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■夏の日の想い出・Long Long Ago(2)
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2021年10月7日(木)22:41。千葉市付近を震源とするM5.9の地震が発生。東京でも一部の地域で震度5強を観測。死者こそ出なかったものの49人の重軽傷者が報告された。終電近い時間帯の地震であったため、大量の帰宅困難者が発生した。また日暮里舎人ライナー(新交通システム)が脱線して、復旧に3日ほど掛かった。
震度5強を観測した地区:川口市三ツ和・宮代町笠原・足立区伊興
震源の千葉市は震度5弱であり、震源から離れた所でもっと強い震度が観測されたのは原因はよく分からないものの、地盤の弱い所が強く揺れたのかも知れないということであった。
足立区伊興というのは西新井消防署に置かれている地震計が記録したものと思われるが、§§ミュージックの女子寮はそこから3km程度しか離れていない。この時間帯は居住者のほとんどが起きていたが、地震の瞬間は大パニックとなった。
とにかく揺れに驚いたし、立っていた子はとても立っていられず全員座り込んだ。
停電したものの、館内放送や廊下および各部屋の非常灯はUPS(無停電装置)やソーラーバッテリーから電源が取られているので(恐らく30分くらいは)生きている。すぐに花ちゃんが館内放送で呼びかけた。
「この程度の地震じゃ寮は崩れないから安心して」
と言って、寮生たちを落ち着かせる。
「ゆっくりと順番に庭に出よう。私が案内するから、フロアごとに降りてきて。順番を守ってね。念のため隣同士で声を掛け合って。エレベータは停まってるから階段を使ってね。まず2階の子。寒くないように何か着て。身分証明書やスマホ・財布以外のものは持たないで」
と言って、下の階の子から順に庭に避難させた。
(リズムは地震に全く気付かずに熟睡していて、隣室のスピカに起こされた。この大地震に気付かないとは!とみんなに呆れられた)
10月上旬なので夜は結構寒いが、万一建物が崩壊したりあるいは火災が発生したりしたら問題である。とにかくも在室していた寮生たちを庭に降ろす一方で、内部用のSNSを使って、全員の安否確認をした。ちょうど在室寮生の避難が終わった頃に仕事中や移動中だったタレント、信濃町ガールズたちの安否も確認された。男子寮のほうも、偶然キュアルームに居た木下君が、館内放送を使って寮生たちを順番に庭に避難させたらしい。
23:44に小さな余震があったらしいが、足立区では揺れは感じなかった。
テレビ番組の収録などは全て中止になったので、マネージャーなどが付いている子はマネージャーと一緒に帰還またはホテルなどに宿泊させ、単独で仕事をしていた子の所へは誰かバイクが使える人を迎えに行かせることにして、迎えが来るまで動かないように言った。
私は恵比寿のマンションに居たのだが、政子には
「マンションは崩れたりしないから寝てなさい」
と言って、ドライバーの佐良さんにバイクで迎えに来てくれるよう頼み、0時過ぎに女子寮に到着した。
コスモスなど地震が起きた後、北千住のマンションから徒歩で1時間かけて女子寮に来たらしい。私にしてもコスモスにしてもマンションのエレベータが停まっているので階段で地上まで降りている。
私が来た時には、山村マネージャーが来ていて、彼の人脈で建築と電気の専門家を連れてきて、問題が無いかチェックさせている所ということであった。こういう時は本当に役に立つ人である。
夜は寒いので、寮生47人は、半数を庭に建っているコロナ隔離用の臨時アパート、一部を本宅の食堂、残りは女子寮の比較的安全と思われた一階のレッスン室に収容した(実際にはみんなそこで眠ってしまった:山村がどこで調達したのか全員に毛布と小型の懐中電灯を配っていた)。
