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■夏の日の想い出・ホームワーク(17)

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(C) Eriko Kawaguchi 2021-01-22
 
白鳥リズムが今年紅白に初出場するので、彼女のバックバンドを結成することになった。名前は「白雪1200km」と決まる。
 
「白雪」というのは昔の国鉄時代の急行の名前で、後に特急に昇格した時に「白鳥」になった列車である。それで白鳥リズムをサポートするのに良い名前として選ばれた。1200kmは(公称)“特急白鳥が走っていた大阪から青森までの距離に、青森から北海道に渡る距離を加えたもの”とした。実際、特急白鳥が大阪から日本海縦貫線経由で青森まで行くのは、当時の路線上で1052.9kmであった。現在、青森から新函館北斗まで青函トンネル経由で行くと152.7kmなので、加えると確かに1205.6kmで約1200kmである。
 
ただしこれは“公称”であり、1200kmの本当の意味は後述する。
 
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「しかし結成といっても・・・」
とリーダーに指名されたギターのマキ(五和真希)。
 
「既に存在していた気がする」
と最年長でサックスのモエ(十勝萌子)。
 
「まあ名前が付いたということかな」
とベースのミチ(三嶋道代)。
 
「名前もあった気がする」
とドラムスのムツ(二見睦子)。
 
「ちゃんと1200という名前を入れてもらったしね」
とキーボードのエミ(四谷恵美)。
 
「でも今まで曖昧に報酬を払っていたのを正式に§§ミュージックと契約を交わしたいということらしいよ」
と白鳥リズムはデビュー以来3年半ほどの付き合いであるバックバンドのメンバーたちに話した。
 
「雇用契約?」
「普通のアーティスト契約。エレメントガードや乙女地区の人たちと同じ形式で、毎月の最低保証+稼働時間が規定時間を越える場合は割増金を払う。だから雇用契約に限りなく近い契約になると思う。詳しい話は悪いけど社長と直接話してもらえる?」
 
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「了解了解」
とリーダーのマキは言った。
 

実は白鳥リズムのバックバンドを2017年春以来務めているのは MCC という名前のバンドであった。彼女たちは2012年に“みぞらんず”の名前でメジャーデビューしてアルバムを出している。最初のアルバムは10万枚も売れた。しかし、その後はあまり売れず、音楽だけでは食べていけなくなり、各々、居酒屋やファミレス・コンビニなどでバイトして食いつないでいた。最初創設されたファンクラブも1年で解散してしまった。2016年いっぱいで事務所やレコード会社との契約も解除になった。しかし解散はせず、MCCの名前に戻って月に1度くらいライブハウスで演奏していた。
 
2017年春に、彼女たちのデビューにも関与した人物が“君たち解散してないのなら、バイトで新人歌手の音源制作の伴奏してくれない?”と持ちかけてきた。その新人歌手というのが白鳥リズムだった。その関わりからリズムのツアーでも伴奏を務めることになり、音源制作には毎回お願いされるのが定着した。
 
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最初の年は、音源制作やツアーの都度、§§ミュージックから報酬をもらっていたのだが、2年目2018年春から「普段から音楽的なことで色々相談したい」と言われ、リズムが個人的に“顧問料”として彼らに毎月1人22万2741円(源泉徴収後20万円になる)の報酬を払うようにした。本当はリズムと、MCCをリズムに紹介した人物が折半していたがそれは彼女たちには話していない。
 
彼女たちはこれ以外に音源制作やツアーの報酬で§§ミュージックから年間100万円程度もらっていたので、これで生活が成り立つようになり、この時点で各々のバイトをやめ、リズムの専従になった。
 
リズムはパンドの人たちは元々自分たちの活動があってお忙しいのだろうと最初思っていたのだが、親しくなっていく中で色々話していると、バンドは開店休業状態で、ファミレスなどのバイトで食いつないでいるということだったので
 
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「中学生に雇われるのはプライドを傷つけるかも知れないけど」
 
