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■夏の日の想い出・虹の願い(16)

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青葉は言う。
 
「だけど、私も初期の頃は、売れたと言っても作曲収入は年間数十万円程度だったんですよ。だから源泉徴収された税金が確定申告で全部戻って来ていた。アクアの作曲を担当するようになってから、唐突に印税がそれまでの100倍になって」
 
「ああ」
 
「税金払いきれなくて苦労した。源泉徴収されてる分なんてほんの僅かなんだもん」
 
「その話、よく聞きます。私は幸いにも何とか払えましたけど」
と東雲はるこ。
 
「§§ミュージックの場合は、必ず2つ口座を届けさせて、税金として払わなければならない予想額を別口座に振り込んでいるから、それを使い込んだりしない限り大抵は大丈夫なんだけどね」
 
(それをちゃんと理解してなくて使い込み、困ってしまって桜野みちるに泣き付き助けてもらったのが品川ありさ!)
 
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「それにしても何か信じられない額を払わないといけないですよね」
と町田朱美も言う。
 
「ほんと税金は恐い」
「更に恐いのが地方税」
「あれはショックのダメ押しですね」
 
「歌手を引退した人が翌年すぐ復活したりするのて、税金払うためというのも結構あると思いません?」
 
「それはかなりあると思うよ。地方税のせいだね」
 
地方税は1年遅れで課税されるので、それまで歌手として毎年1億稼いでいた人が、引退して無収入になっても、昨年の収入・1億円に対する地方税を払わなければならない。それで税額を見て悲鳴をあげて、
 
「すみません。何かお仕事ありませんか?」
 
と元の事務所に相談するというパターンである。
 
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地方税のみでなく、国民健康保険も最高額課せられるので、とても払えなくなって無保険状態に陥ってしまう人もある。
 

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「アクアの楽曲は最初、上島雷太先生が書いたんだよ。でも上島先生は、自分の息子に曲を書いているような感じでやりにくいと言って、私に押しつけられた。でも当時私はとても余裕が無かったら、大宮万葉に押しつけた。それに、当時、アクアは14歳で、私は24歳。10年違うと物事の感覚がかなり違うしね。それでまだアクアに近いと思った、当時18歳の大宮万葉に託したというのもある」
 
「なるほどー」
 
「アクアも実際、大宮先生の歌はとても歌いやすいし、歌詞も分かりやすいですと言っていたよ」
 
「それってアクアを聴く人たちにも分かりやすいですよね」
「そうだと思うよ。アクアは幅広い国民の層に愛されているけど、やはり、アクアと同世代の男女がファン層の中核だろうからね」
 
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「ですよね〜」
 

インタビューの中では水泳選手としての活動についても触れ、あらためて東京オリンピックで取った3個のメダルを見せてもらった。新しい家には地下にプールも作ったと千里が言うので、みんなで見に行く。
 
サンルームを出て玄関の向こうにあるエレベータで下に降りて行く。
 
サンルームを出ると、リビングがさっきは全体を見渡せたのが、仕切りを立てて区切られているのを見る。呪術廻戦のキャラが描かれていたので、また東雲はるこが喜んでいた。
 
(私たちがサンルームに居る間に、朋子さんと真珠で設置して、この状態を見せてくれたようだ)
 
エレベータでは、最初に案内役の千里が乗る所を長坂ディレクターがサブカメラで撮し、長坂さんも一緒に乗って下に降りて行く。その後、佐竹カメラマンが先に乗って青葉、私、町田朱美、東雲はるこが乗る所をエレベータ内から撮影した。
 
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(ここにあるのは中型のエレベータなので定員は6名:1人65kg計算だから、このメンツなら本当は1度に乗った気もするが定員を守ったのと密を避けた)
 
そしてエレベータが地階に着き、最後に乗った東雲はるこが最初に出たのだが、・・・・・
 
エレベータを出た途端、透明な板にぶつかって大きな音を立てる。
 
「あ、ごめん、その板に気をつけてと言うの忘れてた」
と先に降りていた千里が言う。
 
「なんですか〜?これ」
と思わずその場に倒れてしまった、東雲はるこが頭を押さえて立ち上がりながら言う。
 
「落下防止板だよ。エレベータを出てすぐプールだから、気をつけないと、水に落下するから」
と千里は言っている。
 
「これエレベータの出口から1mくらいしか無いですね。僕もあやうくぶつかる所だった」
と長坂ディレクター。
 
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エレベータが最初の計画では家の奥側(北東)の端だけだったのをそれだけでは不便だというので玄関近く(南側)にも設置した。それでその南エレベータを降りてすぐの所にプールの水面があるのである(北東エレベータは北西に変更になり、その後、屋外に新たに北東エレベータが設置された。後述の経緯参照)。
 
