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■夏の日の想い出・少女の秘密(1)
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(C)Eriko Kawaguchi 2017-05-20
2017年1月9日(祝)。
アクアが主演する『時のどこかで』の新年最初の放送が行われたのだが、この日の放送内容は随分と議論を引き起こすことになる。
アクアの芳山和夫が未来に飛び、ケン・ソゴルの弟、ニノ・ソゴル(演:木田いなほ)と会う。するとニノは性転換手術を受ける予定だというのである。
「ニノちゃん、女の子になりたかったの?」
「別にそのつもりは無かったんだけどね。男の子の友だちから、僕の奥さんになってくれないかと言われて」
「へー」
「僕が女の子になったら、きっと可愛い奥さんになれるよとかおだてられて、まあそれもいいかなあと思って、婚約指輪受け取っちゃった」
とニノは言っている。
「うん。ニノちゃん、女の子になったら可愛くなると思うよ」
と和夫も言った。
やがてケンもやってくる。
「あれ?和夫もこっちに来てたの?」
などと言い、一緒に性転換手術をする病院まで行った。
「和夫の時代だと性転換手術って何時間も掛かって、凄く痛いし、手術の後で傷が治って体力回復するのにも何ヶ月もかかるけど、僕たちの時代には手術は30分くらいで痛みも大したことなくて、それも1〜2日で無くなるんだよ。何より15-16歳くらいまでに手術すれば、赤ちゃんも産めるようになるし」
とケンは言っている。
「前にも一度言ったけど、和夫こちらの時代で性転換手術受けて、僕のお嫁さんになる気とか無い?結婚した後は、和夫の時代で一緒に暮らしてもいいよ」
「それは勘弁して〜。僕、別に女の子にはなりたくないから」
と和夫は言う。
「性転換なんて、ちょっとおっぱい大きくして、おちんちん取って、女の子の形にするだけだし」
とケン。
「おっぱいはいいとして、おちんちん取りたくないよぉ」
と和夫が笑いながら言ったが、ニノがその時、複雑な表情をした。
この和夫の「おっぱいはいいとして」という発言に関して、ネットではやはりアクアはおっぱい大きくしたいのか?という意見が出ていた。どうも全体的にアクア本人と演じている役とは混同される傾向にあるようである。
ドラマの中ではやがてケンが仕事の関係で呼び出されて出て行く。「手術が始まるまでには戻ってくるから」と言って彼は出て行った。
ニノと和夫だけが残される。
和夫はベッドに横になっているニノに、その彼氏ってどんな人なの?などと訊いた。ニノは結構おのろけっぽいことを言っていた。
少しした時、看護婦さんが来て、血圧や体温などを測っていった。
「問題無いですね。それでは30分後に手術ですから」
と言って看護婦さんは部屋を出て行く。
その時、唐突にニノは言った。
「僕、おちんちん取るの、気が進まない」
「じゃ結婚やめる?」
と和夫が訊く。
「彼と結婚してもいい気はする。でもそのために女の子にはなるのっては、まだ迷いがある」
とニノ。
「男の子のままでは結婚できないの?」
「男同士、女同士でも結婚できるよ。でも、結婚する時に片方が性転換手術を受けて男女の結婚という形にするカップルが多いんだよ。子供作りたいから」
「ニノちゃんも子供産みたいの?」
「僕は子供は別に要らない気がする。彼のことは好きだし奥さんになっていいとは思っているけど、おちんちんが無くなるのって自分の心の中でイメージができないんだ」
「奥さんにはなっていいの?」
「うん」
「女の子にはなっていいの?」
「ちょっと微妙」
「おっぱいは大きくしてもいいの?」
「それは大きくしていいと思う」
「おちんちんが無くなるのは?」
「なんか嫌だ」
和夫はニノに言った。
「そういうの自分で気持ちの整理が付いてからにした方がいいと思う。今の段階ではまだ、おちんちん取るの嫌だと思うなら、取り敢えず今日は逃げちゃったら?」
ニノはその和夫のことばに、じっと彼を見ていた。
「逃げちゃおうかな・・・・」
「うん。今迷いがあるのなら、今日は手術すべきではないと思う。後悔するよ。あらためて彼とよく話し合ってさ。それでやはりおちんちん取って、おっぱい大きくして、女の子になって赤ちゃん産める身体になってもいいと思ったら、それから手術受ければいいよ。一度逃亡したら、ここの病院じゃ手術してくれないかも知れないけど、性転換手術してくれる病院ってここだけじゃないよね?」
と和夫は言う。
「うん。大きな病院なら、どこででもやってくれるよ。性転換手術なんて盲腸の手術の倍くらい行われているって言うもん」
とニノ。
「だったら、逃げちゃえばいい」
ニノはしばらく考えていた。
「そうする。僕、逃げる。やっぱり、ちんちん切られたくない」
それで木田いなほ演じるニノはベッドから出ると、病院のパジャマを脱いで普段着に着替える。その間、アクア演じる和夫はなぜか後ろを向いていた。
このシーンは
「男同士という設定なのに、なぜ後ろを向く必要がある?」
「いや、実はアクアといなほは女同士だから」
「女同士なら、やはり後ろを向く必要が無い」
などとネットで突っ込みが入っていた。