と遠慮がちに顧問料の話をしたら
 
「いや。助かる。プライドとかとっくに捨てた」
 
と彼女たちが言ったので、毎月一定の金額を払うことにしたのである。
 
この状態が2年間続いた後、2020年春、コロナの影響でツアーなどができないし、音源制作も大変になるという背景の中で、リズムの収入も実際かなり下がる可能性があった。それでリズムが社長に頼み込み、§§ミュージックがリズムに代わり、彼らに毎月22万の報酬を払う形にした。しかし正式の契約書などは交わしていなかった(この業界はそういうのが非常に多い)。
 
それで今回は、正式な契約をし、待遇を改善するとともに、公式にリズムのバックバンドとして認定するという話だったのである。
 
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MCCのメンバーは、今年春以降はリズムとの直接的な準雇用関係は無くなっているものの2年間リズムから個人的に報酬をもらっていた恩義を決して忘れない。報酬以外に、楽器やエフェクターなどもリズムに買ってもらっていたし、実はかなり個人的なことにまでお金を出してもらっていたりする。
 
メンバーのお母さんが入院して治療費が膨大に掛かるという話になった時や、妹さんが大学に入るのに入学金で悩んでいたら、借用証書も無しで貸してくれたこともあったのである。リズムはその手のお金については「返済は考えなくていい。出世払い」と言っている。
 
リズムは性格的にわりとそういう“漢らしい”ところがある。
 

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彼女たちの元々のバンド名は MCC だが、これはローマ数字で 1200 を意味する。それで、その1200を新しいバンド名に取り込んだのである。MCCそのままでは商標権の問題で難しかった。以前“みぞらんず”という名前を使ったのも権利上の問題である(“みぞらんず”の名前は前の事務所に権利がある)。
 
MCCの由来は彼女たちの名前にある。結婚しているメンバーもいるので↓は出生名であるが、
 
Sx 十勝萌子 モエ
Gt 五和真希 マキ
KB 四谷恵美 エミ
B_ 三嶋道代 ミチ
Dr 二見睦子 ムツ
 
メンバー全員、苗字に数字が入っており、その数字を“掛け合わせる”と
 
10×5×4×3×2=1200
 
になるのである。それをローマ数字で書いて MCC という名前になった。そういう訳で、MCCといっても工具メーカーや関西の食品会社とは関係無い。
 
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一方同じく紅白初出場のラピスラズリにもバックバンドが作られることになった。ラピスラズリはこれまで様々なバンドや、インペグ屋さん経由で集めた寄せ集めのミュージシャンの伴奏で音源制作をしていた(ラピスラズリはコロナのおかげで、まだリアルのツアーを経験していない)。
 
バックバンドの名前は“愛の十字架”である。これはサルバドール・ダリの宝石アートに由来する。ダリは多数の宝石アートを制作しているが、その中にはラピスラズリを使用したものが幾つもある。その中でも特に印象的な『ラピスラズリの十字架(Lapis Lazuli Cross)』から、この名前を採っている。
 
(どんな作品かはネットで検索してみて下さい)
 
ダリの宝石アートでラピスラズリを使用した主な作品:
復活・平和のメダル★・爆発・ラピスラズリの十字架★・幻覚の花・天使の十字架★
 
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↑★を付けたものはラピスラズリの大きな塊を使用した作品。
 

「えっと、皆さんよろしくお願いします」
と挨拶したのは、リーダーに指名されたドラムスのレイ(鷹木礼子:たかぎのりこ:“れいこ”と誤読されるのでそれをステージネームにした)である。
 
彼女はエレメントカードの元ドラムスである。アメリカ国籍なのだが、アクアの伴奏の仕事があまりに忙しすぎてうっかりビザの期限を切らしてしまった(気付いたのが期限の翌日だった)。§§ミュージックの弁護士が法務省と交渉してくれた結果、直ちにいったん退去すれば、オーバーステイの前科とはしないと言ってもらえたので、帰国することにし、再度ビザが下りるのはいつか分からなかったので、いったんエレメントガードを退任した(代わりに川井唯が入った)。
 
