広告:國崎出雲の事情-5-少年サンデーコミックス-ひらかわ-あや
[携帯Top] [文字サイズ]

■女子中学生・春ランラン(9)

[*前頁][0目次][#次頁]
1  2  3  4  5  6  7  8  9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 
前頁次頁目次

↓ ↑ Bottom Top

 
5月9日(月).
 
昼休みに雅海と司は少し深刻そうに話していた。
 
「この状態で性別検査受けさせられたってのはやばいね」
「ぼく、女子だから男子選手としては登録できませんって言われたらどうしよう」
「うーん」
と雅海も悩む。
 
「あの検査は信用できない。もっと大きな病院で再度しっかり検査してくれって言うしかないと思う。貴子さんと何とか連絡取って男の子の身体に戻してもらってそれで再検査してもらう。それで男と証明されれば出場させてもらえると思う」
 
「やはりそれだよなあ」
「でもなんか貴子さんと連絡が取れないんだよ」
 
「貴子さんとは千里ちゃんも連絡できると思う。千里ちゃんに頼んでみよう」
「千里ちゃんか。あの子に頼むと何か全て解決できる気もする」
「何か色々な手駒とコネを持ってるみたい」
 
↓ ↑ Bottom Top


そんなことを言ってたら当の千里が来る。
 
「あ、いたいた。2人まとめてだと楽だ」
と言って千里は2人にひとつずつ黒いビニール袋が入った紙袋を渡した。
 
「よく分からないけど、誰かがそれ買って司ちゃん雅海ちゃんに渡してと言った気がしたから買って来た」
 
(言ったのはA大神)
 
ふたりがそっとビニール袋の中を覗いてみるとナプキンである!センターインで先日雅海が買ったのと同じブランドの品である。
 
「ナプキンとかどうするの?」
と司が訊く。
 

↓ ↑ Bottom Top

雅海が言う。
「さっきから気になってたんだけど、司ちゃん、お腹を手で押さえてるよね」
「うん。何かお腹が痛くて。寝冷えかなあ」
「それ生理の前兆、PMSだと思う」
 
「え〜〜!?」
「ぼくお姉ちゃんに見てもらって買ったナプキン昨夜からお股に当ててる。司ちゃんも当てといたほうがいいよ」
 
「まさか生理が来るの〜?」
と司は困惑している。
 
千里が言う。
「まだ初潮来てなかったの?お腹の下の方が痛かったらそろそろ生理が来る予兆だから着けとくといいよ」
 
「せ、せいりって・・・・」
と司はまだ混乱している。
 
「ごめん、これいくらした?」
と雅海が千里に訊く。
 
「2人分で700円くらいだったかな。何かのついでの時でいいよ」
「いや分からなくなっちゃうから払っとく」
と言って雅海は千里に700円渡した。
 
↓ ↑ Bottom Top

「サンキュ。じゃお大事にね〜」
と言って千里は行こうとする。
 

「あ、待って」
と言って雅海は千里を呼び止める。
 
「ちょっと相談したいことがあるんだけど」
「ふーん。深刻な相談みたいね。だったら2人とも今日は早退しない?」
「あ、うん」
 

↓ ↑ Bottom Top

それで雅海と司は担任の先生に
「体調が悪いので早退したい」
と言った。
 
千里がタクシーを呼んで2人を乗せる。千里はタクシーでW町の病院跡に行った。
 
「去年の6月にここに連れて来られた」
と司が言う。
 
「ぼくは去年の5月にこんな感じのシチュエーションでN町の家に連れて行かれたことある」
 
「ここは病院跡で病院の施設がまだ生きてるからね。ふたりとも邪魔なちんちんを切り取ってあげてもいいよ。ちんちん切るくらいなら傷も一週間で治るよ」
「簡単に言うなあ」
「でもぼくたち今ちんちん無いんだよ」
「なあんだ。もうちんちん取っちゃったんだ?」
「それがちょっと問題で」
 

↓ ↑ Bottom Top

居間(診察室?)に入ってから、千里は最初に言った。
 
「司ちゃん、トイレでナプキン付けてきなよ」
「そうする!」
と言って、トイレに入り、司はナプキンを付けてきた。
 
(司はショーツを着けているのでナプキンが装着できる)
 
千里は紅茶を入れ、クッキーを勧めた。
 
それをいただきながら主として雅海が今回の問題を千里に話した。
 
千里は言った。
「貴子さんとの連絡を取ることは可能」
「ほんと?」
 
「でも取り敢えず2人とも生理が終わるまでは待ったほうがいい。男の身体では生理の出てくるところが無いから」
「ああ」
「だったら再検査を申し入れるのもその後か」
 
「でもこの問題は多分再検査を受けなくても何とかなると思う」
「ほんと?」
「問題は恐らく今週中に解決する。だから司ちゃん、ちゃんと北北海道大会に出場できるよ」
と千里は言った。
 
↓ ↑ Bottom Top

千里ちゃんが言うなら、本当にそうなるかも、と2人は思った。
 

千里はきーちゃんに電話した。きーちゃんも千里からの電話では出るしかない。それで2人を生理が終わった時点で男の娘に“いったん”戻してあげることにきーちゃんは同意した。
 
(ここで2人と話したのはもちろん千里Gである。雅海と司が早退の手続きをしている間に入れ替わった)
 

↓ ↑ Bottom Top

5月9日(月).
 