それで結局、ニノは身の回りのものをバッグに急いで詰めて、逃亡していった。
それを見送って、和夫も病室を出ようとしたのだが、そこに看護婦さんが3人入ってくる。さっきニノの血圧などを測定したのとは別の看護婦たちである。
「ソゴルさんですね?」
「え、いや、僕は・・・」
「もうすぐ手術ですので、麻酔を打ちます」
「ちょっと待って」
「心配しなくてもいいですよ。手術はすぐ終わりますから」
「いや、そうじゃなくて。僕違うんですよー」
と和夫は言うが、ふたりの看護婦に押さえつけられてしまう。そしてもう一人が腕をアルコール綿で拭く。
「直前になって怖がる人もいますけど、手術が終わったらみんな女の子になって良かったと言いますよ。それに性転換手術なんて死亡率はほぼゼロの安全な手術ですから。眠りから覚めたらもう君は立派な女の子だからね」
「いや、だから僕、患者じゃないって」
と和夫は言ったが、注射器の針が腕に刺される。そして画面はホワイトアウトしてしまった。
そして《つづく》の文字が表示された。
「ねぇ、これこのまま性転換手術されちゃう訳?」
「いや、手術までにケンが戻ると言っていた。そこで間違いに気付くと思う」
「そこはやはり遅刻しちゃうのがお約束じゃない?」
「あるいはケンは和夫に女の子になって欲しいから、気付いてもそのまま手術受けさせちゃうとか」
「その展開もありそうで恐い」
「でも和夫が性転換されちゃったらどうなる訳?」
「原作通り和子になるのでは?」
「じゃ次回からはセーラー服のアクア様が見られる?」
「ついでにアクア様本人も性転換しちゃうといいのに」
どうもネットの意見は、和夫がこのまま性転換手術をされてしまい、これ以降は女の子の和子としてセーラー服姿でアクアは登場するのではという半分は妄想のような方向に行ってしまったようであった。
龍虎は翌10日(火)、学校に出て行くと、みんなから質問攻めにあった。
「あれ、やはり和夫君、性転換されちゃうの?」
「そのあたりは秘密ということで」
「秘密ってことはやはり性転換されちゃうんだ?だって、性転換されないなら秘密にする必要ないよね?」
「その問題についてはこの後の放送を見てもらうということで」
と龍虎はひたすらみんなの質問から逃げた。
ところでローズ+リリーのカウントダウンライブで、落雷があったにも関わらずイベントを続行したことについて、このイベントの最高責任者である★★レコード松前会長は新聞記者の取材に対してこのように答えた。
現場は古い水族館が建っていた所で、その水族館を雷から守るための避雷針の鉄塔がまだ解体されずに残っていた。それで会場の範囲は守られると考えた。落雷した電柱は道路上にあり、この避雷針の保護範囲(仰角45度以上)の外側であった。気象台に問い合わせた所、落雷があったこと自体がその夜の気象条件ではレアな現象だと驚かれた。雷を発生させたと思われる雲も、上空の風が強いためかすぐ海上に移動してしまい、上空は快晴に近い状態で、更に落雷が発生する確率は低いと考えた。また、この時はアーティストが1曲歌っただけの状態であり、ここでイベントを中止すると発表すると、5万人の観客が騒いだりして、暗闇の中では危険が生じると判断した。それなら続行したほうが安全であると考えた。万一怪我人が出るような事態があったら腹を切る覚悟でいた。
また東北電力側の調査でこのようなことが分かった。
電柱には通常その電柱を雷から守るための保護用の「架空地線」が張ってあり、また数本の電柱に1個の割合で更に避雷器も設置されているが、落雷した電柱は避雷器の無い電柱であり、また老朽化のためか架空地線が無くなっていた。それで、落雷がトランスを直撃してしまった。
また当日は暗い中で、その電柱と隣の電柱との間の電線も使えるかどうか不明だったので、隣の電柱(避雷器あり)から長い引き込み線を引いてきて、新たに持ち込んだ配電盤につないで復旧したことを電力側は説明した。基本的には落雷の被害を避けられなかったのは、架空地線が無くなっていたことに気付かなかったこちらのミスなので、復旧に掛かった費用はむろん電力側で負担する。落雷した電柱は3日の壁撤去工事が終わったら、電柱そのものを撤去し、現場に新たな施設が建築される時にあらためて新しい避雷器付きの電柱を設置したい、ということであった。
防風壁の撤去に関しては、M市側が、この敷地でもしかしたら春頃に市独自のイベントを行うかも知れないので、良かったらそのまま設置したままにしておいてもらえないかと★★レコード側に打診してきた。
実際問題として★★レコードとしては、撤去工事に掛かる費用の方が、撤去したフェンスを売却(実はフェンス本体と吸音板を剥離しなければ売却できない。一応剥離しやすい接着の仕方はしていた)して得られる見込みの利益より遙かに大きいので、この壁に関する権利を放棄して市の要請に応じることにした。それで結局1月3日に行われるはずだった撤去工事は行われず、会場内に設置した誘導用のロープなどの撤去と清掃作業だけが行われた。その作業が終わった所で落雷した電柱と長い引き込み線は、いったん撤去された。
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