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■夏の日の想い出・虹の願い(6)

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「逃がさないよ、二十面相君」
と小林少年は女性警備員に言った。
 
「何を突然?私は交替の時間なので出て行くだけですが」
と女性警備員は言う。
 
「交替の時は、交代要員が来てから離れるものだよ。それに賊を警戒して泊まり込んでいた人たちがみんな眠ってしまったことに君は驚かないのかい?」
 
「お休みの所を起こしてはいけないと思って」
「じゃ、薬師如来と十二神将像が姿を消したことは?」
「あら、無くなってる。大変!報せに行かなくては」
と言って、小林を押しのけて外に出ようとするが、小林は女性警備員を思いっきり突き飛ばしてから、隠し持っていたハンマーでドア中央にある掌型認証の装置を破壊してしまった。
 
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「これでどっちみち出られなくなったね」
と小林は笑顔で言う。
 
「きさまあ」
と男声で言うと女性警備員に化けた二十面相がスカートをめくって、大腿部に付けていたレッグホルスターから拳銃(S&W M36 Gold)(*7)を取り出すので、さすがの小林もギョッとする。
 
しかし二十面相はそれで仏殿内の非常ボタンとインターホンおよびカメラの“線”を撃った。そしてスカート内側のホルスターに戻す。
 
「これで外に通報もできなくなった」
と二十面相。
 
この仏殿は侵入困難なように全体がステンレスで囲まれているので、静電遮蔽状態になっており、携帯が使えない。
 
(*7) 金色のM36である。M36はS&W (スミス&ウェッソン)の人気リボルバーシリーズ。日本の警察も国産拳銃の製造休止に伴い、2005年以降導入を進めている(M360J "Sakura")。M36 Gold は金色のリボルバーで二十面相の趣味にピッタリである。この金色は、実際には窒化チタニウムの金色である。
 
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自宅から村正邸に移動中の明智に電話が掛かってくる(文代が運転して明智は後部座席に乗っている)。
 
「明智先生でいらっしゃいますか?警備員の主任・芳本であります。仏殿内のモニターが消えてしまい、インターホンも繋がらない様子なのですが、すぐ駆け付けた方がよいでしょうか?」
 
「私が行くまで待っていて下さい。一緒に入りましょう。すぐ仏殿内に入ろうとすると、そのどさくさに紛れて逃げられる可能性があります。通路のこちらで警戒していて下さい。そして絶対に誰も出さないでください。二十面相は社長や警備員に化けているかも知れません」
 
「なるほど!」
 
「二十面相は人殺しだけはしませんから、仏殿内に居る人たちが命を奪われたりすることはないです。それと、夜中に申し訳無いのですが、今回のプロジェクトに参加した警備員さんを全員集めてもらえませんか?ちょっと確認したいことがあるんです」
 
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「分かりました!」
 

仏殿内。
 
「痛み分けだね。一緒にここで明智先生が来るまで40分間待ってようよ」
と小林は言った。
 
「つまりお前はあのコーヒーを飲まなかったのか」
「こういう場面で眠り薬入りのコーヒーというのは、君の常套手段じゃん。本物の奧さんとは少し雰囲気違うなと思ったしね」
 
「小林、君はほんとに大した奴だよ」
「どういたしまして」
 
「しかし薬師如来と十二神将像は頂いたぞ」
「すぐ取り戻すよ」
 
「俺がどうやって、薬師如来と十二神将像を盗んだか分かるか」
「警備員に化けていれば造作ないんだよ。仏殿の中は1人だから、自分の担当時間にやればどうにでもなる。モニターはプログラムをちょっとハックして定常映像を流し続けていればいい。そして盗んだ後は、ホログラフィの立体映像を見せていた。僕もホログラフィになってるのには気付いたけど、2月6日に盗むという予告を君がどう処理するか見物させてもらったよ」
 
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「ああ、ホログラフィにも気付いていたのか」
「きっと警備員として最初に中に入った時、この仏像の写真を様々な角度から撮影した。それを元にホログラフィを生成した。そして仏像を盗んだらホログラフィの装置を作動させた」
 
「予告は2月6日だから、2月6日になるまでは、ちゃんと存在してないといけないからな」
 
「いつもながら律儀だねぇ。自分がこの時間に仏殿担当になっているように、たぶん主任さんか何かに化けて警備会社に行って、シフト表をいじったんでしょ?」
 
「まあ係長に化けたけどね」
 

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「ここの警備員は身長168cmまでという条件だったのに、なぜ俺が採用されたか分かるかい」
 