中体連・剣道部門の本部(東京)!から文書が届いた。
 
「工藤公世選手は性別検査の結果、中性であり、男子部門・女子部門のどちらに出てもよい状態であることが確認されましたので、本人が男子部門への出場を希望するということから、2005年度いっぱい男子の部への出場を認めます」
とある。
 
(昨年の全国大会での簡易な検査では「性別が曖昧」という診断か出ていたので、精密検査で中性であるという結果が出たのはそれと連続性がある、また春の検査でも「睾丸が無く小さな卵巣がある。しかし股間形状は男子に近い」という検査結果で今回の検査とだいたい似ていた)
 

↓ ↑ Bottom Top

またこの件で剣道連盟の人から岩永先生に電話があり“口頭で”
 
「工藤公世(きみよ)選手について、男子としての剣道連盟の登録証は暫定的に有効とします。ただ工藤選手は男子を選択することで、今年度いっぱいは女子の大会には出られませんから」
と言われた!
 
「それともし将来的に女子部門に転向するつもりがあったら、毎月彼女に病院でホルモン濃度の検査を受けて記録を提出してほしいのです。男性ホルモン優位の状態が続いたりした場合、あるいは検査結果が無い場合、女子部門への出場を拒否される可能性がありますから」
 
「分かりました。それは受けさせます」
 
岩永先生は、ホルモン濃度の検査は、潮尾由紀にも受けさせておいたほうがいいなと思った。
 
↓ ↑ Bottom Top


岩永先生から話を聞いた公世は
 
「ぼくほんとに高校に行ったら女子の部に出てねと言われるかも」
と不安に思った。
 
「そして制服も女子制服着てねと言われたりして・・・」
と少し妄想した。
 
女子制服で通学するとか恥ずかしいよー。(←嫌ではないんだ?)
 
でもホルモン濃度の検査を毎月受けることは同意した。
 
岩永先生は“卵巣が存在し睾丸は存在しない”というのは、多分本人も意識しているだろうと思ったので公世には敢えて言わなかった。
 

↓ ↑ Bottom Top

翌日の部活の時間、女子剣道部で公世の性別検査の件が話題になる。公世は男子剣道部内にまともに練習相手になる選手が居ないためいつも女子剣道部に来て、沙苗や玖美子と対戦している。
 
「公世ちゃん、抜き打ち性別検査受けさせられたんだって?」
「全く参ったよ。女のお医者さんに裸を観察されて恥ずかしかった。ちんちんが本物かどうか確認するのに触られたし」
 
「触られたって、回転運動掛けても勃起しないことを確認されたの?」
「突然針を挿されて痛がったのを確認されただけだよ」
 
(取り敢えず勃起しないことはここでは言わない。女性医師に触られても勃起しないので針を刺された)
 

↓ ↑ Bottom Top

「それでちんちんは偽物で、性別は間違いなく女子と判定された?」
「間違いなく男子と判定されたよ!ちんちんも本物と認められたし」
 
(本当は検査結果を聞かされていないので男子女子どちらの判定だったのか知らない。男子の部に出てよいと言われただけで満足している。公世は卵巣が発見されたことも聞いていない)
 
「それはおかしい。きみちゃんは間違いなく可愛い女の子なのに」
「でも中学の間は男子の部への出場認めるけど、高校からは女子の部に出てくださいと言われたらしいよ」
と白石真由奈(女子の間で高速に広まる噂についてはとても詳しい)。
 
「やはりねー」
「そんなこと言われてないよ!ぼくは高校でも男子の部に出るよ(そう希望すれば出られるはずだし)」
 
↓ ↑ Bottom Top


「きみちゃんはうまく誤魔化したみたいだけど性別検査を受けさせられたらやばいのはゆっこ(潮尾由紀)ちゃんだろうね」
と玖美子。
 
「あの子は“間違いなく女子”と診断されそう。おっぱいもだいぶ大きいし。男子たちによるといつも個室使ってるらしいから、ちんちん無いのは確実ですよ」
 
と彼女を小学校の時から見ている御厨真南。
 
「あの子白い道着を使う理由、訊かれる度に違うこと言うから、本当は自分で白を指定して買ってるんですよ」
「春の大会の会場では女子トイレ使ってましたね」
 
(↑実際は男子トイレに入れてもらえなかったので女子トイレを使った)
 
