思うことにして、朝食に行って来た。バイキングなので、2人ともパン(モーニングロール)を5〜6個、オレンジジュース3杯、ウィンナー10本くらい、オムレツ3〜4個、食べて満腹した(←君たち野菜も食べなさい:それにしても女子の食欲ではない)。
一応ダンスは各々充分練習しているが、再度mp3プレイヤーで今日のセットリストを流しながら午前中軽く練習した。9時過ぎ。シャワーを浴びて美しい女体の汗を流す。鏡を見ながら、やはり女の子の身体って美しいなあと思った。
連泊するので、荷物はそのまま置き、動きやすい服装で身の回りのものだけ持ってホテルを出る。10時頃、集合場所に入る。前回踊ったのとほぼ同じメンツである。お互いにハグしたりする。パトロールガールズ本メンバーのオーリンさんとアルカさんが来るので、みんなで
「おはようございます」
と挨拶する。セットリストを確認し、出入りのタイミングを確認する。
「まあダンスは適当に」
とアルカ。
「適当でいんですか?」
「どうせみんな目当てはパーキングサービスだし。私たちは刺身のつまね」
「なるほどー」
11時頃、早めのお弁当が配られ、いただく。その後、本番衣裳を着てみてサイズに問題が無いか確認する。
「司ちゃん、これ胸苦しくない?」
とアルカさんが言う。
「大丈夫ですよ」
「ねぇ、オーリンこれどう思う?」
オーリンさんが来て、司の胸の所に触る。
ドキドキ。
「大丈夫っぽい気もするけど、本番中にストリップショーになったらやばいから交換しよう」
ということで、司はブラウスが交換になった。司ちゃん、野球で腕とかも鍛えてるから、胸の筋肉も発達して女の子になった時も胸が大きくなったのでは?と雅海は思った。
12:00 開場。ホールの前に長蛇の列を作っていた観客(ほとんどが若い男の子)がどんどん会場に吸い込まれていく。見ていたら、録音機器を服の下に隠し持っていたのが見付かり、叩き出されている子がいる。なんかヤクザっぽい人に威嚇されてる!?こっわぁと思う。ダンサーの子たちで思わず視線を交わす。やはりこういう興行にはヤクザさんとかも関わってるのかなあと思う。
空気を察してオーリンが言った。
「ああ、あの人は元警察官。一見ヤクザだよね」
と言って笑っている。
ヤクザを捕まえる側か!つまりヤクザより怖い!?
13:00 開演。緞帳が上がるのとともに、雅海たちパトロールガールズが踊り始める。パーキングサービスが左右から半分ずつ入ってきて、歌い始める。物凄い歓声である。雅海も司も凄い快感を感じていた。
ライブは前半1時間、ゲストタイム(ルート64)を経て後半1時間、アンコール10分と踊り続ける。くたくたになる。
パーキングサービスはライブ終了直後に2台の乗用車で脱出しているが、パトロールガールズは、お着替えして謝礼が配られ、斉藤社長からの言葉があった後、札幌駅前まで連れてってもらってから解散になった。雅海と司は疲れたので取り敢えずホテルに帰って、夕方くらいまでひたすら寝た。
夕方、目が覚めてシャワーを浴び、(ホテル内のレストランは高いので)2人で近くのガストに行き夕食を取っていたら司の携帯に着信がある。見るとOGの生駒優である。昨年まで野球部の女子マネをしていた人で、今年春、女子野球部のある札幌SY高校に進学した。
司は電話を取ってから
「ちょっと待ってください」
と言って、ロビーまで行き
「お待たせしました」
と言う。
「司ちゃん札幌に来てるんだって。おうちに掛けたらお母さんがそう言ってた」
「はい。ちょっと用事があって出て来てたんですよ。明日帰るつもりですが」
「だったら明日さ、ちょっとうちの高校まで来てくれない?」
「はい?」
「うちの高校の野球部の練習環境とか説明してあげるから」
「はあ」
この時、司は単に学校を紹介してくれるだけだと思った。
「じゃ何時頃行きましょうか」
「13時くらいに来てくれる?」
「いいですよ」
それで司は翌日、SY高校に行ってみることにしたのである。
それで翌日、円山動物園に行ってるという雅海と別れて、司はお昼過ぎ、SY高校に行った。
優さんは校門のところで待っててくれた。
「今北海道に女子の硬式野球チームは5つしか無いんだよ。ここはその内の1つ」
「へー」
「高校チームが3つと大学チーム1つ、クラブチーム1つ」
「へー」
「この5校に加えて、宮城県の高校チームも加えて6校でリーグ戦してる」
「6校もあるとけっこう楽しいですね」
「そそ。でも陣容が整ってるのはここと苫小牧のチームの2つだと思う」
「凄い」
「この学校は元々7年くらい前までは女子校だったんだよ。それで女子野球部ができた経緯があるみたいね」
