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■女子中学生・春ランラン(6)

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それで母と一緒にお風呂に行く。渡り廊下を通って浴場棟に入る。左に行くと男湯、右に行くと女湯である。母はチラッと司を見た。司は少し怖かったけど、自分はこの身体ではこちらに行くしかないと心を決めて右手に行く。それで母も微笑んで一緒に右に行く。
 
暖簾をくぐって脱衣場に入るが早朝なので誰も居ない。
 
浴衣を脱ぐ。ブラジャーとパンティだけになる。胸は膨らんでいるように見えるし、パンティに膨らみは無い。ブラジャーを外す。Cカップサイズのバストがあらわになる。パンティを脱ぐ。そこには何もぶらさがるような物は無く、茂みの中に縦の筋が1本見える。母は頷いて自分も浴衣とブラ付きキャミソール、ショーツを脱いだ。
 
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ここでは特に何も言わず浴場に移動する。そして司は流し場で髪を洗い、身体を洗った。昨年数回女の子の身体になった時もその後でトマム行った時も時間が短かったこともあり、あまりよく女体を意識していなかったが、今回は意識しながら洗った。
 
ちょっとドキドキだけど、これが今は自分の身体だもんね。お股を洗う時はかなりドキドキした。これ多分優しく洗わないといけないよね。司は両手に泡を付けて優しくそして丁寧に、割れ目ちゃんの中を洗った。
 
最後に全身にシャワーを当ててから浴槽に入る。母と並ぶ。
 

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「手術した跡とか痛まない?」
と母は訊いた。
「それは大丈夫だよ」
「だったら良かった」
 
それから母とは、曾祖母さんのこととか、親戚のこととかを色々話した。会話が途切れた時、司は訊いた。
 
「お母ちゃん、ぼくが女の子になったこと叱らないの?」
「あんたが自分で女の子になる道を選択したのならそれを叱ったりしないよ。あんたの人生なんだからね」
「ありがとう」
「でも野球は続けられないね。ソフトボールに行く?」
「それなんだけど、札幌SY高校というところの先輩に誘われているんだよ。うちにきて女子野球部に入らないかって」
「女子野球部なんてあるんだ!」
「女子野球部のある高校が道内に3つあるんだって。それに大学生のチーム、社会人のチームを入れてリーグ戦してるらしい」
「へー。でもそこ私立?」
「そこの先生に公立並みの学費で済むようにしてあげるから入らないかって言われた」
「いい話じゃん!」
「ほんとにそこに行こうかなぁ」
「いいと思うよ」
 
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5月1日は親戚同士の挨拶で1日が終わった感じだった。父と兄3人は飲み会に捕まってしまった。
 
「あれ?隼ちゃんの下にも男の子いなかったっけ?」
「この子は女の子だけど野球やってるんですよ。体力は兄たち以上にありますね」
「ああ、男の子並みの女の子なんだ?」
「小さい頃はよく男の子の服着てたから」
「ああ、それで勘違いしてたのかな」
 
しかし隼兄は未成年なのに「いいじゃん、いいじゃん」と言われてお酒を飲まされていた。見ると従兄弟でまだ中学生っぽいのに飲んでいる子もいた。ぼく女の子で良かったぁと思った。さすがに女の子たちは飲み会には連れ込まれていない。でも従姉妹たちと一緒に様々な雑用をし、葬儀の準備でお花を飾ったり、料理のお手伝いをしたりした。
 
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「航ちゃんのとこに妹さんがいたのは知らなかった」
「でも腕が太いね」
「これでよく手術して女になった元・男と思われます」
と自分で言っちゃう。
 
「それ信じたくなるかも」
「私野球やってるから腕も足も太いんですよ。ピッチャーとかキャッチャーとかやってるから」
「ソフトボールじゃなくて野球なんだ!」
「男子に交じってやってますよ。キャッチャーやってて打球がお股に当たってもわりと平気だから、女ならではの有利さだと言われます」
「ああ、男の子は大変ネ」
 

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司は母に封筒を渡した。
「香典をかなり包んだでしょう?これ今回のライブでもらったギャラ。少ないけど足しにして」
 
母は笑顔で言った。
「確かに結構包んだから凄くありがたいけど、社会人の航から取るから、あんたは心配しなくていいよ。貯金してなさい。あんたも社会人になってから助けて」
 
それで母は封筒を司に返した。
 

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通夜・葬式では母が持って来てくれていたセーラー服を着た。中高生はこういう場が制服で済んでしまうのが楽な点である。しかし人前でセーラー服を着るのは初体験になった。恥ずかしいけど、今更学生服なんて着られないもんねー。
 
通夜の後、母と一緒にお風呂に行くと、伯母さんたち、従姉妹たちと遭遇する。手を振って湯船でそばに寄り、おしゃべりをする。
 
「こうやって裸になっている所を見たら間違いなく女の子だ」
と従姉に言われる。
 
「男の子が女湯にいたら大変ですね」
「そういう子を見付けたら、スパッと切り落として女湯に入れる身体にしてあげよう」
「それきっと泣いて喜びますよ」
 
母が呆れた顔をしていた。
 

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5月3日のお昼までで葬儀は終わったので、15時頃解散になる。
 
しかし父も航もかなり飲まされていて、アルコール検知機を使うまでもない状態だったので、初日以降は母が用事を言いつけて飲み会に参加させないようにしていた拓兄と母の2人で車を運転して、帰還した。
 