「ゆっこちゃんは天野道場には女子制服で来てましたよ」
と如月。
 
↓ ↑ Bottom Top

「ほほお」
 
「大会に出る時はスポーツブラ着けるよう勧めておきました」
「それ着けたら成績上がるかもね」
 

↓ ↑ Bottom Top

公世が玖美子(女子剣道部部長)に言った。
「もしあの子が女子剣道部に入れてと言ったら入れてあげてよ」
「ああ、それは全然問題無い。大会の時だけ男子に出ればいい」
と玖美子も答えた。
 
「大会も女子の部に出てと言われたりして」
「あり得る」
 
「女子に来たら成績さがるだろうけどね」
「なんで?」
「男子部門に出てると相手は女と思って無意識に手加減してしまう。でも女子に来たらみんな本気で相手するからね」
「ああ」
 
「ヒデカちゃんもやばいよね」
「だから先月の大会では、なんでそちら女子が3人入ってるんです?と言われた」
と公世自身が言っている。
 
「男の娘剣道部を作るべきかなあ」
「きみよちゃんに部長になってもらって」
「ぼくは普通の男子だよ!」
 
↓ ↑ Bottom Top

(公世には卵巣があるという診断結果が出たらしいという噂は既にこの学校の全女子に伝わっている。男子でも半数くらいが知っている。本人も聞いてないのに!)
 

↓ ↑ Bottom Top

5月10日(火)
 
中体連・野球部門から福川選手の選手登録取り消しの通知があった。
 
強飯先生は不服の申し立てをした。中体連の事務局に乗りこみ、留萌支庁の理事さんと話すと
「それは中央の決定なので自分では何とも」
と言う。すると
「だったら中央と話すから、誰と話せばいいか教えてくれ」
と要求する。理事さんは強飯先生の勢いに負けて、東京の中体連野球部門と連絡を取り、部長さんが会ってくれることになった。
 
強飯先生はその日の最終飛行機で東京に向かった。
 
留萌1812-1909深川1918-2020札幌2028-2054千歳2103-2110新千歳2145-2320羽田
 

↓ ↑ Bottom Top

5月11日(水)。
 
強飯先生は中体連野球部門の本部に乗りこみ、部長さんと直談判した。
 
最初に強飯先生は今回の“抜き打ち検査”は未成年の選手を保護者の同意も取らず、しかも顧問の自分も居なかった日に強引に連れ出して検査を受けさせたもので、その手続きが違法であると指摘した。確かにそれを指摘されると向こうは謝るしかない。大会でのドーピング検査なども未成年選手については全て事前に保護者の同意書を取っている。今回はそのような手続きも無かった。
 
そして強飯先生は違法な手続きにより収拾された情報は無効であるから、福川が女であるという検査結果自体が無効であると主張した。
 
(部長さんが法務部門に確認すると、強飯さんの主張が正しいと認めた。法務部の弁護士さんは「それ暴行罪と誘拐罪が成立する可能性ありますよ」と苦言を呈した)
 
↓ ↑ Bottom Top

強飯先生は検査が必要ならあらためて別の日付に第三者が選んだ病院で再度検査をさせてほしいと言った。先生には日付を指定して検査をやり直せば彼女が男という診断結果が出るだろうという確信があった。多分彼女は物凄く巧みに性別を誤魔化している。
 

↓ ↑ Bottom Top

強飯先生は更に、そもそも選手から女子を締め出す現在の規定そのものが、違法である可能性が高いと指摘する。実際サッカーでは“女子”と“一般”というカテゴリー分けであり、女子選手が“一般”部門に出てよいし実際男子に混じってプレイしている女子選手もいる。アメフトのような野球より遙かに激しい競技にも男子に混じって活躍する女子QBなどがいる(アイシールド21の小泉花梨のモデルになった人)。野球だけ女子を排除するのはおかしいと強飯先生は主張する。
 
部長さんもアメフトに女子選手がいるのは知らなかったようで念のため確認して事実と分かると「あんな激しいスポーツでよくやるねー」と感心していた。
 
そして強飯先生は、福川が普通の男性と同様の強健な身体を持ち、10kmのロードを40分で一気に走り、水泳でも1600mなど平気で泳ぎ、野球では時速130kmの剛速球を投げる選手であること、捕手として出場している場合も強肩のキャッチャーであることをビデオ(昨夜ホテルで編集した)を見せながら部長さんに説明する。
 
↓ ↑ Bottom Top

それで5時間にわたる激論の末、部長は福川司を男子チームに選手登録することを認めてくれたのである。
 

↓ ↑ Bottom Top

↓ ↑ Bottom Top

前頁次頁目次

[*前頁][0目次][#次頁]
1  2  3  4  5  6  7  8  9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 
女子中学生・春ランラン(9)

広告:女装少年アンソロジーコミック-めろん組-IDコミックス-REXコミックス