また、山村が連れて来たガスの専門家に厨房のガス器具の点検をしてもらったが、私とコスモスで話し合い、念のため、明日の朝と昼の食事の提供は中止し、お弁当を配ることを決めた。(厨房と本宅の台所以外ではガスは使用されていない)
なお男子寮の方は手が回らないので、念のため電気・ガス・水道は止めたまま寮生たちは部屋に帰そうかと言っていたのだが、フロント係のユキ・ツキ姉妹の知り合いの電気・水道の専門家さんが来てくれて点検したので、向こうも0時過ぎには寮生たちを部屋に戻すことができたらしい。ガスに関しては女子寮のチェックが終わった後、ガスの専門家に男子寮へ行ってもらうことにした。
どっちみち、男子寮も明日の朝と昼の食事提供は中止しましょうと、向こうのまとめ係をしてくれている木下君と男子寮寮母の門脇さんに伝えた。お弁当の手配はこちらと一緒にまとめて行う。
女子寮の点検は朝までには完了したので、全員朝は自室に戻ることができたが、学校はみんな休校になったようである。電気も朝には回復した。
5:11に余震があり、東京はほとんどの地域が震度1だった。私やコスモスなど起きていた人は感じたが、寝ている子は感じなかったであろう。
山村マネージャーが言った。
「今回はUPSのお陰で、非常灯とか放送設備だけ何とかしばらく生きてましたけど、真冬にこういう事態が起きたらやばいですよ。プロパンガスで動かす非常電源設備と、あと屋根に太陽光パネル載せましょうよ」
「太陽光パネルはいいね!」
とコスモスも言うので、これはすぐ手配することにした。プロパンガスで動かす非常電源設備は、松本花子プロジェクトでも使ってるよとコスモスが言うので、同等の設備を導入しようということを決め、これは千里に連絡することにした。
私は7日は女子寮の本宅応接室で、コスモス・山村・花ちゃんたちと一緒に朝まで過ごしたのだが、政子の朝御飯については妃美貴に電話して弁当を4食分くらい持って行ってと頼んでおいた。もっとも政子はいつものように昼過ぎまで寝ていたらしい。
女子寮の点検は朝までには終わったので、仮設アパートやレッスン室で夜を明かした寮生たちも、部屋に戻ったが、そのあと各自の部屋の片付け・掃除をすることになる。これが大変だったようである。
花ちゃんは全員に割れたガラスを片付ける時は軍手などをしてすること、また必ず掃除機を掛けて細かい破片が残らないようにすることと、寮生たちに注意した。軍手はストックしていたものがあったので、全員に配布した。更に数名掃除機を持っていない!という子がいたので(普段の掃除は?)、ひまわりに言って掃除機を10個買ってきてもらい、渡した。
しかしみんな8日の夕方くらいまでにはだいたい片付いたようである。テレビ局などの仕事も一部を除いては8日いっぱいは中止になっていた。
私とコスモスは話し合って、寮生たちに1人1万円の御見舞金を現金で配った。食器や道具などがダメになり、買い直すのに、安月給の子などは結構辛かったようなので、その補償である。これはみんな喜んでいた。またアクア宛てに日々送られてきて大量に滞っている洋服類を
「好きなだけもらっていって」
と公開したら、飛ぶようになくなり、在庫が減って助かった。これらの服は関東近辺の児童福祉施設などにも届けた。
アクアMは地震があった時、赤坂のテレビ局でドラマの撮影中だった。撮影は当然中止となり、後日続きはあらためてということになる。この日は、山城マネージャーが付いていたのだが、
「四輪(アクアのアクア#3)での帰宅は無理でしょうね」
と言い、自宅にいるはずの高村マネージャーに連絡してバイクで迎えに来てもらいましょうと言ったのだがアクアは言った。
「こんな時はバイクでも大変だよ。歩いて帰るよ」
「それがいいかもですね。じゃお付き合いします」
「ありがとう」
それでアクアは山城と一緒に赤坂から代々木のマンションまで約5kmの道を歩いて帰った。アクアは今日の付き添いが若い山城さん(21)で良かったと思った。高村さん(32)とかだと5km歩かせるのは申し訳ない。
