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■夏の日の想い出・ホームワーク(6)
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目次 8
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恵真がその日、学校で授業と授業の間の休み時間に、利美やリアなどとおしゃべりしていた時、恵真の手帳から1枚の紙が落ちた。
「落ちたよ」
と言ってリアか拾ってくれる。
「ありがとう」
「何それ?」
「あ、昨日たまたま宝くじ売場の前を通ったんで買ったナンバーズ」
「へー。いくらか当たった?」
「知らない。いつ抽選あるのかなあ」
「ナンバーズは販売したその日の内に抽選があるよ」
「へー。そうなんだ?」
「昨日買ったのならもう発表されてるよ。当選番号見てあげようか?」
と言って、利美が自分のスマホで当選番号を確認してくれる。
「ん?」
と利美は声をあげた。
「どうかした?」
「待って」
と言って、利美は恵真が買っていたナンバーズの投票券とスマホの表示をじっと見比べている。
「1等が当たってる」
と利美は言った。
「マジ?」
「すごーい!」
と恵真とリアが声をあげた。世令菜や蘭も寄ってくる。
「宝くじの1等が当たったの?」
「ナンバーズだけどね」
「いくら当たった?」
「えっとね」
と言って利美は当選金を確認する。
「これストレートで買っているから、112万3900円」
「うっそー!?」
と声をあげたのは恵真本人である。
恵真は100万もの大金をひとりで受け取るのが怖い気がして、幸い少しなら時間が取れるという利美ちゃんに付いてきてもらうことにした。
午前中の授業が終わった後、今日は偶然にも彼女と一緒に“平安村”に行くことになっていて、学校に迎えに来てくれる本田マネージャー(男性)の車で熊谷市の平安村に移動することになっている。
それで本田さんに話したら
「じゃ僕も銀行内まで付き合いますよ」
と言ってくれた、
車を付けやすい、みずほ銀行の郊外の支店に寄ってもらう。
専用駐車場に駐め、3人で窓口に行った。
「すみません。ナンバーズが当たったので、当選金を受け取りたいんですが」
「はい。当選券をお預かりします」
と言って確認している。
「112万3900円当たっていますね」
と窓口の人が言うと、本田さんが「すげー」と驚いている。
「現金でお受け取りになりますか?振込にしますか?」
「あ、振込でもできるんですか?」
「はい。当行の口座をお持ちでしたら、そこに振り込みますが」
「ここの口座は持ってはいないけど」
と恵真は言ったのだが、本田さんが
「ついでに口座作っておいたら?」
というので作ってもらうことにした。
「あ、でも時間大丈夫ですか?」
「ああ。大丈夫、大丈夫」
それで恵真は口座申込用紙に「浜梨恵真 2005.2.25 女」記入し住所も尾久の住所を書いた上で、いつも持ち歩いている印鑑を押す。身分証明書としてパスポートを提示したら、それで受け付けてもらった。
「では本日中に振り込みますから」
「よろしくお願いします」
なおキャッシュカードについては、1週間以内に自宅に配達記録で郵送しますと言われたのだが、本田さんが「この子ひとり暮らしだし、タレントで朝から晩まで仕事しているから郵便局とかに取りに行くこともできない」などと言ってくれ、本田さん自身が保証人としてサインしてくれたこともあり、特例で、その場でカードを発行してもらえた。おかげで、今日にもこのカードで預金を引き出せる。
それで3人は銀行を出て本田さんの車で熊谷市に向かった。
「本田さん、ありがとうございました。助かりました」
「カード受け取れないと永久にお金引き出せないもんな」
「でも助かる〜。実は8日以降、何かとお金が掛かって、お金足りないーって思ってたのよね。お母ちゃんに無理言って30万貸してもらったんだけど、100万あったら助かる。30万もお母ちゃんに返せる」
利美(白鳥リズム)はその30万ってクレカのキャッシングとかで借りたのではと心配した。
「初期段階では色々入り用があるよね。どうしても足りなかったら言ってね。私が貸してあげてもいいし」