↓エレベータ前の緑の線が落下防止板(ポリカーボネイト製の透明な板)。
 

 
しかし誰かがぶつかるだろうというので、わざと言わなかったのではないのか?東雲はるこは、いつもぼんやりしているから、この手の失敗をするのは、あまりにも適役すぎるので、全部台本ではと思われかねないなと私は思った。
 
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(実際放送時に「台本くさーい」と随分言われた。多くの人が「きっと、はるこちゃんだけ聞いてなかったんだ」と言った)
 

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「お姉ちゃん、質問がある」
と青葉は言った。
 
「どうした?」
 
「計画図ではプールは2レーンだったはずが、どうして6レーンもあるの?」
 
「うーん。6レーン取れたから作ったんじゃない?」
 
(それが南田の性格!)
 
「6レーンもあっても使い道無いじゃん」
 
(青葉はさすがに少し怒っている)
 
「万葉が6人に分裂したら使うかもね」
「そういう展開は嫌だ」
 

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そういう訳で、青葉は不満だったようだが、地下のプールは25m×6レーンという、大きなものになっていたのである。
 
「ここに並んでいる部屋は何?」
と言って、開けてみる。
 
4m×2.5mの部屋にプールサイド用の網の目状タイルが敷き詰めてある。その横にバスタブ・シャワーと便器がある(ふたを閉めたら椅子としても使えるようになっていて背もたれ・肘掛けも付いている)。トイレとバスはビニール製のカーテンで仕切れるようになっている。
 
「ここは更衣室だよ」
「まあ使うのが私とお姉さんくらいなら、このくらいのサイズでもいいか」
と青葉は言ったのだが
 
「これは個人用だよ」
「は?」
 
「レーンが6つあるから、更衣室も6つ作ったらしい。各々にトイレとお風呂が付いてるから、シャワーやトイレの順番待ちする必要もないしね」
 
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「え〜〜〜!?」
 
「設備を共用しないというのは、感染対策の基本だよ」
 
「それはそうかも知れない」
 

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千里と青葉、更には乗せられて、私と町田朱美も、千里が用意してくれていた水着(可愛すぎる!)に着替えて、この25mプールでひと泳ぎした。私と朱美か泳ぐレーンは“水深調整装置”を作動させて、水深を1.5mに変更してくれた。水深変更は5分くらいでできるので水着に着替える間に終わっていた。(千里と青葉が泳ぐレーンは3m)
 
この4人が泳いでいる様子もカメラで撮影していた。なお、泳がなかった東雲はるこはカナヅチである!
 
(彼女のあまりにも細すぎる腕や足では水泳は不可能だという気がする。彼女は小学校の水泳の授業を全部見学で押し通したらしい。もっともそれは男子水着にはなりたくなかったからというのが大きかったと思う)
 
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プールを出た後、着替えて(確かに個別更衣室は便利だ)から今度は更衣室そばのエレベータで1階に戻る(↑のプール階の図面参照。図面左下の更衣室外側にあるもの)。このエレベータは小型なので3回に分けて乗った(プロデューサー・カメラマン/ラピス・青葉/私と千里)、
 
※浄水施設そばのエレベータは屋内には戻れず、屋外に出てしまう。これはこのプールを隣接する小学校の児童たち(顧問の同伴と2名以上のおとなによる常時監視必須)が使う時のためのものである。6レーンにしたのは実は小学生たちが使う場合を考えてというのもあったのだが、千里はそこまでまだ説明を聞いていなかった。水深可変装置も小学生のために用意した。小学生は水深1mで泳がせる(飛び込み禁止)。
 
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エレベータを降りた所から廊下を6mほど歩いた所の部屋に入る。10畳ほどの部屋(実際には9畳)である。
 
そこに88鍵フルサイズの電子ピアノが置かれている。KORGのLP-380だ。隣にワークデスクがあり、富士通製のパソコンが乗っている。
 
「そのパソコンにはCubaseとKOMPLETE-13をインストールしてもらったから」
と千里は言う。
 
“インストールしてもらった”と言うのが千里姉らしいなと青葉は思った。千里姉が自分でインストールしようとしたら、誤ってディスクを爆発させたりしかねない!
 
