広告:メイプル戦記 (第2巻) (白泉社文庫)
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■夏の日の想い出・少女の秘密(20)

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4月1日(土)。千葉市内のファミレスで、ローキューツから3月いっぱいで退団する選手の送別会と4月から入団する選手の歓迎会を兼ねてのパーティーを開いた。
 
主将を退任する愛沢国香は今月下旬に結婚式を挙げるので、その披露宴にも何人か出席する予定のようである。留学する須佐ミナミはイースター前に向こうは休みに入るので、イースター明けの4月17日から向こうに合流するとのことで、14日に渡米するらしい。
 

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「バスケット界の構造改革で、皇后杯へのルートが整理されるみたいですね」
と揚羽が言うので
 
「うん。今までの社会人選手権からのルートが無くなる。総合予選の方に一本化されることになった」
と私は答えた。
 
これまでは、社会人選手権、インカレ上位、インターハイ優勝、地区予選など複数のルートからオールジャパン(皇后杯)に行くことができたが、2018年正月に行われる次のオールジャパンからは、地区予選から勝ち上がっていく方式に統一されることになった。
 
千里から得た情報で、今このようなシステムになることが決まりつつあると私が説明する。
 
「半年掛けて予選をやっていく訳か・・・」
 
・夏頃に行われる都道府県予選(1次ラウンド)で優勝した47チームが2次ラウンドに進出する。
 
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・9月頃に行われる2次ラウンドで上位15チームを決定する。
 
・11月頃に行われる3次ラウンドで勝ち上がってきたチームとWリーグの全チームによる試合が行われる。
 
・勝ち残った8チームでお正月の皇后杯が争われる。
 

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「ということはWリーグのチームに勝てない限り、皇后杯本戦には出られないわけか」
 
「今までの3回戦までに相当する部分が11月の3次ラウンドに移行されてしまうからね」
 
「各都道府県から1チームだけというのも辛いですね」
「うん。東京とか愛知みたいな激戦区はとっても辛い」
「他人事だけど、40 minutes、江戸娘、ジョイフルゴールドはお互い辛い」
「3つともプロレベルのチームなのに、どこか1つしか2次ラウンドに行けないもんね」
「まあ千葉も、うちは千女会に勝たないといけないけどね」
「うーん・・・」
「きついなあ」
「向こうも『きっついなあ』とか言ってますよ」
 
「まあ新戦力も入ったことだし頑張ろう」
「音歌ちゃんがきっと毎試合40点取ってくれるんじゃないかな」
「それは無茶です!」
 
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4月1日は、龍虎が通学することになったC学園で入学式が行われた。
 
龍虎は学校最寄り駅近くのマンションで両親と一緒に起きて朝御飯を食べる。この日は土曜日で公立高校に勤める両親は時間の自由が利くので、昨晩からこちらに来て一緒に泊まったのである。
 
プリントを見ながら持って行くものを確認する。
 
「あら、体操服が要るんだ?」
「あ?そうだっけ?」
「入学式、オリエンテーションの後、身体測定をするので体操服を用意してきてくださいと書かれているよ」
 
「あっと、こないだ買ったまま、まだ名前を書いてなかった」
と言って、龍虎は慌てて先日買った体操服セットの袋を持ってくる。
 
「はい、マイネーム」
と母が渡してくれるので、自分で名前を書くことにする。
 
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紙袋から最初に取り出したのは夏用の半袖・半ズボンのようである。それはあとでいいやと思い、更に中から取り出す。
 
