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■夏の日の想い出・ホームワーク(15)

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セシルはその日、ドラマの撮影と言われて朝からテレビ局のスタジオに入った。
 
行ってみると『キャサリンの事件ファイル』という推理ドラマであった。セシルは何も事情を聞いていなかったのだが、先日から数回共演して仲良くなっていた坂出モナが寄ってきて
「わあい、またエマちゃんと会った」
と言って“エア・ハグ”する。
 
「台本薄いね。30分ものかな?」
と言ったら
「あれ?話聞いてない?これ2時間ドラマなんだけど、役者さんに先の展開を知らない状態で演技して欲しいということで、台本も分割して渡すらしいよ」
とモナが言う。
 
「へー!!」
 

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モナの話だと、これは榊森メミカ主演の山村美紗原作・推理小説“キャサリン”シリーズのドラマ化で、月に1回、2時間ドラマ枠で制作放送されているらしい。
 
「へー、女探偵か」
「キャサリンシリーズって、山村美紗さんの小節の中ではかなりのボリュームあるんだけど、主人公が外人さんというので、主役の選定が難しくて」
 
「ああ。日本に定住している外人女優さんは少ないだろうからね」
「過去には、かたせ梨乃さん主演で随分撮っているらしい」
「女性にしては割と背が高い方かな。でも榊森メミカさんも背が高いね。金髪だし」
「身長176cmらしいよ、髪はこのドラマのために染めただけ」
「あっそうなんだ?でも176cmとかすごーい。バレーとかに誘われそう」
 
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「小学校の時はミニバスに入ってたって。お祖母さんがロシア人らしい」
「じゃクォーターか」
「でもここだけの話だけどさ、クォーターは本当だけど、実は彼女、男の子だから身長が高いという噂もあるのよね」
「男の娘?」
「そうそう。一時期休業してたのは、性転換手術を受けるためだったという噂もある」
「へー」
 
セシルはメミカに急に親近感を覚えた。でも性転換手術しちゃったのか。ボクもその内、性転換手術を受けることになるのかなぁ。
 
(セシルはいまだに自分が女の子の身体になっていることに気付いてない。なぜ気付かないのかは知るよしもない)
 
「でも可愛いのに」
「だよねー。あれだけ可愛ければ、男になるなんてもったいないもん。女の子になるべきだったと思うよ。美少年はどんどん性転換するといいよね」
 
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「それ割と賛成だけど、あまりやり過ぎると、将来美少年が産まれなくなる気がする」
「うん。それは問題だ」
とモナも言ったが、彼女の言い方に何か微妙なものを感じた。誰か親しい美少年がいるのかな?という気もした。
 

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「基本的にその主役設定の難があるから、ドラマ化は苦労しているみたい。過去には、キャサリン物を藤田まことさん主演でドラマ化したこともあるって(**)」
 
(**)キャサリン物の中でも特に名作のひとつとされる『花の棺』である。
 
セシルは一瞬、藤田まことさんが、金髪のロングヘアのかつらをかぶり、スカートを穿いているところを想像した。
 
「藤田まことさんが女装したの?」
 
「あ、違う違う。藤田まことさんは狩矢警部役。つまり主人公をキャサリンから狩矢警部に変更して撮ったんだよ」
 
「びっくりしたぁ!」
 
モナによると、キャサリンもののレギュラーは、アメリカの元副大統領の娘であるキャサリン・ターナー、彼女の恋人で大学の先生である浜口一郎、そして京都府警の狩矢警部、という3人のみらしい。これを今回のシリーズでは、榊森メミカ、前田智士、広河信一郎さんが演じている。狩矢警部というのは山村美紗作品の多くに、シリーズをまたいで出演する人物で、テレビドラマではこの人を主人公にした作品が多く作られているという。
 
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狩矢警部のモデルは原作者によると若林豪さんだったらしく、実際過去のドラマでは若林さんが多くこの役を演じている。広河信一郎さんは過去に刑事ドラマに何度も出演しており、ヒゲもある。学生時代にはラグビーをしていたという体格の良さで、若林豪さんのイメージに近い人物として選定されたということだった。
 
「前田智士くんは視聴率稼ぎでしょ」
「えーっと。今のは聞かなかったことにしよう」
 

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プロデューサーさんが出演者を集めて簡単な作品解説をした。
 
今回のタイトルは『キャサリンの事件ファイル・茶道家元殺人事件』で、この作品をキャサリンを主役としてドラマ化するのは初めてであるらしい。過去には、岡江久美子さん主演で、主人公を町村佐知子という人物に
変更して土曜ワイド劇場で放送されたことがあるだけという。結末が悲しいものの美しい作品で、これまでドラマ化されなかったのが惜しい作品だと言っていた。
 
茶道に関するドラマなので、主要人物の中で茶道の経験が無い人には事前に講習などを受けて頂いておりますとプロデューサーさんが説明する。なるほど、それでこないだ講習を受けたのかとセシルは納得した。聞くとモナは茶道部の友人から色々教えてもらったという。友人にそういう人がいれば、変に講習を受けるより詳しく教えてもらえそうだ。
 