道路は車が詰まっていたし、歩道も人が多かったが、何とか1時間ほどでマンションに到着した。
「では私はこれで」
「待って。山城さん、帰る手段無いでしょ?」
「歩いて帰りますよ」
「さすがに無茶だよ。うちに泊まっていきなよ。襲ったりしないからさ」
ここから彼女のアパートまで25kmくらいある。
「そうですね。万一の時は認知だけしてください」
「ボクに性欲が無いこと知ってる癖に」
それで一緒に18階にあがる。彩佳が頑張って片付けしている最中だった。
(実はおキツネさんたちがたくさん出て来て片付けを手伝ってくれていたのだが、山城が来たので、全員隠れた)
「お帰り〜、龍。山城さんいらっしゃーい。よく帰宅できたね」
「歩いて帰ってきた。今夜彼女泊めていい?」
「もちろん、もちろん」
山城は「そうか。この子がいたのか」という顔をしている。
「すみません。お邪魔します」
と笑顔で挨拶して中に入った。
「怪我は無かった?」
「大丈夫大丈夫。びっくりしたけど。電気もいったん消えたけどすぐ点いた」
このマンションは自家発電設備を持っているので、そちらに切り替わったのだろう。高いマンションだけのことはある。
「でも料理の皿がひっくり返っちゃって」
「カップ麺でもいいよ」
「冷凍してストックしてるスープをチンするよ」
それで彩佳がスープを解凍してくれて、食パンをトーストして、3人とも食事を取ることができた。
龍虎はあらためて自分と彩佳の関係を山城に説明した。
彩佳は市ヶ谷のマンションに友人の桐絵・宏恵と3人で“住んでいる”のだが、毎日夕食を向こうで作ってから、ヤリスを運転して料理を代々木のマンションに運んできてくれる。そして龍虎の帰りを待ち一緒に御飯を食べる。その後、“深夜に運転してて事故を起こしたらいけないから”、夜は龍虎のマンションに泊まり、翌朝自転車で自分の大学:渋谷の青山学院に通学する。大学が終わると自転車で代々木に戻り、ヤリスで市ヶ谷に帰宅?する。
つまり彩佳の自転車は代々木に駐めっぱなし!
なお市ヶ谷にいる2人も無事で、今夜は取り敢えず寝られるようにだけして寝て、片付けは明日しようかと思っていると言っていたのだが、彩佳と電話で話した結果、どうせ明日は大学も休講だろうし、明日2人が代々木に来て、3人でこちらのマンションを片付けてくれることになったということだった。
龍虎は「よけいな整理」をされそうな気がするなあと思った。
「だから私たち基本的には別の部屋に泊まっているんですよ。まあたまにはセックスしないこともないですけどね」
と彩佳は言うが、嘘だ〜!こちらが寝てても強制的に“やっちやう”くせに、と龍虎は内心思う。
しかしその付近の“たまにする”というのは、山城さんも雰囲気で察してくれたようであった。きっと“たまにしない日もある”んだろう!
(龍虎の睾丸は現在行方不明中?なのでセックスしても彩佳が妊娠することはない)
「彩佳は基本的にFの部屋に泊まって、ボクはMの部屋に寝ている。今夜、寛菜ちゃんはNの部屋に泊まるといいよ。ひょっとしたら誰か出てくるかも知れないけど、危害を加えることはないから」
「誰かというと?」
「キツネの子供たちなんだけどね」
「へー!」
「朝は起こしてくれるからいいよね。私も寝過ごしそうな時には起こしてもらえるから助かっている」
などと彩佳は言っている。
それで食事が済んで一息ついたところでNの部屋に案内した。
「ここに鏡が立ててあるでしょ?この鏡からキツネさんたちが出入りするんだよ」
「なるほどー」
「この鏡は伏見稲荷とつながっているんだって。だから悪いことするような子は居ないから」
「わりと躾がなってるもんね」
「アクアさんの守り神ですね」
「そうかもね」
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