「ん?これ何だっけ?」
と言いながら、袋を開けてみる。
 
「・・・・・」
龍虎はそれを見て、固まってしまった。
 
「あんた、それ着るの?」
と母が訊いた。
 
「まさか。いくら僕でもこれ着るのは無茶」
と龍虎は言うが
 
「いや、あんたには着れる気がする」
と母は言う。
 
そこには女子用スクール水着があった。
 
「女子生徒ばかりだから、うっかり間違って女子用を渡しちゃったのかな。男子用と交換してもらう?」
 
「そうだなあ」
「それとも女子用水着を着る?」
 
「どうしよう?」
と龍虎が迷うように言うので、父は「なぜ迷う?」と思わず突っ込みたくなった。
 
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入学式は9時から行われ、1時間ほどで終了した。各々の教室に入る。担任の山科先生からあらためて「皆さん入学おめでとう」と言われる。生徒手帳が配られるので、出席番号トップの天羽飛鳥(松梨詩恩)から順に名前を呼ばれて出て行き生徒手帳を受け取った。
 
龍虎が田代(たしろ)なので、ひとつ前が武野昭徳(たけの・あきのり)君、ひとつ後が田中成美(たなか・なるみ)ちゃんである。
 
「どんな顔で写ってる?いきなりバシャッと撮られたからひどい顔になっちゃった」
などと武野君が生徒手帳の最後のページにある身分証明書欄の顔写真を見せる。本人はけっこうイケメンなのに、確かに「匿名少年A」みたいな感じの顔で写ってしまっている。
 
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「あれ?田代君、それ女子の制服で写ってる?」
と武野君。
「これ着てくださいと言われたんで着て写真撮影した」
と龍虎。
 
「女の子に間違われたのかな」
 
「実際、龍は女子制服のブレザーを着ているからそれで問題無いはず」
と少し後ろの席にいた(南川)彩佳がわざわざ龍虎の席の所まで来て言う。
 
「しかし田代君、さすが可愛く写っているなあ」
と武野君が言う。
 
「まあ女の子アイドルに見える写真だよね」
と彩佳。
 
「成美ちゃんは?」
「こんな感じ」
と言って成美が見せてくれる。
「おお、成美ちゃんも可愛く写っている」
 
「たぶんいきなり撮られるだろうと思ったから、最初から顔に意識を集中しておいた」
などと彼女は言っている。
 
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「彩佳は?」
と龍虎が尋ねる。
 
「これ」
と言って見せてくれた彩佳の写真はかなり微妙である。
 
「だっていきなり撮るんだもん」
と彩佳も文句を言っている。
 
「結局学生服で写ったのは僕だけか」
と武野君。
 
「男子3人入るという話だったけど、結局2人になっちゃったのかな」
と彩佳も言っていた。
 

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教室の後ろの方に並んでいる保護者向けの説明などもあった上で、11時前に保護者はいったん退席ということになる。
 
それで生徒だけになった所で、クラス委員や各種委員を決める。最初に立候補を募ったが、名乗り出る生徒がいなかったので、担任から
 
「では誰も名乗り出なかった時のために考えておきました」
と言って先生から指名がある。
 
武野君は美化委員、彩佳は図書委員に指名された。クラス委員は日高洋子が指名された。
 
「ぼくは指名されなくて助かった」
と龍虎が言う。
 
「龍に委員会活動は無理だよ。忙しすぎるもん」
 
実際飛鳥(松梨詩恩)も委員には指名されていない。彼女はたぶん龍虎以上に忙しい。
 
「彩佳は中学1年の時にも図書委員したね」
「うん。その経歴があるから指名されたんだろうな」
 
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そのあと全員自己紹介をする。また出席番号1の飛鳥から順に名前と出身中学、趣味など、中学時代に部活などをしていた人はその内容、また簡単なメッセージを言ってくださいと言われる。
 
飛鳥は
 
「部活は小学生の時から中学1年まで合唱部だったんですが、歌手としてデビューしたので辞めました。私、芸能のお仕事をしているのでしばしば休んだり早退したりすると思いますが、出てこられたら頑張って勉学に励みますのでよろしくお願いします」
と言って拍手されていた。
 