「面接を受けたのは、女の仲間なんだろうね。そして実際にその仲間がかなり勤務してるけど、大事な所では君がやった。その時、身長でバレないように、スカートの中で足を曲げて歩いていたのだと思う。足を曲げることでだいたい10cm程度は誤魔化せるんだよ。ここの制服ってスカートだから足を曲げていても気付かれない」
 
「ふん。お前もよく女装するから、そういうテクは知ってるんだな」
「僕は別に、よくは女装しないけど」
「嘘つけ!」
 
(放送時に視聴者も思わず「嘘つけ!」と言った)
 
「それにここの警備は社長さんが優しいから座って勤務すれば良かった。座っていれば身長はバレにくい」
「うん。それにも助けられた」
と二十面相は認めている。
 
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二十面相と小林の対話は30分間続いた。
 
お互いに「あの時は美事に欺された」などと古い友人ででもあるかのように話が弾んだ。
 
0:30.
 
仏殿のドアが開いた。明智と文代、それに警備員が8人も一緒に入ってくる。少し早めに到着したようだ。小林はドアの所に立って、このドアが閉まらないようにした。
 
「皆さん、二十面相はその女警備員に化けています。拳銃を持っているから気をつけて下さい」
と小林が言う。そして小林は続けて
 
「このドア、壊れているんです。中に入ると出られなくなります」
と言った。
 
「佐藤君、何か椅子でも持って来て。高橋君、警視庁の中村課長に連絡して」
とリーダーの人が指示を出す。
 
「文代。皆さんがお休みのようだ。気付け薬を取って来て」
「はい」
と言って文代が出ていく。
 
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警備員たちが、二十面相を確保しようとしたが、明智はそれを制した。
 
「二十面相には手錠も縄も無意味です。ここでみんなで監視していましょう」
と明智は言う。
 
「俺は拳銃を持ってるよ」
と女性警備員(演:麻生真衣子)が男の声で言うと、今入って来た警備員たちがギョッとする。
 
「二十面相君は、血が嫌いだから、それで僕らを撃ったりはしないよね」
と明智(演:本騨真樹)は言う。
 
「それは分からないよ。俺もいざとなったら君たちを皆殺しにして逃げるかもよ」
と女性警備員に化けたままの二十面相。
 
「君のことは信用してるから。それにこの事件の顛末を君も最後まで確認したいだろう」
「何かあるのかい?」
 

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「芳本さん、警備員は全員集まりましたか?」
「半分くらいは来ました。残りはたぶんあと15分くらい掛かると思います」
「でしたら、芳本さんだけ残って、他の方は警備控室の方に下がっていて下さい」
 
「分かりました。弘前君、断線した線の修理して。他は、須藤君だけ念のため通路入口に居て、他はみんな控室の方に行って」
とテキパキ指示する。
 
そんな芳本さんがかっこいー!と思って小林は彼女を尊敬のまなざしで見た(芳本もきっと小林がまだ若いのにしっかりしててかっこいい、と思っている)
 
警備員たちが、みんな出て行く。
 
「須藤君は、通路入口の所で、中から出てくるものは、たとえ私であろうとも警察が来るまでは誰も通さないように。二十面相は明智先生や社長や私に化けるかも知れない」
 
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「分かりました」
それで須藤警備員も部屋の外に出た。
 

弘前警備員がインターホン・モニターの信号線を持って来て断線した箇所を応急修理した。
 
文代が戻って来て、気付け薬を使って、2人の助手、それに岩次郎と音三郎の意識を回復させた。
「これはいったい」
と岩次郎氏が戸惑っている。
 
「賊は女性警備員に化けて、浸入していたのです。警備員に化けているんだから、邸内に予告を残すのも簡単ですよ」
と小林少年は説明する。
 
「そうだったのか。あ!仏像が無い」
 
「仏像は実はとっくに盗まれていて、ホログラフィになってたんです」
「ホログラフィ!?」
「警報装置で近寄れないのにいいことに、精密なホログラフィで誤魔化してたんです。そして2月6日0時になったのと同時にホログラフィのスイッチを切った」
 
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「2月6日に盗むという予告だったから、それまでは存在してないといけないからね」
 
と女性警備員が男の声で話すので、岩次郎・音三郎の兄弟がギョッとしている。
 

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「そうだ。でも先生、万一の場合に備えて、実は仏像は偽物と入れ替えていたんですよ」
と岩次郎が言う。
 
「ほぉ」
「本物は台座の内側に格納して、上の段に代わりの偽物を並べていたんです」
「へー」
と明智は言ったが、実はこの部屋に居るものの中でその話に驚いたのは、葛西・森田という明智の2人の助手、および警備員の芳本主任だけだった!
 