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「基本的に家元の地位を狙って、親族が次々と殺害されていく物語です。原作では死ぬのは家元を含めて3人+犯人なのですが、今回のドラマでは大サービスで5人+犯人の6人が死ぬ設定になっています」
とプロデューサーさん。
 
「ドラマでは30分に1回は死体を転がせと言うからね」
などとモナが言っている。30分単位なら、冒頭の犠牲者も含めて最低4人は殺されないといけないわけだ。
 
それで登場人物の人間関係が図示される。何か複雑に婚姻線が引かれている。
 
家元:良孝
先妻の娘:夏子
その夫:頼信
後妻:涼子
後妻の娘:秋子
その夫:邦彦
愛人1:加代子
その娘:冬子
愛人2(高弟):千草
その娘:春子
愛人3(女優):まゆみ
その娘:たつみ
愛人4(陶芸家):陽子
その息子:乾(いぬい)
 
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「原作では千草・まゆみ・陽子には子供が居ないのですが、サービスで追加しておきました」
などとプロデューサーさんは言っている。要するにたくさん殺せるように、人物を増やしたのだろう。
 
「このパターンだと、唯一の男の子は絶対殺されそうだね」
などとモナは言っている。確かにそうだろう。男の子がいれば、上に何人女の子がいても、その男の子が跡継ぎとしては絶対的に有利である。
 

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それで演じている人たちにも、犯人が誰か分からないように、そして誰が次に殺されるか分からないように、台本は少しずつ渡しますので、その場で覚えて演技してくださいと言われる。殺人場面では殺される役の人だけにその部分を渡すらしい。そのシーンでは他の人は誰が殺されるか分からないから、アドリブで演技して欲しいと要請された。
 
「そういう進行ならこれ丸一日かかるよね?」
とセシルはモナに尋ねる。
 
「そう言われてきたよ。丸一日の撮影なんて体力使いそう」
とモナは言ったが、セシルは
「助かる〜。今日はこれ1本だけか」
と言った。
 
毎日3〜4件の撮影をこなしているので、1本だけというのは、普段の日に比べたら楽だとセシルは思った。
 
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家元の6人の子供は、夏子:谷里あいり、秋子:岡原襟花、冬子:羽鳥セシル、春子:坂出モナ、たつみ:森風夕子、乾:木田いなほ(男装)という配役である。何か有名女優とか、モナや森風夕子みたいな人気アイドルもいるから、自分はわりと早く殺される部類かな、とセシルは思った。
 
最初の犠牲者は、若手人気女優・岡原襟花が演じる秋子であった。秋子が実は後継者として最も有力候補だったらしい。そして2番目にモナの予想通り、唯一の息子という設定の乾(演:木田いなほ)が殺される。セシルは木田いなほさんの男装って似合ってるなあと思って見ていた。
 
「彼女、以前のドラマで性転換して女の子になる男の子を演じたこともあるし、元々中性的な雰囲気あるよね」
などとモナは言っていた。男の子設定なので髪が短いのだが、それが自毛ということだった。女子としてはベリーショートである。まあ長い髪の女の子を演じる時はウィッグを付ければ済むことだろうけど。
 
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そろそろ自分が殺される番かなあと思っていたら、次は家元の妻だった。セシルは自分もお茶を飲んで苦しむと台本に書かれていたので、自分も一緒に死ぬのかなと思ったら、セシル演じる冬子は毒の量が少なかったために助かるという設定で、スタジオの隅に用意された病室のセットのベッドの上で見舞いに来てくれた長女・夏子(演:谷里あいり)と会話するシーンを撮影した。
 
「死んだかと思った」
とそのカットの撮影が終わってからモナに言う。
 
「名演技だったよ。ここでいきなり2人死ぬのかと思った。でも考えてみたら奥さんは早めに殺されるべきだったんだよね。家元はいづれ殺されるだろうけど、家元本人の前に奥さんを殺しておかないと、財産が全部手に入らないもん」
とモナが言う。
 
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そのあたりの遺産相続のルールをセシルは知らなかったのだが、モナが解説してくれた。
 
「だったら実は夏子さん、かなり(犯人として)怪しくない?」
「うん。でも谷里あいりさんはこれまで汚れ役はしたことない気がする」
「ああ」
 

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そして4人目でモナ演じる春子が殺されてしまう。
 
「あらあ、ここで退場か。お疲れ様」
「うん。私はもっと早く殺されるかと思ったんだけど」
とモナ。
 
「残るは家元の他は、谷里あいりさん演じる長女夏子、私の演じる冬子、森風夕子ちゃん演じるたつみの3人か。この中の誰かが犯人なんだよね?」
 
「常識的にはそうだろうね」
とモナ。彼女も原作は読んだことがないらしい。
 
「あれ?殺されるの5人と言ってた?」
「あ、そうだった」
「5人目は家元だろうから、これで子供の殺されるのは終わり?」
「かもね」
 
「そしたら犯人は私ってことは?だって犯人が被害者を装うのってありがちじゃん。わざと死なない程度の毒を自ら飲んで、疑いを逸らすって、推理小説ではよくあるパターンだし」
 
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「あり得るかもね〜」
とモナも言った。
 

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