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■女子中学生・ミニスカストーリー(12)

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大会はお昼休みに入る。
 
沙苗・玖美子・柔良はお弁当を食べているが、千里と公世はまだ先があるのでそんなものを食べてはいられないと思い、おにぎりを1個食べた。でも清香は「軽く小腹を満たす」と言って、柔良に買ってきてもらったケンタッキーをペロリと3本!食べていた。
 
ここで一部の関係者から公世の性別問題が提起される。
 
それで公世は剣道協会の登録証に加えて、生徒手帳も呈示したし、岩永先生のほか、チームメイトの千里・玖美子・沙苗も彼が確かに男子であることを証言した。更には大会前に受けた健康診断のカルテも参照し、カルテにも「性別:男」と記載されていることが確認された。声が高い問題については玖美子が
「この子、声変わりがまだなんです」
と言った。確かに中学生だと時々そういう子も居る。
 
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それで大会長は
 
「学校にも男子として通学しているのであれば男子の部に出るのは問題ありません」
 
と言い、公世が男子の部に出ていることは問題無いということになった。
 
基本的に男子が女子の部に出ようとするとハードルが高いが、女子が男子の部に出るのはあまり大きな問題とはされないことが多い。大会長も半陰陽かFTMさんかと思ったふしもあった。
 
しかし結論が出るまでの間、公世はここで身体検査とかされたらどうしよう?とドキドキしていた。
 

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公世の性別問題の議論をしている内にお昼休みが終わり、大会は再開される。
 
準々決勝となる。
 
最初に女子の準々決勝4試合が同時に行われる。
 
ここで残っているのは、千里と清香だけが2年生の初段で、他は全員3年生の二段である。都道府県2位で残っているのは千里だけである。優勝候補の一番手だった武田さんが実は3回戦で千里に負けた!ので、ここに残っている中で優勝候補は、大阪の青木さんが1番手、福岡の菊池さんが2番手である。しかし、ここまで勝ちあがって来た選手は、みんな猛烈に強い人ばかりなので、もはや優勝候補も何も無い。
 
無心で闘うだけである。
 

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千里の相手は千葉の平田さんである。物凄く強烈なオーラを帯びている。千里はとうとう70%までパワーゲージを上げた。この人も千里や清香と同様、細かく動き回るフットワークの使い手である。そしてそこから、物凄くシャープな打撃が来る。対戦していて、こういう相手は攻撃の“解像度”が高いんだということに思い至った。
 
攻撃のタイミングが読みにくいし、打ち込みもシャープだが、全体的なスピード自体は千里の方が速いので、相手の攻撃を感じ取ってからでも何とか逃れることができる。しかしそれでも、防戦一方という感じになった。こちらから打ち込みに行っても鮮やかにかわされる。
 
千里はこの相手にはパワーゲージを上げても意味が無いと認識した。パワーゲージを上げるというのは、いわばコンパクトカーを2000ccに、2000ccをスポーツカーに交換するようなものである。しかしシャープさはどうにもならない。攻撃の精密さが高いのである。それはレーシング・ドライバーの運転と生活で車を使っているだけの人の運転との差だと思った。
 
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しかし3分も闘(や)っていれば、必ずどこかで隙ができると思い、千里は我慢に我慢を重ねた。
 
そしてもう3分の試合時間の終わりかけ、ほんの一瞬相手に隙ができた所で千里は瞬間的な踏み込みから小手を取った。
 
その後はすぐ時間切れになったので、結局この1本の成立で千里は試合に勝ち、Best4に進出することができた。
 
物凄い強敵だった。3回戦で当たった武田さん以上だと思った。
 
(千里が武田さんに勝てたのはまだ3回戦で武田さんは充分エンジンが掛かっていなかったこと、千里の“見た目オーラ”が小さいので、あまり大した相手ではないように見えてしまったことがあったと思う)
 

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清香の相手も強烈に強かった。
 
わずか1分で清香は1本取られてしまうが、その後は清香も踏ん張り、なかなか2本目を取らせない。そしてこのまま時間切れで負けかと思った時のことである。相手が面打ちに来て、清香がぎりぎりでかわした。その時、相手は滑ってしまった!
 
竹刀も落として倒れるので、むろん清香は面を打ち込む。竹刀は副審の足元まで飛んできて、思わず副審が飛んで避けた。
 
これで1対1になる。
 
相手が起き上がる。副審が竹刀を拾ってあげて、渡そうとしたのだが、その時、副審は気付いた。
 
「ちょっと待って。この竹刀、検印が無いじゃん」
 
「え〜〜〜!?」
 
相手は青くなっている。主審もその竹刀を見るが確かに検印が無い。検印らしきスタンプはあるのだが、この大会の検印ではない。
 
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「私・・・間違って別の竹刀持って来たのかも」
 
(実際誤って練習パートナーの竹刀を持って来てしまったらしかった:後で始末書を書く羽目になった)
 
主審は彼女に反則負けを宣告し、清香は規定により、2-0での勝利となった。清香が
 
「道具を検印のあるものに交換して再試合にはできないんですか?」
と言ったが、
 
「ダメです」
と言われた。
 
それで清香は不本意だったが、とにかく勝ちは勝ちである。思いがけない形で勝利を拾い、清香はBest4に進出した。
 

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女子の準々決勝の後、男子の準々決勝が行われた。
 
公世はここで強烈な相手、東京の飯田さんと当り、1分で2本取られて負けた。
 
それで公世はBest8停まり(5位扱いになる)となった。
 
男子ではこの飯田さんが優勝したので、公世はBest8停まりではあっても、優勝者に負けた人ということで、価値あるBest8である。北海道2位で代表になってここまで来ただけでも大健闘であった。だいたいBest8まで来た他の人はみんな二段だったのに公世だけ初段でもない1級である。
 