「ありがとう。でもたぶんこの100万で何とかなると思う」
「よかったよかった」
「でもパスポート作ってたのね」
「身分証明書に必要だから作ってと事務所から言われたのよ。私まだ15歳だから免許証は取れないし、マイナンバーカードは発行に時間がかかるから。このパスポートは昨日受け取ったばかりで、これが初行使」
「おお、それは縁起がいい」
実を言うと、昨日仕事中に1時間ほど時間が空いたのでパスポートを受け取りに行って、その時宝くじ売場のそばを偶然通り掛かったので、朝言われたことを思い出してナンバーズを買ったのである。番号はスマホにメモしていた。買い方が分からなかったので、売場のおばちゃんに教えてもらった。なお、ナンバーズはトト(スポーツ振興くじ)と違って購入に年齢制限は無い。
リズムちゃんもまだ15歳(誕生日は12/3)だが、芸歴が長い(小学生の時から信濃町ガールズをしていたと聞いた)ので、やはりパスポートを所持していて過去に何度か海外に写真集撮影や番組ロケで出ているらしい。恵真は彼女からパスポートの査証欄を見せてもらいスタンプがたくさん押されているので「すごーい」と声を挙げた。
「あ、でも有効期限が1月までだ」
「そうそう。実際には今年は海外に出られないから放置してたけど、来月までには更新手続きしなくちゃ。でもとりかへばや物語が撮了してからかな」
恵真は利美ちゃんもパスポートの性別Fなんだなと思った。恵真もFで発行してもらっていたのである。やはり見た目が女の子なのにMになってたら、出入国で揉めそうだから、女の子にしか見えない子にはちゃんとFで発行してくれるのかな?
ローズ+リリーの『ホームワーク』制作は続いていた。
“地学”『太陽系の歌』は、水星、金星、地球、火星、木星、土星、天王星、海王星と1〜8番からなっており、各々は8小節の“一部形式”を基本単位とする。間奏8小節×2を入れて合計80小節の歌である。但し最終的に、マリのピアノソロによる前奏16小節が加えられた。
天体望遠鏡を持っていて写真もプロ級である雨宮先生が、自分で撮影した各々の惑星の写真をお持ちだったので、それをPVに利用させてもらった。各写真を背景にして、その背景の前で目立つ色(原則として白か黒)のドレスを着た私とマリが歌っている。
伴奏はスターキッズの標準構成(Gt.近藤 B.鷹野 Dr.酒向 Mar.月岡 Sax.七星 Pf.詩津紅)で、私自身がヴァイオリンを弾いている。
『DNAさんからお手紙着いた』については、氷川さんが
「歌詞が『やぎさんゆうびん』に似すぎている」
と指摘した。その曲は、まどみちお(1909-2014)作詞、團伊玖磨(1924-2001)作曲で著作権がバリバリ有効である。それでこの曲は音源化は諦めることにした。
するとマリは「だったらこれ入れて」と言って『元素の歌』という歌詞を持って来て、曲を付けてと言った。
元素の歌(作詞者不明)
水兵離別ボクの船、なぁに間がある。シップはすぐ来らぁ。
斬るかスコッチ馬喰(ばくろう)マン。鉄のコルトに銅炎がげる。明日は千秋楽。
「まあ作詞者不明だろうね」
「イオン化傾向もあるよ」
リストにゃ金(かね)借るな、間借り当てにすな、酷すぎる借金。
私は、昔KARIONのアルバムで『Shipはすぐ来る』という曲をやったなあと思いながらこれに新たな曲を付け、近藤さん・鷹野さん・酒向さんの3人だけの伴奏で歌って収録した。
これのPVもマリ監修のアニメで制作している。元素記号がずっと表示されていくアニメである。
それに加えて出港した船に置いてけぼりになった水兵姿(セーラー服!)の木下宏紀(信濃町ミューズ)、日本刀を持って中段の構えで対峙する私とマリ、拳銃を持って決闘をする私とマリ、そしてお相撲をする2人(駿河海と伊豆里)+行司(紅川相談役!)という映像も写る。
木下君は撮影しようと言っていた時、たまたま居合わせたので徴用したが、後から「せっかく木下君がセーラー服着るなら、下はスカートが良かったのに」という声が随分あった。どうもファンは木下君に女装させたいようである。彼の所には「ウェディングドレス同士で結婚しませんか?」という女の子ファンからのファンレターがしばしば来るらしく、悩んでいた(彼自身は女の子が好きだし、自分には女性傾向は無いと言っている)。
