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■夏の日の想い出・虹の願い(18)

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音響の話をかなり長時間した所で、いつもの、ラピスラズリがその作曲者さんの曲を歌うコーナーとなる。残響時間を0.8くらいに調整してから、青葉自身のピアノ伴奏で、ラピスラズリは、岡崎天音作詞・大宮万葉作曲で、KARIONが歌った『白兎開眼』を歌った。
 
東雲はるこがウサギ耳のカチューシャを着け、町田朱美がワニ頭の帽子をかぶり、因幡の白兎がワニと戦っているイメージの振付でふたりは歌った。実はこの歌を歌うために、今日ははるこが白いドレス、朱美が黒いドレスを着ていたのである。
 
演奏が終わると
「うん、面白かった」
と言って、青葉はふたりに笑顔で拍手を送った。
 
(このライブ録音は後日、ラピスラズリの『懐メロ』シリーズのアルバムに収録されることになる)
 
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私たちはピアノルームを出ると、縁側を歩く。途中、千里はカーテンの引いてある部屋の前で
「ここが青葉の部屋ね。だから自分の部屋から縁側を通ってピアノルームに行ける」
と言った。
 
(再掲)歩いたルート

 
青葉はふと気付いたように言った。
 
「ね、ピアノルームに入るには、もしかして作曲室から入るか、縁側から入るしかないということは?」
 
「正解!それ以外のルートを作ろうとすると、建蔽率をオーバーするんだよ」
「なるほどー。結構ギリギリなんだ?」
「そうでもないけど、廊下を1個余分に作ろうとすると、玉突きで建坪が40坪くらい増える」
 
「なぜ〜〜!?」
 
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「ずっと男の身体で我慢していた人が、ひとたび睾丸を取ると、そのままあっという間に性転換手術まで受けてしまうようなものかな」
 
「全く意味不明」
 
(ここはさすがにカットされるだろうと思ったが放送された!)
 

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縁側を歩いていると、東雲はるこが楽しそうであった。
 
「縁側のある家って、私、小さい頃に親戚の家で体験して以来」
などと言っている。
 
「英語でいえばウッドデッキですかね?」
と町田朱美が言う。」
 
「そうそう。縁側を英語で言ったらウッドデッキ(wood deck)、台所はキッチン(kitchen)、お風呂はバス(bath)、寝室はベッドルーム(bedroom)、押入れはクローゼット(closet)、屋根裏はロフト(loft)、物干しはサンルーム(sun room), 屋上屋はペントハウス(pent house)・・・」
 
と千里は言っているが
 
「それ最後の方のは違うと思う」
と青葉。
 
「あれ?小公女セーラが住んでたのもロフトですか?」
と東雲はるこが訊く。
 
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「あれはアティック(attic)」
 
「ロフトとは違うんだ!」
 
「屋根裏でもロフトはまだ下の方、わりと暖かい。アティックは屋根上でも最も高い部分で、寒いし、ふつうそこへのアクセスルートは作ってなかったりする」
 
「屋根裏にもランクがあるんだ!」
 
「ビリー・ジョエルに『Songs in the Attic』というアルバムがあったね。屋根裏部屋で演奏したかのような、素朴な演奏で出していた初期の曲を新たな感覚で再生することを目的としたアルバム」
 
「そういう楽曲の再生という作業はいいかもね」
 

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「この縁側は濡れ縁(ぬれえん)だね」
と私は言った。
 
「うん。ここは雨風が吹いても吹きさらし。だから建坪には含まれない。屋内なのか屋外なのか微妙な部分だよね」
と千里が言うので、私も
 
「日本人って昔から曖昧なのが好きだよね。西洋人なら、屋内か屋外かはっきりしろと言うかもしれないけど」
 
「西洋は男か女か明確にしたがる文化、日本はわりとその人のありようをそのまま見てくれる文化」
 
「なぜそういう話になる?」
 
「室内が女の子、室外が男の子、縁側は男の娘かな」
などと千里が言うと、町田朱美が頷いている(この部分も放送された!)
 