しかし青葉は思った。結局、新居には電子ピアノを入れてくれたのか。今までポータトーン(彪志のお母さんからもらったもの)でやっていたのに比べると随分と進化だけど、結局グランドピアノではなかったのね、と。
 
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「ここは作曲作業場ですか?」
と町田朱美が尋ねる。
 
「そうそう。ある程度イメージが固まってきた所で、それを打ち込んで譜面を作る作業をする場所」
と千里は説明する。
 

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「ここはあくまで作曲作業用だから、演奏の練習はこちらでするんだよ」
と言って、千里は向こう側のドアを開けた。
 
気密ドアだ!
 
へ!?と青葉は思った。
 

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↓の赤い矢印が私たちの歩いたルートである。

 
青葉は呆然としていた。
 
東雲はるこが
「すごーい!広ーい!」
と声をあげる。
 
「ここはミニライブができる広さがある」
と町田朱美が言う。
 
「まあ9半間×7半間で31.5畳、壁の総延長は32半間=29.1m ある」
と千里は言う。
 
「壁の長さが必要なんですか?」
とはるこが尋ねた。
 
「そう。そこに置いてあるピアノを演奏するために確保したんだよ」
と千里。
 
「大きいですね。これコンサートグランドですか?」
「うん。フルコン。Steinway and Sons Model D-274 Concert Grand Piano」
「これ2000万くらいしますよね?」
「青葉なら晩御飯代程度だね。でも、君たちだって、このくらいキャッシュで買えるでしょ?」
と千里はラピスの2人に言う。
 
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「買えると思いますけど、このピアノを入れるために家を建てなきゃ」
と東雲はるこ。
 
「まあそういう性質のピアノだね」
と千里は言った。
 
町田朱美は納得したように頷いていた。町田朱美が建てる予定の家には、ここと似たような広さ、40畳サイズのピアノ練習室を作る予定である。スタインウェイのフルコンでもこの広さで行けるなら、お姉ちゃんはグランドピアノをもっと上のクラス(S4かS6)にリプレイスしてもあの部屋で行けるな、と朱美は考えていた。
 
そして、朱美は大宮先生宅の、電子ピアノを置いた小部屋と、グランドピアノを置いた大練習室がつながる構造は、自分が今建てようとしている家とも造りが似てるなと思った。(正解!同じ人が設計したから)
 
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そういうわけで、サロン並みの広さのある部屋に巨大なスタインウェイのコンサートグランドが鎮座していたのである。
 
「何か大きなピアノだね」
と青葉は、やっと声を出して言った。
 
「まあ弾いてみてごらん」
と千里が言うので、青葉は溜息をついてピアノの前に座り・・・
 
『猫ふんじゃった』を弾いた!!
 
東雲はるこが、お腹を抱えて笑っている。町田朱美は肩をすくめている。
 
「やはり大宮万葉は面白い人だ」
と私は言った。
 
「著作権使用料を払わなくていいし」(*17)
「確かに」
 

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(*17) 『猫ふんじゃった』は作曲者不明どころか、どこの国発祥かも不明の音楽で、恐らく19世紀頃までには生まれたものである。楽譜が無くても、子供たちから子供たちへと伝搬して世界的に広まってしまったと言われる。この曲は国によって様々な名前で呼ばれている。
 
日本・台湾:猫ふんじゃった、ブルガリア:猫のマーチ、韓国:猫のダンス、フィンランド:猫のポルカ、ルーマニア:黒猫のダンス
 
フランス・ドイツ・中国:蚤(のみ)のワルツ、オランダ・ルクセンブルク:蚤のマーチ
 
ロシア・アゼルバイジャン・ウクライナ:犬のワルツ、チリ:犬のポルカ
 
チェコ:豚のワルツ
スロバキア・ハンガリー:ロバのマーチ
メキシコ:小さなお猿
キューバ:三羽のアヒル
マジョルカ島:馬鹿のポルカ
アルゼンチン:道化師のポルカ
 
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ポーランド:カツレツ
スペイン:チョコレート
 
しばしば「○○のワルツ」と呼ばれているが、この曲はワルツではない!譜面に起こされる場合は、だいたい2/4 または 4/4拍子で記載される。
 

 
イギリスでは"Chopsticks"(箸)と呼ばれるが、同じ"Chopsticks"という名前の別の童謡もある。ネット上ではしばしば両者が混同されているが全く別の曲である。そちらは日本では“トトトの歌”として知られる。
 

 
『猫ふんじゃった』の作曲者としてしばしばあげられる“フェルディナンド・ロー”というのは、ドイツ語の曲名 Floh walzer の"Floh"(蚤)を取り出して F. Loh と読んだジョークであり、真実では無い。
 
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夏の日の想い出・虹の願い(16)

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