「ああ、元々女子だけだったから女子の部活も盛んだったんですね」
「うん。専用グラウンドとかあるわけじゃないし、グラウンドは男子野球部、サッカー部、陸上部と共用だけどね」
「ああ、でもそれはうちの中学も似たようなもんです」
「うんうん。でも冬はちゃんと除雪するし、ナイター設備もあるから、わりと遅くまで練習できてる」
「ナイター設備は素晴らしい」
優は校舎の中や体育館なども案内して回ってくれた。
体育館にいた時に、女性の先生が近づいてくる。
「お早うございます」
と優が挨拶するので、司も
「お早うございます」
と挨拶する。向こうも
「おはよう」
と言う。
「優ちゃんその子は?」
「後輩なんです。うちに入って女子野球部に入らないかと勧誘してるんですけどね」
「へー。ポジションは?」
「キャッチャーですけど、ピッチャーもできますよ」
「ふーん。君のボールを見せてよ」
それでグラウンドに行く。先生は女子野球部の顧問で沼田先生といった。
ミットは優が自分のを貸してくれた。司は軽く準備運動してから、振りかぶって優のミット目がけて投げる。先生が驚いたような顔をした。それで優の要求通り、インサイド・アウトサイド、低め、高めと投げ分ける。またカーブやチェンジアップも投げる。
「凄いコントロールがいいね」
と沼田先生が感心している。
「司ちゃん。今度は私のボールを座って受けたあと牽制球のつもりで私に送球して」
それで優がワインドアップからボールを投げ、司はそれをキャッチすると素早く優に送球した。
「肩がいいねぇ!」
と言って、先生が拍手している。
「君凄いね。わりと華奢な身体付きなのに凄い速い玉投げる。今120km/hくらい出てたよね」
「普段はもっと出るのですが今日はあまり調子良くないようです」
「充分な準備運動無しで投げたからかな。でもこのスピードでも凄い」
(司は男の身体では130km/h出るが今女の身体になっているので球威が落ちている)
「ぜひうちに来て女子野球部に入ってよ。授業料は優遇して、公立並みで済むようにしてあげるからさ」
「でも女子野球部といわれてもぼく男子だし」
「はぁ!?」
「この子性別誤魔化して、今男子の野球部に入ってるんですよ」
と優が笑いながら説明する。
「性別誤魔化すって無理があり過ぎ。女子にしか見えないのに」
「ですよね」
「ちょっと失礼」
と言って先生は司の胸とお股!に触った。
「うん。君は女子で間違い無い。バストもあるし、お股に変な物は付いてないし」
「性別誤魔化すのも、中学までが限界だから、高校からはちゃんと女子に戻ってうちの高校の女子野球部に入りなよと言ってるんですよ。この子の実力なら、ソフトボールとかやってるレベルじゃないでしょ?」
「あのボールを投げられるのなら、ソフトボールとかしていたくないだろうね。でもさすがに男ですとか主張するのはもう無理だよ。これだけ身体が女らしく育ってきたら」
と先生は言っていた。
ぼく今ほんとに女の子の身体になってるから反論できなーいと司は思った。
帰りのバスの中で雅海に訊かれた。
「司ちゃん私立の高校とかに行くの?」
「授業料が公立並みで済むようにするから来ないかって誘われた」
「すごいじゃん。特待生?」
「みたいなものらしい。心が揺らいでしまう」
「いいじゃん。特待生なんてある所なら強い所じゃないの?」
「苫小牧の高校とそことが2強らしい」
「へー。だったら甲子園とかにも行ける可能性あるんじゃないの?」
「あ、いや誘われたのは女子野球部なんだよ」
「はあ?」
「今女の子の身体だから男ですと主張できなかった」
雅海は考えた。
「女子野球部に入るのなら、本当に女の子になってしまう必要があると思う」
「だよねー。でも最近うちの両親、ぼくのことほぼ女の子扱いなんだよね。今のままなら20歳になる前に性転換手術受けることになるかも」
「性転換手術受けるより貴子さんの手で完全性転換してもらっほうがいいと思う」
「というか今完全性転換状態なんだけどね」
「そのあたりはぼくも同じだなあ。ぼく高校は女子制服で通うことになるかも」
と雅海は言う。
司は言った。
「雅海ちゃんさあ、7月の修学旅行どうするつもり?」
「うっ」
「学校内はみんな理解してくれてるから、学生服着て女子トイレ使っても誰も問題にしてないけど、校外ではそれできないよ。雅海ちゃん、男子の服装してても女の子にしか見えないから、男子トイレは使えないと思う」
「うーん・・・・」
「そのトイレ事情はぼくも同じなんだけどね」
「ああ」
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女子中学生・春ランラン(4)