出席番号2番の池田由美はC学園中学からの内部進学ということであったが、人前で話すのが苦手のようで、真っ赤になりながら
 
「趣味は手芸とおやつ作りです。中学の時も調理部だったので、高校でも続けたいです。いつか王子様が・・・みたいな憧れはありますけど、それ言うと、どうして女子校に来た?と言われます」
 
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と言って、最後は爆笑されながらも拍手をもらった。
 
武野君は
「趣味はピアノで将来はピアニストになりたいと思っています。部活は籍だけ合唱部に置いておいて、大会などに伴奏で出ていました。中学の時も遠くのコンクールに出るのに結構休んだのですが、高校でも休みそうですけど、よろしくお願いします。入学準備説明会に来た時は、まさか男子は僕1人?と思ったのですが、もうひとり見つけたのでホッとしました。男子2人だけのようですが、女子の皆さんも、よかったら仲良くしてください」
 
と言って拍手をもらう。美男子なので、彼を見て隣同士少し興奮気味に言葉を交わしている子もいる。由美ではないが、女子校ではふつう恋愛の機会が無いので、彼はきっとたくさんラブレターをもらったりするだろう。
 
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武野君が「男子2人だけ」と言ったのに対して、山科先生がコメントする。
 
「えっと、男子は確かに3人居るんですけどね。田代君は一見、女子に見えるかも知れませんが、男子ですので」
 
そのコメントに教室内がざわめいているが、次はその龍虎の番である。
 
「えー、今先生からコメントされましたが、よく女の子に間違われるのですが、取り敢えず男子の田代龍虎です。『りゅうこ』という名前を音で聞くとまた女の子と間違われるのですが、空を飛ぶ龍に、吼える虎の字です。背が低いのと声変わりしてないのは、小さい頃に大きな病気をした後遺症だと思います。一部で噂されているみたいですけど、決して去勢はしてないです。部活は中1の時までコーラス部だったんですけど、歌手・俳優としてデビューすることになったので辞めました。私もお仕事の関係でよく休むとは思いますけど、よろしくお願いします」
 
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と言って拍手をもらった。
 
次に成美が立ち上がる。
 
「田中成美です。ヴァイオリンが好きで、小学校の高学年の頃からあちこちの大会に出ていますが、なかなか大きな大会で優勝できなくて、国際***音楽コンクールでも2年連続で4位になった後、昨年やっと3位入賞できました」
 
とソプラノボイスで言うと拍手がある。成美は一礼して続ける。
 
「中学の時も結構大会に出たり海外に短期留学したりするのに学校を休んでいましたが、高校でも結構休むと思いますが、よろしくお願いします」
 
彼女のメッセージもこのあたりまではみんな何気なく聞いていたのだが、次のひとことは教室全体に衝撃をもたらした。
 
「ちなみに私の名前の『成美』ですが『なるみ』というと、女の子に多い名前なので、女の子と誤解されることもありますが、私は間違いなく男ですので」
 
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その瞬間
「え〜〜〜!??」
「うっそー!?」
 
という声が教室内に響き渡った。本人は女子用ブレザーにスカートという普通の女子高生のいでたちで平然として席に着いた。
 
山科先生は
「はい、では次の人」
と言い、彩佳が「信じられない」という顔をしながら立ち上がった。
 

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4月1日の夜、私は政子と睦み合って眠っている内に妙に現実感のある夢を見た。街を歩いていて、千里を見かけたので声を掛けたのだが、彼女はこちらを見て、ニコッと笑った後、まるで分身でもするかのように3つに分かれてしまった。
 
そして、ひとりの千里はパソコンの前に座ると何かプログラムを作っているもよう。ひとりの千里はバスケットボールを持ってドリブルして走って行く。そしてもうひとりの千里は龍笛を取り出して美しい曲を吹いた。
 
そこでハッとして目が覚めたが、3つに分裂した内の1人の千里が吹いたメロディーが脳にまだ残っていた。私はその旋律を大急ぎで紙に書き留めた。
 
 
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