決闘では、マリはコルト・アナコンダ(34cm)で、私はコルトディテクティヴ・スペシャル(17cm)を持つ。当然私が負けて倒れるのだが、銃のサイズが違いすぎる!と言われた。
駿河海さんはマリの“大食い仲間”で親しいので出てもらった。伊豆里は駿河海と親しいので芋蔓勧誘である。紅川相談役は『とりかへばや物語』の撮影で沖縄から出て来ていた所を出演してもらった。
“音楽”『リモート合唱の歌』は、ローズ+リリー&信濃町ガールズ名義でクレジットすることになる。
PVでは、私やマリが信濃町ガールズの子たちに譜面を配ったり、歌唱指導している所が映る。ただし全て1人ずつ小さな部屋でである(大田区のサテライト=あけぼのTV本部)の個室群を使用している。
そして信濃町ガールズのリーダー今川容子(中3)の指揮、同じくサブリーダーの水谷康恵(中2)のピアノ伴奏で、一斉に歌を歌う。全員伴奏を聴くためにヘッドホンを付けている。私とマリはみんなと一緒に歌っているが、各々ソロパートがあるので、そこを歌う形になっている。なお、公開された音源では、合唱が始まるまでの準備をしている場面で2台のヴァイオリン合奏による前奏が流れていたのだが、それは私とスターキッズの鷹野さんで後から合奏したものである。
合唱参加しているガールズは12人で、それに指揮者・ピアニスト・私・マリの4人を入れてPVの画面は16分割されていた。16分割の中央4コマに私とマリ、指揮者・ピアノが入っているという構図である。
実際の制作では実はピアノは録音である。ピアノをリアルタイムで弾いてしまうとリモートの泣き所で、音の伝達時間差のため、どうしてもタイミングがうまく取れないのである(歌がピアノに対して微妙に遅れる感じになる)。これは春に、あけぼのテレビ放送初日にやった“少年少女合唱隊”でも同様で、あの時、ピアニストの川崎ゆりこは実際にはピアノは弾いておらず弾いているふりだけして、合唱団員は録音された伴奏を聴きながら歌っていた(気付いた視聴者がいてネットで指摘していたのでコスモスが回答を掲示していた)。
なお女声合唱(ソプラノ8人・アルト4人)なので、参加しているガールズはほとんどが女性メンバーなのだが、ひとりだけ男子メンバーの上田信貴も入っていた。彼はちゃんとショートパンツのユニフォームを付けて歌っている。マリが随分「スカート穿きなよ」と唆し、結構悩んでいたが。
彼はソプラノパートに入っている。
上田信貴がソプラノで歌えるのは「まだ声変わりしてないから」と本人は言っているが、中3でまだ声変わりしてない問題について「きっと(ある理由で)永久に声変わりは来ないよね」という噂がファンの間にも、ガールズの女子メンバーの中にもあるようである!彼は男子寮に住んでいるのだが、ゆりこが彼に女子寮の鍵を渡し「部屋は用意したから、いつでも引っ越して来ていいよ」と言ったらしい!
「妹さんも一緒でいいよ」
「妹?」
「まだ弟なんだっけ?妹になってないの?」
「まだちんちんあるみたいですよ」
「じゃ、まだ玉取っただけ?のぶちゃんはもう全部無いもんね。ちんちん無ければ、割れ目ちゃん作ってなくても女の子の仲間ということでいいんだよ。だから女子寮においでよ」
「すみません。ボクに男性生殖器があるかないかは内緒にさせてください」
存在するなら内緒にする必要はない気がするが!?
「でも高校に入る前にはラヴィアやヴァギナ作る手術も受けて完全な女の子になるんでしょ?ヴァギナやクリちゃん作る材料にするのに切断したおちんちんは冷凍保存してあるという噂があるけど」
「えっと・・・完全な女の子になった方がいいんでしょうか?」
「別にAVに出演させるじゃないから男性との性交機能は特に必要ないけど、もし戸籍上の性別を変更するなら、ヴァギナは無くてもラヴィアは必要だよ。もし手術受けるなら3ヶ月くらいお休みあげるよ、ちんちん切るだけなら短期間の休養でいいけど、造膣は傷が治るのに2〜3ヶ月かかるんだって?**君が言ってたけど」
「彼、性転換したんですか?」
「口を割らないのよねぇ。怪しいと思ってるんだけど。のぶちゃんはどうする?」
「どうしよう?」
と彼(既に彼女かも?)は悩んでいたらしい。
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