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「ここは雨戸を立てたりしないんですか?」
と町田朱美が尋ねる。
 
「立てない。雨戸を立てるなら、濡れ縁ではなく廊下扱いになる」
 
「あ、廊下ですよね!」
「だから雨戸で守るのなら建坪に含まれる」
「ああ」
 
「くれ縁とかいうのは?」
と私は訊いた。
 
「それは縁側の板の張り方の流儀。この縁側の外端に割と太い材木が通っているよね」
「うん」
 
「これを縁框(えんがまち)というんだけど、縁をこの縁框と平行に渡した長い板で構成する方式を“榑縁”(くれえん)と言う。これに対して、垂直に短い板を多数並べて構成する方式を“切れ目縁”という。この家は榑縁(くれえん)」
 
「なるほどー!それも見たことある気がする」
 
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「いづれにしても濡れ縁は雨風に曝されるから丈夫な木材で作る必要がある。合板では無理」
 
「これヒノキだっけ?」
「これは能登産のアテ(*19)だよ。ピアノルームの内装と同じ」
 
「地産地消か!」
 
(*19) アスナロ(ヒバ)の、能登半島での呼ばれかた。能登半島はアテの名産地である。“あすなろ(翌桧)”という言葉は、枕草子の記述が語源とされるが、その後、地域によって、アスヒ・アテビ・アテなどと呼ばれるようになった。
 

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サンルームに戻ると、早月がお茶を運んで来てくれた(結果的に早月もテレビに映ることになる)。ラピスの2人が「可愛い!」と言って喜んでいた。
 
「この家は、さっきの縁側の縁框(えんがまち)にしても、部屋の柱にしても太いですね」
と朱美が言った。
 
「ええ。昔ながらの伝統工法で使用していた8寸材を使っています。工法自体はユニット工法ですけどね」
と千里は説明している。
 
「柱もアテですか」
「そうです。アテ材です」
「アテ(ヒバ)もいい木ですよね〜。でも結構高く付きません?」
 
「それなんですけど、津幡での開発がまだまだ続くので、2020年の年末頃に能登町の山を幾つか買って、2021年春には製材所も1つ買ったんですよ。田舎は林業に従事しようとする若者がいなくて間伐もできずに放置状態になっていたんですよね。でも、うちは給料がいいし、コロナ不況だから、かなりの応募があって、営林部門と製材部門併せて取り敢えず20人ほど採用しました。そしたら、町から感謝状まで頂きましたよ。2022年春にはまた20人ほど採用する予定ですが。この家はこの製材所の第1号出荷分を使っています。2020年末に山を買ってすぐ伐採して、冬の間は葉枯らししておいて、春に山から降ろして製材所で半年間機械乾燥して製材したものですね」
 
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と千里は言っている。
 
「また買ったんだ!これで4つ目?」
と青葉が訊く。
 
「そうそう。栃木県塩谷町・福井県大野市・北海道深川市に次いで4番目の朱雀林業の拠点。あ、この発言カットしてくださいね。うちの宣伝と思われたら困るから」
 
「いいですよ」
と長坂ディレクター。
 

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「ちなみにこの家の部屋はユニット部品を組み立てて作られているので、ユニットハウス工場のある福島県の近くの、栃木県の桧(ひのき)や一部合板も使用していますけどね。合板の材料は間伐材や、曲がっていてそのまま材木としては使用できない木などです」
 
「ああ、曲がった木はそうやって活用するんですね」
「間伐材を合板に加工している所は少ないと思います。人手不足で間伐自体ができないでいる山が多いので。それでロシア産のカラマツとか使っている工場が多いですね。うちはしっかり間伐やってますから」
 
「でも材木って切ってすぐ使えるんじゃないんですね?」
と東雲はるこが尋ねる。
 
「そうそう。生の木は大量の水分を含んでいるから、それを抜かないと使えない。時々、それをちゃんと乾燥させないまま使っちゃう工務店とかあって、そういう所に頼むと、住んでいる内に柱が曲がってきたりするんだよ。水分が抜けて」
 