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女子の準決勝2試合が同時に行われる。
 
菊池(福岡)┳┓
木里(北海)┛┣
青木(大阪)┳┛
村山(北海)┛
 
清香の相手は本当に強かった。柔良や玖美子に公世もこの試合を見ていたが、強さの“次元”が違うと玖美子たちは思った。千里や清香は初段ではあっても実際は三段か四段くらいの力があると多くの人に言われていたが、菊池さんは二段ではあっても実際には四段か五段くらいの力があるように思われた。
 
まず1分で1本面を取られ、清香も頑張って2分で1本返し胴で取り返したが、終了間際、相手の面が再度決まって勝負ありである。
 
それで清香は今回は3位に終わった。
 
千里の相手は、更に強かった。千里は初めてパワーゲージを80%まであげ、その上げ際に相手から1本取る。しかしこちらが1本取ったことで相手は更にレベルアップした(パワーアップではなくレベルアップという感覚)。そしてあっという間に2本立て続けに取られて敗退した。
 
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やはりパワーを上げるだけでは、“解像度”の高いシャープな攻撃には対抗できないと千里はあらためて感じた。
 
それで千里も今回は3位に終わった。
 
なお3位決定戦は行われない。
 

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女子の準決勝に続き、男子の準決勝が行われる。
 
公世に勝った東京の飯田さんと、もうひとり佐賀の森田さんが決勝に進出した。
 
休憩をおいて決勝が行われる。
 
先に行われた女子の決勝では、延長戦にもつれる激戦の末、大阪の青木さん(千里に勝った人)が福岡の菊池さん(清香に勝った人)を制した。
 
そして男子の決勝では飯田さんが勝った。
 
これで試合は全て終了した。
 

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20分ほどおいて表彰式が行われる。
 
まず男女1位が表彰される。大会長が賞状を読み上げそれを渡す。そして金メダルを掛けてもらう。賞状を付き添っている練習パートナー(制服姿)に持ってもらい、優勝トロフィーを受け取る。このトロフィーも練習パートナーに持ってもらい、記念の木刀を授与される。この木刀は男女の個人戦優勝者だけがもらえるものである。
 
「いいなあ。あれ欲しいね」
と、千里の隣に居る清香が言うと、千里は
「来年また頑張ろう」
と言った、ふたりはうなずき合った。
 
2位にも、賞状・メダル・トロフィーが授与され、3位の表彰となる。大会長が賞状を読み上げ清香と千里が受け取り、銅メダルを掛けてもらう。賞状を玖美子・柔良(2人ともセーラー服姿)に持ってもらい、3位のトロフィーを受け取った。双方、トロフィーを左手で抱えたまま右手で握手した、
 
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その後、男女の5位の選手7人(*10)に敢闘賞の賞状が渡される。公世も満面の笑顔であった。賞状をもらって戻って来てから千里・清香と握手した。
 
この後、大会長の短いメッセージがあり、表彰式は終了した。その後、閉会の辞があった。
 
(*10) 清香との対戦で反則負けになった人は、敢闘賞を辞退した。
 
清香は彼女に「インターハイで再戦しましょう」と言って「再戦!」(きっと再見(ツァイチェン:See you)のもじり)と書いた色紙を渡していた。彼女も泣いて清香と握手し、再戦を誓っていた。
 

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一般の観客の声。
 
「なんで敢闘賞は、男子3人と女子4人だったの?」(*11)
「ああ。なんか男子で5位になった人のひとりが実際は女子だったということで失格になったらしいよ」
「へー。でも女子なのに、男子の5位まで行くって凄いね」
「現代の中沢琴だね。新撰組唯一の女性隊士で、自分から1本取った男と結婚すると言ってたけど、ついに1本取れる男が現れなかったから一生結婚しなかったという」
 
「2年生だったから、来年は女子の部に出てねと言われたらしい」
「まだ2年生なのにそこまで行ったんだ!?だったら来年はきっと女子で優勝するね」
「女子の優勝候補一番手だろうね」
 
(*11)むろん敢闘賞として表彰されたのは、“公世を含む男子4名”と女子3名である。でも公世が女子に見えるので男女人数を誤解される。
 
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大会が終わってから全員でホテルに戻る。会場の更衣室は混むからホテルで着替えようよということになったので、公世は“お着替え”どうしよう?と思った。
 
「ぼく浴室で着替えようかな」
「だったら先にシャワー浴びるといいよ」
「じゃそうさせてもらおう」
 
それで(男物の)下着を持って浴室に入ろうとしたのだが、玖美子が
「きみよちゃん、結構その下着、気に入ったでしょ。今夜もこれ着けて寝るといいよ。いい夢見られるよ」
などと言って、下着を渡してくれる。
 
見ると、イチゴ模様!の女の子パンティと“普通の”ブラジャーである。
 
今朝渡されて今穿いているパンティはグレイの無地なのだが、イチゴ模様!?というのにクラクラとする。でもぼくこれからはこういうの着ないといけないのかなあと思った。
 
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「借りようかな」
「これは弓枝さんが買ったものだから、そのままあげるから」
「分かった。もらう」
 
と言い、公世は結局男物の下着はバッグに戻し、玖美子から渡されたパンティとブラジャー、それにTシャツとジーンズのパンツを持ち、浴室に入った。
 
 
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