父も5日まで寝ていたが、航・隼も5日まで二日酔いに苦しんでいたらしい。
 
5月6日(金)の朝、ジョギングから帰りシャワーを浴びた司が、学生服を着てズボンを穿いて部屋から出て来たので、母は驚くように言った。
 
「あんたなんでセーラー服じゃないのよ?」
「いやちょっと」
と照れるように答えて、司はその格好で学校に出掛けた。
 

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公世は4月29日から5月1日まで早川ラボでの準合宿(*7)をした後、5月2日(月)はふつうに学校に学生服、改造・女子用スラックスという格好で登校した。
 
(*7) 宿泊はしないので準合宿という。宿泊しない主たる理由は夜中に熊が出た場合の問題である。
 

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ところが朝の会が終わった後、
 
「工藤さん、ちょっと来て」
と言われて、職員室に行くと、岩永先生から
「工藤さん、済まないけど今から性別検査を受けてほしいのだけど」
と言われる。
 
「どうしたんですか?」
「つまり性別の抜き打ち検査らしいんだよ」
「ああ」
 
それで岩永先生の車で指定の病院に向かう。
 
「中体連としての見解はこういうことらしい。性別検査の結果、確かに君が男子ということになれば、取り敢えず今年度一杯は君を男子選手として扱う。もし女子という判定になった場合、できたら女子の部に出てほしいが、どうしても男子の部に出ることを希望する場合は、中学の間は暫定的に認める。でも高校以降は女子の部に出てほしいと」
 
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「ぼくは男子ですから問題無いはずです」
と公世は言ったが、女子下着を着けてるのやばいなあと思った。
 
「それに万一女子だとしても男子として登録することは可能ですよね。昨年札幌鍛錬会の時に理事さんだかが言ってました」
 
「うん。その制度もある。男子として出たい女子は女子の登録証を返納する条件で期限付きの男子部門への登録証を交付してもらうことができる。その場合、未成年はその年度、20歳以上は3年間、女子の部には出られない」
 
実は公世について使うことになるかも知れないと思い、あの後調べておいたのである。
 
「ぼくは男だと思いますが、万一女と判定されたら先生、その手続きお願いします」
「分かった」
と答えながら、岩永先生は、そういう話をするということは、やはりこの子実は女子なんだろうなと思った。
 
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病院では、おしっこを取られた上で、身長・体重、TB/UB, W, H を測られる。血圧を測ってから採血する。MRIに入れられてかなり長時間検査された。その後心理テストのようなものをされた。最後に婦人科!に行かされて、全裸で身体の形を観察された。
 
女物の下着を着けていることは医師にしっかり観察された。
 
「生理は来てます?」
などと訊かれる。
「そんなのありません、ぼく男ですから」
と公世が答えると婦人科医は頷いていた。
 

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診察が終わった後、公世自身は廊下で待っているように言われ、岩永先生だけ医師に呼ばれた。
 
「本当は保護者にしか話せないのですが、顧問の先生なら良いでしょう。クライアントさんは両性体のようなのですが」
 
「ああ、そうでしょうね。純粋な男子ではないと思いましたよ」
「男として生きるか女として生きるかは本人次第だと思います。クライアントさんは卵巣はありますがサイズがやや小ぶりですし、今は機能がほぼ休眠しているようですね。一方で陰茎状のものはありますが睾丸が無いです。一見睾丸のように見えるのは単なる脂肪の塊です。ホルモン的にも女性ホルモン優位なので、男子の部にも女子の部にも登録可能だと思いますよ」
 
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ああ、彼はさすがに睾丸は無いよね、と岩永先生は思った。でも卵巣もあるのか。あるかも知れない気がする。でないと彼の女性的な外見は説明できない。
 
「本人が男子として出たいと言っているんです。男子の部に出場可能とコメントしていただけませんか」
「問題ありません。女子の部にも出られますけどね」
と医師は言った。
 

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さて、4月30日の夕方、司が途中下車したのでひとりで留萌まで帰った雅海であるが、その日は女体の快適さを充分味わいながら寝た。昨年夏や今年初めに女の子に変えてもらった時は、あっという間に男の子に戻ってしまったので自分の女体を充分感じる余裕もなかった。しかし今回は10日間も女の子の身体を味わえるので、これ素敵だなあと思った。
 
(10日で済むといいね)
 
布団の中で“女の子だけの気持ちいいこと”してみようかなと思ったものの、この日は疲れていたので、布団の中に入ったらすぐ眠ってしまった。
 
翌日5月1日、のんびりと朝御飯を食べていたら鞠古君から電話がある。
「ね、プール行くのに付き合ってくれない?」
「へ?」
「俺と留実子で“ぷるも”(市営の温水プール)に行きたいんだけどさ、女子更衣室に入るのに性別の証人になってもらえないかと思って。ほかに女子の友人が全然つかまらなくて」
「はあ?」
 
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雅海は、鞠古君が女子更衣室を使いたいのだろうかと首をひねりながら自分の水着とゴーグル・水泳帽に着替え用タオルなどを持って出て行ってみた。
 
「鞠古君、女子更衣室使うの?」
「俺がそんなの使ったら逮捕されるよ。留実子が女子更衣室に入るための証人をお願いしたいんだよ」
「へ?」
 
留実子本人が説明する。
「ぼくが男子更衣室使えたらいいんだけど、そういうわけにはいかないから女子更衣室を使いたいんだけどさ、ひとりで入ろうとすると確実にスタッフに摘まみ出されるし、中で悲鳴あけられるから、女の友人と一緒に入りたいんだよ。でもぼく全然女の友だちいなくて。千里や沙苗は剣道の合宿やってるし」
 
「ああ」
 
つまりぼくが女子更衣室にルミちゃんと一緒に入るのか!
 
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入れるけど。
 

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