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その後、再度ビザが降りて再来日できたが、ファンクラブ月報の編集などの裏方として活動していて、時々様々な歌手の音源制作のお手伝いをしていた。ドラムスが専門だが、ギターやベースも弾ける。
 
現在は既に日本の永住権を取得しているので、今後はビザの問題は起きない。
 
「わりと見知った顔ですね」
と言ったのは、ギターのアンナ(真鍋亜矢)。彼女は以前ナディアルというバンドをしていたが、解散後結婚して一時期引退していた。その後、復帰してスタジオミュージシャンとして活動していた。§§ミュージックの歌手の音源制作に多く関わっている。旧姓は山下で、スイートヴァニラズのEliseの実妹である。
 
「このメンツなら信頼感があるなあ。私が最年少かな。皆さんよろしくお願いします」
と言っているのはキーボード担当のジェリ(冨田瀬梨花)。彼女は元はバレンシアというバンドで是梨(じぇり)の名前でキーボードを弾いていた。バレンシアが事務所に放置され、自然消滅してしまった後、スタジオミュージシャンをしていて、レイやアンナとも多く出会っている。
 
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「報酬につられてOKしたけど、無茶苦茶忙しくなりそうで少し後悔してる」
などと言っているのは、ベースのマリア(喜納満里)。彼女は赤羽ドラゴンというアマチュアバンドのベーシストだったのだが、赤羽ドラゴンはドラムスのレイア(羽藤玲香)が桜野レイアの名前で歌手デビューし、ギターのユイ(川井唯)はアクアのバックバンド“エレメントガード”のドラマーになったので、マリアは1人取り残されてしまう。レイアやユイのコネで§§ミュージックの歌手の音源制作やツアーで使ってもらっていた。それでレイやアンナとも顔見知りである。
 
ちなみに彼女は戸籍上は男性である。“満里”の名前は元々は“みつさと”と読なでいた(既に読み方は“まり”に変更済み)。むろんそのことをここに居る3人は以前から知っている。
 
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「この仕事やると性転換手術受けるお金を稼げるよ」
「お金を稼げるのはいいけど、性転換手術を受ける時間が無くなるとかは?」
「一週間くらいはお休みもらえると思うよ」
「1週間だけなの〜〜〜!?」
 
「ちなみに今身体はどこまで直してるの?」
「あり・あり・あり」
 
(おっぱい:あり、ちんちん:あり、たまたま:あり、という意味)
 
「まだ去勢してないの〜〜?」
「だってお金が無くて。タマ取るだけでも20-30万円するし」
「ね、社長に言ったら、去勢手術代くらいは貸してくれると思うから、今月中に手術しときなよ。1月明けたらたぶんかなり忙しくなる」
「そうかな?」
「私が言ってあげるから」
「じゃ頼もうかな」
 
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それでマリアはレイに社長に打診してもらった。
 
「ああ。そのくらい貸してあげるよ」
とコスモスは快諾した。
 

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それでマリアは12月中に去勢手術を受けることにした。
 
万一急変したような場合に親族が付いていけないと言われたので、少し悩んだ末に、妹に頼むことにした。
 
「妹さん、実家に住んでるの?」
とマリアは川崎ゆりこ副社長から訊かれた。
 
「はい。徳島なんです」
「東京に出てくるの?」
「はい。Goto使って出て来ようかなと言ってます」
「それ禁止。迎えに行かせるから」
「え〜〜!?」
 
「だって妹さんが感染して、それでマリアちゃんが感染して、それでラピスラズリに感染させたりしたら大変なんだから」
 
それでゆりこの指示で、§§ミュージックのホンダジェットが徳島飛行場までマリアの妹さんを迎えに行き、郷愁飛行場に連れて来た。そしてマリアが手術を受ける病院まで§§コールセンターのドライバーが運転する車で搬送する。
 
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このVIP待遇に妹さんもマリアも恐縮していたが、事務所としてはラピスラズリが万一コロナに感染した場合、下手すると数百億レベルの損失が生じるのである。
 

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