「だから上の段に並んでいた仏像を取られても、内側の本物は無事のはずです」
「では確認してみましょう」
 
それで岩次郎氏が壁のボタンを押すと、台座が収納されていく。そして下の台座が競り上がってきたのだが
 
「あれ?無い!?」
と岩次郎・音三郎が声を挙げる。
 
その下の台座の上にも何も仏像は無かったのである。
 
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「偽物とすりかえておくとか、そんな子供欺しに二十面相ともあろう者がひっかかる訳が無い」
 
と女性警備員に化けた二十面相本人が言っている。
 
「盗もうと思って仏像を見たら、全部偽物が並んでるじゃん。だから偽物は全部どけて、そこの物置に放り込んだ。そして台座をあげて本物を運び出したよ」
と二十面相は大胆に犯行を告白する。
 
「よくひとりで運び出せたね」
「偽物どかすのに時間がかかったから、2日がかりになったけどな」
「でもそのまま持ち出せば目立つでしょ」
「段ボール箱を持ってきて詰めたからね。まさか大事な仏像が段ボール箱に入っているなんて普通思わないし。それに社長に化けてたしな」
「なるほどねー。社長が出入りするのには、警備員も何も怪しまない」
 
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「それじゃ偽物はそこの物置かい?」
「ああ」
 
「ではその偽物を確認しましょう。村正社長。ちょっとその物置を見てみてください」
と明智が言う。
 
「はい」
 
それで岩次郎社長と音三郎専務が立っていき、釈迦如来の絵のある所の物置を開ける。そこには大きな薬師如来像と小さな十二神将像が裸のまま入っていた。
 
ふたりが首を傾げている。十二神将像のひとつを持ってみている。
 
重そうだ。
 
「これは本物だと思います」
と2人が言う。
 
「何〜〜〜!?」
と女性警備員の姿のままの二十面相が声を挙げた。
 

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「谷本警備員さん、来ておられますか?」
と小林が修理の終わったインターホンで警備員控室にいる警備員の名前を呼んだ。
 
「はい」
と控室にいる女性警備員のひとり(演:中川友見)が返事をした。
 
なお向こうはこちらの様子を(修理の終わった)モニターで見られるが、向こうの映像は仏殿内からは見えず、インターホンを通して声だけが伝わる。
 
(警備員たちを控室に下げたのは実は彼女の顔を二十面相に見せないため)
 
「何か連絡が入っていませんか?」
「さきほど、少年探偵団の成年団員から電話がありました。団長のメインスマホに繋がらないのでということで」
「この仏殿は静電遮蔽されてて電波が届かないからね」
「それで、私がお預かりしていたサブのスマホに連絡があったんです。邸近くの公園に駐められていたクラウンが団員の通報で盗難車ということが分かり、警察がレッカーして行ったという報告でした」
 
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(放送時には溝口洋平(演:松田理史)と山口あゆか(演:今井葉月)が警察の押収作業を見守りながらスマホで連絡を取っている様子が映る)
 
「ありがとう」
とインターホンに答えて、小林は二十面相に言った。
 
「君の逃走用の車両は押収されたようだよ」
「ふーん」
と二十面相は平静を装っている。
 

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「谷本さん、あなたの身分と実行したことを話してください」
「はい。私は実は少年探偵団・別働隊“黒豹(Panther)”の団員です。谷本というのも仮名です」
 
と言うと、明智・小林以外の全員が驚いている。葛西や森田まで驚いている。少年探偵団や特に隠密部隊である特殊別働隊(*8)のメンバーは団長の小林と副団長の花崎まゆみだけが把握していて明智の他の助手にはあまり知られていない。別働隊のメンツは正団員からもあまり知られていない。
 
(*8) 原作では戦後間もない時期に大量に居たストリートチルドレンを集めた“チンピラ別働隊”だが、今日の日本では使えない設定なので(原作でも世の中が安定していくのにつれ団員は減っていった)、今回のテレビシリーズでは、自衛隊などの出身で夜間の警戒や危険を伴う仕事に従事する部隊“特殊別働隊”という設定になっている。
 
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彼女(役名:清川なぎさ:code name="snow")は実は高校卒業後2年間自衛隊に居て、昨年春に少年探偵団に入ったもので、柔道四段も本当のことという設定。演じている中川友見自身は自衛隊の経験は無いが、柔道三段である。インターハイの出場経験も無いが、県大会のベスト8まで行ったことがある。劇中では100kgのバーベルを上げられると言っているが実際は80kgくらいまでらしい。アクアの付き添いで来た川井唯(柔道五段)と意気投合していた!
 

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夏の日の想い出・虹の願い(6)

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