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「それは恐い」
 
「法隆寺の五重塔の芯柱(しんばしら)なんて伐採した後100年くらい乾燥させたものを使用している」
「凄い」
 
「一般に材木を伐採してから建物に使えるようになるには10年の乾燥が必要」
「建築って凄い長いスパンのお仕事なんですね」
とはるこが感動している。
 
「木管楽器とか弦楽器も10年くらい乾燥させたの使いますよね」
と朱美。
 
「そうそう。きちんと乾燥させてない木材で笛とかヴァイオリンとか作ったら、時間が経つにつれピッチが変わってきたり、棹が曲がったりする」
 
「それは困ります」
 
(市販の篠笛や安物の龍笛には本当に数年経つとピッチが変わってしまうものが時々ある。ヴァオリンやギターの共鳴胴の板が反ってしまったりするものも)
 
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「ただ現代人は忙しいから、製材所に高温の乾燥室を作っていて、最近はだいたいここで乾燥させたものが多い。半年くらいの機械乾燥で10年くらい自然乾燥させたのと似たような状態になってくれる」
 
「それでも半年かかるんだ!」
 

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「その前に何とかカラシとか言ってましたね」
「葉枯らし(はがらし)ね。伐採した樹木はだいたい現地で一冬置いて、その後、運び出すんだよ。その間に含水率は120%くらいから30%くらいまで大きく減少する」
 
「パーセントが100を越えるんですか?」
「含水率というのは、その木材を完全に乾燥させきった時の重さに対する比率を言うから、120%ということは、乾燥させきった木材が100kgだったら伐採した直後は220kgで、その内の純粋な木材が100kg, 水が120kgということ」
 
「じゃ何ヶ月か山に置いておくだけで重さが半分になるんですか!」
「そうそう。凄いでしょ。それで切ったばかりの木で家を建てたりしたら、どうなるか分かるよね?」
「家が半分に縮んじゃう」
「あり得る、あり得る」
 
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「木材を山から降ろす手間も違いますよね」
「重さが半分になれば運び出すのも楽だよね」
 

「まあ、この家はユニット工法だから、ただ並べるだけならこんな太い柱は要らないんですけど、屋根に太陽光パネルをたくさん並べたから、それを支える必要があったから」
 
「あれ、たくさん並んでるよね!100枚くらい?」
「120枚。6枚×20列。重さは2.5トンほど」
「ああ」
「アクアがCMやってる、K製作所のアマテラスを使った」
「わあ」
「設置に青山さんが来たよ」
「そうか。青山さんが勤めている部門で販売してるんだったね」
 
「可愛かったよ」
「青山さん、結局女性になっちゃったんだっけ?」
「少なくとも女性にしか見えなかった」
「やはり、元々そういう傾向あったのかなあ。あ、ここ、内輪ネタなんでカットしてくださいね」
と青葉は言ったものの、放送された!
 
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ご丁寧に、青山さんの男性時代の写真と、最近のK製作所の女子制服を着た写真が並べて映された!(本人には事後承諾:彼はもう男に戻るのは困難になりつつある。彼は睾丸は取っちゃったのだろうか?と青葉は考えていた)
 
「アマテラス・パネルは凄く発電能力が高いから、この120枚のパネルが生み出す電力は、1日平均180kwh程度に達する。この家で使う電気を全部まかなえる」
「120枚も並べたらそうだろうね」
 
「一応北陸電力と連系してて、足りない場合は北電から供給してもらえるけど、実際にはかなり余って、北電が買い取ってくれることになる。特に夏は大きくあまると思う。発電量が大きくなるから」
 
「夏に北電に渡せるのはいいことだ」
「うん。電力会社のほうが電力不足になりがちだからね。この家は“燃料節約のため”集めた雨水を屋根の上で流したりするから、あまり暑くならないようになっているはずだから多分あまり冷房は使わない」
 
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「そもそも平屋建てが暑くなりにくい気がするよ」
 
(モーターで貯水槽から屋根に水を吸い上げて流すが、水が屋根から落下する時にタービンを回して発電するので、総合的にはあまり電気を食わない。このシステムは熊谷のコテージ“桜”でも採用されている)
 

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